第117話 王城参上〈ソード視点〉
〈ソード〉
王が用があるっぽいので、俺だけで向かった。
陰険シャドの野郎も、もう一度は来なかった。
が、ご丁寧に手紙書いて送ってきた。
めちゃくちゃ遠回しに書いてあるが、つまりは『敵対する気がないなら王城に顔を出せ、敵対するなら、どんな手を使ってでも潰す、インドラには絶対言うな』だとよ。
やっぱ、俺はどうにかなってもインドラはどうにもなんねーってわかったのか。
しょーがねぇ、行くか。
表向きは、ダンジョン踏破の報告と、一部を献上しろ、ってことだ。
まぁ、それは分かってたので、たぶん献上することになるであろう宝石類を、宝石箱付で献上した。
貴族からは「少ない」だの、「他にもあるはずだ」だの、お前等は何も貢献してねーのによくもまぁずうずうしく言えるよな、ってことをネチネチ言われたが、それも想定内だ。
どれだけ渡そうとも、満足するわけがない。
全部の報酬を差し出そうとも、「これだけしか取って来れないなんて、だから冒険者はクズの平民がなるものだ」って言うに決まっている。
なら、貴族の一つでも潰して、その宝飾類を全部奪ってきてやろうか、と、考えるのは明らかにインドラの影響だよな。
アイツ、絶対言いそう。
つーかやりそう。
王が、手を挙げた。
貴族が静まる。
……即位したてはなめられてたようだが、陰険ドS野郎の手腕と、自身の武力で全部陥れ潰しねじ伏せ黙らせた。
なので、いくら現王に不満があろうとも、表面上は出さない。
「献上品はありがたく受け取るとしよう。ダンジョン踏破、大義であった。皆は、これで退席しろ」
ざわついたが
「王の命だ。皆、退室を。騎士団長、退出の先導を行え」
陰険ドS野郎が指示を出した。
「はっ!」
騎士団長が指示し、退室していく。
悪意の波動を浴びる。
成り上がり者、って思われてるね。
なんなら俺を殺して財宝奪ってやりたいとも思われてるね。
……あー、早く帰って酒が飲みたい。
「英雄【迅雷白牙】よ、もう少し話を聞かせてくれ。……シャド、個室を設けよ」
「…………かしこまりました」
うわ、陰険ドS野郎、すっげー、嫌そう。
陰険ドS野郎も、インドラとの舌戦で敗れて、俺を王に近づけたくねーだろうな。
――元々、昔ッから俺を警戒してた。
つーか、やつが警戒してないのは王のみだけどよ。
でもって、インドラとの対決で、俺を敵と認識したね。
思わずため息が出た。
王がチラ、と俺を見た後、陰険ドS野郎を見た。
「シャド、言う事があっただろう?」
「…………ですが」
「英雄を敵に回して、何の得がある。
そもそもが、私が今生きてこの地位にいるのは、どうしてだか忘れたのか」
「…………はい。英雄【迅雷白牙】様、先日は大変な非礼をいたしまして、お詫びの言葉もございません。お怒りはご尤もでしょうが、どうぞ、曲げてご寛恕をお願い申し上げます」
うわ、すっげー嫌味に言ってきた。
もう一度、ため息。
「いえ、こちらも相棒が失礼いたしました。相棒は……そっとしておいてください。仕掛けなければ、何もしません。あえてドラゴンを呼び寄せるような真似をなさらぬよう、こちらからもお願い申し上げます」
……ホント、勘弁してよ。
アイツは、陰険ドS野郎みたいなやつを甚振るの、超好きそうだから。
混ぜるな危険。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます