第93話 モンスを愛でてる暇が無いよ

「十階降りる毎にボスの部屋がある。浅い階だと順番待ちがあるかもだ」

 早速無線使ってきたソード。

「それもお約束だな。仕方ないから十階で一旦止まろう」

 人を避け、天井や壁を走りつつ答えた。

 魔物を倒す気は無い。

 たぶん向こうが逃げ惑うだろうし。


 あっと言う間に十階。

「五分くらいか? もうちょっと飛ばしても良かったな」

「まーな。この階は問題ないからな」

 順番待ちはなかったが、中に人がいるらしく開かなかった。

「この調子で行ったら今日中にクリアしてしまいそうだが……。五十階以降はお前も初めてだろうから、ゆっくり行ってみようか」

「まぁな。……三十階くらいまではこの調子でいけるが、四十階は確か、ジャングルの昆虫ゾーンでそう簡単にはいかなかった気がするぜ? 五十階はアンデッドだったっけな。とにかく、臭いし、うじゃうじゃ湧いてくるし、面倒だったな。

 試しに六十階層は降りたが、マップ殺しの、だだっ広い平原だ。しかも、草の高さがあるんで見通しも悪い。単独じゃ効率悪いんで、引き返した」

 ほぅほぅ。

 それは面白そう。

「そういえば思い出したのだが、ダンジョンで採取、もしくは狩猟した方がいいものがあるか?」

 狩りゲーの基本、それはそこでしか取れないブツを得ることにあった。

「四十階までは俺たちじゃなくても到達してるパーティがいるから大丈夫だろ。五十階は……不人気だからなぁ、光魔術使えるやつ自体が少ないし、数が多いから魔力枯渇しやすいんだよ。それに、アンデッドから採取出来るものを欲しがるやつは稀」

 通り抜けても良さそうだな。

「じゃあ、六十階層から狩りゲーするか。草原の定番は、飛蝗と蛙か?」

 蛙か……。

 確か、食べられるよな?

 飛蝗は食べたくない。

 珍味とか言われても無理。

「さてな。……お、開いたぞ?」

 中に入って……熊か?

 ガオー!

 みたいにされた。

 何コレちょっとかわいい。

 って思ってたら、ソードがサクッと殺した。

「じゃ、行くか」

 さっさと宝箱を開けて、促してきたし。

「…………。私を冷静だとか言うけどな? お前だって、がおー! とかかわいくポーズしてきたラブリーな熊を一撃で殺してるじゃないか」

「魔物を『ラブリー!』なんて思わないから。ホラ行こう、走れ」

 なんでだよー!

 かわいかったじゃんかー!


          *


 三十階まで順調に進んだ。

 ボス部屋の待ち時間の方が長いよ。

 三十階のボス部屋から引き返すパーティが多い。

「進まない連中が多いな」

 もっというと進まないパーティばかりだな。なぜだ。

「虫も相性とか好き嫌いがあるからな。お前は大好きだろうけどな」

 むむむ。

 そうでもないぞ?

 たまたま作ったのが、虫っぽいだけで!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る