バトルだニャン

「え、え」

 ソファの真正面に現れ、雪崩れ込むモヒカン共!

 改造バイクから降り立った彼らは慣れた手つきで室内を荒らす!

「な、なに……」

「ウラ~!」

「キャッ!」

 サングラスが似合う軍服姿の虹色モヒカンにソファを蹴り飛ばされ、慌てて飛びのくリョウちゃん!

『ニャンー』

 ブラックちゃんも同様!

 壁とソファの隙間に入り込む!

「ぐわははッ! 猫が一匹いたぞぉ~! どこだぁ~ッ!」

「放っとけぇ~! 暴力が先だ~!」

「…………!」

 彼らに悪霊であるリョウちゃんの姿は見えない!

 唖然とする彼女を尻目に部屋を蹂躙しまくる!

「何だぁしけてるのォ~?」

「ドヒヒ」

「モヒカンのなり損ないがぁッ! 死ねぇッ!」

 黒ずんだ甲冑を装備した赤モヒカンは無造作に斧を振るう!

「グゲボ」

 真正面から胴体を切られ、ぶっ倒れるゾンビモヒカン野盗!

「んだぁ、このボロチャリぃ!」

「おい! 壊すなぁッ! 分解してパーツを売るんだよぉッ!」

 叫ぶのは合金製マスクを装着した青モヒカン!

 彼は平然とキッチンのミネラルウォーターを飲む!

「ど、どうしよう。こんな……」

『……おい、リョウちゃんニャン……リョウちゃんニャン……』

「ブラックちゃんニャンさん!」

 家具と壁の隙間! ブラックちゃんは暗がりの中から小声で語りかける!

『奴らはモヒカン軍団の下っ端だニャン。世界で僅かに生き残る人類の支配階級だニャン』

「え、あれが!」

「現時点で総人口の90%がモヒカンと化したニャン。奴らの目的はただ一つ。暴力ニャン」

「そ、そんな」

「残る10%の人間や俺たち動物は……日々、奴らに苦しめられまくっているニャン」

 暗闇の中、苦々しく俯く。

「いいかニャン。リョウちゃんニャン。お前は終わってなんかいないニャン。お前がこの恐怖の世界に蘇ったのはきっと――ニャ!」

「あ!」

「ヒッハハーッ!」

 片腕で軽々とソファを持ち上げたのは青色モヒカン!

 その隙に、虹色モヒカンがブラックちゃんの首根っこを掴む!

「グワワハハァッ! 美味そうな肉よのぉ~!」

『ニャンー!』

「ブラックちゃん! やめろーッ!」

 咄嗟に掴みかかるリョウちゃん!

 だが、意味はない!

 悪霊である彼女は虹色モヒカンを突き抜け――リビングで転倒する!

「にくーにくー」

 傍のゾンビモヒカン野盗が呻く!

 頭部がある限り、死と無縁の存在となった彼だが――傷の治癒には肉が必要だ!

「にくー」

 しかも空腹により暴走状態!

 このままでは禄に戦うことはできず――リョウちゃんの命令も受け付けない!

「ヒハハハハハ~ッ! 丸呑みじゃ~!」

「ヒハハハ~ッ!」

「ホッホホ~!」

 ブラックちゃんを掲げ爆笑するモヒカン共!

 当のブラックちゃんは――。

「あぁ!」

『ニャン』

 借りてきた猫!

 とうに最期を悟り、項垂れるのみ!

「うっほほうほほう♪」

「うほほう♪」

「ヒィハハ~ッ♪」

 新鮮な肉を得、喜び舞うモヒカン共!

「私が……私が動けたら!」

 本来! この世の如何なる物質にも干渉できぬリョウちゃんには、あのモヒカン共を殺す手立てはない!

 方策があるとすれば只一つ!

「『あ い ど お る』さえ! 再生できれば……!」

 頼みの綱は、ソファの転倒時にぶっ飛ばされ床に転がるポータブルDVDプレーヤー!

 今も中に入れっぱなしとなっている人間呪殺特化型映画DVD『あ い ど お る』!

 幸運なことに落下衝撃を耐え抜き――プレイヤーの赤いランプが点滅している!

 現在待機状態にある!

 しかも液晶画面はモヒカン共を向く!

 もう一押し! 電源ボタンを押せば起動! モヒカン共を呪い殺せる!

「にくー」

 呻くゾンビモヒカン野盗! だが、彼は――。

「にくにくー」

「お願い!」

 リョウちゃんは藁にもすがる思いでゾンビモヒカン野盗に懇願する!

「お願い! DVDプレーヤーの電源ボタンを押して! ブラックちゃんが食べられる!」

 駄目だ!

 プレーヤーはほんの三十センチ離れた位置に転がるというのに動かない!

「肉が……! せめてビーフジャーキーさえあれば……!」

 しかし保存されたビーフジャーキーの数は僅か一袋だった!

 それは既にこのゾンビモヒカン野盗制御の為に全て! 全て――。

「全て……?」

 リョウちゃんは妙な引っかかりを思う。

 全て?

 確かに、ゾンビモヒカン野盗の口に肉を押し込んだのはリョウちゃんだ。

 だが、その後。

 ブラックちゃんが彼女を慰めた時間で。

 ブラックちゃんが彼に――。


(ばっちぃからよせニャン。あ、くそ……奥歯に挟まって取れんニャン)


     <続くニャン>


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます