第51話 第二次模擬戦 6
クリストはアーシュライトを回収すると、マイトランドの指示通り、敵直協支援集団の後背に回り込み、突撃を敢行した。
クリスト達の突撃した敵直協支援集団は、なぜかヨーゼフ・アルファイマー率いる魔導砲撃隊が詠唱を止め降伏、弓兵部隊は、弓よりも長い射程の魔導砲撃隊に左右を固められていたことが災いし、突撃をまともに受け射撃を中断。
マイトランドの予定よりも幾分早く、ライアネン隊へ降り注ぐ矢は止むことになった。
フリオニール軍右翼部隊は、正面の敵騎兵を一掃すると、マイトランドが指示を飛ばす。
「ロンベルト以外の者は騎乗し、クリスト隊と合流、後に敵直協部隊の後背を突いてくれ。合流までの指揮はフレデリカに任せた。残りの15騎率いて行け!直協部隊を一掃後、敵歩兵集団に突撃を敢行せよ。くれぐれも無理はするなよ。俺はランズベルクが戻ったら敵大将を探しに行く。」
「了解だ!」
フレデリカはそう言うと、15騎を率いクリスト隊に向かって行った。
この頃敵、味方の歩兵は、弓形から半月状へと形状を変え、フリオニール軍歩兵が、グレンダ軍歩兵を半包囲する様相を呈していた。
フレデリカはクリスト隊と合流すると、クリストの指揮の元、弓兵のみとなった、直協部隊を撃破。マイトランドの指示通り、歩兵集団の後背に突撃を開始した。
先にも説明した通り、ファランクスはその性質上、後背攻撃には非常に弱い。敵歩兵集団の殆どは、幾度と繰り返される、クリスト隊の突撃になす術無く蹂躙された。
一部の歩兵は反転、クリスト隊を迎撃したものの、時すでに遅く、迫りくるクリスト隊に押し込まれ、全ての方位からの圧力により、中央歩兵は、ほぼ全員圧死することとなる。
マイトランドはランズベルク達2名が帰ってくると、ランズベルク、ポエルを伴い、瓦解した軍に勝機なしと、後退したグレンダを捕まえると、フリオニールの元に連れて行く。
事ここに至って全ての戦闘は終決する。
戦闘開始時は、数的有利なグレンダ軍の勝利かと思われていたが、終わってみれば、フリオニール軍の損害、歩兵128、騎兵19、グレンダ軍の損害、歩兵全滅、騎兵95という圧倒的な勝利であった。
査閲官、随伴の班長らが、それらの損害状況の確認をすると、
ドーン、ドーン、ドーン
という鐘の音が響き渡り、模擬戦の終了を告げる。
各軍は戦闘開始前の広場に集結すると、評定が始まった。
査閲官フランドールが登壇すると、またあの魔力拡声器の軍人が戦功表彰を行う。
「第1功、フリオニール・フォン・グレッテ。大将として全軍を率いた功績。
第2功、ロンベルト・フォン・ライト。敵左翼騎兵を壊滅させた功績。
第3功、フレデリカ・アレクシス。敵左翼騎兵の殲滅、及び敵歩兵の壊滅。」
戦功発表は第3功までであった。またしてもマイトランド達平民の名前は無く、それを気にしたフリオニールが、申し訳なさそうにマイトランドに顔を向けると、
「勝ったのに、なんて顔してるんだ?敗者に申し訳ないだろう。それに皆に金一封をあげる約束だろ?金一封を貰うためには、表彰を受けなきゃな。」
マイトランドは笑って答えた。フリオニールは複雑な表情で、大きく返事をすると、壇前に向かった。
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模擬戦の全工程を終了した、マイトランド班は隊舎に戻ると、ライアネンが嬉しそうに尋ねてくる。
「いよぉ、マイトランド。貴族様から、約束の金一封を貰ったんでな。一緒に飯でもどうだ?」
「そりゃいいな。皆も誘っていいか?」
「もちろんだ。お前達のおかげだからな。」
「そりゃあ違う。ライアネン隊のおかげだ。お前の部隊がいなければこの勝利はなかったぞ。」
「そうか。そう言ってくれると、皆も喜ぶだろう。次も同じ軍を希望するぞ。よろしく頼んだぞ!司令官!」
2人は笑いながら、ライアネン隊、マイトランド班の全員を伴い、食堂へ向かって行った。
金一封を平民班全員で分けたので、ライアネン達の懐事情では、育ち盛りの男達の食べる量に対しては、当然のことながら足りなくなり、マイトランドも食事代を払う羽目になったのは言うまでもない。
この模擬戦で、策謀により成績は残せなかったものの、マイトランドは、ライアネンという頼もしい仲間を手に入れることになった。
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