第110話 昔の仲間<ソード視点>

 久しぶりだから話がしたいと言われて、断る理由がなかった。

 いや、前の俺なら断っただろう。

 話すことなどない、と。

 ……だけど、『今』なら話が出来る。


 ………………筈だ。


 でもやっぱ、インドラと一緒がいいなぁ。

 アイツって、煽りスキルが半端ないけど、悪意を聞き流して逆手に取って相手にダメージ与えられるからさー。

 俺って、ちょっとの悪意でも敏感に反応しちゃうから、卑屈になっちゃうんだよね。

 まぁ、でも、確かに俺は成功した人間と言われているし、『今』は、成功している。

 妬まれてもしょうがない、『今』はな。

 だって、リョーク持ってるし、シャールも持ってるし、ブロンコも持ってるし。

 ついでに、格好いい時計も持ってるし、すげー機能の眼鏡も持ってるし。

 さらに、なんでも斬れちゃう剣も、なんでも貫通しちゃう遠距離武器まで持ってるし。

 ついでに、オークションで金貨積まないと買えない酒まで持ってるし。

 妬まれても仕方が無いな、うん。




 インドラに作ってもらった服を着て出かけた。

 虫が大好きなアイツは、虫の糸から織った布を俺が買ってやったら喜び、いろんなものを作ってた。

 俺にはシャツを作ってくれた。

 ……確かに、肌触りがいい。

 他にも、細身の格好いいジャケットやパンツやらを作った。

 ウエストが紐じゃなくてボタンで、貴族の服みたいだけど、貴族の服よか動きやすい。

 ポケットがあちこちについてて、ちょっとしたものなら入るから、手ぶらでもいけそうだ。

 ——ホント、虫に拘らなきゃ、こーゆー格好いいのが作れるのにな。

 なんで虫に拘るかね?

 ホンットーにブロンコを飛蝗にしてくれなくて良かったと思うぜ?







 って考えながら歩いてたら待ち合わせ場所到着。

 カレンもちょうど来たようだった。


 ………………。

 老けたよなー。


 いや、俺もそうだけど。

 インドラのピチピチのきめ細やかなお肌を見慣れてると、こう…………あ、ブーメランだ。

 帰ったら、インドラ直伝のパックとやらを念入りにやろう。


 老けたけど、背が高くなり、インドラもこれくらいは成長したいであろう、胸も多少育った、ようだ。

 ………………。

 なんだろ? インドラの影響かな?

 おっさん臭い発想が浮かんできたので、思考を止めた。

「ちょうどか?」

「えぇ。

 ……相変わらず、時間に正確ね」


 ん?

 昔からだっけかな?

 俺、時計持ってなかったから、時間に正確かどうかはわからなかったけどな?







 カレンおすすめのパブに行った。

 確かに、暗いし、恋人同士が多いのか俺に注意を向けられずに済んだので有難い。

 エールを注文した。

 ……あー、いっそ「俺の驕りだ」とか言ってエールを出したい。

 けど、前にソレやったら、「借金奴隷になった奴の金で酒を奢った」とか言われたし。

 だから、もうやらない。

 だけど、これくらいは、やる。

 エールが来たので、カレンがグラスを取ろうとするのを止め、小声で詠唱。

「……え?」

 グラスが凍り、エールが冷える。

「冷やすと美味いんだ。

 最近ハマっててな」

 カレンが戸惑った後、笑った。

「攻撃魔術を、こんなふうに使うなんて、貴男らしい」

って言われたけど、ソレ、俺の発想じゃないから。

 俺、そんな非常識な男じゃないから。

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