第489話 エルフ少女のコーディネイトです
「はわ……はう……ぁう、ぁぅ……」
ドドンと目の前に居並ぶは僕のお嫁さん&お嫁さん候補&内密関係アリな女性―――要するに、表裏合わせた王弟後宮関係者たちだ。
そんな面々からの視線を一身に受けたエルフの少女オールリィリィは、下着一枚で椅子に座らされていた。
緊張から完全に精神がトんで両目をまわし、うわごとのような言葉にならない声を漏らしている。
「……小柄だし、やっぱりこれだと思うんだ!」
そう言ってアイリーンが取り出したのは、適度にフリルがついているけど一部にシースルーが施された、愛らしさと適度なセクシーさを織り交ぜたドレスだ。
小さめで子供服っぽくなってしまうのを回避するかのように考えられたデザインは、なかなかのチョイスだと思う。
「いえ、小柄という事でしたらあえてこちらの選択肢もありではないかと」
セレナは胸元から足元まで全体が巻きタイプになっているドレスを示した。ところどころにレースのラインが走っていて、上手く着こなせば綺麗な縞模様になる。
もしオールリィリィが着用したら、泉の精霊(子供バージョン)みたいな感じになりそう。
「同じ巻きでしたら、こちらなんかもいかがでしょう?」
その大きすぎる胸の上にドレスの首元を載せるようにしてエルネールさんが示したのは、シルクの巻きドレスだ。
腰帯で固定するタイプで、オーソドックスな王道っぽい雰囲気がある。
「(某星座拳闘漫画のヒロインキャラがこんな雰囲気のヤツを着てたっけ……?)」
さすがにそろそろ前世で嗜んだマンガやアニメの細かいところは忘れつつあるけど、何だか似たような雰囲気を感じる。
「ママはそういうの好きだよね、昔から。私ならこういう系をオススメかな」
ヘカチェリーナが持ち上げたのはルネサンスな雰囲気のドレス。この世界の貴族女性の着用するドレスの4割くらいはこの方向性のモノだ。
ヘカチェリーナのことだからもっと奇をてらってくるかと思ってたけど、意外や意外、堅実な路線―――とか思っていたら、高く持ち上げられたドレスのスカートの、前部分が完全に開いていた。
これだと股間部がギリギリ見えるか見えないかで少なくとも両脚は完全に丸見えになる。
「おーぅ、うっうー、ぁうー」
「おや、レイアはああいうのが好みですか? レイアも大きくなったら色々と考えましょうね」
意外にもウチのレイア姫ちゃんは、これまで出たドレスの中で、ヘカチェリーナが示したようなモノが好ましいようだ。
「へっへーん、さっすがレイア様。いいセンスしてるねっ」
レイアに選ばれた事を誇りに胸を張るヘカチェリーナの態度に、他の女性陣に火が灯る―――そう、今行っているのは他でもない、オールリィリィのドレス選びという名目での着せ替え遊びだ。
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「およそ3時間……ですか。今日は他に予定がなかったとはいえ、皆さん思いのほか白熱致しましたね」
僕が
「着せ替え人形にするのもいいですが、当の本人が完全に目を回してしまっていますよ、今日はそろそろお開きにしましょう」
「は、はぃい~……」
「ちょっとムキになってしまったよ、さすがに疲れたかな」
シェスクルーナとリジュムアータが疲労感からいち早く平静に立ち戻る。
「うーん、でもでも旦那さまっ、まだ決まっていないんですよぉ~」
「とはいえ、時間も時間ですし、さすがにこの辺りにしておかなければならないでしょう」
アイリーンとセレナは、決めきれなかった事が悔しいという雰囲気だ。
「ふう、こういった事は久々でしたね。いつかの時、ヘカチェリーナちゃんが夜会に着ていくドレスを考えた時以来かしら?」
「うん、そうかも。あの後に殿下んトコに行くことになったしねー」
この母娘はまだまだ元気そうだ。
エルネールさんとヘカチェリーナはこういったコーディネートは特に好きそうだし、むしろ疲労が回復しているまでありそう。
「皆様、お夕食の準備が整いました。どうぞ食堂へお越しください」
ドレス選びに参加していたクーフォリアだけど、食堂の準備のために一足先に離脱していた。さすがというか、侍従としては完璧な立ち居振る舞いだ。とても僕のお相手してる時と同一人物とは思えない。
「では参りましょうか。久々に全員集まっているわけですから、楽しい食事にしましょう」
ここはルクートヴァーリング地方からの街道上、王都へと入る前にある町の賓館だ。
迎えに来てくれた居残り組も合わせて今日はここで一晩過ごす。
そして明日は王城へと帰還するわけだけども、その際にオールリィリィの召し物をどうするかで発端したドレスコーディネート会議は空腹を合図に、ひとまず幕をおろしたのだった。
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