旅立つニャン

『奴らめ。素敵な贈り物でいっぱいニャン』

「ね」

『家はぶっ壊されたがニャン』

「ドブヒヒ」

 ここは荒野のド真ん中である。

 駆けるのは一輪の自転車。

 こぐのはゾンビモヒカン野盗だ。

 取り付けられたサイドカーには、風よけのパラソルとネット付き。

 そのシートに――。

『ニャーニャンニャ』

 おしゃべり真っ最中なのは、黒猫のブラックちゃん。

「笑ってる感じするー」

 そして悪霊のリョウちゃんだ。

 同じ席にたっぷり詰められているのは水とキャットフード。

 他は……ゾンビにしない為、脳を奪い済みの肉だ。

 これらさえあれば、しばらくは猫とゾンビも生きていける。

 では人間呪殺特化型映画のDVDは?

 問題なし。

 該当品がセットされたポーダブルDVDプレーヤーは発電機に繋がれ、永続的に動く。

 動力源は、この自転車だ。

 自転車大好きゾンビモヒカン野盗が楽しくこぎ続けている。

 彼らは今、一生分の水やキャットフード、人肉、呪殺目当てでスーパーマーケットに向かっている。

 足りなければ余所の施設に向かう。

 もちろん該当施設の全ては凶悪なモヒカン軍団が牛耳っているが――望むところである。

 対・モヒカン戦闘時には飼い主のゾンビモヒカン野盗が闘い――強敵相手にはブラックちゃんがポータブルDVDプレーヤーを起動。リョウちゃんのパワーで殲滅である。

 この滅んだ世界で、彼ら三人は自分の暮らしを全うするのだ。

「あのねブラックちゃん。気になってたのだけど」

『なんニャン』

 喉を撫でられつつ、夢心地で答える。

「悪霊だけど、私……どうしてゾンビでない君とお話や……ましてや触ったりとかできるんだろ」

『俺は黒猫だから霊感が強いのニャン』

「なるほどね」

「昨日まではノーセンキューだったけど、今は結構ハッピーニャン」

「え?」

『独り言ニャン』

「ふふ」

『ウッフフニャン』

「可愛い」

 リョウちゃんの満面の笑みを見た。

(お前の方が可愛いニャン)

 そう、センチな言葉を吐きかけたが辛うじて堪え――リョウちゃんのお手々をペロペロするだけにとどめた。

「ドブヒヒヒイ」

 ゾンビモヒカン野盗は幸せそうに自転車を進ませる。


     <完結ニャン>

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人間呪殺特化型映画をネコちゃんが観ちゃったニャン モヒカン荒野闘争編 砂漠生物 @7678dddgugoppjt

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