第59話 ステイシーしゃんはしゅごかったでしゅ
とりあえず、衝撃の事実は横に置いといて。
本来の姿を見たいと言ったら見せてくれたんだが。真っ黒い毛並みはふっさふさのもっふもふ。
バトラーさんはトラだから、猫のように短めでビロードのような手触りだけれど、ステイシーさんは長毛だからか、体がすっぽりと埋もれてしまった(笑)
これで小さめサイズで、バトラーさんに出会った時と同じサイズなんだから、驚くってもんよ。しかも、本来の大きさはバトラーさんよりも一回り大きいんだって。
凄いなあ、神獣って。それとも、種族的に大きいんだろうか。
スキルじゃない魔物図鑑や植物図鑑ってないのかなあ。あと、町の看板がわかるような絵本とか。
あとで纏めて聞かないとと考えつつ、ステイシーさんの毛皮を堪能させてもらったあと、改めて愛し子について質問したんだが。簡単に言えば気に入った人に与える称号で、神獣によって与える理由は様々なんだとか。
たとえば、キャシーさんならお針子など裁縫関連、ステイシーさんは料理人や宿の経営を真面目にやる人、などだ。
で、創造神であり主神でもあるバステト様の愛し子は、マジで滅多なことじゃ現れないらしい。それも、神獣も含め、バステト様が気に入るかどうかという思いっきり個人的な感情から生まれるので、万年単位で出ないのは当然なんだと。
しかも、バステト様の愛し子は私で三人目だそうなので、その少なさがわかってもらえると思う。
ちなみに、ここにいる神獣の中で一番愛し子が多いのがステイシーさんと彼女の旦那さんで、二人合わせて一万人弱ほどだそう。みんな〝黒狼の憩い亭〟で働いてくれたり、現役で働いている人ばかりだそうだ。
次がセバスさんとセレスさんで、三百人弱。主に執事や侍女、王家や貴族に仕える影に与えていたそうだが、ここ千年はいないという。
キャシーさんは直近三百年の間ばかりで、お針子やデザインなど、裁縫で百五十人ほどと続く。バトラーさんは主に戦闘関連で直近だと二百五十年前に与えたきりで、私で十人目。しかも、戦闘関係なしに愛し子の称号を与えたのは初めてだそうだ。
テトさんに至っては私が初めての愛し子だって。
……どんだけー!
ま、まあバトラーさんはどうか知らんけど、テトさんの外見は骸骨で、禍々しい大鎌を持ってるからなあ。偏見があると怯えるだろうし。
死の森で本人にも言ったが、私はむしろ骸骨が大好きであ~る!
そんな愛し子事情は横に置いといて、ステイシーさんのステータスはこちら!
名前 ステイシー
性別 女
年齢 31425
種族 シュヴァルツエンペラーヴォルフ
レベル 8391/999
スキル 魔法の心得(Lv:ー)
武器の心得(Lv:ー)
武道の心得(Lv:ー)
商人の心得(Lv:ー)
宿屋の心得(Lv:ー)
料理人(Lv:ー)
植物図鑑(Lv:ー)
魔物図鑑(Lv:ー)
魔力循環(Lv:ー)
魔力操作(Lv:ー)
地理把握(Lv:ー)
地形把握(Lv:ー)
気配察知(Lv:ー)
解体(Lv:ー)
魔法 風魔法(Lv:ー)
土魔法(Lv:ー)
闇魔法(Lv:ー)
時空間魔法(Lv:ー)
結界魔法(Lv:ー)
転移(Lv:ー)
マップ生成(Lv:ー)
上級生活魔法
看破
変身
言語理解
称号 女神バステトの神獣
超越者
世界を踏破せし者
世界に君臨せし者
不老不死
優しき魔物
バトラーの友人
テトの友人
スティーブの友人
セバスの友人
セレスティナの友人
ステラの保護者NEW
年齢を見て乾いた笑いが出たよね……。めっちゃ長生きなお姐さんやん!
そりゃあ、3万年前なんて言葉が出るわー(棒)
そのわりにはレベルが低く感じるけれど、あそこまでいくと上がりづらくなるんだろう。セバスさんやセレスさんも、ひとつ上げるのに年単位になることもあるって言ってたし。
私もステータスを確認したが、商人の心得(Lv:ー)とステイシーさんの愛し子という称号が増えただけだし、他のスキルなどはレベルが上がっていないので割愛。順調(?)に、神獣の愛し子の称号が増えているのがおそロシア。
そして問題の黒いカードなんだが。
ステイシーさんは、その時代にいたバステト様の愛し子にも黒いカードを渡したけれど、二万年ぶりに出たバステト様の愛し子とあってか周囲からちやほやされ、途中から傲慢というか我儘というか、そんな態度になってしまったそう。
つまり、天狗になっちゃっていろいろとやらかしたのでカードを返してもらっただけじゃなく、バステト様にも呆れられて、愛し子の称号が消えたなんて話を聞いて、愕然とした。称号取り消しなんてあるんだね。
……驕らないよう、肝に命じておこう。
まあ、悪いことをしたら叱ってくれる
そんな話をしてひと段落したので、図鑑について聞いてみよう。証明書についても質問しようと思ってたのに、ステイシーさんのステータスが衝撃すぎて、質問内容を忘れてしまったのだよ。
てなわけで、セバスさんに聞きまーす!
「あにょ、セバスしゃん。スキルじゃにゃいじゅかんって、ありましゅか? あと、かんばんがわかるほんとか」
「ああ、あるよ」
「もじやかんばんのべんきょうをしたいので、ほしいでしゅ」
「もちろんだ。明日、国境に行きがてら買おう」
おお、やったね! 明日が楽しみだと思っていたら、ステイシーさんがふふっと笑う。
「それなら、買い物があるから、ついでにあたしが行ってくるさね。セバスたちだと、どんなものが必要がわからないだろう?」
「あ、ああ。任せていいか?」
「あいよ。ステラ、図鑑はどんなものが欲しいんだい?」
「んと、しょくぶちゅとまもにょがほちいでしゅ」
他に、文字の勉強ができるような絵本や、冒険者ギルドで見た看板のことを話し、もしそういった本があれば欲しいと話した。すると、きちんと年齢分けされたものがあるそうなので、物語が読める絵本も含め、いろいろ買ってきてくれることに。
バトラーさんからいただいたお小遣いで払おうと思ったら、大人たちは許してくれず。結局、初めて愛し子の称号を与えたテトさんがお金を出すことになった。
みなさん、過保護というか溺愛が凄いというか……。「幼児でしょ! お金のことは気にしない!」って言われてしまえば、黙るしかないわけで。
心苦しいなあと思いつつ、素直に大人たちの厚意に甘えることにした。
そこからは何時ごろ隣国の国境に向かうかとか、食材はどうするかなどを話あっているうち、あっという間に夕食の時間になる。冒険者に絡まれるのが嫌だからと、部屋で食べることにしたみたいで、ステイシーさんと熊の顔をした人がワゴンを押し、部屋に入ってきた。
熊の顔をした人は熊獣人で、この宿の料理人の一人なんだって。
なるほど、この世界の獣人は、動物の顔と姿なんだね。優しそうな目をした熊さんで、子ども好きらしく、私の頭を撫で回したあとで瓶に入ったカラフルな飴をくれた。くふっ。
「ありがとうごじゃましゅ!」
「どういたしまして。味はねぇ、蟻蜜を練ったものとペスカ、オレンジと――」
お礼を言ったら、嬉しそうに微笑んでどんな味の飴があるか教えてくれる熊の料理人さん。料理人さんの手作りだそうで、ペスカは桃のこと。他にもリンゴや杏、ブドウやイチゴなどなど、いろんな果物を使った飴が入っているそうだ。
だからカラフルなんだと納得したし、手作りというのにも驚いた。すげえな、ステイシーさんのところの料理人さんは。
目も声も優しくて、素敵な料理人さんだった。
料理もギャーギャー鳥の胸肉を使ったトマト煮やマッシュポテト、パスタを使ったサラダもある。パスタの形はファルファッレとコンキリエっぽい見た目だから、見ていて楽しい。
他にもステーキや露店で見た貝などが出てきて、それも美味しそうな匂いを発している。食べるのが楽しみ!
てなわけで、食いしん坊な幼児、いただきまーす!
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