第1116話 狙いたい新たなスキル


 成熟体への進化をしてから、やる事が色々ありすぎる! いやまぁ急がずにまったりとやってもいいんだけど、折角の大規模イベント中だし、やれる事はやっておきたいしなー。

 だからこそ情報共有板の方で検証を任せてきた案件もあるけど……って、それで勝ち抜いたのが風音さんだった!? あー、もうそこは他のトーナメント戦で勝ち抜いた人や、温存してた人に任せるしかないな。それはともかくとして……。


「光魔法は普通に欲しいんだよなぁ……」

「確かに闇魔法対策として持っておきたい魔法だな。PTで考えるなら、闇魔法の方も欲しいとこだが……」

「そこはまぁ、今は風音さんがいるからなー。それで普通に会話に混じってきてるけど、アルの方の成果は?」

「ここのエリアの敵は成熟体で最低Lvは8、最大Lvが15まで今の段階では確認されているそうだ。それと川で何かに食われて瞬殺されたという報告は上がってきていたぞ。さっきの悲鳴は、その報告を上げた人みたいだな」

「あー、そういう感じか!」


 まだ完全に確定って訳でもないだろうけど、最大でLv15の敵が確認されているのなら進出したての成熟体の人には厳しそう。成熟体の敵なら群雄の密林でも出てくるんだし、しばらくはそっちでLv上げをする人が多そうだよな。人が少なかった理由はその辺か。

 でも最低がLv8くらいなら、俺らは一応進めなくはない? さっきの蔦くらいなら、相性が悪くなさ過ぎなければ俺らなら倒せる範囲のはず。ちょっとハードにはなるけど次の1戦に向けて、ここでLv上げもありか?


「アルさん、フィールドボスの可能性についてはどうですか!?」

「出現する可能性はあるが、あちこちで同時に色んなことが動いているから人手が回せないんだとよ。ベスタとかレナさんとかは、峡谷の方へ偵察に行ってるらしいぜ。あぁ、そうだ、ケイ」

「ん?」

「瘴気汚染・重度の状態で纏浄を使うとどうなるかの検証は、これから行うって話になってたぜ。俺らが実況してたのとは別のトーナメント戦で優勝した人を中心にやるそうだ」

「おっ、それは朗報じゃん!」

「……そういえば……それがあった。……すっかり忘れてた」

「まぁ別に優勝者が絶対にやらなきゃいけない事でもないしな。そもそも風音さんは、少し前まで『瘴気の凝晶』も『浄化の輝晶』も持ってなかったから無理な案件だぜ?」

「……そうだった」


 さっき気にしてた事だけど、他のトーナメント戦で実行出来る人が出たんだな! 今の風音さんなら実行可能にはなったけど、それは結果論なだけだしねー。あれは他の人に丸投げしてしまった案件だけど、これで結果が出てきたらありがたい。


「それでだ、可能ならフィールドボスかどうかの確認を頼まれてるんだが……どうする? おそらく、Lv差的にはかなり厳しい可能性もあると思うが……」

「そんなもん、行くの一択だろ! 川にいるのなら、水属性の魔法持ちの可能性だってあるぞ! もしそうなら、こっちのもんだ!」

「なるほど、ケイのアブソーブ・アクアが有効な相手なら……Lv差も覆せる可能性はあるか」

「そういう事! もし物理型でも、今は風音さんもいるから魔法の手数は多いぞ!」

「……任せて」


 アルもヨッシさんも魔法メインでも戦えるんだし、人数的にもフルPTだ。フィールドボスの連戦なら連結PTの方がいいけど、1戦だけなら1PTの方が小回りが利くからやりやすい。

 それに、いくらなんでもフィールドボスがアブソーブ系のスキルを使ってくる事はまだ無いはず。進化階位は同じだろうし、ダメージが通るのなら倒せる可能性は十分ある。というか、同じ進化階位相手なら負け前提で突っ込む気はない!


「という事だが、サヤ達はどうだ?」

「賛成なのさー! 川にいる敵の正体、見極めるのです!」

「私も賛成かな! 見つからないなら仕方ないけど、初めから逃げるようなのは嫌だしね」

「必要以上に時間がかかりそうなら撤退でいける? それなら私も賛成だけど」

「ケイ、その辺はどうだ? 俺としても、長期戦になるのは避けたいが……」


 長期戦になりそうなら撤退か。まぁそこは無理に時間をかける必要はないとこだし、フィールドボスが存在するかどうかの確認をメインの目的と考えておいた方がいいかもね。負けるつもりはなくても長期戦になる可能性は否定は出来ないし、ヨッシさんの気持ちは分かる。


「それじゃ長期戦になりそうなら撤退するって事で! 川まで偵察に行くぞ!」

「「「おー!」」」

「……うん!」

「おし、それじゃそう書き込んでくるわ」

「ほいよっと」


 さーて、とりあえずの目標は決定。既に悲鳴を聞いてから結構経ったけど、上手く見つけられると良いんだけどな。既に全く違う場所に移動済みとかは勘弁してほしい……って、あれ? そういえば……。


「もしフィールドボスなら、討伐称号が狙えるかもしれないな。もの凄い長期戦にならない限りは、新スキルを得るチャンスかも?」

「はっ!? そういえばそうなのです!?」

「ここなら『河口域の強者を打ち倒すモノ』になるのかな?」

「法則的にはそうなりそうだけど……未成体と成熟体で称号が同じ法則かは分からないよね?」

「あー、その可能性もあるか!」


 今ヨッシさんが言った事で気付いたけど、必ずしも同じ法則が当てはまるとは限らないもんな。その辺の確認をするって意味でも、成熟体のフィールドボスを見つけて倒してしまいたいところ。

 なんか結局、やってることは検証になっていくなー。まぁ戦いながらの検証と、スキルの性質の把握の検証じゃ感覚は全然違うし、検証が嫌いな訳じゃないから問題なし!


「……分からない事だらけなら……試すしかない」

「はい! 今のうちに、取りたいスキルの整理をしておくのがいいと思います! 私は拡散投擲と連速投擲の応用連携スキルが欲しいのさー!」

「ハーレ、それならスキル強化の種を拡散投擲に使う感じ?」

「……そこが悩みどころなのです。多分だけど『Lv3以上の連撃かチャージの応用スキル』以外でも取れる条件はありそうな気がするのさー!」

「あー、そういえばそんな話もしてたっけ。不確定だけど、推測自体はあるって話だったよな? あれって具体的にどんな内容?」

「えっと、2種類の同系統の応用スキルがLv4になっていれば組み合わせになるスキルが勝手に手に入るって内容だったかな?」

「サヤ、それは誤情報だったっぽいぞ。そうだったらいいなーって話してたのを偶々聞いたのが、推測として上がってたらしい」

「え、そうなのかな!」

「ついさっき、ちょうど話題に出てたとこでな。実際にそれでは取得出来なかったそうだ」


 あー、なるほどなー。必ずしも全部の情報が事実ではないのは分かってる事ではあったけど、願望が推測情報の中に混じってしまってたのか。

 まぁ不特定多数の人から情報が上がってくるんだから、不確実な情報が混ざるのも仕方ない。その辺の情報の精度を上げて確定情報にする為に、再現や検証をしてる人達もいるんだしね。


「サヤ、他にも可能性はあるはずなのです! Lv4はハードルが上がってるから、もっと気軽に取れる方法があるはずなのさー! 応用魔法スキルにあるんだから、応用連携スキルにもあるはずなのです!」

「その意見には俺も同意なんだが、その辺はもう確定に近い情報がまとめに上がってきてるっぽいぞ。まだ俺も見てないが……」

「「えっ!?」」


 おー、思いっきりサヤとハーレさんが顔を見合わせてるね。というか、それは俺も普通に気になる。条件次第では、俺のロブスターの方でも応用連携スキルが取れそうだしね。


「ハーレ、どうするかな?」

「ここは素直に確認するのさー! 折角の称号の取得チャンスを逃す手は無いのです!」

「……確かにそれはそうだよね。アル、教えてもらってもいいかな?」

「それは別に良いんだが……俺もまだ見てないぞ?」

「「あっ」」

「それなら各自で確認すれば良いんじゃね?」

「うん、私もそう思う。サヤ、ハーレ、少し慌て過ぎだよ?」

「……2人とも落ち着こう?」

「「……あはは」」


 バツが悪そうにサヤとハーレさんがあらぬ方向を向いてるよ! いや、まぁ俺もツッコミば入れたけど、今の流れ的にアルに聞きたくなる気持ちも分かるけども!

 とりあえずみんながまとめを確認し始めたっぽいし、俺も確認しとこ。条件的に可能そうなら、俺も応用連携スキルの取得を狙いたい。まぁフィールドボスいるという前提にはなってくるけども。


 えーと、まとめ情報は……『上位の応用スキルの取得方法』って項目があるから、ここからか。その中に『応用連携スキルの取得方法』と『応用複合スキルの取得方法』と『応用魔法スキルの取得方法』の3つに分かれているね。

 今確認するべきは『応用連携スキルの取得方法』だから、その項目を選択! どれどれ……? あー、なるほど、こういう方法か。奪い合いになってた時じゃ絶対に無理な手段だな。うーん、要求Lvのハードルは下がってるけど、それでも俺のロブスターでは取得は無理っぽい。

 応用複合スキルの方も気にはなるけど、こっちはどうなんだ? 色んな種類のを使ってる人を何人も見たけど、今の状況では取れる気もしないんだよな……。まぁ具体的な取得条件、まだ知らないんだけど。


「おぉ!? 『連携させたい応用スキルをそれぞれ2回ずつ発動してダメージを与える』になってるのさー!」

「でも『魔力集中の使用時に、Lv2以上での発動が必須』ともなってるかな?」

「称号に重ねる必要もあるみたいだし、これは敵を選ばないと結構厳しそうだね」

「……耐久性のある敵が……相手として好ましい?」

「この感じだとそうなるなー」

「フィールドボスがもし存在するなら丁度良い相手だな。まぁそれを狙うなら確実に倒す必要も出てきたが……」

「あはは、確かにそれはそうだね」


 サヤとハーレさんがそれぞれに新しい応用連携スキルをこの方法で取るなら、Lv2で発動した応用スキルでの攻撃を合計8発は発動しないといけない。それぞれに再使用時間が発生するし、雑魚敵では2人同時は無理な可能性は高い内容だ。

 だけど、フィールドボスなら普通の個体よりも明確に耐久性は高いもんな。こういう条件なら、物理型の方が都合が良いか?


「……あはは、私は条件を達成出来る応用スキルがないかな?」

「え、そうなのか? サヤならLv2の応用スキルを持ってるものかと思ってたけど……」

「Lv2は今は1つもないかな。爪刃双閃舞と連閃はLv3なんだけどね」

「そういう時こそ、スキル強化の種の使い所なのさー!」

「流石にLv2に上げるのに使うのは微妙かな……。それなら爪撃をLv7に上げてLv10に……あ、爪刃乱舞がLv7になってるし、これをLv10にするのもありかも? うーん、もうちょっと考えさせて」

「ちょい待った! 考えるのはいいけど、サヤの爪刃乱舞ってLv7になってたのか!?」

「え? 言ってなかったかな?」

「初耳なんだけど!?」


 ちょ、サヤの場合は連撃の使用頻度が高いってのがあるだろうけど、まさかの爪刃乱舞をLv10に出来る状態だった!? 爪撃Lv10が行動値の回復に転じる効果だけど、爪刃乱舞がLv10になったらどういう効果が出るんだ? スキルとしては爪撃より爪刃乱舞の方が強力だから、流石に行動値の回復にはならないか?


「地味に俺も初耳なんだが……サヤは話した覚えがあるのか?」

「覚えはあるけど……あれ? もしかして、ゲーム外でヨッシとハーレだけに言ってたかな?」

「私は聞いた覚えはあるのです!」

「いつ聞いたかまでは覚えてないけど、ケイさんとアルさんが聞いてないならそうかも?」

「……あはは、ケイ、アル、ごめんかな?」

「いやまぁ良いけどさー」

「まぁそういう勘違いもあるか」


 そういう事なら、サヤが言った覚えがあるのに俺やアルが聞き覚えがないって話にもなるよな。サヤ達がゲーム外で具体的にどんな会話をしてるのかは知らないけど、そういう時にもゲームの話題は出てるんだろうね。その中で話したって事なんだろう。


「……みんなは……リアルで知り合い?」

「アル以外はそうなるな。まぁ完全にリアルでの知り合いか怪しい部分もあるにはあるけど……」


 ハーレさんは俺の妹だし、ヨッシさんとは引っ越す前に少なからず面識はある。サヤとはリアルでは会った事はないけど、VR空間でほぼ素顔の状態で会ってはいる。というか、まだハーレさんとサヤもリアルでの面識は無いんだよな。うーん、改めて考えると複雑ですなー。


「……色々と複雑? ……詮索はしないでおくね」

「別に隠すような内容でもないけど……まぁ風音さんがそれでいいなら別にいいか」


 隠すような内容ではなくても、聞かれていないのに喧伝するような内容でもないからなー。風音さんが詮索しないというなら、あえて説明しなくてもいいか。


「あ、そうだ。アルはこの手段では取得出来そうなのはあるのか?」

「ん? 俺か? 砲弾重突撃と旋転連突撃がLv2だから、そこが狙えるな」

「なるほどね。ヨッシさんは応用魔法スキルが魔力値を大量に使う方で狙えるよな?」

「あ、うん、そうなるね。氷にするか雷にするか悩むとこではあるけど」

「おし、それじゃ今回はアル、ハーレさん、ヨッシさんの3人で狙えるようにやっていくか! サヤ、風音さん、それでもいいか?」

「私は条件的に無理だから、問題ないかな!」

「……同じく」

「あ、そういや風音さんも条件的に駄目なのか」


 風音さんが取れそうな応用魔法スキルって、黒い龍で砂岩魔法か、トカゲで清水魔法になるはず。だけど、属性は得てないからそこで条件的に弾かれるもんな。

 火の纏属進化でその辺の条件を突破しようと考えてたけど、それを試す前に火魔法Lv8で炎魔法を取得した状況だしね。って、ちょい待った。こっちの可能性を忘れてるから、確認しとこう。


「風音さんは水属性か風属性の進化の輝石……あー、使い捨てじゃない方は持ってない?」

「……どっちも持ってない。……でも、別に気にしなくて良いよ?」

「まぁそう言ってくれるならそうするか」


 今から交換しに戻るという手もあるけど、それは風音さんが良しとはしなさそうだなー。現地調達は……あぁ、場合によっては可能だな。まぁでも、それは本気で運次第か。


「おし、それじゃ川に向かって出発! 目指せ、3人分の新しい上位の応用スキルの取得!」

「おー! スキルの取得、頑張るのです!」

「少し時間がかかっても、やる価値は出てきたね。でも、長くなり過ぎない範囲が良いけどさ」

「まずは敵の確認からかな!」

「ま、フィールドボスだとまだ確定してる訳でもねぇからな。行動値は温存でいきたいから、速度は落とし気味でいくぞ」

「……今のうちに行動値は全快させたい。……小型化、解除」


 みんなのやる気は十分だな! さーて、成熟体での初めてのフィールドボスとの遭遇の可能性がある川へと行こうじゃないか! これでただのLvが高いだけの雑魚敵だったら拍子抜けだけど、そこは確認しに行くまで分からない。

 もし本当にフィールドボスなのだとしたら、全力で俺らの強化に利用させてもらうまで! 出来れば、現実的な時間で倒せる範囲でお願いしたい。1番避けたい展開は、太刀打ち出来ずに壊滅か敗走になる事だけどね。

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