第203話 スペシャルバージョンを作ったよ

 ショートガーデ親子は、なかなかにアグレッシヴだ。

 あっちこっちに興味を持って、セキュリティ警告されている。

 特に二人が興味を持ったのは、シャール・ノンバイオレンスだ。

「あらー! さすがインドラ様! チートがすごいわ! 〝自動車〟を作ったんですのね!」

「馬車の代わりにな……。それなりに見栄みえを張らなくてはならない場合はコレに乗ることにしている」

 シャールでいいんだけど、そうもいかない世の悲しさよ。

 ショートガーデ公爵も食いついた。

「これは……素晴らしい! インドラ殿には、宮廷魔導師ですらかなわないのでは!?」

「かなわないだろうよ。現在後追い中は、うちで雇ってるエルフかな」

 ソードが付け加えたら、スカーレット嬢が食いついた。

「「え、エルフ!?」」

 ついでに公爵も食いついた。


 で、プラナを紹介したり、皿に関心を持っていたのでサハド君も紹介したり、勇者もついでに紹介した。

 アマト氏、

「あ! ガチのお姫様だ!」

 って、スカーレット嬢を見て言った。

 ……オイ?

 私は?


 スカーレット嬢、シャール・ノンバイオレンスを見て我慢できなくなったらしい。かわいいおねだりポーズをしてきた。

「ねぇ、インドラ様。自動車は? 自動車はダメですか? 作ってもらえません? 私、転生前の春休みに運転免許を取ったんです! よーし、これからバリバリ運転するぞ! って意気込んだ矢先に死にまして」

 とか語られたんですが……。

「……作って『貸す』のは構わない。私は、自分の作った魔導具は、基本的に『貸す』だけだ。第一優先権は、ソードに作ってやったもの以外は私にある。他者にはレンタル権しか渡していない。それでもいいのか?」

「うん! レンタカーなら、逆にインドラ様がメンテナンスやってくれることになるんだもんね!」

 …………そうきたか。

「まぁな。ただ、日々のメンテナンスはやってもらうがな。まぁ、お嬢様はしないだろうから、使用人にやってもらえ」

「わかったー! ワーイワーイ!」

 小躍りしてる。

 まぁ、かわいいから許すよ、作っちゃうよ。


 そのやりとりを見ていたソードがツッコんできた。

「……お前、なんで女に鼻の下を伸ばすんだよ? かわいい女に弱いって、オッサンだろ?」

 うるさい! 伸ばしてない! でているだけだ!

「私は、種族性別年齢問わず、『かわいいは正義。』なのだ」

 キッパリと言ったら、スカーレット嬢からさりげなくお断りされた。

「わぁ、インドラ様って両刀なんだー。でも私は王子推しだから、諦めてね?」

 うん、恋人になってほしいとは夢にも思ってないから。

「これからもいい友達でいましょう?」

 笑顔で切り返した。


 で、作った。

 出来ればシャールみたいにある程度キャンピングカー風にしてほしいと言われ、ちょこちょこ改変し、色は渋い臙脂えんじにして、完成。

「シャール・ノンバイオレンス、スペシャルエディションだな」

「長いわ」

 バッサリ言われたが、しょうがないのだ。

 外見をキョロキョロと見ていたスカーレット嬢から質問が飛んできた。

「サイドミラーはないのですか?」

「カメラがついている」

 ついでにスカーレット嬢に仕様を説明する。

「生体認証だ。必ず、生体認証登録された者がドアを開けてくれ。登録された者以外が触れた場合、盗難防止の魔術が働く」

 スカーレット嬢、固まった。

「……それ、怖くないですか?」

「触れなければ良い。残念ながら仕様だ。私の作ったものに勝手に触れようとするのは我慢がならないのでな。整備をする人間には生体認証登録をお勧めする。――あぁ、運転も、登録された者以外はできない。……ただ、それだと万が一もあるだろうから、カードキーを渡す」

 カードキーをみせた。

「このカードキーに登録したら、一枚で一日のうち一時間運転が出来る。三枚渡すので合計三時間だな。それ以上運転したい者は、私の許可が必要になる。――もちろんその前に、スカーレット嬢の許可だな。そして、運転講習もか」

 道交法はないので、運転するだけならさほど難しくはないけどね。ほぼオートで走るもん。ナビもつけてるし。

「スピード制限は設けさせてもらった。道路事情も悪いので、あまり飛ばすと横転する可能性があるのだ。あ、あと、飲酒運転は厳禁。酒気を感じたら停止するようになってるからな」

「……自動車事故に対するこだわりが物すごいですわね」

 当たり前でしょうが。

 私の作ったのを壊されたら怒るよ?

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