(12)感想続き
☆感想:某王国関係者の場合☆
「――終わったか。結果からすればあっという間だったが……どうだった? 元帥」
「そうですな。あの時、敵対することにならなくてよかったと本気で思いますな」
「ほう。そなたにそこまで言わせるのか。お前ならあの程度の防御は弾き飛ばせると思えたがな」
「それは質の違いですな。ギルド総長は速さ。私は重さ。どちらが優れているということはありません。それに、あれだけのことをやってのける魔法使いであれば、その質の違いにも対応した防御をして見せるでしょう」
「宮廷魔法師長、そうなのか?」
「そうでしょうな。あれほど器用な真似をされた方が、そのようなことをできないと考える方が愚かかと」
「ふむ、なるほどな。それにしても、器用か。あれだけの魔法を操るのは確かに器用といえるが、そこまで難しいものか?」
「少なくとも私にはできませんな。あと、私が知る限りでは他にできそうな者も思いつきませぬ」
「……そなたができないと言い切るほどか」
「それほどまでに魔力の操作に長けておるということですな。残念ながら今の魔法の世界はそこまで魔力操作を重視しておりませんで」
「それは何故だ? 有用であることは、今はっきりと分かっただろう?」
「有用であることと実用であることは、現実的には両立できないのですよ。陛下」
「どういうことだ?」
「あの方が以前教えてくださった集団魔法でも同じような問題に当たったのではありませんか? 要は『使える』魔法使いにするまでに時間がかかり過ぎるというわけです」
「…………なるほど。魔力操作とやらを教えるよりも、より高度な魔法を教える方に注力したほうが『使える』魔法使いになるのが早い、と」
「国家単位で考えるとそうなります。個人で教えるとなるとまた別になりますが」
「痛し痒しだな。……うん? となるとそなたが個人で教えている者たちは、同じことができると?」
「残念ながら。そもそも私にもできないことを、弟子たちに教えようがありませぬ。想像で教えることはできますが、研究段階ですらない理論を実践で学びたいと思う者がいると思われますか?」
「そういわれると確かに難しいな。――ふむ。となると、今こうして目の前で魔力操作の有用性が示されたということは、それを実践してくる者がいるということか?」
「さて。そこは私にはわかりかねますな」
「おや。そなたのことならば、できると即答してくると思ったのだが?」
「あの方は確かに魔力操作の有用性を示されましたが、あそこまでになるまでに一体全体どれほどの修練を積めばいいのか、想像すらできませぬ」
「ここでも時間が問題になってくるのか」
「しかも、あの者から直接教わるならともかく、そうでない場合ははじめは手探りになるはず。となればさらに時間がかかります故」
「なるほど。不確かすぎる情報をもとにそれだけのマイナスの推測ができれば、躊躇する者がほとんどだというわけか」
「そういうことですな。勿論、全くのゼロというわけではないでしょうが、果たしてどれほどの者が使えるまでに育つかはわかりかねます」
「しかも今以上に魔法を使えるようになるのに時間がかかると分かっていると」
「ですな」
「…………だが集団魔法の時と同じように、国としては放置するわけにはいかぬ」
「その通りです。こうして有用性が表になった以上、少なくとも研究レベルでの考察は必要になりますな」
「うむ。……いっそのこと小さくても構わないので、新たに部署を作ってしまうか。いや、今あるのを規模を大きくすればよいか?」
「さて。その辺は今結論を出さずに、文官どもとも話をした方がよろしいかと」
「確かにそうだが……やつらが絡むと時間がかかり過ぎるからな」
「ですが、必要なことも多いですから」
「仕方あるまい。部署については文官に一時相談するとして、人員の準備は進めておくように」
「畏まりました。適当な人数を見積もっておきます」
「頼む」
「――ところで話は変わるが、騎士団長」
「はっ」
「そなたでもあの魔法は防げないのか?」
「さて。私はギルド総長よりも固いという自負はしておりますが、それでも容易に防げるとは断言できかねます」
「そうなるか。宮廷魔法師長も同意見か?」
「そうですな。それから陛下は大事なことを忘れているように思われます」
「なんのことだ?」
「あの者が『賢者の石』を作れるほどの腕前を持った錬金術師ということですな」
「……まさか、国宝のあの鎧を破れるほどのアイテムを作れると?」
「城にあるはずの結界の網を縫って、たやすく転移魔法を使ってくる相手ですぞ? それくらいのことができて当然と考えた方がよろしいのでは?」
「……確かに、その通りだな。――そう考えると、あの時の決断は英断だったと自負できると思うがどう思う?」
「この結果を見てそれに反論できる者がいれば、是非とも連れてきてほしいものですな」
「ハッハッ、確かに。私も是非とも会ってみたいものだ。周りにいる各国関係者の顔色を見れば、さらにそう思えてくる」
「陛下、人が悪すぎます。……と言いたいところですが、私も同感ですな」
「騎士団長もそう思うか?」
「そう聞いてくる時点で、陛下も答えが分かっているのではありませんか?」
「確かにその通りだな。ハッハッハ」
♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦
☆感想:『隠者の弟子』の場合☆
「よしよし。予定通りに勝てたな」
「さすが師匠ね」
「忍、灯。もう少し感想があってもいいと思うのだけれど?」
「そういわれましても……では、アリシア様。どうぞ」
「え、私? ……さすが伸広ね」
「似たようなものじゃないか!」
「仕方ないじゃない。最初から事細かくこうなるだろうって教えてもらったとおりになったんだから。一瞬たりともドキドキすることもなかったわ」
「直接会ったこともないはずなのに、どうしてそこまで予想できるのでしょうね?」
「詩織。世の中には力押しという便利な言葉があるのよ」
「まさしく今の戦い方は力押しだったな」
「魔力操作で多くの魔法を操って色々な属性をつけたりと、確かに見た目的には派手に見えるけれど確かにあれは力押しね」
「灯でもそう思うのか」
「それはね。だって、師匠だったら戦いを『魅せる』にしても、もっと上手くやる選択は合ったと思うわ」
「灯のいう通りね。どちらかといえば今回は、見せる戦いよりも学ばせる戦いになっていたと思うわ」
「アリシア様の言う通りだと思います」
「戦いの内容はともかくとして、これで目的は達したのだと考えていいのか?」
「そうね。ほぼ目論見通りといってもいいでしょうね。あとは、冒険者ギルドがきちんとこちらの要望通りに公式発表を出してくれるかだけれど、この様子を見る限りは大丈夫でしょうね」
「反抗するのもばかばかしいくらいの圧倒的な差だったからな」
「そうね。どこまで噂が誇張されるかは問題だけれど……何だかんだ全部できてしまいそうな範囲に収まりそうだと思わない?」
「そもそも一般的に知られている魔法に限りがありますからね」
「師匠はそれを超えた魔法を色々覚えていると」
「詩織、色々では済まないと思わない?」
「まあまあ。伸広の覚えている魔法談義は後でゆっくりとしましょう。それよりも今は、勝者をきちんと出迎えましょう?」
「その通りですね、アリシア様!」
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