第86話 もうちょっと露店巡り、その後冒険者ギルドへ

 落ち込んでるソードの手をとって繋いで、もうちょっと歩いた。

 そして道々弁解した。

「いや、お前も、年の割に落ち着いているだろう? 別世界じゃ、お前くらいの年齢なんてハニートラップがあったらわかってても引っかかりまくるぞ? 私の裸を見ても動じないし、だから、そういうのを見慣れてる年齢だと思ったのだ。三十超えてたら、女の身体なんて見慣れて何も感じなくなるものだろう?」

「……いや、まぁ、お前の身体で反応するやつはいないと思うけどな?」

 なにおう⁉

 慰めてたのにひどい言い草だ!

 この世界では知らないけどなあ、ロリ体形スキーだっているんだぞ!

 脚派の一部にいるんだ! 微乳派は!

 ソードが、うーん、と唸った後、頭をかいた。

「……確かに、お前は女だし、お前は俺の年齢を父親くらいだと思ってたから一緒に風呂入ったりしてたのか。俺を男だと思ってないっつってたのは、年齢差がありすぎだという意味かよ」

「いや、年齢差は関係ないな。

 お前が私をメスを狙う目で見ないからだな」

「……それだと、大概の男が当てはまる気がするけどよ?」

 うるさいっ‼

「とにかく、アンチエイジングというのは大切だとわかった。男でそんなものやってるやつなんていないと思ってたが、別世界ではひそかに手入れしてるやつの方が多かったんだろう。塗り薬と、食事もそれらしいのに変える。私も油断出来ないしな」

「お前が? いくらなんでも早くないか?」

「何を言ってる。アンチエイジングは早くからやってれば、それだけ効果はあるぞ。私は塗り薬等のお手入れはしてないが、[UV]はカットしているぞ?」

「ハァ?」

「魔術で、有害光線のみ魔素で吸収拡散させてるから、美白の美肌だろう?」

 ソードが口を開けた。

「お前……なんで日焼けしねーのか、貴族だからかって思ってたら、そんなことしてたのかよ……!」

 貴族は人間じゃないみたいなこと言ってるよ。

「貴族だって日焼けするぞ、同じ人間なんだから。どれだけ太陽光線を浴びないか、が、一番重要で、その次は、予防とお手入れだな」

「俺にもやって、お願い」

 すがりつかれたし。


 他の露店も見て回り、数軒で買い物した。

 酒の露店もあり、珍しくて見たが……。

「…………うん?」

 凄まじい感じのが売ってたぞ?

 これは……なんかヤバい臭いがするんだが、大丈夫なのか?

 振り返ってソードを見たら、苦笑してた。

「これが普通なんだよ。下手すりゃ苦酸っぱくて呑めたもんじゃねーのもある」

「発酵しすぎて別のものになってるな」

 ……確かに、確かに!

 発酵食品は、身体に良いのだけれど!

 身体に良い菌もあれば、悪い菌もあるからね!

 悪い菌だらけだと、さすがにお腹を壊すよ!


 見て回った後、冒険者ギルドへ。

 なんか、歓待された。

 冒険者ギルドとは思えないほど、腰が低いし。

 ギルドマスターに呼ばれ、今までで一番豪勢な部屋に通された。

 保留案件を見せられ、

「……これは、俺がやるべきじゃねーだろが。これもだ。つーか、なんか書類間違えてねーか? 変なの混ぜてんじゃねーよ!」

 ってヤクザ口調で怒りだしたので、覗き込んだら。

 『何とか伯爵の誕生会出席』とか、『何とか侯爵の領地までの護衛』とか!

 うん、怒るね。


「気に入らない態度をとったら拷問の上惨殺していいなら、私が受けるぞ?」

 って私が言ったら凍りついた。

「はは、は……。面白いことをいう少年だな」

 ギルドマスターが、笑ってるようで笑ってない感じで話した。

「冗談で言うと思うか? ランク見ただろ? この年齢で既にAランク、俺よか早いんだぜ?」

 ギルドマスターの、わざとらしい笑いが止まる。

「〝傲慢〟が服着て歩いてるようなやつだ。負けたことも怪我すらしたこともねぇ、人生をなめきってるガキが、〝たかが貴族〟に頭下げられると思うか? 連中がコイツを『荷物持ち』って見下しなめた態度とるのは解りきってるし、なめた態度とられたコイツがソイツらの皮膚をはいでいく様を、俺は見たくないんでな。護衛やパーティの出席は絶対にお断りだ」

「お前は見なくていいぞ? 大丈夫だ、何をしようとも、綺麗に治るらしいぞ? 回復薬と薬を使った連中から、感謝の手紙とアンケートの回答が送られてきた」

 ニッコリ笑って伝えた。

 胸を張ってたたいてみせる。

「万事、私に任せておけ! クソ生意気な連中も、調教して私の靴の裏をなめるほどにしてやろう! お前に悪意の意思など飛ばそうとも思わないほどにな! ……ぎゃー!」

 アイアンクローがきた!

「お前、これでも俺に『コレ』回すか? なら、コイツとお前の望み通りの結果にしてやるけどよ?」

 ギルドマスター、慌てて書類を引っ込めた。


 つまんないなー。

 確かに貴族のパーティだの護衛だのは凄まじいほどの非道な扱いをしてきそうだけど、それだけにワクワク感がある。

 いわゆる『テンプレの展開』だからな!

 が、どうも私は興奮するとおしゃべりになるらしく、思ってても言ってはいけないことをベラベラしゃべり、結果、ソードにアイアンクローされる以外何事も起きないって事態が今のテンプレの展開だ。

 黙っていようといつも心に誓うのになー。

 ぶーぶー言いながら足をブラブラさせてたらソードから蹴られた。


(注:『荷物持ち』は職業です。旅客業のポーターではなく、冒険者の荷物を持ってついていく仕事で、借金奴隷がよくなります。

 ギルドが中堅以上の冒険者にあっ旋します。冒険者は荷物持ちの命の保障もしないといけません。死なせると罰金且つその借金奴隷の借金を背負うことになります。

 フリーもいなくはないですが、様々な理由で戦えないけれど足腰は丈夫だという冒険者が荷物持ちをやっていたり、ベテラン冒険者が新米冒険者を連れていくときに荷物持ちをやらせることが多く、そのために荷物持ちは低く見られます。)

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