第1225話 最後の防衛


「このままじゃ、また灰の群集に負ける! 意地でもカトレアを止めろ! 『暴発』!」

「手段を選んでられるか! 『暴発』!」

「暴発を使った相手は避けろ! 乱戦だと味方にまで――」

「そんなの、承知の上でだっての! 『自己強化』! 俺ごと、まとめてやれ!」

「なっ!? ぐふっ!」


「ここで終わらせてたまるか! 『纏属進化・纏瘴』! 『並列制御』『瘴気収束』『アクアクリエイト』!」

「瘴気魔法!? 回避するか防御――」

「間に合わないよ!? うっ、重度の瘴気汚染……!」

「はっはっは! 一緒に戦闘不可になっといてもらうぜ!」


「畳みかけるぞ! 『纏属進化・纏瘴』! 『並列制御』『瘴気収束』『ファイアクリエイト』!」

「おうよ! 『纏属進化・纏瘴』! 『並列制御』『瘴気収束』『エレクトロクリエイト』!」

「防ぐから、誰か合わせろ! 『アースクリエイト』!」

「おうよ! 『アースクリエイト』!」

「ここで負けるくらいなら、戦闘不能になったって構いやしねぇんだよ! 『纏属進化・纏瘴』! 『並列制御』『瘴気収束』『ウィンドクリエイト』!」

「こっちも出し惜しみ無しだ! 青の群集を追い返せ! 『ウィンドクリエイト』!」

「了解だ! 『エレクトロクリエイト』!」


 もう全ての方向から、大規模な戦闘音が聞こえてくる。全然統率されていないけども、終盤も終盤。俺ら灰の群集にとっては最後になるかもしれない防衛戦だから必死に守らなきゃ行けないし、青の群集にとっては必ず阻止しなければならない妨害戦。

 断片的にあちこちから、暴発で味方ごと攻撃したり、纏瘴をして瘴気魔法を使っていたり、そんな青の群集の人っぽい声がかなり聞こえてくるんだけど……。くっ、後の事を考えてない戦法だけど、有効なのは間違いないか!? 


「ケイ、他の対処はその場の戦闘をしている者達に任せろ! 今は止まるな!」

「ほいよっと!」


 このタイミングで偶発的に纏瘴を使う人や暴発の使用が同時に増えたりはしないだろうから、元々そういう作戦として組み込まれた行為のはず。でも、その対処は各自に任せるしかないのも事実か!


「やれ、風雷コンビ!」

「わははははは! 最後に悪足掻きは潰させてもらおうか! なぁ、疾風の! 『高速飛翔』『並列制御』『エレクトロクリエイト』『エレクトロクリエイト』『並列制御』『電気の操作』『電気の操作』!」

「偽装なんて無意味にしてやるよ! なぁ、迅雷の! 『高速飛翔』『並列制御』『エレクトロクリエイト』『エレクトロクリエイト』『並列制御』『電気の操作』『電気の操作』!」

「暴走コンビを落とせ! 『連速投擲』!」

「『アースインパクト』! ちっ、全然当たらねぇ!」


 おー、上空に電気が走りまくってるし、風雷コンビが狙われまくってるけど回避が上手い。てか、お互いの邪魔にならずに、この規模の広範囲に電気を広げつつ、高速で飛び回って回避ってすげぇな!?

 って、あんまりそっちに集中してる訳にもいかないか。これで違和感を覚える程度には分かるようになってはずだけど……そんなに長くは保たないはず。それに流石に風雷コンビへの負担が大き過ぎる。


「だったら、操作を剥奪して――」

「行かせる訳、ないよねー! 『連脚撃』!」

「ちっ、渡りリスか! 囲んで瘴気で動きを封じろ! 『纏属進化・纏瘴』『瘴気制御』!」

「「「「「「『纏属進化・纏瘴』『瘴気制御』!」」」」」」

「およ!?  流石にその数で、それは危険だね!? 『逃げ足』!」

「なっ、この状況で逃げた!?」

「ほーら、当てられるなら当ててごらん?」

「逃すな! 囲め!」

「いや、1人に固執し過ぎるな! 逃げるなら放置でいいし、カトレアを守ってる連中を狙え!」

「およ? 冷静な人もいる感じだねー! 『連脚撃』!」

「なっ、木片を蹴り飛ばしてきた!? 逃げたフリか!?」


 あー、もう! 俺らの近くまで抜けてきてる人もいるし、色々と状況が動き過ぎてて、集中し切れてない! 2班と3班の人がそれぞれ迎撃に動いてくれているし、大急ぎでやらないと!


「サヤ、富岳さん、他から戦力を回してもらう余裕はないから、それぞれで上空まで飛んでくれ! この際、もう閃光は自分で防ぐ方向で頼む!」


 多分、2班と3班にも遠距離での投擲攻撃が得意な人はいるだろうけど、そっちから回してもらう余裕はない。狙われるだろうけど……そこはなんとか凌いでもらう!


<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します>  行動値 107/117(上限値使用:4)


 ……もう少しコケ付き小石はあった方がいいか? 少ないよりは、多い方がいいはず! 


「分かったかな! それなら竜を大型化して――」

「……サヤさんは……上空まで連れていく!」

「え、風音さん、いいのかな!?」

「……閃光なら……防げるから。……それに……サヤさんは……潰すのに集中!」

「それならお願いするかな!」

「狙撃のLvは低いが距離が必要なだけなら、飛ぶので問題ねぇ。距離が足らないなら、遠隔同調で投げ飛ばしてそこから投げればいいだけだ。どうせなら連投擲で大量に投げまくってくるか」

「だったら、集中出来る護衛がいるよな? どうよ、富岳?」

「ケイさん、ディールを連れていって構わんか?」

「あー、それじゃ閃光用の小石を投げるのと、その後の撹乱はサヤ、風音さん、富岳さん、ディールさんに任せた! 上から盛大にクラスター系の魔法をぶっ放しまくってきてくれ!」


 意図してそう割り振った訳じゃないけど、結果的にはサヤ以外の3人がLv10の魔法持ち。無差別にはなるけど、この乱戦なら敵に当たろうが味方に当たろうが、問題なし! 味方に当たった場合だと強化効果だしね。


<行動値を5消費して『増殖Lv5』を発動します>  行動値 102/117(上限値使用:4)


 これだけあれば、多分足りるはず。あ、サヤとハーレさんとアリスさんと富岳さんが即座に石を回収していってくれている。さぁ、下準備はこれで完了だ。


「アリスさん、私達は連速投擲で広範囲をカバーするのです! 私が南側担当するのさー!」

「うん、その方がいいかも! ハーレさんが南側なら、私は北側がよさそうだね」

「それなら俺とディールで西側をやろう。サヤさんと風音さんは東側を頼むぜ?」

「ま、俺は護衛だけどなー!」

「分かったかな!」

「……任せて!」

「それじゃ俺の合図で、一斉に投擲開始で!」

「それ以外のメンバーは、抜けてきた相手への対処だ! あと少し、やり切るぞ!」

「さぁ、暴れるのであるよ、ジンベエ殿!」

「俺らが最後の砦だ。意地でも守り切ってやろうじゃねぇか!」

「俺らの拠点、守り切るぞ!」

「「「おー!」」」

「さて、俺らは俺らでやるか、ヨッシさん!」

「そだね、アルさん!」


 みんなの気合いは十分。カトレアの占拠具合は……かなり進行しているね。もうベスタが指揮をしつつ2班、3班のほぼ全員が戦闘に入っているし……あと少し、凌ぎ切れば俺らの勝ちだ!

 だからこそ、不確定要素になり得るあの偽装の存在を明確に知らしめる。味方も含めて意識が逸れるかもしれないけど、少しでも戦場が停滞して……上への脅威を認識してくれればそれでいい。クラスター系の魔法が加わる事になったから、効果も増すはず!


「それじゃ、最後の作戦を開始!」

「……いくよ、サヤさん。……『高速飛翔』!」

「お願いかな!」

「俺らも行くぜ、ディール! 『跳躍』『遠隔同調』『投擲』!」

「ケイさんの合図と一緒に、足場を作るからな!」


「灰の群集が何か狙ってるぞ! 龍に乗ったクマ!?」

「上空に行かせるな! 撃ち落とせ! 『アースインパクト』!」

「……邪魔は……させない! ……『アースクリエイト』『砂の操作』」


「デカいカンガルーと小さなカンガルー!?」

「同じ種族での同調か!? 何が狙いか分からんが、どっちかを潰せ! 『連速投擲』!」

「当たるかよ! 『移動操作制御』『跳躍』! ディール!」

「おらよ! 『アースクリエイト』『土の操作』!」

「なっ!? 両方のカンガルーが上空に!?」

「同時操作してんのか!?」


 サヤと風音さん、富岳さんとディールさんが、それぞれの手段で上空へと飛び上がっていく。相手に存在自体は気付かれてもいいけど、狙いだけは悟られるな。

 まぁ他の声以外は出来るだけスルーして、関係ありそうな内容に集中して聞こえてくる範囲では問題なさそうだ。高度的にも問題ない範囲まで行ったけど……流石に富岳さんのカンガルーがどっちも上空まで行くとは思わなかったよ。まぁ、問題ないどころか、狙いが読みにくくていいはず!


「ハーレさん、アリスさん、頼んだ! サヤと富岳さんも!」

「いっくよー! 『連速投擲』!」

「いっけー! 『連速投擲』!」

「『投擲』『投擲』『投擲』『投擲』『投擲』『投擲』!」

「次々いくぜ! 『並列制御』『連投擲』『連投擲』!」


 よし、銀光を放ちながら上空へとコケ付きの小石が次々と投げ放たれていく。途中から失速して落ちてくるだろうけど、最後の銀光が減速し始める頃に……よし、タイミングとしては――


「ケイ! 偽装されてた中から、闇の操作に覆われた何かがそっちに行ったかな!」

「マジか!?」

「……位置を炙り出す! ……『ファイアディヒュース』!」


 何か俺らが動き出したのを察知して、その妨害に誰かを送り込んできたか? それとも、これが偽装してた内容の本命か? いや、どちらでもあろうとも防ぎ切るまで!


「風音さん、ナイスだ! 『跳躍』『投擲』『黒の刻印:剥奪』!」


 おぉ! 富岳さんの両方のカンガルーが合流して、風音さんの火で揺らいだ闇の操作に目掛けて小さなカンガルーを投げていった! おし、これで闇の操作は無効化になる! 誰がどういう目的で――


「ホホウ! 闇の操作は破られても、カトレアには死んでもらうので! 『並列制御』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『アースクリエイト』『並列制御』『土の操作』『土の操作』『土の操作』!」

「なっ!? いくつ生成しやがった! ぐっ!」


 ちょ!? 岩の操作の対象になるギリギリのサイズくらいの大きな石が、一体いくつ生成された!? 富岳さんが凄まじい勢いで地面に叩き落とされ……って、考えてる場合か!

 近くにいる味方まで盲目にしないように、俺のロブスターの背中のコケは覆う気だったけど、これはもうそのままやるまでだ!


<行動値を3消費して『閃光Lv3』を発動します>  行動値 99/117(上限値使用:4)


 あ、そういえば地面にも小石へ増殖させる時に広がってるコケがあるんだった。上空だけでなく、思いっきり地面からも眩い光が広がっていってる。ははっ、こりゃいい誤算!


「ホホウ!? こ、これはなんなので!?」


 流石に上空の4方向からあちこちに向けて投げられた小石からの閃光と、地面から同時にきた閃光では混乱もするか! というか、今の喋り方ってスリムさんかよ、土の操作Lv10の持ち主! 多分、この大量の石はそういう事のはず!

 生成した大量の石に隠れてるのか、スリムさんがどこにいるのかが分からないけど、まぁそれはこの際どうでもいい! 勝負を決めにきたっぽいし、これを凌げば俺らの勝ちだ!


「アル、ヨッシさん、ハーレさん! タイミングをズラして、操作を剥奪!」

「了解! 私が最初にいくね! 『高速飛翔』『黒の刻印:剥奪』!」

「ホホウ!? まさか、3人とも持っているので!?」

「そういう事なのさー! アルさん、吹っ飛ばしてー!」

「おう、任せとけ! 『旋回』!」

「さっきのでは消えなかったこれも消すのです! 『黒の刻印:剥奪』!」


 おー、まずはヨッシさんが一気に加速して石に張り付いて剥奪して、その後にアルの尾びれで吹っ飛んできたハーレさんがもう1つを剥奪か。無茶な挙動をするもんだけど、でもまぁナイス!


「へぇ、スリムさんの3rdでカタツムリか。『突撃』『黒の刻印:剥奪』!」

「ホホウ!? でも、まだこれで終わった訳ではないので! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」

「なっ!?」


 げっ!? なんだ、あの質量の岩の操作!? アルのクジラより少し小さいくらいだけど……十分過ぎるほど、凶悪な質量だぞ!? ともかく、今は即座に防御……いや、見た目に騙されるな!

 あくまでこれは岩の操作であって、おそらく応用スキルであってもLv10に至った土の操作ほどの操作時間はないはず! だったら、これで削り切れる!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 98/117(上限値使用:4): 魔力値 299/302

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 96/117(上限値使用:4): 魔力値 296/302

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


<『昇華魔法:アップリフト』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/302


 ウォーターフォールやデブリスフロウじゃ魔法砲撃にしないと押し上げられないけど、アップリフトなら真上へと突き上げられる! よし、なんとか巨大な岩がカトレアに迫るのは食い止め――


「……これは、どういう偶然でしょうか? 『アブソーブ・アース』!」

「ホホウ! ジェイ、そこにいるので!?」

「ちょ!? なんでそこにジェイさんが……ってランダムリスポーンか!?」


 ヤバい、ヤバい、ヤバい! いくらなんでもこの状況でカトレアのすぐ近くにコケだけのジェイさんが来た上に、アップリフトで岩の操作を破壊する前に吸い取られたのはヤバ過ぎる!?


「っ!? スリム、大急ぎでカトレアを!」

「ホホウ、これ以上のチャンスは早々ないので!」

「ちっ! 『自己強化』『重突撃』! ぐっ!?」

「アル!?」


 カトレアとスリムさんの岩の間に、強引に割り込むようにアルが移動していった!? でも、今ので相当ダメージを受けたし、これ以上はマズい! 魔力値は残ってないけど、飛行鎧は使えるようになったからロブスターで――


「よくやった、アルマース、ケイ」

「……え?」

「……ギリギリ、間に合ったか」


 今まさに危険な状態なのに、ベスタは一体何を言ってる? 他のみんなも、戦闘を止めていってるのはなんで――


<競争クエスト『防衛せよ:ミヤ・マサの森林』の進行状況が更新されました>

<浄化の要所を灰の群集『群集支援種:カトレア』が占拠を完了しました>


 あ、カトレアの占拠が完了……? って事は、ギリギリだったけど守り切った……? これ、勝利条件は満たしたんだし、残りは勝利演出だけか?

 あー、そういや結構進行してたもんな。今の攻防の間に、最後まで進みきったっぽい。そこを見てる余裕がなかったよ。


「ほんの僅か、絶好のチャンスが訪れるのが遅かったですか……」

「ホホウ、そのようなので……」


 今のアナウンスが出た事で、スリムさんは岩の操作を解除して、ジェイさんが悔しそうな声でそんな事を言っている。そっちからしたら絶好のチャンスだったんだろうけど、こっちとしては焦ったわ!

 あー、でも運も実力の内だ! 最後の最後はどうなるかと思ったけど、守り切ってのは間違いない! いくらなんでも、あの位置へあのタイミングでジェイさんがランダムリスポーンをしてくるなんて想定出来るか!

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