デジャビュ
今まで家庭用ゲーム専門だった俺は、チャラ男真人と茶髪ギャル祐美に初めてゲームセンターへ行くことになった。
やって来たのは駅近くのショッピングモール内にあるゲームセンター。
そして思いのほか盛り上がった。
だって太鼓を叩いてるだけだよ? 何でこんなに楽しいの?
ちなみに真人にはぼろ負け。祐美とはだいたい同レベルで、めちゃくちゃ白熱した。
しばらく太鼓ゲームを続けた後、疲れたので置いてあったベンチで並んで休憩。
「玲華ともこんな感じで遊べたらいいんだけど」
「休みの日に遊べば?」
不意に呟いた真人に答える。
「だからダブルデートで」
「それは断る」
「私は全然いいですけどね」
祐美はにこっと笑顔で呟く。
「お前らのいつものグループで行けっつの」
「わかったよ。じゃあ誘ってみるわ」
真人は玲華を誘って休日に遊びに行くことにしたらしい。玲華は休日なら遊べるようなことを言っていたので、多分大丈夫だろう。
その後、太鼓ゲーム以外にも、エアホッケーや射撃ゲームなどで盛り上がった。
真人も楽しんでいたが、特に祐美がはしゃいでいた。
ぶっちゃけ結構楽しかった。
「涼くん、また遊びましょうね」
「おう」
真人と祐美と別れ、帰路についた。
駅前から徒歩十五分程で自宅に辿り着き、玄関の扉を開ける。
「遅い」
「うわっ、またお前か」
「そりゃ私でしょうよ」
またクソ生意気な妹のお出迎え。何やら不機嫌そうなご様子。
「何でこんなに遅いのよ!?」
「気のせいかな。デジャビュを感じる」
家に上がり、階段を登って二階の自室へと向かう。また芹菜はとことことついてくる。
「何してたの?」
「ちょっとゲーセンで太鼓叩いてきたわ」
「は? お兄がゲーセン? 誰と?」
「失恋ギャルと恋するチャラ男」
部屋へ入ると、眼鏡を外してテーブルに置く。そしてベッドに腰掛ける。
いつも通り芹菜も隣にポンと腰を下ろした。彼女は何やら拗ねたような表情でこちらを見ている。
「何それ。友達?」
「自称友達だな」
「この前一緒にクレープを食べた女?」
「一人はそうだな」
「むー!」
芹菜は頬を膨らませながら、肩をぽかぽか叩いてきた。
「痛いっつの」
「お兄は別の女とばっかり!」
「いや、何言ってんのお前」
何かヤキモチをやいてるみたいな発言。
俺はとりあえず芹菜の手首を掴み、DVを阻止した。
「私はまだクレープも食べに行ってないのに」
なんだ。クレープを食べたかったのか。
「だから友達と行けって言ったろが」
「は!?」
芹菜は思いっきり俺を突き飛ばし、馬乗りになった。
「もうお兄のFFのセーブデータ、全部消してやるから」
「え、マジ? それは駄目だろ」
悪魔かお前。そんなことをされたら今まで必死に戦ってきたのが無駄になってしまう。
「別に、また頑張ればいいんじゃない?」
「アホか! あれには壮大な冒険の数々が……」
「リビングに行けば分かるけど、あとボタン一つでデータが消えるとこだから」
えっ、マジかよ。俺が帰ってくる前から用意してたの? 何その計画的犯行。
「そんな脅しには屈しない」
一応強がってみる。これに屈したら弱みを握られてしまうことになる。
「じゃあ本当にデータが消えたとしてもお兄の責任だからね」
今から芹菜より先にリビングへ行き、データ削除を防ぐことはできる。しかし、今後は無理だ。
「……ごめんなさい。今からクレープを買ってきます」
俺は屈した。守るものがある俺はテロリストの要求に従うしかなかった。
「いや、今はもういいから」
「お、おう。そうか」
今はいいんだ。よかった。だってもう一度駅前まで行くのは面倒臭いし。
「だから今度の休みに遊びに行こうよ。で、そのときにクレープも買って」
「……わかった」
妹とお出かけ決定。
普段着に着替えて前髪をゴムでとめた後、階段を降りてリビングへ入った。
テレビの画面はマジでデータを消す一歩手前だった。マジかよこわっ!
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