第116話 屋台を開こう!
お使いの人が、さらに首元を緩めて汗を拭いた。
「…………この上なく非常識な方だと理解出来ました」
「わかってくれて何より。だから、王城無理だから。妥協はソッチでしてくれ。ドラゴンよか凶悪な魔物飼ってるようなモンだから。手懐けようなんざ、無理。考えただけで滅ぼされるからな?」
「……主君にお伝えいたします」
そんな会話をソードとして、お使いの人は去ってった。
アイアンクローされた頭をなでながら
「お前、あのお使いの人と知人なのか?」
聞いたら、ちょっと黙った。
「…………まーな」
んん? 歯切れが悪いな。
「言いたくないのか?」
「そうでもない、けど……。……ま、お前なら内緒にしてくれと言えば内緒にしてくれるか」
秘密の話?
「……現王は、ドラゴン来襲の後即位した。先王が亡くなったんだ。魔族にやられてな。当時、王弟だった王は、俺と一緒にドラゴンと戦ってたので、結果無事だった」
へぇ。随分と勇気がある、というか、武寄りの王なんだな。
「……一風変わった王弟で、平民のフリをして抜け出してたんだ。で、たまたま俺が危ないところを助けて知り合った」
「それが王女だったら麗しい話になるのだが」
「いいんだよ! ――王弟だと知ったのは、俺が魔術を習いたがってるのを知って、学院に特待生で入れてくれたことで、そこにいたやつが【王弟殿下】と呼ばれていたことで、知った。俺に知られるリスクより、恩を返すために学院に特待生で入れてくれる方を採った、義理堅い人間だ」
なるほど。
実績があるから、ソードは王は良い人って言ったのか。
「そのとき、いつも王の側についていたのが、さっきのやつだ。王を崇拝してる上、陰険なドSだ。お前が王城を滅ぼすとか言い出したから、やつが何しでかすか気が気じゃなかったぜ」
「安心しろ、やつが何をしでかそうとも私とお前が揺らぐことなど一つもない」
「知ってる。だけど、あんまり争わないでね?」
むぅ。
ソードの頼みなら、なるべく聞くけどー。
「あまり無理を言うな。私の優先順位はお前とリョーク、あと、次点で屋敷の住人とベン君一行だ。お前とリョークは全力で救うが、あとは余力があれば、くらいになる。だから、お前が縛られると、私の身動きが取りづらいのだ」
ソードが私を抱きしめた。
「…………わかった。俺だって、お前が一番だよ。だから、無理を言うつもりはない」
急に身体を離す。
「……でもさー、お前、興奮するとちょっと怖いんだよ。『正気に戻れ!』って言いたくなるくらい。なんなの? なんで急にスイッチ入るの?」
…………。
うん、ちょっと自覚あるよ?
「……気をつける……」
でも、たぶん、無理。
結局ソードが呼ばれ、王城に行った。
心配なので、リョーク全員を光学迷彩化させて王城に配置、何かあったら連絡して救出しろと伝えた。
大丈夫かなー。
王城なんて魔窟に行って、ソードが悪意を拾わないなんてことあり得ないけど。
今日は、ご馳走作って、お酒も、しょうがない、少しだけ多めに出そう。
……あ!
良いこと思いついた!
屋台やろう!
どっか屋台を開ける場所を借りてこよう!
飛び出した。
そして、スパイス屋のおねーさんとか、八百屋のおにーさんとか、よく買い物に行くお店の人に相談したら、面白そうだから手伝いたい! って言ってきた。
場所も、肉屋のおにーさんが借りてくれて、他にも、手伝いたいという女の冒険者とか、パン屋のおねーさんとかと、皆で仕込んだ。
「うわー、スパイスって、こうやって使うんだ!」
「この部分、捨ててたよ! 煮込むとおいしくなるんだね!」
とか、新発見! だったらしい。
容器や串が無かったので、外に出て、木を切り倒して即席で器作成。
千個くらい作ったから、足りるだろう、たぶん。
見ていた皆が唖然としてた。
「……やっぱり、Sランク冒険者って、ひと味違う」
とか言われたが、私はAランクだ。
思いつきの雑な屋台だが、ま、いいだろう。
「よーし、出来たぞー!!」
皆、拍手!
よし、あとは御疲れ様なソードが戻ってくるのを待とう。
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