第1226話 守り抜いて
ははっ、最後は焦ったけど、なんとか守り切った! 最後の最後で、あんなのは予想出来るか! あー、疲れたー!
『ミヤビさんとマサキさんに託された、この地は私が占拠しました!』
おっと、最後の演出っぽいのが始まったね。もう占拠完了のアナウンスは出たんだから、ここからの青の群集の逆転は不可能なはず。……近場では、もう戦闘をしている様子はほぼなくなったか。
『まだまだ未熟な私をここまで導いて下さった方々には感謝を! まだ……私は進化には至れませんが、この地を守りながら力を蓄えたいと思います!』
ん? てっきり未成体から成熟体への進化演出でもあるのかと思ってたけど、特にそういう事もないっぽい? あー、再戦エリアの方はあくまでここにいたミヤビとマサキが移動して空いたのを防衛するのが目的だもんな。
『それでは、皆さんに運んでいただいたエニシさんからの浄化の力の断片を使って、ネットワークを再構築します!』
おー、それでも演出らしい演出もあるんだな。エニシは森林エリアの群集拠点種の名前か。『浄化の守り』自体がエニシから渡された力を成長体と未成体の人が運んでたやつだけど、守る為だけのものでもなかったんだな。
根を下ろしているカトレアの周囲を覆っていた、バリアのような見た目の『浄化の守り』が栗の木の中へと溶け込むように消えていく。それから少しして木の中を光が脈打ち、森林エリアの方へ向かって地面の下を通っていく様子が見えた。
あ、破壊しまくった周囲の木々が少し再生した? 一気に全部が回復した訳じゃないけど、カトレアが占拠した事で徐々に再生されているっぽいなー。
『破壊された自然の修復は……少し時間がかかりそうですけど頑張ります! ネットワークの再構築はあと少し!』
なんというかあっさりめの演出だけど、防衛成功だからこそ、この演出なのかもなー。負けて奪われてた場合は、もっと違った形の演出になってそうだ。それこそネットワークの再構築じゃなくて、青の群集だと1から作り出すような状況になるんだしさ。
『……再構築、完了です! ミヤビさんとマサキさんの守っていた地、今度は私が守っていきます!』
<競争クエスト『防衛せよ:ミヤ・マサの森林』が完了しました>
<『ミヤ・マサの森林』を灰の群集の『群集支援種:カトレア』が占拠しました>
<他の群集のプレイヤーへの攻撃は通常仕様に戻ります>
<『競争クエスト情報板』が使用不可になりました>
<参加ボーナスとして経験値を獲得しました>
<参加ボーナスとして情報ポイントを200獲得しました>
<勝利ボーナスとして情報ポイントを500獲得しました>
<ケイがLv9に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndがLv9に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
ふぅ、今回はLvが上がってくれた! この競争クエストに来る前にゾンビな大蛇と戦った時に上がりそうで上がってなかったけど、流石にギリギリまで行ってたもんなー。
今のでLv10目前くらいまでは一気に経験値が入ったから、どうせならそのままLv10まで上がってくれればよかったのに。……まぁそこで文句を言っても仕方ないし、そもそも経験値が目的でもないから別にいいか!
「あー、疲れた! 色々と仕掛け過ぎだぞ、ジェイさん!」
「全部凌いだ上でそれを言いますか! それにケイさん達も、元々かなり作戦を立ててきてたでしょう!」
「基本方針だけで、後はほぼアドリブだっての!」
「……その方がよっぽど危険で難しいのに、あっさりと言ってくれますね。スリム、撤退しますよ」
「ホホウ、もうよろしいので?」
「……負けたのであれば、立ち去るのみですよ。まだあと1戦はありますからね。明日は負けませんので、ご覚悟を!」
「そりゃこっちの台詞だっての!」
なんとかミヤ・マサの森林は守り切ったけど、競争クエストはまだ全部が終わった訳じゃない。というか、余裕なんか全然無かったっての……。
全部終わった後なら少しくらいのんびりと話してもいいんだろうけど、明日の霧の森での最後の1戦……これがある限りはまだ気は抜けないか。
「ジェイ、少しだけ待て」
「……なんですか、ベスタさん。流石に負けたばかりですし、無駄な雑談や駆け引きをする気はありませんが?」
「安心しろ、それは俺もする気はない。ただ1件、確認しておきたいだけだ。例の連中からの妨害工作らしきものはあったか? これに関しての情報は共有しておきたいからな」
「……いえ、明確にそれらしき報告を聞いた覚えはありませんね。まぁされていたとしても、全てを把握出来る状況ではありませんでしたし、精査をするのはこれからになりますが……灰の群集の方はどうでしょうか?」
「精査が必要なのはこちらも同じだが、まぁ大体は似たようなものだ。極端な妨害工作は無かったと考えてよさそうか」
「少なくとも戦況に大きく影響を与えるほどのものは、観測は出来ていませんか。……むしろ、仕掛けてくるならこれからでしょう」
「だろうな。好き勝手に暴れさせるなよ?」
「えぇ、それは分かっていますよ。……それでは失礼します」
「ホホウ、それでは皆さん、また明日なので!」
そう言って、ジェイさんとスリムさんは転移していった。あー、負けてすぐの場合なら転移が使える? 峡谷エリアでは撤退勧告をされて安全圏に転移が出来たんだから、ここなら帰還の実くらいは使えるのかもね。
「わははははは! 勝ったぞ! なぁ、疾風の!」
「文句なしの勝利だな! なぁ、迅雷の!」
「風雷コンビは、無駄に元気だな、おい!」
22時から始まって、もう少し23時か。準備時間が割と長めだったけど、戦闘時間自体は1時間も無かったんだな。……あー、疲れたー。なんで風雷コンビ、こんなに元気なの?
「……疲れた。……最後は……焦った」
「あはは、まさかあのタイミングでジェイさんが出てくるとは思わなかったよね」
「あれは、アルがナイスかな!」
「俺も焦ったからな、あれは。ケイのアップリフトで、あの岩の操作は防げるだろうとは思ってたんだが……」
「その後を警戒してたら、まさかの登場だったのです!」
「……でも……勝てた!」
あー、ジェイさんの登場に焦ったのはみんなも同じだったのか。ランダムリスポーンで間近に誰かが来る可能性は考えてなかった訳じゃないし、カレンが飛ばされてくる事も考慮してたけど……いくらなんでもあのタイミングでジェイさんは想定出来んわ!
というか、あのタイミングでジェイさんがランダムリスポーンしてきたって事は、誰かが仕留めたとこだったんだよな? ……まぁそれが悪い訳じゃないし、色々と運が悪かっただけか。
「そういや、最後の方で閃光を使ったのって結局どうなった? 状況が状況で、俺はその辺を確認出来てないんだけど……」
「あれなら、偽装した部分が黒く残って逆に目立つ結果になったであるよ! 距離があった故に、拙者達は盲目にならなかったである!」
「流石に青の群集も焦ったみたいで、即座に偽装を解除して瘴気魔法を上からぶっ放してきてたぜ?」
「あー、やっぱり瘴気魔法を上から狙ってた感じか!」
刹那さんとジンベエさんは、その辺をしっかりと見届けてくれてたっぽいな。あの閃光は盲目にするのが目的じゃなかったから、青の群集の妨害が出来たのはよかったとこだね。
「焦っての発動だったみたいのと、目立った直後だったからねー! あの瘴気魔法での灰の群集への被害は軽微なもんだよ」
「ちゃんと狙った効果も出てたか!」
「それに、偽装を解除するんじゃなくて、盛大に乱れて落ちていったとこもあったからね。確かサヤさんが投げてた方だし、純粋に盲目になった人もいるじゃない? 銀光の有無が警戒度合いを変えてたみたいだしさ」
「あー、なるほど! だから、サヤの向かった方からスリムさんが飛び出てきた?」
「あ、それはあるかもねー! サヤさんと風音さんの2人だったから、居場所を悟られたと思ったのかも?」
「そういう効果もあったのかな!?」
「……びっくり?」
ふむふむ、少なくとも土の操作Lv10を所持している事に気付いているのは伝わってたはず。そこに青の群集を倒したがってる風音さんと、近接に強いサヤのコンビで突っ込んでいったのを別の狙いだと捉えられた可能性か。
そういう狙いではなかったけど、ハーレさんとアリスさんの連速投擲での銀光が気を逸らす為の陽動だと思われたのかも。表面にコケあるかどうかなんて、あの状況で正確に把握し切れる状況ではなかっただろうしなー。
閃光で夜空への偽装を浮き彫りにする狙いは気付かれず、ピンポイントで危険な相手を見抜いて潰しに行ったと思われた結果があれか。それがよかったのか、悪かったのか……なんとも言えない! いや、結果的に勝ったんだし、それでいい!
「ただね、ケイさん。少なからず、味方でも盲目になった人は出てるみたいだよー。そこで隙が出来て、仕留められたって人もいるみたい? まぁそれは青の群集の方も同じなんだけどさー」
「……あー、やっぱりそういう人も出たか。レナさんから見て、問題はありそう?」
「事前に灰のサファリ同盟を通じて偽装の炙り出し作戦は通達してもらってたけど、状況が状況だったから全員に伝わってたかは分からないからねー。その辺を例の連中が突っついてくる可能性はあるにはあるけど――」
「それならおそらく仕掛けてくるだろうが、何か問題になる心配はいらんだろう。通達した事実があり、それが実際に効果を発揮したからな。そもそもケイを知ってる奴ほど、その辺の巻き込みで文句を言う事もあるまい」
「ベスタ、それってどういう意味!?」
「心当たりはいくらでもあるだろう?」
「まぁ……そりゃそうだけど……」
味方を巻き込む事があっても、それ自体に意味があるって雰囲気を灰の群集の中に作り出した一因の自覚はあるからなぁ……。ぶっちゃけ、そこで文句を言われても今更でしかないのか。
「あ、明るくなり始めてきたかな!」
「23時を過ぎたんだなー。みんな、今日はこの後はどうする?」
「……下手にやろうすれば、明日寝坊しそうな予感がするのです!」
「あはは、確かにそれはそうかもね。ハーレは次に寝坊したら流石に見逃してもらえなさそうだし、この辺で今日は解散でいいんじゃない?」
「ま、普段の終わらせる時間くらいにはなってるしな。明日は最後の1戦があるんだし、もう休んどくのもありだろ」
「流石に疲れたから、それは賛成かな!」
「だなー。風音さんはどうする?」
「……眠くなってきたし……もう寝る」
「ほいよっと」
とりあえず共同体のみんなと、今日の臨時メンバーで動いてた風音さんの意思確認は終了っと。まぁ俺も疲れてきてるから、今日はここで終わらせて寝たいところ。……流石に集中力を使い過ぎた。
「ベスタ、解散してログアウトしても問題なし?」
「あぁ、別に構わんぞ。別に再戦の防衛では命名クエストは発生せんし、特にこの後に何かある訳じゃないからな。戦勝会で騒ぐ連中もいるだろうが、無理にそれに合わせる必要はない」
「わたし達がやった占拠班は負担が大きかったからねー。正直に言えば、わたしも寝たいところー」
「別にレナもログアウトして寝ても構わんぞ? テンションが上がり過ぎて、逆に疲れや眠気が吹っ飛んでる連中もいるみたいだしな。騒動が起きても、どうとでも対処出来るメンバーはいる」
「およ? あー、森林エリアをメインに活動してた人達はそうだよねー。うん、そういう事ならわたしも寝よう!」
色々とはしゃいでいるような声が聞こえてるとは思ったけど、改めて周囲を見渡してみれば、ツキノワさん達の『三日月』のメンバーや森守りさん達の『森林守り隊』のメンバーを中心に大騒ぎになってるね。まぁ特にこのミヤ・マサの森林を守り抜きたかった人達なんだし、勝ってテンションが上がるのも分かる。
時間がこの時間帯じゃなければ、のんびりとしつつカインさんが燃やしてる焚き火で始まったバーベキューに加わってもよかったんだけどな。まぁ今日はもうそこまでの気力はない!
「それじゃまた明日って事で、今日は解散でー」
「「「「おー」」」」
「……うん」
流石に俺も含めて、みんなの声に力がない。まぁ疲れたもんな、今日の1戦。ベスタはまだ残っているみたいだし、とりあえず同じ占拠班の人達に挨拶をして、今日は終わり!
あー、疲れたー! 午前中には赤の群集とも1戦やってるんだから、当たり前か。明日は平日だし、寝坊しないように気を付けないとな。
◇ ◇ ◇
いつものように、いったんのいるログイン場面までやってきた。えーと、疲れてるから手短に済ませたいんだけど、胴体部分の内容は……『競争クエスト、残るは1戦のみ! 勝ち取るのは果たしてどこなのか!?』って、思いっきり煽ってるなー。
しかも勝ち取る群集とは書いてないから、無所属が勝ち取る可能性がありそうな書き方な気がする。まぁ動機はともかく、無所属からの乱入要素っていうのは運営としては想定内の仕様なんだろうね。……明日の最後の1戦、本当にどうなるのやら?
「いったん、ログアウトを頼む」
「はいはい〜。競争クエスト、お疲れ様〜! スクショの承諾は特にないし、このままログアウトで問題ない〜?」
「それで頼む。今日は疲れた……」
「本当にお疲れみたいだね〜。しっかり休んでね〜!」
「ほいよっと」
という事で、いったんに見送られてログアウト。あー、気が抜けて一気に眠気が襲ってきてる。寝落ちしそうだけど、なんとか堪えて風呂に入って着替えるくらいはしとかないと……。
【ステータス】
名前:ケイ
種族:同調激魔ゴケ
所属:灰の群集
レベル 8 → 9
進化階位:成熟体・同調激魔種
属性:水、土
特性:複合適応、同調、魔力強化、魔法耐性、属性強化
群体数 5271/11150 → 5271/11400
魔力値 182/302 → 182/306
行動値 63/121 → 63/123
攻撃 113 → 115
防御 194 → 197
俊敏 140 → 142
知識 326 → 332
器用 380 → 388
魔力 478 → 487
名前:ケイ2nd
種族:同調激強ロブスター
所属:灰の群集
レベル 8 → 9
進化階位:成熟体・同調激強種
属性:なし
特性:打撃、斬撃、強靭、堅牢、同調
HP 12785/15200 → 12785/15650
魔力値 144/144 → 144/146
行動値 111/111 → 111/113
攻撃 472 → 480
防御 432 → 440
俊敏 367 → 374
知識 108 → 110
器用 144 → 147
魔力 73 → 74
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