15
エリザベートが何度も頷きながら、にっこりと笑う。
「そうすれば、レティーツィアさまが求めているものを知れるのではと思っただけですから、実際には、レティーツィアさまのお立場などを考慮して、どこまでならば譲歩できるかという調整が必要になるとは思いますが……」
そう言いながら、ドアの前に控えているケイトに視線を向ける。
ケイトは少し考えると、「そうですね」と頷いた。
「従者も護衛もなしでというのは、たしかに承服いたしかねます。しかし、従者ではなく先輩後輩の間柄として、イザークさまに同行をお願いするなどすれば、ご希望に近い形で街を巡ることも可能になるかと思いますが」
「……! イザークに?」
「ええ。イザークさまは、リヒト殿下の
「え? 底意地の……悪さ? たしかに、あの男は性格が悪いけれど……。でもそれが戦闘に関係あるの?」
「勝つためなら、どんな卑怯な手も平気でお使いになるそうで」
「ああ……なるほど……」
――そうだった。イザークは超絶腹黒の好青年詐欺男という設定だった。
(そうか。たしかに、かなり腕が立つという設定もあった。ゲームにそんなシーンがないから忘れがちだけど……)
考え込むレティーツィアに、ケイトがさらに続ける。
「休日とはいえイザークさまをお借りするとなれば、当然リヒト殿下に無断でというわけにはまいりません。ですから、むしろお忍びでという感覚ではなく、あらかじめ目的をしっかりとお話しして許可をいただきましょう。そうすれば、少なくとも何かあった際に、リヒト殿下がまったく何も知らなかったという事態は避けられます」
「……! あらかじめ、巻き込んでしまうということ?」
「ええ。何かあって、はじめてご報告するよりはそのほうがよろしいかと」
――考えもしないことだった。だが、推しの色の文具や日用品を揃えたいなどという私的な理由で、そんなことをしてもいいのだろうか?
さらに悩むレティーツィアを――さすがは侍女。主人の『行きたい』という気持ちを汲んで、後押ししてくれる。
「目で見て、耳で聞いて、肌で感じる。市場調査において、それ以上のことはないでしょう。そしてそれは、レティーツィアさまが計画なさっているほかの案件にも、必ず役に立ちます。殿下にお願いしても、よろしいと思いますよ」
「――!」
その言葉に、目を見開く。
レティーツィアは弾かれたように顔を上げ、ケイトをまじまじと見つめた。
「そうか……そうよね……そのとおりだわ……」
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