第173話 闇魔術の遣い手だった!
現在のミッションは『カイン君を探せ!』だ。
ソードは深夜見回ったり、全ての生徒を洗い出したりしているらしいが、まったくと言っていいほど手がかりがつかめないらしい。
リョークも私たちが動けない時間帯にあちこち探りを入れているが、これまた成果なし。
じゃあもう放っておいてプリムローズに除霊してもらえばいいんじゃないかと思ったが、プリムローズは王子ルートもしくはハーレムルートに入ってるらしく、王子他いろんな男子を魅了していて裏ルートに進むための魔術力が足りていない、とはスカーレット嬢の解説だ。
うん。アイツ、バカだもんな。勉強してないもんな。
だがそこはいいんだ。ソードがカバー出来るのだ。
ソードは『お前が使ってる魔術以外は使えるよ』って言い切ってる大魔術師なのでプリムローズが使えなくてもいいのだが、そうするとここを去れない。
――そして、スカーレット嬢は王子へ『ジェラシー作戦! わ、私にだって、相手くらいいるんだからねっ!』を展開中らしい。
私とソードがお相手役らしいが……通用するかな?
というか、それを理由にやたらめったら誘われる。
ランチはほぼ毎日。
夕食は二~三日に一度。
手土産は、公爵家の領地の特産物で、普通は手に入らない様々な物産をくれた。
「これは、うちの領でしか採れない宝石の原石ですの。……原石でよろしいのよね?」
アンが差し出してきたのを受け取ってうなずいた。
「あぁ。加工はデザインを決めてからカットする。……にしても、これでアクセサリーを作っても、喜ぶやつがいないんだよなぁ。メイドに渡しても、たぶん、私に身につけて欲しいとねだられるしなぁ」
――と、寡黙なメイド嬢アンが口を開いた。
「高価な宝石は、自分がいただくよりもご主人様を飾り立てたいと思うのが侍女の共通の思いです」
だ、そうですよ……。
「大変だよな。もう半分男みたいになってるコイツだって、平民になったっつーのに、昔仕えてたメイドやら使用人やらの要望に応えるためだけに、女装……じゃねーけど飾り付けられて、見せて歩いて、ってやってるからな」
ソードは酒を飲みつつ寛ぎながら言ってる。
「まぁ、頻繁には困るがたまになら構わん。実際、私に仕えるためにメイド長から厳しく指導されてきて、その技の使いどころがなかったら、腕が鈍ると嘆くのも仕方が無いだろう、と言い聞かせている」
「あら? 着飾るのお嫌い?」
「自分が着飾るよりは着飾った女性を見る方がまだ好きではあるな」
作るのは好きだけど、作って満足タイプだから。
そして肝心のカイン君の話だが。
「手っ取り早いのは。特別クラス魔術クラスの男子を皆殺しだな」
「「却下!」」
声をそろえられた。
「……私としては、事を起こして欲しいんだがなぁ。なんでこんなにも慎重なんだ? 王都を破滅させるくらいの力の持ち主ならば、とっととやってしまえばいいのに」
スカーレット嬢が考え込んだ。
「……カイン君は、取りついた霊と内部で戦っていた気がします。普段……人がいる前では、霊は大人しくしています。が、ある特定のアクションで霊が活発になったはずです」
へー。ゲームっぽいなー……って、ゲームの話だったか。
「あとは、インドラ様が闇魔術をかけて増幅させて活発になったような……」
「誰だかわからない上に、闇魔術とは何かがわからないからなぁ」
ブラックホールを作るとかではないよね?
それって、圧縮されて消えるだけだと思うし。
光を断絶するような魔術ならイケるんだろうか?
「ソード教官、闇魔術とは?」
ソードが眉根を寄せた。
「相手の負の感情を増幅させる魔術だな。……お前が素でやってることだよ」
そうか。
私は確かに闇魔術の遣い手だったらしい。
重々しくうなずいたらソードが呆れ返った。
「冗談だよ。基本は、明るいところを暗闇にする魔術。光魔術の基本の真逆だな。だが、そこから派生して心を暗闇にする、っつー詠唱が発見された。光魔術の派生の真逆だ。で、さらに派生があってな。デーモンや悪霊を詠唱で支配し使役できる、つーのまで発見された。スカーレットが言ってる闇魔術はこのことだろ。相手に使役している悪霊やデーモンを取りつかせて、相手の負の感情を自分の都合良いように改ざんし、操る。ただ、既に取りつかれてるっつーなら、その野良デーモンか野良悪霊を使役して、どうにかうまいこと操作して負の感情を増幅させ操ろうとするだろうな。ちなみに一応禁術な」
そんなん出来るワケがない。
「……それを詠唱でやってのけるこの世界は、本当におかしな感じだな。闇魔術の理屈が全くわからない。結婚詐欺師が異性を騙して金をせしめる方法の方がまだ理解出来るぞ」
ソードとスカーレット嬢が私に向けて、嫌悪感丸出しの表情を作った。
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