第210話 甘やかしてないよ?

〈ソード〉

 頭をかきつつ、食堂に下りる。

 昨日食ってねーから腹減ったな。

 朝食は、普通にパンだった。

 サラダやアッサリした卵料理やスープや果物が並んでる。

 米を手に入れたっつってたのに全然使ってねーじゃん。

「……ん? 米料理にするかと思ったけどよ?」

 料理人が苦笑した。

「昨日インドラ様が作って下さったものは、夕食で食べきりました。朝食は、胃もたれや臭いが残る可能性があるので葉野菜やフルーツ、ミルクを多めにとインドラ様より仰せつかっております」

 …………マジか。

 え、俺、食いそびれた?

 ……と、アマトが意気揚々とやってきた。

「あー、昨日の餃子ぎょーざうまかったー! やっぱ餃子オンザライスは最強だよな!」

 …………。

 ベンたちもやってきた。

「おはよーッス! いやー、昨日の夕食うまかったッスねー! 俺、仕入れてきて良かったって思ったッス!」

「あ、仕入れの神様! 拝んどこう」

「ちょ、いい加減やめてくださいって……」

 …………。

「おはようー! 昨日の夕食おいしかったねー!」

「おはよう! おいしかったね! 遠路はるばる運んできたかいがあった、って感じ!」

「おっす! 昨日のアレ、うまかったなー!」

「あぁ、エールに最高に合ったよな!」

 …………。

 その話ばっかりだよ!

 食いそびれたよ!

 チクチョー、くだらねぇこと考えてねるんじゃ無かった!

 また拗ねたくなったけど、今度拗ねたらまた食いそびれることになるから、もう絶対拗ねない。

 つーか、インドラにすがって「作って」ってお願いしよう、そうしよう。


          *


 米の貯冷蔵庫作成。

 ベン君がいっぱい買ってきても良いように、米蔵建てたよ。

 その脇に、プラナと一緒に作った脱穀機と精米機を設置。

 ぬかは栄養価が高いので、身体を磨くだけでなく魔物たちに食べさせてもいい、もちろん畑の肥料にも良いと伝えておいた。

 さらに、大人数対応の洗米機、自動炊飯釜も作った。

 さらにさらに、アマト氏は自炊するのでサハド君に土鍋も作ってもらった。


 ――そういえば餃子は全部食べきったそうで、食べ損ねたソードに土下座された後すがられてねだられた。

 そして、メイドたちに「甘やかしすぎです!」と叱られた。


『大体察しておりますよ? インドラ様が寛容にもお許しになっているので何も言いませんけどね? ……でも、次はないと肝に銘じて下さい』


 ってソードは脅されたようで、

「ごめんな? もう、ホントしないから。俺、激しく主張するから! お前の手料理が食べたい!」

 って始終言うようになった。

 しかも、しばらくまとわりついてきた。

 ちょっとどころじゃなくウザい。

「……別にお前が悪いんじゃない。お前を優先しなかった私が悪いんだ。ようやく米が手に入って、ついテンションが上がってしまった」

 そう言ったけど、聞き入れてくれない。


 米を使った料理を料理人にいろいろと教えたが、ソードの料理は私が作ることになった。

 周り中から「ソードさんを甘やかしすぎ!」と非難されてるが……。

 甘やかすもなにも、ソードはこの屋敷の主なのだが……。

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