閑話 サラヤ3
ヒロの狙いが何なのか、
ボスを狙っているのか、
それとも単にお人よしなのか………
それを確かめるにはボスに会わせるのが一番だ。
前に不審な人がチームに入ってきた時は、そのタイミングで行動を起こして、チームから叩きだされている。
ヒロもボスが狙いだとしたら、ボスに会わせれば必ず何らかの行動を取るだろう。
早速、その為の準備に取り掛かる。
あまりに不自然にボスに会うように仕向ければ、ヒロも怪しむかもしれない。
だからいくつかのステップを経る必要がある。
まず、次に大きな獲物を取ってきた時。
前回のようなハイエナで無くても構わない。
俵虫くらいではダメだが、挟み虫か鎧虫くらいでもオッケーとすべきだろう。
あと、期待されているということをアピールする為に銃を渡しておこう。
ただし、いきなり撃たれては敵わないので、撃てないように細工をしておいた物を使う。
もちろん、ボスに会ってもおかしな行動を取らなければ後で解除するつもりだ。
その日はすぐやってきた………というか、その次の日だった。
その日はデップ達が鎧虫に挑んで負傷して大変だった。
そんな中、ヒロはデップ達が狩れなかった鎧虫を差し出してくる。
それも、デップ達に配慮して応接間に移動してからという気の使いっぷりで。
私はヒロが鎧虫を差し出してくる手を見ていた。
傷一つない綺麗な手。
労働なんてしたことがなさそうな上流階級の人の手のよう。
それが、スラムチームに入って3日目で結果を出してきている。
一度目のハイエナは運が良かっただけなのかもしれないが、鎧虫を狩ってきたということは、それなりの実力があるということなのだろう。
よし、ボスへ会わせてみよう。
すぐに3階へ上がり、事前に伝えてあったカランへ合図を送る。
そして、4階に上がってボスへ連絡。
ボスには最初はスリープしていてもらい、部屋に入ってすぐに蒼石でブルーオーダーされる危険を取り除く。
私達が4階にあがって部屋に入った所で、カランが追いかけてきて扉の前で待機してもらうようになっている。
私達が部屋に入って、カランが追いついてくるまでのタイムラグを回避する為の策だ。
ボスは源種である為、そう簡単にはブルーオーダーされないと思うけど、等級の高いものを使われてしまう可能性があるので、用心の上に用心を重ねた結果だ。
もし、スリープを解除した後、会談中にボスに蒼石を使われようとしたら、まず私が盾になり、その間にカランに取り押さえてもらうことになっている。
さあ、ヒロはどんな行動を取るのかな。
できればこうした準備が無駄になってほしいけど。
結果は全くのシロ。
特に怪しい素振りを見せることなく会談は終了。
あるとすれば、ヒロは機械種に興味があるようで、ボスに色々と質問をしていたくらいか。
でも普通、従属させている機械種に、機械種の奪い方を直接聞くかなあ………
ボスはあれこれと情報を与えていたが、それには巧妙に真実と嘘を織り交ぜている。
どこでおかしいと思うか、どこをそのまま信じてしまうのか。
その情報を精査することで人の素性がある程度分かるという。
ボスの持つスキル「心理学」の応用らしい。
しかも、ついた嘘が後になってバレても、いい訳ができるように真実の中にほんの少しだけ混ぜていく方法。
しかし、後で診断結果を聞いたところ、想定していた出身が全て当てはまらないという結果に落ち着いた。
結局、ヒロについては何も分からなかったのだ。
いや、ただ一つ分かったことがある。それはヒロが非常に頭が良いということだった。
彼はこの短期間でチームトルネラとボスの関係を見抜いていた。
このチームトルネラは初代トルネラがスラムで虐げられる女性の為に作ったチーム。
その為にボスのマスターは女性限定と最初に決められてしまっている。
これができるのも最初のマスターに絶対の忠誠を抱き続ける源種だからこそできる仕組みだ。
10年ほど前まではスラムの女性の避難所のような存在だったらしい。
でも、度重なる襲撃や新たなチームの台頭でチームトルネラの力が削がれていき、今ではとてもスラムの女性全てを救えるようなチームではなくなった。
初代トルネラが居た時は対等に近かった関係を築いていたバーナー商会とも、いつの間にか力関係がはっきりとしてしまい、下部組織扱いとなってしまっている。
私がこのチームにいる間に、初代の時程とは言わないけど、もう少し力関係を有利にしておきたい。
その為にはもっと力をつける必要がある。
バーナー商会も一目を置くくらいの力が。
チームの女の子を無条件に娼館へ送り出さなくてもよくなるように。
ジュードには一度この話をしたことがあるけど、私の身を心配して、この件については積極的な協力はしてくれない。
下手をするとバーナー商会を敵に回すかもしれないから。
ヒロはどうなんだろう。
もし、協力してくれるなら私は………
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