第1229話 リアルでの騒動?
スーパーの顔見知りのおばちゃんにアルバイト募集の件を聞いてみたら……なんかその場で相沢さんの面接中だった店長さんの所まで連れて行かれて、そのまま夏休みの間の採用にサクサク決まった。……いや、サクサク決まり過ぎじゃね?
今日はあくまでアルバイトの空きがあるかどうか聞くだけのつもりだったのに、そのまま確定まで行くとは思ってなかったぞ……。いやまぁ、去年の夏休みにもやってたのと、普段からちょいちょい店員のおばちゃんに捕まってた影響が大きかったみたいだけど。
「あはは、吉崎くんって顔馴染みなんだね、ここ。夏休み、よろしくね?」
「……都合が合わない人が多い時の穴埋めっぽいから、一緒になるかは知らんけどなー」
すんなり決まったのは、アルバイトに応募してきた学生の希望シフトが微妙に偏ってたという事もあったようである。なんか少し前までの事はまるで無かったかのように接してきてる相沢さんとかも、昼から部活だから午前中のみ希望とかなー。そういう希望か、イベントの方の希望が多くて、微妙に人が足りるか怪しい状態だったとか。
土日や夜は普段の人で足りているそうで、人が足りていないのは普段なら俺らが学校に行っている時間帯との事。怪我して療養中の人と、急に家の都合で7月末に辞める人がいるそうで、8月からが特に厳しいっぽい。新規採用は募集中だそうだけど、まだ見つかっていないそうである。
というか、怪我で療養中の人って去年アルバイトしてた時に色々教えてくれた人だったよ……。こういう風に人手が足りなくなる状況が重なる事もあるんだなー。
「さーて、それじゃ私は部活に行くね」
「俺としては、少し前の話が気になるんだけど!?」
「あれはもう気にしないで? もう下手に首は突っ込まないからさ?」
「無茶を言うな!? あれだけ悪目立ちしてたのに、意味不明な状況のまま!?」
「……あー、そういえば思いっきり目立って……明日の気が重いなぁ」
「いやいや、そっちが原因だろ!?」
最後には痴話喧嘩だとか、俺が悪いみたいなおかしな注目のされ方をしてたけど、それが1番に変なダメージを受けてる気がするんだけど!? 特別親しくなった訳でもないのに、どういう影響だよ、これ!
「揃って戻ってきたと思ったら、また騒いでんの?」
「あー、まだいたのか、全ての元凶」
元はと言えば、慎也が不必要なほどに個人情報を喋りまくったのが原因だ。まぁその要因に部活の勧誘があったけど、勧誘そのものにケチをつける気はないからなー。……今日の内容はあれだけど。
てか、イートインのスペースでアイスを食ってたのか。いや、アイスだけじゃなくて、地味に紙袋があるから何か買い食いした痕跡があるな。……まぁ、別に自分の金で買ってるならどうこういう気もないけども。
「よく考えたら、そうだよね!? 佐山くんが色々と喋り過ぎるから!?」
「圭吾に言われるなら仕方ない気がするけど、相沢さんに言われるのはなんか納得いかねぇ!?」
「目立つから、本気でやめてくれない? 普段使いしてる店だし、知り合いが多いんだから勘弁してくれ……」
「あ、ごめん……」
母さんだってよく買い物に来てるスーパーだし、俺自身だって結構知ってる人がいる。というか、夏休みにアルバイトをするのに……あー、おばちゃん集団にからかわれそうな予感が凄まじいな……。
「あれ!? 兄貴、何やってるの!?」
「ん? 晴香こそ何やってんの?」
「私はアルバイトの話ー! 少し前にここでアルバイトしてたのもあって、店長さんが夏休みにイベントをやる時に時間があったらどうだってメッセージを送ってきてたのー! 兄貴にも声をかけてって頼まれてたから、帰ってから伝えようと思ってたんだけど……」
「すんなり話が進み過ぎてると思ったら、そういう事か!?」
今日は話を聞くだけのつもりが、アルバイト確定までいった理由が分かったわ! 店長さん、元々俺には声をかける予定だったなら、さっき言ってくれればよかったのに……。
って、そこには無関係な相沢さんがいたから変に晴香の事は口に出せなかっただけか。てか、地味に晴香も気に入られてたんだな。
「え、吉崎くんの妹さん!?」
「誰ですか!? あ、もう1人いる!?」
なんか晴香の警戒心が剥き出しになってるけど、相沢さんがアイルさんだとは言ってないはずだけどな? 同一人物だと分かってから警戒するならまだ分かるけど、そうでもないのに同じように警戒してるのは何でだ?
「おーっす! あ、こっちじゃ初めまして?」
「……まぁ慎也は知ってるか」
「はっ!? 兄貴と一緒にいるって事は、フラムさんですか!?」
「そうそう!」
「おー! やっぱりなのさー! あ、ここのコロッケは美味しいのです!」
「おっ、分かってるな! さっき、揚げたてがあったから食ってたとこだ!」
あー、何か食ってた形跡があったのはコロッケか。まぁ確かに惣菜コーナーのおばちゃんが気合いを入れて作ってるから、結構美味いんだよなー。去年のアルバイトをしてた時に、休憩時間に差し入れで貰ったりしたっけ。
まぁ俺と晴香……正確にはケイとハーレが兄妹だってのは慎也は知ってるし、逆に慎也がフラムだと晴香も知っているし、遭遇する事があっても不思議じゃない。別にそれで特に問題がある訳でもないしなー。
「という事は……こっちの人が例の部活の……?」
「私、なんでこんなに警戒されてるの? ……もしかして、吉崎くんの妹さんがサヤさん!? あれ、なんか変な勘違いをしてた!?」
いや、今まさに変な勘違いが新たに発生中なんだけど、またややこしい事になってきたな。フルダイブとリアルじゃ音声が一致しない事が結構あるし、晴香達3人の事情を全部知ってないとそう思っても不思議じゃないけど……。
さて、どうしたもんか。慎也が余計な事を言わないように睨みつけておいて……あぁ、なんか慌ててるから危うく何か言いかけたとこみたいだな。まぁ言わなかったって事で、今回はスルーしていこう。
……てか、もう普通に家の帰りたい。何この、今日の放課後のおかしな状況!?
「兄貴、色々とどういう事ですか!?」
「むしろ、それは俺が聞きたいくらいなんだけど……。なんで晴香、そんなに警戒してんの?」
「同じくらい警戒してた吉崎くんがそれを言う!?」
「いや、そりゃ警戒するだろ、あの状況は……」
というか、俺としてはまだ警戒が薄れた訳でもないんだけど? サヤが妹の晴香という変な勘違いをされた状態をどうすりゃいいんだよ。いくらなんでも、サヤとヨッシさんの許可なしにベラベラと全部の事情を話す気はないぞ。
「ちょっと来てほしいのさー!」
「え!? 私、この後から部活が――」
「これ以上、変に引っ掻き回されるのも迷惑だもん!」
「迷惑!? え、そんなに私って変な事をした!?」
「その辺の整理をする為の話なのさー!」
「……あ、なるほど。そういう事なら、少し遅れるって連絡だけはさせて?」
「それくらいは待つのです!」
えーと、晴香が相沢さんの腕を引っ張って店の外に連れていこうとしてるけど、俺の存在は? え、俺は蚊帳の外の話なのか……?
「晴香、俺も――」
「兄貴は来ちゃ駄目! 女同士の話なのさー!」
「……えぇ?」
「それじゃ行こっか。えーと……晴香ちゃん?」
「近くに公園があるから、そこまで行くのです! 兄貴はここで待ってて!」
「あれー? 呼び方は完全に無視? 本当に私、何をしちゃったの?」
本当に訳が分からんな、この状況!? あー、放置して家まで先に帰る訳にもいかなくなったし……どうしたもんだ?
「なんか大変そうだな、圭吾」
「他人事みたいに言ってるけど、元凶はお前だからな!? あー、なんか俺も買ってこよ……」
なんかドッと疲れる放課後なんだけど、夏休みのアルバイトは大丈夫なのかこれ!? 下手すると俺と晴香と相沢さんが一緒にアルバイトって可能性も……なんか胃が痛くなってくるぞ、それ。
◇ ◇ ◇
惣菜コーナーで俺もコロッケを買ってきて、途中で休憩中のおばちゃんにからかわれつつも、アイスも買って食っていたら晴香と相沢さんが戻ってきた。……ん? 晴香のピリピリした様子が薄れてる?
「あー、色々とスッキリしたー。事情説明をありがとね、晴香ちゃん」
「私こそ警戒し過ぎてすみませんでした! 部活、頑張ってねー!」
「うん、頑張るよ! あ、吉崎くん、佐山くん、またねー!」
「えーと、また明日?」
「おう、またなー!」
ここから離れていった時と、帰ってきた時の様子が違い過ぎて戸惑うんだけどどういう事? てか、俺から逃げるように部活に向かっていったけど、説明する気は皆無なの?
「あー、晴香? 一体何がどうなった?」
「とりあえずは今は完全に杞憂だと分かったので、大丈夫なのです! むしろ、色々ホッとしたかも!」
「杞憂って、そもそも何が!?」
「兄貴には内緒ー! その方がずっと杞憂のままで終わりそうだもん!」
「はい!?」
ここまできて、またまともな理由の説明がないままなのかよ! 俺が知らないままの方が杞憂で済むって、一体どういう意味?
あー、なんか本格的に苛立ってきた。かといって、晴香に八つ当たりする訳にもいかないし、慎也も元凶ではあっても今日のこの状況には直接何かした訳でもないもんな……。くっ、文句を言うべきはやはり相沢さんか!
「はっ!? それよりも余計な時間を使ったのさー! サヤには私から説明しておくから、兄貴は先にやっててー! 私はアルバイトの件で店長さんと話してくる!」
「ちょ!? おい、晴香!?」
あっという間に晴香まで立ち去っていったんだけど、結局何がどういう事なんだよ!? サヤに説明するって、一体何を!? しかも、その内容は俺には伝えられない内容!? あー、訳が分からん!
「……圭吾って意外とこの手の事は鈍感なのか?」
「何か言ったか、慎也!?」
「いやいや、なーんにも? さてと、そろそろ帰るかー! 今日は負けないからな、圭吾!」
「あー、見つけたら容赦なく仕留めるから覚悟しとけ」
「共闘の件は忘れんなよ!?」
「……そういやそうだったなー」
もう店の中でいても仕方ないから外に出たけど、やっぱり暑いな……。あー、なんかどっと疲れた……。あの感じだと晴香に聞いても教えてくれそうにはないし、状況はよく分からないままか。なんかスッキリしねぇ!
もうなんかよく分からん状態で仕掛けてきてる無所属の集団相手に八つ当たりでもやって……いや、感情任せに動いたら流石に迷惑かー。
うーん、とりあえず家に帰ってから何か考えよ。ヨッシさんがログインしていたら、ちょっと今日の件を相談してみるのもありかもね。……答えてくれるか、そもそも分かるのかどうかは聞いてみないと分からないけども。
「それにしても、圭吾の妹って地味に初めて会ったな。意外と可愛いし、狙ってみるのもあり?」
「お前だけには絶対やらんわ!」
「シスコン発言、怖っ!?」
「ほほう? 殴られたいんだな、慎也?」
「それは断る! ま、理由としてはそれと似たようなもんだろうよ!」
「何がだよ!」
「わっはっは! それじゃまたな!」
くっそ、慎也までよく分からない事を言い残して自転車を漕いでいきやがった! 理由が今のと同じようなものって……俺はシスコンじゃねぇよ!
そりゃ晴香だっていつか好きな相手や彼氏が出来る可能性はあるだろうけど、流石にそれが変な相手だったりしたら、そのまま見逃す訳にも……って、あれ? そういう事?
晴香やサヤが警戒してた理由って、俺への心配なのか? あー、もしかして俺が思っている以上に相沢さんへの印象が悪かったのかも。でも、晴香が実際に話してみたら意外とそうでもなかったから気を緩めたとか?
サヤ自身もなんでカッとしたのかがよく分かってなかったみたいだし、そういやサヤも相沢さんの事を聞こうとしててアルにマナー違反だって止められてたっけ。なるほど、晴香なりにその答えを見つけた可能性はありそうだ。
「……俺に言えないって部分は引っかかるんだけどなー」
晴香はまぁいいとしても、相沢さんからは説明をしてほしかったとこだけど! 正直、今の心象はかなりよくないぞ! あー、晴香が説明しなかった理由ってそこか? 悪印象を残したままにしようとしてる?
前に俺と相沢さんに仲良くしてほしくないみたいな事は言ってたし……その理由は謎だけど! 現状、あんまり仲良くしたいとも思ってないから別にいいけどさ。
あー、明日の学校で、下駄箱での件が変な噂になってませんように! 近くにいた人から痴話喧嘩とか言われてたし、おかしな事にならなきゃいいんだけど……。
◇ ◇ ◇
色々と頭を悩ませつつ、暑い中を歩いて帰宅。あー、普段よりかなり帰ってくるのが遅くなったな。……アルバイトの件で多少は遅くなると思ってたけど、それ以外に色々とあり過ぎたよ。
ともかく、色々と不安要素が出来ているけど夏休みのアルバイトは確定! 具体的な時間はまだ決まってないから、その辺は店長さんから連絡がきたら改めて行かなきゃいけないけどなー。高校生はもういいみたいだけど、まだ今週中は募集しておくらしいし。
「そういや、そろそろ晴香は旅行の日程は決めた頃か?」
確か夏休みに入ってすぐに、サヤとヨッシさんのとこまで遊びに行く予定だもんな。ヨッシさんの誕生日にも合わせてるって話だったし、その辺はどうなってるんだろう?
夏休みに入ってから慌てて用意するって事もないだろうし……まぁ母さんや父さんにも伝えるだろうから、その辺は変に聞かなくても決まれば分かるだろ。父さんがお土産代として小遣いを渡すつもりでいるんだしなー。あ、そういやこれは晴香には前日まで内緒なんだった。迂闊に喋らないように気を付けないとな。
「おし、とりあえず着替えてログインしますか!」
もう17時が近いし、既にサヤとヨッシさんはログイン済みかもなー。てか、競争クエストの総力戦は21時からだから、その前に出来る事ってもうほとんどない気がする!?
うーん、アルバイトの件は明日にしておくべきだった? ……今更言っても仕方ないし、どっちにしてもアルを含めてじゃないと意味がないか。大事なのは、競争クエスト開始前の20時台だなー!
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