第1182話 次に何をするか
何か抜けがあるかもしれないけど、とりあえず今の段階での毒魔法の検証は終わり! さて、さっきの最後の内容の報告をして――
「サヤ、今のを報告しにいくのさー!」
「あ、うん! 分かったかな! みんなは、少し待っててかな!」
「ほいよっと! それじゃそこは任せた!」
報告をしに行こうと思ったけど、サヤとハーレさんがやってくれるみたいだね。まぁここまでの報告をしてくれてる状況だし、2人に全部任せた方が変に混乱させなくて済むかもなー。
「ケイ、これからどうする?」
「んー、どうしたもんか……。模擬戦で調べきれてない部分の検証でもいいけど……それは相手が見つかってからだしなー。流石に俺らじゃ、毒を受ける検証には役に立たないし」
「……俺らは別に状態異常への耐性が高い訳でもないからな」
「そうなんだよなー」
決してステータスとしての知識が低い訳ではないから、普通並みの耐性はある。だけど、ヨッシさんみたいに状態異常に特化している人に対抗出来るほどではない。
普通に効くのが分かってる人相手に試すよりも、耐性を持ってる人相手にどれだけ通用するかを試したいんだよね。
「うーん、対戦相手として適任ってどんな人になる?」
「……そうだな。ある程度は毒への耐性は持ってて、その上でヨッシさんへ効く毒魔法を放てる人か。そうじゃないと『トキシシティ・エクステンション』と『トキシシティ・ブースト』の対人戦での運用がどの程度通じるかが分からないだろ?」
「あー、そうなってくるかー。それだと変に物理にも魔法にも偏ってない人がいい?」
「……毒魔法の使える……バランス型の人?」
「まぁ条件的にそうなるなー」
最低限、想定しておくべき相手はその辺り。その上で、ヨッシさんみたいに状態異常に特化してる人相手にどれだけ通用するのかを試してみたいとこだけど……。
「知り合いの中で思いつくのは、ザックさん辺りか?」
「あー、確かにザックさんなら条件は満たせそうかも?」
毒魔法は割と使ってた覚えはあるし、かといって魔法特化って訳でもなかったような気がする? いや、流石に正確なとこまでは把握してないから、そこはザックさん自身に確かめて、手伝ってもらえるかを確認してからか。ザックさんなら都合さえ合えばダメとは言わない気も――
「それはちょっと無理そうだよ? ザックさん、今はログインしてないみたい」
「え、マジか!? あ、マジだ……」
「……流石に都合よくログインしててくれはしないか」
ザックさんなら適任だと思ったんだけど、流石にいないのはどうしようもないかー。そうなると、他に都合が良い人が出てきたらになりそうだな。
「中々、都合が合うかは難しいんですね」
「そりゃまぁなー。みんな、リアルの生活もある訳だしさ」
「……そうなりますよね」
しょんぼりしてるフーリエさんだけど、こればっかりは仕方ない部分だからなー。リアルを蔑ろにしてまでやってたら駄目なもんだよ。
「報告、完了なのさー! 模擬戦については、無理に私達がやらなくても大丈夫って言ってくれているのです!」
「……へ? なんでまたそんな事に……って、あれか!? 毒魔法の内容を見て、取り始めた人が出たりした!?」
「ケイさん、正解なのです!」
「気にはなってたけど、実際に自分で実行に移すのに抵抗があった人がまだ結構いるみたいかな。毒魔法に限らず、色んなスキルでそんな感じみたい」
「あー、まぁそうだよな……」
誰もがどんな効果なのかが分からないスキルに、希少なスキル強化の種を使う事は抵抗はあるか。俺も全然躊躇がなかった訳じゃないし、ヨッシさんだって初めは毒魔法Lv10にする事は考えてなかったしさ。
それでも俺らが、ある意味で人柱的に検証した事が役立ってるのならそれでいいか! やれと強要されれば嫌だけど、自分でやると決めた事だしね。性質が分かってから再現に動いてくれるだけでも良しとしよう!
「そうなると、俺も樹木魔法をLv10にして情報を上げた方がいいのか? いや、海水魔法という手もあるのか」
「……どっちも……気になる!」
おぉ、アルが思いっきり悩んでますなー! でも、俺としてはその決め方には反対だな。わざわざ言わなくてもアルなら分かってそうだけど――
「あー、情報を上げる為に選択するのは無しだ、無し! ここは、慎重に何が必要かで考えていくべきか……」
あ、俺が何かを言う前にアルが自己完結したっぽい。うんうん、そういうとこはやっぱり自分で決めてこそだよな! 旋回Lv10というのも気にはなるけど、俺らの事を気にして考えるんじゃなくて、アル自身が鍛えたいスキルに使って欲しいもんだよね。
「アル、無理に決めなくてもいいからなー! それこそ、今回の競争クエストでは温存し切っててもいいぞ?」
「いや、流石に俺だけそういう訳にも――」
「アルさん、別に私達はそれでも良いのです! だよね!?」
「もちろんかな! アルが悩んでる選択肢の情報が出揃ってからでも、問題はないよ」
「スキル強化の種を持ってるからって、絶対に使ってその成果を報告しなきゃいけない義務なんてないしね」
「……それは……赤の群集の……失敗の原因」
「そうそう! 風音さんの言う通りだぞ!」
「あー、そう言われると何も言えねぇじゃねぇか……」
こういう時には、実際の失敗例になる過去の赤の群集での出来事の説得力が凄いな。しかもその当事者だった風音さんが言うと、更に効果が凄まじい!
「俺らは大した事は出来てないっすけど、いつも情報には助けられてるっすよ! でも、それを当たり前だとは思いたくないっすね!」
「フェルスの言う通りだな! アルマースさん、その辺は気にしなくていいぜ!」
「そうだよ! 強要は良くないもん!」
おっ、ここでフェルスさん達からもありがたい事を言ってくれるな! 情報を提供するのが当たり前だとは、本当に思われたくないからね。それ以上に、誰かのそれを強要する事もしたくないしさ。
「あー! 分かった、分かった! 今は俺のスキル強化の種の使い道については棚上げにしとく! これでいいよな?」
「おうよ! あ、でもアルが使いたいと思ったら、好きに使ってくれよ」
「ま、そりゃ当然の話だな。さて、そうなるとこれからどうする?」
「うーん、どうしたもんか」
元々が予定してなかった空き時間だから、何をするかというのはさっぱり決まってない。とはいえ、青の群集との対戦の時間が不明なんだから、下手に疲れるような大きな動きもしたくはない。
「あ、そういやベスタの方から青の群集の協議の結果報告とかはあった?」
「そもそも、まだ青の群集がサバンナを勝ち取ってないみたいかな?」
「え、マジか?」
毒魔法の検証でそこそこの時間が経ったと思うけど、まさかまだ結果が出ていないとは思わなかった! うーん、何か難航するような要素でも……って、群集の意向に従わない人達が動いてるんだった。
その辺はどうやっても制御が出来ないし、頑張ってくれとしか! まぁ灰の群集の人が勝ち取ってくれてもいいんだよ? 流石に厳しいとは思うけど。
「フーリエ、そろそろLv上げに戻ろうぜ!」
「あ、そうだね。皆さん、それじゃ失礼しますね!」
「これからの健闘を祈ってるっす!」
「応援してるし、参戦出来る時は及ばずながら行かせてもらうぜ!」
「弱くても、何か出来る事はあるはず!」
「その時はみんな、よろしくなー!」
<フーリエ様のPTとの連結を解除しました>
みんながそれぞれに挨拶をしていき、フーリエさん達との連結PTは解除になって立ち去っていった。次にやる事が決まってないのは俺らだけで、フーリエさん達はLv上げの最中だったから、その続きなんだろうね。
「さてと、本格的に俺らは何をする?」
「あー、ちょっと俺の我儘を聞いてもらってもいいか?」
「別にそれはいいけど、どんな内容?」
「さっきのスキル強化の種の話の続きって訳でもないんだが、旋回をLv6に上げておきたくてな? 悩んでる候補の1つではあるから、もし旋回に決めた時にすぐにでも上げられるようにしておきたい」
なるほど、そうきたか。すぐに決める必要はないって事にはなったけど、いざ決めた時にすぐに実行に移せる状況にしてる方がいいのは間違いないか。
「おぉ! そういう事なら賛成なのさー!」
「私もそれで問題ないかな!」
「そうなると、熟練度稼ぎだね。旋回なら、どこかの場所で使いまくる方がいいかも?」
「どうせなら、みんなで色々とスキルの熟練度稼ぎでもやっていくか? あんまり激しくやり過ぎるとあれだけど、対戦形式でさ!」
今のこの時間を利用して、スキルLvを上げていくのはありなはず! 俺としても色々と鍛えておきたいスキルはあるし、これは良い機会だね。ただ、あんまりムキになって疲れ過ぎない程度にはしないといけないけど。
「おっ、ケイのその案はありだな。疲れ過ぎないように全員で同時にやるのは避けて、交代しながらやっていくか」
「賛成なのさー! ふっふっふ、誰とやっても負けないように頑張るのです!」
「私も賛成かな! どういう組み合わせで、どういう勝敗条件にするかを決めないとね!」
「あはは、みんなやる気だ! 疲れ過ぎないように気をつけようね!」
「……対戦形式?」
「最近はあまり出来てなかったんだけど、俺らの中での熟練度稼ぎの方法だなー! 毎回ちょっとルールは違うけど、用意した的に攻撃を当てた方が勝ちとか、相手に攻撃を当てた方が勝ちとか、まぁそんな感じ」
「……楽しそう! ……それ……やりたい!」
「それじゃ風音さんも参加だなー!」
ふっふっふ、強い風音さんとの対戦形式での熟練度稼ぎとは面白い事になりそうだ! ただ、あんまり本気になり過ぎて疲れ過ぎないように気を付けないと……って、あれ? そういえば何か忘れてるような気もするような……?
「あー、目的が決まったとこで悪い。何か忘れてるような気がしてきたんだけど、みんなはなんか心当たりはない?」
「……忘れてる事かな?」
「何かあったっけ?」
「ヨッシの毒魔法の報告はちゃんと終わらせたよねー!?」
「忘れている事……あっ、そういやあれがまだか!」
「アル、心当たりがあったか!?」
俺だけじゃ思い出せなかったけど、みんなに聞いてみて正解だったよ! アルに心当たりがあるみたいだし、その内容を確認だ! 俺らは一体、何を忘れてた……?
「あれだ、刻印系スキルのセットだよ。風音さん以外は、全員全て埋められる状況になったままだろ?」
「それだー! 手に入れた刻印石が放ったらかしじゃん!?」
「完全に忘れてたのさー!?」
「あはは、思いっきり失念してたね」
「みんな揃って忘れてたかな!?」
「……そういう事も……あるよ」
まぁ実際に今、思いっきり発生してたからなー! 毒魔法の検証に意識が行ってて、完全に刻印石の事を忘れてたもんだよ。また忘れないうちに、ササッとどの種類の刻印を使うかを決めてセットしておいた方がいいかもね。
「おし、熟練度稼ぎの前に刻印系のスキルのセットをやっていくか!」
「「「「おー!」」」」
「……少しの間……暇そう?」
「あ、風音さんはそうなるのか……」
うーん、風音さんは成熟体から共生進化になってるから、サヤやハーレさんが使っている『簡略指示』が使えないからなー。共生指示は昇華魔法のバリエーションを増やす為に使ってるし、そこに刻印系スキルを入れるのは厳しい。
「それなら、熟練度稼ぎをしている間に並行してセットしていくのでどうかな? 疲れないように交代しながらにするなら、その時間は確保出来るかな!」
「それはそうなのさー! サヤの案に賛成なのです!」
「私も賛成! 誰が何をセットするかも相談したいしね」
「だそうだが、どうする、ケイ?」
「よし、それで決定で! 風音さん、それで良いか?」
「……いいよ」
ふぅ、忘れてた事を思い出せたし、これからやる事も決定! 対戦形式での熟練度稼ぎは、まずは1対1からにしておいて、その間に刻印系スキルに誰が何を新たにセットしていくかを考えればいいね。
対戦中の2人は会話には参加しにくくなるけど、まぁそこはいざとなれば中断すればいいだけか。別に実戦って訳でもないんだしね。
「まずは誰と誰がやる?」
「ケイ、久しぶりに勝負といこうぜ?」
「アルとか。よし、その勝負は受けた!」
前にやったのっていつだっけ? 全然覚えてないけど……まぁそれは別にいいか。今ここで、アルを負かせばいいだけの事!
「おぉ! ケイさんとアルさんの対決なのさー!」
「……楽しみ!」
「えっと、今回はどういうルールにするのかな?」
「アルさんが旋回を鍛えたいんだし、それに合わせた内容がいいよね。ケイさんは何か鍛えたいスキルはある?」
「俺は土の操作をLv7にするか、ロブスターの攻撃用の応用スキルを鍛えたいとこだなー! 特に土の操作の方が優先したいとこだ!」
その辺のスキルLvが上がってくれれば、俺が出来る事も色々と増えてくる。土の操作Lv7になれば同時操作数が増えるし、大きく違ってくる部分!
「その辺を考慮するなら……ケイは土の操作のみで、俺は通常の移動と旋回のみってのはどうだ? 勝敗は……ケイが俺の蜜柑を1個落とすか、どっちかの行動値切れで決定だ」
「それでいいぞー。あ、でも1つだけ確認。アルは浮いた状態で?」
「まぁそこは流石に降りたままでは出来んからな。あ、ケイの方の飛行はどうする?」
「そこは特に何も無くていいぞー! 土の操作が使えるなら、どうとでもなるし」
「……違いねぇな。よし、とりあえずこれでルール設定は完了だ」
「だなー。誰か開始の合図を――」
「はい! それは私がやるのです!」
「それじゃハーレさんに任せた!」
「任されました!」
さーて、今回はお互いに操作のぶつけ合いではない内容だけど、確実にアルの蜜柑を落としてやろうじゃん! 切り落とす事で採集の判定になるし、内容的には問題なしだな!
――――――
電子書籍版、第5巻が完成!
今回はちょっと予約販売にするので、良かったら予約してください。
詳細は近況ノートにて!
AmazonのKindleにて、モンエボで検索すれば出てきます。
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