第114話 物語 転
俺と雪姫は週のうち、半分くらいは一緒にいることが多い。
雪姫のアジトだったり、チームトルネラの拠点だったり、草原でラビットを狩ったりだ。
雪姫がチームトルネラの拠点に泊まるときは2階の客間だ。
パサーと俺が荷物を運ばされて、これも雪姫が不自由なく泊まれるように改装されてしまった。
おかげでサラヤの事務作業部屋を3階に作ることとなってしまったが。
「改装費用は私が出した。文句は言わせない」
「はいはい。御大尽には敵いませんな」
「むう。嫌味な物言い。じゃあ、シャワー室のボイラーを取り上げる」
「ごめん。悪かった。その節は大変お世話になりまして助かってますって」
俺にとって良かったのは、マテリアル燃焼器を改造したボイラーを取り付けることで、シャワーから温水が出るようになったことだ。
稼働させるには少しばかりマテリアルが必要だが、やはり一日の最後は温かいシャワーで疲れを流したいと思う気持ちは止められない。
少しずつ改善していく周りの環境。
雪姫との出会いが、俺や皆の運命を良い方向へ進ませてくれたように思う。
こういったような様々なイベントを重ねて、雪姫との仲を深めていく。
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「ヒロが従属するならジョブカテゴリーのを目指すべき。人型で屋内にも入れられるから護衛にもピッタリ」
「ええと、確か、強い順だと、ストロングタイプ、ベテランタイプ、ノービスタイプだっけ?」
「そう。使いやすいのは騎士系。ストロングタイプのパラディン、ベテランタイプのナイト、ノービスタイプのエスクワイア。敵に突っ込ませるなら闘士系。バーサーカー、グラディエーター、ウォーリア。遠距離攻撃なら魔術師系、メイガス、ウィザード、メイジ」
「その中なら確かに騎士系はカッコ良さそうだ。特にストロングタイプのパラディンには心惹かれるものがあるな」
「ストロングタイプは偽物が多い。狩人が持っているって自慢しているのは大抵、ベテランタイプだったり、ノービスタイプだったりする。酷いものだと、ヒューマノイドタイプを見せかけだけ改造したりすることもある」
「それどうやって見抜けるんだよ。あ、あのスキルを見ることのできる板、Mスキャナーってので分かるのか?」
「うーん。残念ながらその辺りも改竄しようと思えばできる。だから見分けるには、勉強して機械種の知識を溜めないといけない。ヒロは機械種への知識不足が致命的。だからもっと勉強すべき。大丈夫、私が教えるから」
「いや、それは分かっているけど。雪姫の目的は俺の授業料だろ」
「チョコ一つで1日付きっ切り。なんてリーズナブル」
くそっ、コイツが『この世にハニードロップより美味しい物は存在しない』という説に対抗して、チョコをあげたのが失敗だった。
雪姫は食い意地が張っている。
特に甘いものが大好きで、フルーツ系のブロックや、スイーツ系のドロップをおやつの時間や食後のデザートで頬張っているところを見ることが多い。
甘い物を堪能している雪姫の顔は、その時だけ年相応の幼さを見せる。
その顔が見たくて、つい甘い物をあげてしまいたくなる程だ。
ちなみに最近は、チームトルネラの子供達にシュガードロップをあげて、一緒に味わうのが雪姫のマイブームらしい。
みんなで一緒に美味しい物を食べるのが一番美味しい食べ方なのだそうだ。
贅沢品に慣れさせたくないから、高級品を与えるのは止めてくれとサラヤに頼まれているので、あげるのはシュガードロップだけだ。
それでも、子供達に囲われてシュガードロップを一緒に味わっている雪姫は、ハニーや、メープルを食べている時以上に嬉しそうな目をしている。
初めは雪姫のことを怖がっていた子供達も、今ではすっかり仲良しになって一緒に遊んでいる姿を見るようになった。
雪姫と一緒に過ごしていると、意外な一面をどんどん発見していく。
次は雪姫のどんな一面を知ることができるのだろう。
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「むう。勝てない。ヒロ、こんどは両手を封じるハンデを付けること」
「アホ!すでに両足を縛っているだろうが。これ以上ハンデをあげられるか!」
「でも、うちのパサーが負け続けるのは嫌。光学迷彩を使うと、ヒロが手加減できなくて危ないし」
モラ、ルフでは俺の相手にならないから、パサーが模擬戦に付き合ってくれている。しかし、俺の方が優勢なのが気に入らないらしい。
結局、俺の圧勝は変わらない。その日一日雪姫の機嫌取りに終始することとなった。
雪姫は自分が従属させている機械種が大好きだ。
そして、自分の機械種を褒めてくれる人も。
俺を気に入ってくれたのもそれが切っ掛けだったらしいが、ちょっとどうかと思う。
聞くと、自分の容姿を褒めるものは多いが、今までモラの容姿を褒めた者はいなかった様子。
ちなみにモラとの関係は微妙。
なぜかいつもツッケンドンな対応をされてしまう。
雪姫が言うに、自分の主人を取られたように感じてヤキモチを焼いているだけとのことだ。
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「ヒロ、今日から私もここに住む。」
「ええ!それはちょっと。サラヤに確認してみないと」
「家賃は払うからって言っておいて。月1万Mくらい」
「それってチームトルネラの月収より多いんだけど」
「その代わり食事はライスブロックやブレッドブロックを用意してほしい。付け合わせはビーフ、ポーク、チキンの3種のローテーション。もちろん、皆にも振る舞うから」
「・・・それは俺にもメリットがあるな」
無理でした。
いきなり食生活のレベルをあげたら、雪姫が居なくなった後が大変だからとのことだ。
雪姫が住むのは構わないが、食事は別室で取ることとなる。
「むう。皆もライスブロックを食べたらいいのに・・・ヒロも」
「あはは、俺もそうしたいけど、みんなの見る目が怖くなるのは嫌だからね」
「ヒロは人の目を気にし過ぎ。力のある者はもっと傲慢でもいいと思う」
「そうやって力のある者は恨みを買っていって、それが原因で命を落とすことも多いんだよ」
「むう。どうやらヒロに贅沢をさせるには、チームトルネラが豊かにならないと難しいみたい」
それから雪姫は街の有力者と会うことが多くなった。
バーナー商会とも色々打ち合わせをしている様子。
雪姫に聞くと、『楽しみにしておいて』とのことだけど。
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「こら!雪姫。てめえ、俺がシャワー浴びてる時にパサーをけしかけやがったな!」
「あれ、ヒロが勝った?なぜ?服が無いからヒロは強くないはず」
「だから俺が強いのは服のせいじゃないって言ってるだろ」
「でも、みんな、ヒロの強さの秘密は、着ている服が発掘品なのかもって」
「だから俺は発掘品なんて持っていない。何度言えば分かるんだよ。こら逃げるな!」
「だって、パサーが負け続けでかわいそうだったから・・・」
「シャワー浴びているときに、豹頭のマッチョに襲われる恐怖がどれほどだと思う?ああ!」
「痛い!頭を掴まないで。次、シャワー室に突撃させるのはモラにするから」
「それもヤメロ。別の意味で俺が死ぬ。今度同じようなことやったら一生チョコあげないから」
「ええ!それは・・・甘み的な意味で私も死ぬ。もうしないから・・・」
ウルウルと口で言いながら俺に縋ってくる雪姫。
どうやら完全に餌付けしてしまったようだ。
でも、こういう態度を取られると俺が弱いんだよな。惚れた弱みという奴か。
少しずつだが、俺の秘密も雪姫に伝えていくようにする。
俺の戦闘力。
発掘品に頼らない、俺自身の素の戦闘力を見せつけてやった。
無限とも言える七宝袋の収納能力。
雪姫と一緒に狩りに行く時には七宝袋を使わないと不便になるので、割と早い目に伝えていた。無限とは言わずにかなりの容量のある空間拡張付き袋としてだが。
発掘品以上の力を持つ宝貝。
これも狩りで何度か使用しているところを見せてやった。
『発掘品を持っていないって言ってたのに!嘘つき!』って言われたけど。
何回説明しても分かってくれないんだよなあ。
雪姫に使わせてみたら、威力が1/10くらいで発動した。
一発撃ったらヘトヘトになってしまうが、それでも雪姫は嬉しそうだった。
特に雪姫は莫邪宝剣がお気に入りだ。『聖遺物』だと言っていたが。
再生剤以上の治癒力を持つ仙丹。
これは万が一、俺が動けないくらいの怪我をした時の為に雪姫に持たせている。
一度雪姫が転んで膝を擦りむいた時に、飲ませて治してあげたら、随分驚かれた。
現在物資の召喚
これについては、俺の七宝袋の中に珍しいものが大量に入っている程度にしか教えていない。一日に出せる量に制限があるとはいえ、無限に近い物資の供給なんてなかなか信じられるものではないし、証明することも難しい。
いずれ雪姫に俺が別の異世界から来たことを話すときに、一緒に説明することになるだろう。
仙術や俺の飲食不要等は伝えるつもりはない。
宝貝や仙丹は発掘品だ、再生剤だとカモフラージュができるが、これらはそれも難しい。
雪姫のことは信用しているが、それとこれとは話が違う。
前にも検証したことがあったが、不必要な情報の流出は防ぐべきだし、俺の全てを伝える必要がない。
恋人同士だって、夫婦だって自分のことを全て打ち明けていることはあるまい。
雪姫だって俺に全部話してくれているわけではないことぐらい俺にも分かる。
お互いが少しずつ秘密を持っていることで、上手くいく関係だってあるはずだ。
今の俺と雪姫の関係は、最も親しい友人関係といったところ。ジュードには悪いが、相棒といった感じが一番近いだろう。
俺的には友人以上、恋人未満といった言葉を使いたいが、それには色っぽい話が全くない。
対外的には大人びて見える雪姫も、内に入れば、その内面は非常に幼いとも言える。そんな雪姫に愛を語っても受け入れてくれるかどうか。
その上、俺自身が今の関係を気に入っており、すでに『現状』となってしまっていることから、ついその関係を『維持』してしまおうという気になっている。
そういった関係から一歩前に進めるようなタイミングがあっても『保留』を選んでしまう有様だ。
この関係から先に進めるのはいつになることやら。
ちなみにチームトルネラではいつ俺達は恋人関係になるのかという賭けが行われ、最も俺の性格を見抜いていたトールが1人勝ちをしていた。
なんか釈然としないぞ。
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「ヒロ、そろそろ聖遺物を売ってほしい。特にあの光の剣」
「駄目。あれは俺の奥の手なの。いくら積まれたって売る気はないよ。それに聖遺物じゃないって何回も言っているだろ」
「ケチ。あれがあればこんな場所に私を追いやった、教会のババアに目に物見せてやれるのに」
「俺も一緒に探してやるから。えっと、教会に覚えがめでたくなる功績だったよな?」
「そう。聖遺物の発見、白鐘の回収、紅石の奪取、守護者クラスの討伐、そして、白き鐘を鳴らす者の情報。ちなみに後になる程難易度が高い」
「・・・白き鐘を鳴らす者か」
「ヒロ、冗談でも『白き鐘を鳴らす者』を僭称したら駄目」
「分かってるよ。もう二度と言わない。約束する」
「もし、約束を破ったらラットまみれの刑」
「え、それ、前に草原で絡んできたチンピラにやったのだろ?ラットの群れを全身を這わせるやつ。マジで止めて。やられた奴は小便チビって気絶していたぞ」
雪姫は直接言わないが、どうやら雪姫には監視の目がついている様子。
雪姫が『鐘守』として相応しい行動を取っているかどうかを見られているらしい。
特に『白き鐘を鳴らす者』の情報は非常に扱いが難しく、俺が『自分が白き鐘を鳴らす者の可能性』を仄めかしただけで、雪姫は泣きながら何度も俺を引っ叩いてきた。
何か理由があると思ったから、甘んじて受けていたが、後で聞くと、ああしないと雪姫を監視する機械種が俺を暗殺に来る可能性もあったようだ。
監視役の目がありながら、今、俺につきっきりなのは、俺という規格外の戦闘力を身内に引き入れる為の作戦の一環とのこと。本人が独り言のふりでワザと教えてくれたから間違いない。
どうやら教会は機械種に対抗する為に、優秀な戦力を求めているらしい。
おそらく、自分達の信仰の対象である『白鐘』を守るためなのだろうけど。
また、教会は『聖遺物』と認定した物を、それを持つのに相応しくない者から取り上げてしまうことがあるそうだ。
「強い能力を持つ発掘品、聖遺物は強者の手にあってこそ、人類は機械種に対抗できている。どんなに強力な聖遺物でも、弱者が持てば、能力を発揮しきれない」
まあ、言いたいことは分かる。村人が聖剣を持ったって、中ボスすら倒すのは難しいだろう。しかし、勇者が持てば、魔王を倒すことだってできるかもしれない。
ようは効率のことを言っているんだろうな。
「私達『鐘守』は相応しくない者から聖遺物を回収し、一旦『白き鐘を鳴らす者』に献上してから、それを教会が強者と認めたものに下賜する。そうやって、人類の戦力を整えて赤の帝国に抵抗している」
「相応しくない者ってやっぱり弱い人のこと?」
「うーん。その場合もあるけど、本人の資質も重要。鍛えるつもりがあるなら猶予を与えることもある。でも、聖遺物を頼って自分を鍛えないような人だったり、格下の機械種ばっかり相手にして楽をしていたり、使用せずに部屋に飾っていうようなら取り上げることもある。それを判断するのが『鐘守』の仕事」
随分、個人の資質に頼った役職だな。どういう基準で判断するんだろう。
「悪い人から発掘品を取り上げるのも『鐘守』の仕事。これは聖遺物だって言って。発掘品を人間相手に悪用しているようなら狙い撃ち。悪人からだったら取り上げても良心が痛まない。まるで正義の味方」
えっへん、と胸を張る雪姫。
え・・・ちょっと不安になるんですけど?
機械種相手なら頼りになるんだけど、ちょっと思い込みの激しい所があるし、強情で自分の意見をなかなか変えないし、あんまり人を見る目もないし。
『鐘守』が悪人っていう判断を間違えたらどうするんだよ!
最初出会った時、雪姫が俺を疑っていたことは忘れていないぞ。
「むう、ヒロの疑いの目。ちょっと腹が立つ」
雪姫は子供のようにぷうっと頬を膨らませる。
そういう仕草が人を不安にさせるんだ。
「でも、聖遺物を取り上げる時って、抵抗されないか?」
「んん?『鐘守』がそれを求めたら、素直に差し出すのが当たり前。『教会』は人類を守っているのだから、その意思を遂行している『鐘守』の指示は絶対」
「いや、それ建前だろ。人間がそんな素直に発掘品を差し出すわけがない」
「・・・中央なら教会の威光でそうなるケースが多かった。でも、この辺境までは届いていないから、ちょっと厳しい。でも、ここにマニュアルがあるから大丈夫」
ピラピラと薄い冊子を取り出してくる。
マニュアル・・・嫌な言葉だ。
営業用マニュアル、これがあれば売り上げ倍増・・・う、頭が痛い!
いや、それはともかく。
「ん~?どれどれ。・・・・・・・・・・・・・誰が書いたんだよ。このマニュアル。随分居丈高じゃないか。これは喧嘩を売ってるだろ」
「むう。一応それ、辺境用。最初が肝心。強く出ないと舐められる。私もこの辺境に来た時それで苦労した。下手に出たら体まで要求された。今思い出してもむかつく」
「まあ、それも分かるけど、俺がこんなセリフで発掘品を差し出せって言われたら、顔面にワンパン入れてやるからな」
「う、ヒロのワンパンは危険。お願い。どこかで『鐘守』がそのセリフを言ってきても、『白百合』と『白露』には優しくしてあげてほしい。その代わり『白雲』のババアはボコボコにしても構わないから」
誰だよ、それ?
『鐘守』って何人もいるのか?
「『鐘守』は大陸中を巡って、人類を守るために動いている。だから、できるだけ協力してあげてほしい。ただし白雲のババアは除く」
どれだけ嫌いなんだよ、その白雲って人のことを。
それに協力って言ってもなあ。せっかく手に入れた発掘品を取り上げられるのは、御免だぞ。
「それは誤解。そもそも聖遺物に相応しい人だったら取り上げない。聖遺物で上位の機械種を倒してくれる狩人は貴重。そういった人達には教会がお墨付きを渡すこともある。それに、聖遺物じゃなければ返す。『鐘守』が見分して、聖遺物ではないとして返された発掘品は『聖別』されたものとなる。とても名誉」
名誉ねえ。俺としてはあんまり興味ないところだけど。
教会としては人類の活動圏を守るために、強い狩人をそろえないといけないということか。発掘品は狩人の力を底上げしてくれる貴重品で、それを戦力分布の為の調整弁として利用したり、活躍して貰う為の餌としたりするわけだな。
「それに、もし、見分した発掘品が聖遺物と分かったなら、きちんと適正料金で買い取っている。でないと誰も『鐘守』に発掘品を見せなくなる。だから結構高めのお買取り。最低でも30万M」
おお、30万Mってことは3000万円くらいか。3000万円の武器ってどうなんだ?
「ヒロが光の剣を売ってくれるなら、その10倍は出しでもいい」
300万M!!! 3億円か!宝くじに当たったようなものだな。
聖遺物というのはかなりの値打ち物のようだ。
残念ながら俺の宝貝は聖遺物じゃないし、渡すこともできない。
でも、聖遺物を探して回るのもいいかもしれない。俺の目的が一つ増えたな。
しかし、3億円をぽっと払おうとする雪姫もかなりの金持ちなんだな。
流石は異世界。雪姫のような年若い少女でも実力さえあれば、大金持ちになるもの容易いようだ。これはなんと夢のある話だ。
「領収書は教会宛で。これで教会から経費で落ちる。問題ない」
「いきなり夢の無い話をするなよ!」
未だ、その『鐘守』というのも、雪姫が所属している『教会』というのもよく分かっていない。雪姫もその話題は露骨に避けるようにしている。
おそらく、監視役がいるせいだろうと思うが。
これは俺が独自で調べた方が良いのだろうか。
トールやサラヤに聞いた話では『教会』というのは『白鐘』を守っている宗教団体のようなものらしい。この辺境ではあまり知られていないが、大陸中の白鐘の管理をしているようだ。
また、『鐘守』については全く分からなかった。
ただ、雪姫が話していた『鐘守』は悪い人から発掘品を取り上げるという話は、なんとなくきな臭いと感じている。
多分、悪い人って言うカテゴリーの中には教会にとって都合の『悪い人』というのも含まれているんだろうな。
周りに聞いて調べられたのはこれくらいだ。
これ以上調べようと思ったら、もっと本格的な調査が必要となるだろう。
しかし、本格的に取り組むとなると、当然、監視役とやらに気づかれる可能性も出てくる。余計な藪を突いて蛇を出してしまうかもしれない。
当面は当たり障りのないレベルで地道に情報を拾っていくしかないか。
万が一、雪姫が教会のイザコザに巻き込まれたり、教会関連のトラブルに襲われたりした時に、迅速に対応できるよう準備を整えておこう。
最近は俺の行動目的の大半ば雪姫の為になりつつある。
知らず知らずのうちに、雪姫を中心とした考えを取ること気づいて愕然としてしまった。
もう雪姫がいなくなってしまう生活なんて考えられない。
それくらいに入れ込んでしまった俺の迂闊さを悔やむべきか、それほどの魅力の持ち主である雪姫を持ち上げるべきか。
でも、今の生活の方が、雪姫が居なかったときよりも間違いなく幸せだと実感できる。自分の為だけではなく、誰かの為・・・というより惚れた女の為に働くことに生きがいを感じてきていると言ってもいい。
こんな気持ちになるなんて、この世界に来るまで思いもしなかった。
愛する人との夢のような生活。
できればこの雪姫との生活をずっと続けていきたい。
頼む。夢ならば覚めないでくれ。
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