第98話 火山地帯に棲む魔物と言えば
ボスはデッカい飛蝗と蛙だった。
サクッと殺して次の階へ。
移動して、驚いた。
「うわー!」
マグマの階だった。
「…………オイ。こりゃ、どーする?」
「うーん、簡単なのはシャールに乗って、周りを魔術で冷やせばまるで問題はないが、つまらないよな」
「…………。つまらなねーかどうかって問題なのか?」
問題だ。
楽しむために来たのに、チート攻略とかダメ、絶対。
「わかった、お前がまた魔素が尽きたら困るから、私が魔術をかけてやる」
冷却魔術をかけた。
「あ、涼しくなった」
うーむ、これはあの狩りゲーの、火山地帯だよね?
あの、大嫌いな、ニョロニョロっと飛び出すアレがいそうだよな。
「地形ダメージはアリにしようか。マグマを踏んだらダメージだ」
「お前って、ホンットーに楽しむことに生きがいを感じてるよな。このダンジョンを無効化出来る力があるのに、楽しむためだけに、わざわざダメージを受けるようにするのかよ?」
もちろんですとも。
「お前の予想だと、どんな敵が出るんだ?」
「マグマを泳ぐ、魚というか、竜かな。割れ目から顔を出す、もしくは飛び出して攻撃してくる、と面白い」
「了解。……まぁ、防護魔術をかけつつ攻撃魔術をかける羽目にならねーなら、なんとかなるか」
ソードがマジックバッグから剣を取り出した。
「こっちの方が効くだろ。持ってると冷たいし」
ニョッと首を突き出して見た。
「氷の剣か?」
「そうだ。……お前は剣に興味がなさそうだし、つーかその木剣一本でなんでもこなすからな、俺や他の連中みたく高い剣を買ったり打ってもらってそろえる必要も無いから言ってなかったけどよ。俺はこうやって、敵に合わせた剣をいくつか持ってて、使い分けてる」
「もちろんそれは知ってるぞ! 別世界でもあるお作法だ!」
……だけど、すごく強いダメージを与える剣がある場合は、それ一本でまかなえちゃうのも確かだけど。
思わず狩りゲーの音楽を歌い出したら、笑われた。
「お前って、こんな状況でも歌えるのか」
「とりあえず、マグマは踏むな。熱い! って思うくらいのダメージを受けるようにしてある。飛んできたマグマに当たってもダメだぞ?」
「うん。フツー、死んじゃうよね? ソレ」
そうかもしれないが、狩りゲーは、死ぬまでいかないからな。
「きっと大型の魔物もウヨウヨいる……といいな。ドロップ品は見当もつかないが、楽しみだ。じゃあ、行くか」
「はいよ」
飛び出した。
そういえば、定番なのを忘れてた。
と思ったのが、出てきた魔物を見たとき。
火の精霊といえば!
サラマンダー!
ヒトカゲ!
燃え盛るトッケーを見つけて、テンションが上がった。
「おおお! お前の存在を失念していたぞ!」
「俺はコイツのことを言ってたのかと思ってた」
ってつぶやいて、一閃。
粒子になるトッケー。
「のおおぉぉぉお!」
トッケーが!
かわいいトッケーがぁあ!
「お前、魔物愛でるの止めろ。どーせうじゃうじゃ湧いてくるから」
確かにそうだけどさぁ!
仕方ない、愛でてる場合じゃ無いくらい湧いて出たので広範囲にデッカい雹を降らせた。
「うーわ、お前の氷魔術、すげーな」
キョトンとソードを見た。
「いや? 今のは氷魔術じゃない。こちらではないか? 暑い日に、急に空が曇ったかと思ったら、氷が降ってくることが。
アレは……」
「あー、わかった。大丈夫だ、お前が博識で天才なのはわかってる」
皆まで言わせてもらえなかった。
ぶーぶー。
ヒトカゲは雑魚っぽい。
サラマンダーか……。
そんな題名の歌があったような。
思い出して歌いながら狩ってたら、呆れられた。
「やはり、階を降りると凶悪になってくるな」
マップも広大で、私たちの快足でも結構時間がかかる。
敵も、フロアボスみたいなデッカいのが出てくる。
ウィスプ……というかボムだろアレ!
絶対爆発するヤツ!
ってのが出てきて、真空魔術でかき消した。
「今のって、真空魔術だっけか? アレって生き物でもないのになんで消えた?」
「火は、空気が無いと燃えないからだな」
ソードが唖然とする。
「……火炎魔術に水魔術や氷魔術じゃなくて、真空魔術使うのか」
「水は、意外と二次被害が出るぞ? 火に熱せられて水蒸気化した水の温度は百度を超える。つまり、簡単に火傷するほどの熱が、空気になって肺や皮膚を焼く。結果、死ぬ」
「げ」
「氷はなぁ……。燃えにくい固形物をぶつけるというのなら、砂でも岩でもいいと思うけどな、でも、燃やしている芯に当てないと消えないぞ? この世界の魔術の法則は違うのかもしれないが、すぐさま消火したいなら、真空にするのが一番早い。
何をしようとも、とにかく、燃やすための必要成分、空気を遮断することが火を消すのに重要な点だ」
ソードがボーッと私を見てる。
「……お前って、やっぱ、すげーな。あんなにうまい酒を造れるワケだ。料理人たちが言ってた〝英知〟ってのは、このことかよ」
唐突に言い出した。
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