第159話 友情を確かめ合ってたのに
――と、ボスを丸裸にしようと思ったところで無情にも無線が鳴った。
『インドラ! お前、何かやってるだろ!』
チッ。ソードか。
「こちらの番号は現在使われておりません」
『何言ってんだこのバカ! お前のクラスメイトの一人が心配して俺を訪ねてきたんだよ! お前、拷問してねーだろうな⁉ ……リョーク、ここか!』
チッ。リョーク、裏切ったなー?
「大丈夫だ、奇麗に治ってるぞ。それに、歓迎会だそうだ。ここの歓迎会は、焼きごてを押しまくるらしい。そう教わったのでな、今実際やってみたところだ。皆で友情を確かめ合ってるぞ!」
『この――――――――、バカ!』
ためにためて言われた。
はぁ。残念に思い肩を落とした。
「……仕方ない。歓迎会はもうお開きだそうだ。寂しい限りだな、そう思うだろう?」
みんな泣いて寂しがった。
「そうだよな、私も寂しい。だが仕方が無いんだ。何しろソード……教官は強いから逆らえないのだ。じゃ、行こうか」
ガッカリしつつ、ドアを開けたら、ソード、仁王立ち。
そしていきなりアイアンクロー‼
「ぎゃー!」
「お・ま・え・は!」
「だって、歓迎会を開いてくれるって、コイツらが言ってきたんだぞ! そして、歓迎会とはどういうものかも教わった! 私は悪くない! なぁ、そうだろう⁉」
泣きながら出てきた連中に同意を求めたら、ビクッとした後、震えながらうなずいた。
「……ま、自業自得だよな。インドラに絡んで死んでないだけマシか」
ソードのつぶやきに、少年たちが真っ青になった。
*
私、男子寮に寝泊まりすることになった。
寝るだけね!
シーツから何から自分で用意したものに替え、殺菌、洗浄、掃除魔術をかけた。同室の子がいたらしいが、教えられたときは授業に出てたのでセーフだ。ろう。たぶん。
シャールで風呂に入り食事を取り、ソードに説教されてから戻ると、同室の子がいた。
「君、無事だったんだね」
ホッとしたような表情で言われる。
「無事? とは?」
「え?」
互いに見つめ合う。色気無しで。
「……君、あの、イヤーナ子爵様たちに呼び出されてなかった?」
……なるほど、ソードに告げ口したのはコイツか。
「あぁ、歓迎会を開いてもらったぞ。なかなか趣向を凝らしていて楽しかった。ソード……教官に止められたが」
「え?」
また見つめ合った。
「私は、あぁいった趣向を凝らした歓迎会は、非常に楽しめるのだ。君は何か勘違いしてソード教官の手を煩わせたのかもしれないが、私にはそれが当てはまらない。別の子が歓迎会に招かれたときに言うと良い。あ、私に言ってもらっても構わないぞ?」
ニコリと笑うと、オドオドされた。
「あ、あぁ、そうなんだ……。ごめん、余計なことして」
「君は気を利かせたつもりだったんだろう? 別に謝ることではない。が、私のことに関しては、ソード教官を頼らないでもらえると有り難い。あの教官は厳しいので、結構体罰を食らうのだ。私だから軽くで済んでいるので、他の者に同じ力でやったら砕けると思うぞ?」
「え?」
合いの手が「え?」の彼は、最後も「え?」で終わった。
翌日。
どうやらボスの少年は訴えたらしいが、私のところには何も来なかった。
証拠がない、傷もない、他の少年たちは口をそろえて何も無かった、と言い張ったらしい。
つまらないなー。
ここで、
「……つまらないな。お前、もっと頑張って訴えなかったのか? 全然楽しめないじゃないか。ここは、私がお前に
ボスに言ったら、一緒にいた少年たちがすごい勢いで首を振った。
「「なにもありませんでした」」
ってさ……。
ちなみに、こやつ等は私を『インドラ様』と呼ぶようになり、出会うと騎士の礼をしてくるようになった。全く望んでない。
むしろなめてかかって挑んできてほしい。
「
ボスに食って掛かられる。
「何、今までお前たちがしてきたことに比べれば頰を撫でる程度のことだ。――お前だって今まで平民にやってきたことを、悪いことだなんて思ったこともないだろう? 私はちゃあんと治療までして解放してやったんだから、お前がやってきた所業よりも随分優しい扱いだと思うぞ?」
ニコリと笑って伝えると、おびえた顔で震えた。
「そうおびえるな。心折れてないのはお前だけだ。なかなか根性があると認めてやる。だから、私をもっと楽しませろ」
「……もう嫌だ! お前には近付くもんか!」
って子供みたいに叫んで逃げてしまった。
……つまらないなー。
遊んでいたら、ソードに叱られた。
「お前? とっとと目的と真実を暴きたい俺の気持ちを、わかってくれないのか?」
グリグリされる。
「わかってる。でも、まだ数日じゃないか。私もリョークも、ちゃんと探ってるぞ? 学園及び周辺の地図は完璧だ。怪しい箇所は何ヶ所かあるが、怪しい儀式などをやっている節はない」
全くない。これっぽっちもない。つまらない。
――だから、面白くするのだ!
「まぁ、向こうも私たちが来て動きづらいのかもしれないな。その間に、私がこの学園最強の者として君臨しよう。[鈴蘭]最強はこの私だ! ……いたい!」
決意の意思表示したら拳固が来た。なぜだ。
「お前って、ホンット、どんなところでも楽しめて羨ましい」
ソードがこれっぽっちも羨ましいと思ってない顔をしながら羨ましがったぞ。
頭を撫でつつ逆に尋ねた。
「お前は大丈夫か? 私よりもお前の方が心配だ。お前もガツンとやればいいのに、大人しくしてると貴族をつけ上がらせるぞ? 『たかが貴族』をのさばらせるな。お前の方があらゆる点で優れているんだから」
「…………」
抱き寄せられて撫で繰り回された。
「俺、学院に通ってたとき、お前と一緒だったら楽しかっただろうなあ」
学院に通ってたんだ?
……あ、前に言ってた王弟がどーのこーのか。
「お前が生徒なら、私と最強の座を争っていたな!」
そう言ったら『一緒にしないで』みたいな顔をして言い放った。
「いや、俺、そんなん興味ないから」
なんだとぅ?
「男なら、誰しもが最強の座を求めるものだろう!」
「決めつけないで。あと、忘れてるようだけど、君、女の子」
むぅ~。ソードこそ私が女の子なの忘れるくせにぃ!
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