第194話 これにて一件落着

 王子はプリムローズと別れる決心をし、我が妹も未練なく王子にサヨナラした。

 そして次のターゲットはと言うと。

「ジーニアス様……。やはり王族との身分差には勝てませんでしたわ。ですが、貴男と共に、陰ながら王子を支えていきたいと思います……」

 腰巾着君にすがった。

 が! 腰巾着君もさすがに我が妹の正体に勘付いて突き放し、王子に向かった。

「王子。私は、何があろうともお側で支え続けます」

「……ジーニアス……」


 二人のお涙頂戴の小芝居に私はしらーっとしていたので、

「ぐへへ……。王子×側近……」

 という某公爵令嬢つぶやきは聴かなかったことにする。

 腐界の住人がいたらしいが、知らない!

 真顔でスルーしてると

「教官×生徒、その実は冒険者パートナー。もいいですわね……ぐへへ」

 つぶやかれたので鳥肌を立てて否定した。

「ちょっと待て! 私は女だし、ソードは男だ。しかも年齢差もある。確かに今は少女くらいに成長したが、出会ったときは青年×幼女だった。人、それを〝ロリコン〟と言う。……ソードにロリコンの気がないのはわかるだろう? なぜに私とソードがかけ算されるのだ?」

 ツッコんだ。

 理論だててツッコんだ。

 いやもう否定だよな、最初に言った如く。

「インドラ様。ソード教官は、駄目?」

 その正体は腐界の住人であったスカーレット嬢が聞いてきた。かわいく小首をかしげたって質問のおかしさは薄まらないぞぅ!

「何にでも恋愛を用いないでほしい。私は別世界で何人か恋人がいたが、最終的に長く付き合った人は、そういう垣根を越えた人だ。一概には言えないが、家族、友人、恋人、配偶者、その中で恋人は自己の激しいエゴで相手を求めるが、それは長く続きはしない。性を超え、種族を超えて、愛し、無償の愛を注げる、それこそが、真の情だと思っている」

 もはや自分が何を言ってるかわからなくなってきたが、早口でまくしたてた。

 一息ついてスカーレット嬢を見たら、愕然とした表情だった。なぜに?

「……インドラ様は、前世で恋人がいたとな?」

「あぁ。何人かと付き合った気がするな。……誰一人として思い出せないが、知識としてはある」

 ガーン、とショックを受けてるけど。

 ソードも意外な顔をした。

「え? 一人と付き合ったんじゃないの?」

 って聞かれた。

「いや? 別世界は恋愛に関して気楽でな。記憶では何人かと付き合ったことがあるようだぞ? 基本は一対一だな! まぁ、重なったこともあるが、たまたまだ! どのみち続かなかったからな! お前等みたく気楽な付き合いだ!」

 途端にソードとスカーレット嬢が二歩ほど引き、両手を胸の前に持ってきた。

 なんだその拒否ポーズは。

「ごめんなさい。私、インドラ君は、そういう目で見れません」

「ごめん、俺も。恋愛感情はなしでお願いします」

 キーーーー!

 なんで私がフラれたみたいになってるの!?


 気を落ち着けて、現状把握。

 王子は、プリムローズと別れる決心をした。

 というか、プリムローズが王子と別れる決心をした。

 平民に成り下がった王子には用がないらしい。そりゃそうだろうね。


 なので、控えでとっておいたはずの侯爵家の腰巾着君にターゲットを移したが袖にされ、音楽家の子と王子の弟はとっとと消えうせた。

 これは計算違いだったらしく、オロオロとしていたね。


 最後に残った騎士団の筋肉達磨はというと。

「ローズ、私は最後まで君の側にいる」

 ってカッコつけながら言ったら、プリムローズはそういえば存在を忘れてたわ、みたいな顔をして筋肉達磨を見た後、かわいく小首をかしげて頬に人差し指を当てた。

「でも、何もできないでしょう? 人を陥れるような人は誰にも信じてもらえないし、剣を握れないんじゃ騎士団はおろか護衛すら無理だし。私に頼られても困るし。――何もできない人なんて、誰もいらないんじゃないかしら?」

 王子のときとは違ってバッサリハッキリお断り。

 筋肉達磨は今日一番のショックを受けたらしく、絶句してずっとフリーズしていた。合掌。

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