第259話 む、紫のリョーク!?

 笑顔でお気楽メンバーには待機してもらい、私たちは森林へ。

 奥深くに何か大物が潜んでいるらしい。

 素早いし見つけられたら生きては戻れないらしいので、何がいるのか分からないそうだ。

 いるといいなー。

 ソードとワクワクしながら向かったら。


 紫色のリョークがいた!


 全員、硬直。

 …………だが、よく見たらリョークじゃない。

 シルエットは似ているがリョークほどメカニカルではなく、おまけに外殻に毛が生えていた。

 ――ということは、魔物?

 何とかスパイダーとか言うやつか?

「こんにちは?」

 私は会話出来るかなと思い、挨拶してみた。

「ギチギチギチ」

 蜘蛛が返してきた!

「お前は魔物か? なんという名前だ?」

「ギチギチギチ」

 アサシンスパイダーという種族らしい。

 デススパイダーやポイズンスパイダーより小型で素早いのがすごいところ、とアピールされた。

「ふむふむ」

「ギチギチギチ」

 リョークを仲間と思ったらしい。

「いや、仲間じゃないぞ、これは私が作ったゴーレムだ」

「ギチギチギチ」

 ガッカリして寂しがっている。

 仲間が減って、気付いたら一人だったらしい。

「うーむ、そうなのか。……しょうがない、私たちと一緒に来るか? 旅をして回れば、仲間が見つかるかも知れないからな」

 ソードが私を見たが、また向き直って私に言った。

「ま、いいか。……ちなみに、糸をもらえるか聞いてくれ。糸は布になるから、それをギルドに納めてテイムしたことにするから」

 アサシンスパイダー、ソードと意思疎通出来たらしい。

 シャーッと音がしたと思ったら、あっという間に糸が毛糸玉みたいになって何個も置かれた。

「ソード、お前、普通に会話できているようだぞ?」

「……まーな。アマトが出来たから悔しくて、ちょっと頑張った」

 さすがだな。

 ……ふと思ったのだけれど、ソードってアマト氏をライバル視してないか?

 前も、アマト氏が先に私の料理について褒めたので負けた気がしたとか言ったし。

 アマト氏は常識人だから戦おうとしないけれど、勇者なのでそれなりにチートスペックなのだよね。

 だからかな。


 ソードがギルドに報告し、町を旅立った。

 なるべく森を移動しつつ、次の町を目指す。

 式部(とアサシンスパイダーに名付けた)はあちこちめぐってみるものの、仲間……というか、そもそも蜘蛛がいないらしい。

 かわいそうなので慰めつつごはんをあげる。

 果物が好物だった。あげると喜んで食べている。かーわーいーいー。

 あと魔石ね。

 そうしたら、お礼と称して自家製布製品を作ってくれた!

 機織り出来るのかよ!

 そういえば、蜘蛛の巣を張るもんね!

 キャンピングカーの中がいきなり豪華になったよ。


 上空からの地図から見ると、河口付近の町が栄えているようなので、そこに行くことにした。

 お気楽メンバーは運転の練習を頑張り、大体はこなせるようになったので安心した。キッチンカーなので、縦列駐車的なことできないと困るからねー。

 あと、料理の練習のために全員の食事をキッチンカーで提供するようにした。

 さすがというか、出来る子たちなのであっという間に覚えて、ある程度は作れるようになったよ。

 自主性は相変わらずないのだけれど……。

 気は利くんだけどねー。

 部下体質なのだろう、うん。

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