第1112話 トーナメント戦を終えて
風音さんの優勝で今回のトーナメント戦は終了! どの対戦も見応えはあったし、色々と参考になるものだった。紅焔さんと風音さんの対戦は見れなかったのは残念だけど……なんかまた喧嘩になりそうな予感。
「3人ともお疲れさん。実況と解説は本当に助かるぜ」
「あ、桜花さん! お疲れ様なのさー!」
「俺はただ中継を流してるだけだから、特にこれといって何かしてる訳でもねぇがな」
「いやいや、桜花さん。不動種の人じゃないと中継は出来ないんだし、そこは大事なとこだぞ!」
「ケイの言う通りだな。その辺は役割分担ってもんだぜ?」
「ははっ、そりゃそうか。さて、一応ダメ元で聞いてみるんだが……この後の中継も実況や解説をしていく気はあるか?」
「気持ちとしてはやりたいけど、他にもやる事があるのでごめんなさい!」
「おぉう? ハーレさんが即答とは思わなかったが……そういう認識で良いのか?」
「あー、その辺はまだ相談してない部分なんだけど……」
俺としても、ここでハーレさんが即答してくるとは思わなかった。でも、その辺はみんなと相談するつもりでいた部分だし、他の事をしようと提案するつもりではあったからな。
「俺としてはハーレさんの意見に同意なんだけど、みんなはどう?」
「俺も同意だな。このまま夜まで実況と解説でも構わんが、流石にそれだとサヤとヨッシさんが暇過ぎるしな」
「え? あ、確かにそうかも? 私はケイさんとアルさんみたいに解説出来そうにないし、サヤはそもそも苦手だもんね」
「……あはは。色々と他にもやりたいし、ハーレに賛成かな」
「そういう事なのさー!」
なるほど、ハーレさんの言葉はサヤとヨッシさんの事を配慮した上での返事だったんだな。まぁ同じ共同体だからって理由で、特等席になる実況席で見続けるのもそれはそれで居心地が良いとは言えないだろうしね。桜花さんには申し訳ないけど、みんなの意見はこれで一致。
「という事だ、桜花さん。悪いな」
「良いってことよ、アルマースさん。今回のトーナメント戦の決勝トーナメントを実況ありに出来ただけでも充分だし、競争クエストの主戦力の1つの共同体に無茶を頼む気もねぇからな」
「また今度、時間がある時にねー!」
「おう、その時はまた頼むぜ、ハーレさん!」
どうやら桜花さんとしても決勝トーナメントの間だけのつもりだったっぽい。まぁ俺らとしても次の競争クエストに向けて色々と強化をしていかなきゃいけないとこではあるし、ここはこれで――
「だったらその実況役、しばらく俺らがやろうじゃねぇか!」
「ん? お、いいのか、紅焔さん?」
「おう! このまま負けて終わりって訳にもいかねぇからな!」
なんかすごいやる気に満ち溢れてる紅焔さんが樹洞の入り口にいる!? 森林エリアの方にいるって話だったけど、こっちまで移動してきてたのか。あ、飛翔連隊の他のメンバーも続々とやってきてるね。
「……紅焔、自分が優勝するまで続ける気だよね?」
「もちろんだぜ、カステラ!」
「その間、僕らが実況や解説かい? まぁ別に僕はいいけど、ライルと辛子はどう?」
「どうせなら、ソラ以外は全員参加ってのはどうだ?」
「それは良いですね。用途を限定していないトーナメント戦に参加しましょうか」
「おっしゃ、誰が勝っても恨みっこなしのガチ勝負だ! 桜花さん、その合間で空いてるメンバーで実況をやってくぜ! 少なくともソラは完全にフリーだからな!」
「……途中で負けた人が……何か言ってる」
「なにおう!? くっ、風音さんか……!」
あ、風音さんも戻ってきた。いやまぁそれは事実だけど、無茶苦茶悔しがってるよ、紅焔さん。今の、地味に切れ味の鋭い一言だよなー。紅焔さんに勝った富岳さんに、風音さんは勝った訳だしね。
「風音さん、あんまり無茶な事は言ってやるなよ?」
「……桜花……うん、分かった。……紅焔さんの対戦は見てた。……切り札を引き出してくれて……ありがと」
「そこで感謝されても嬉しくねぇよ!? そこ、俺の負けた手段じゃん!?」
「……感謝したのに……怒られた?」
「だー!? 無自覚かよ! くっそ、すぐに火魔法Lv10に追いついてやる! 風音さん、火魔法Lv10にする気で良いんだよな!?」
「……そのつもり。……それ以外は……もう無理」
「おし、だったらお互いに火魔法Lv10になったら模擬戦で直接対戦だ!」
「……いいよ。……完膚なきまで、叩き潰す」
「その言葉、そっくり返そうじゃねぇか!」
おー、喧嘩になりそうで微妙に喧嘩にはならずに、模擬戦での対戦が決まった。この条件だといつやるかは紅焔さん次第だけど、まぁどこかのタイミングでやるのは確実か。その時に時間が空いてれば、是非とも見たいとこだね。
「ほほう、ドラゴン同士の対決が確定か!」
「どっちも見応えはあったし、都合が良けりゃ是非とも見たいとこだな」
「これから飛翔連隊が実況してくれるのもありがたい!」
「ほんと、解説出来る人ってそう多くはないもんな」
「桜花さん、ドラゴン対決は中継はしてくれるか!?」
「是非とも見たい!」
「ん? 俺がログインしてて、時間の都合さえ合えば中継はやるぜ」
「おっしゃ! その場合の実況は飛翔連隊か?」
「それはその時次第じゃね?」
「あー、まぁそりゃそうか」
なんかハーレさんがウズウズしてるけど、紅焔さんと風音さんの対戦の実況をやりたいのかもね。でもその時の状況次第だから、ここはまだ触れずにおこう。まぁ場合によっては実況はハーレさん、解説は飛翔連隊の誰かって組み合わせもいけるかも?
「……紅焔さん、対戦に条件追加」
「ん? どんな内容だ?」
「……桜花がログインしていて……実況が出来る状態の時。……これは絶対条件」
「あー、それは問題ねぇぜ!」
「……それなら……それで決まり」
「随分と懐かれてんな、桜花さん!」
「新入りなのに、随分と馴染みがある感じだな?」
「あー、その辺は俺が移籍してくる前に色々あってだなー」
なんかここに集まってるギャラリーの人達から、桜花さんが質問攻めにあってるなー。まぁ風音さんと桜花さんが青の群集にいた際の知り合いだったって事を知らない人からしたら、新入りの風音さんと移籍出来るようになってすぐ移籍してきた桜花さんが仲良くしてるのは不思議だろうしね。
「……桜花、火魔法Lv10にして色々試してくるね」
「お、風音さん、もう行くのか。楽しんでこいよ!」
「……うん! ……みんなはどうするの?」
「あー、とりあえず場所を移す?」
「だな。ミズキの森林……いや、いっそ群雄の密林に行くのもありか」
「アルさんに賛成なのさー!」
「それは私も賛成かな!」
「まともに占有エリアになってから見れてないし、様子を見に行くのもいいかも?」
「おし、それじゃ群雄の密林に移動で! 風音さんも一緒に来るって事でいいのか?」
「……みんながいいのなら!」
「大歓迎なのさー!」
「そういう事なら、ほらよ!」
「……アルマースさん、ありがと」
<風音様がPTに加入しました>
おし、これで風音さんが今回の臨時PTのメンバーになった。まぁ今日は午前中から引き続きって感じだけど、この方が色々と都合は良さそうだ。アブソーブ・ファイアの取得も見れそうだしね。
「桜花さん、それじゃ行ってくるわ! てか、みんな通してくれー!」
「おう、頑張ってこいよ、グリーズ・リベルテ! みんな、通してやってくれ!」
「次の競争クエストも期待してるぞー!」
「占有エリア、勝ち取ってこい!」
「俺も戦力になる為に、今は実況を見て動きを覚える! 魔法Lv10を目指してるだけあって、参戦してる人は強い人が多い!」
「なんだかんだで、色んな種族の倒し方の参考になるしな!」
「飛翔連隊、解説に期待してるぞ!」
「おう、任せとけ!」
いつまでもここに居ても話が進みそうにないから、通れるスペースを空けてくれたからそこを通って桜花さんの樹洞から脱出! 俺らと入れ替わりで、紅焔さん達が実況席に収まっていった。
俺としても色々参考になったけど、倒し方についてはみんなの参考にもなってるんだね。そういう意味では、やっぱり実況と解説って結構重要なんだな。まぁそれは今はいいとして……。
「さてと、森林エリアに行ってから群雄の密林まで行きますか!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
具体的に何をするかは、現地に着いてから考えてもいいだろう。群雄の密林の現状の確認はしたいし、刻印系スキルの取得もしておきたい。あ、ザックさんが偵察に行った赤の群集と青の群集の対戦の状況も気になるね。
他にも安全圏に出現してる移動の妨害ボスも可能なら倒しておきたいし、風音さんの火魔法Lv10もやらないとなー。あー、峡谷の方の確認にも行きたいところ。やる事が多いけど、みんなで相談して順番にやっていこう。
「それじゃアル、移動は頼んだ!」
「おう、任せとけ!」
という事で、いつものようにアルのクジラの背に乗って移動開始! とりあえず目指す場所は、午前中に勝ち取ったジャングル……今は群雄の密林だ!
◇ ◇ ◇
<『始まりの森林・灰の群集エリア1』から『群雄の密林』に移動しました>
森林エリアを経由してやってきました、群雄の密林! 地味に転移先は安全圏とここの2ヶ所が選べたけども、とりあえずはこっちの方へ移動!
いやー、川の中に鳥居があるのはなんとも不思議な感じ。鳥居の横には成熟体に進化したマサキと、木のミヤビが一緒にいるんだな。どっちもNPC表記の緑色のカーソルのなってるんだね。これまで全然気にしてなかったから気付かなかったけど、集中して見ると緑色のカーソルの真ん中に灰色の線が浮かび上がってくるんだな。これで灰の群集ののNPCって事が分かるのか。
それにしてもこのミヤビの姿って、常闇の洞窟の中にいるエンの分身体に似てる気がする。ミヤビは安全圏とこの鳥居の近くの両方に出てるのか? まぁ今はそれはいいとして……。
「結構混んでるなー」
「競争クエストに参加してなかったか、参加しそびれた人が集まってきてる感じだな」
「でも、思ったより灰のサファリ同盟の人は少ないのです!」
「トーナメント戦の開催の方に回ってるんじゃない?」
「そっちに行ってない人が手分けして、こっちの整備もやってる感じかな?」
「……そうなの? ……結構多い気もするよ?」
「風音さん、灰のサファリ同盟はかなりの大所帯なのさー! 今見えてるのは、一部の人達なのです!」
「……そうなんだ?」
城塞ガメとの戦闘になった付近では、焼け残った木の撤去とか地面の整地が行われてるもんなー。結構な人数はいるような気はするけど、それでもこれはあくまでも一部なのか。うん、灰のサファリ同盟の総人数を知らないからなんとも言えない!
でも、この辺は戦闘の余波で木々がかなりダメになってるけど、逆にいい広間が出来そうな雰囲気でもある。マサキのすぐ近くだし、新エリアでのいい拠点になりそうだ。
「おい、聞いたか? 競争クエストの最中では取れなかった『ジャングルを荒らすモノ』の取得が可能になってるってよ」
「え、マジか!? 上位の応用スキルを手に入れたかったし、それはありがたい!」
「ここのマップの全踏破も兼ねた刻印石の収集PTを募集中! 情報ポイントは手に入らないけど、刻印石が欲しい人やLv上げをしたい人は集まれー! 敵をひたすら倒していくぞー!」
「おっ、そのPT、加入希望だ!」
「私もお願い!」
「俺も頼む!」
「PT加入、3名様ご案内ー!」
ほほう、刻印石の収集PTの募集とかもあるんだね。それに『ジャングルを荒らすモノ』の手に入るようになってるのは嬉しいとこだな。でも、流石にこの周辺は人が多くて、あちこちから色んな会話が聞こえてくるから、相談するには微妙か。
「アル、どの方向でも良いから適当に移動してくれ」
「ん? マサキからアイテムの取引が出来るかどうかの確認は良いのか?」
「あ、そういやそうだった」
混雑してたから後回しにしようとしてたけど、別に直接話しかけなくても取引は出来るんだからこのままでも問題無かったよ。むしろ、これは移動の前に終わらせておく内容かー。
「それじゃ移動するのは、その辺の確認をしてからで!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
さてと、ミヤ・マサの森林では色々なレアアイテムのトレード争奪戦になってたというマサキだから、ここで何かしらの新アイテムのトレードが可能になってる可能性はある。えーと……あ、個数制限無しで常設してるのと、個数限定の早い者勝ちの2種類の項目があるっぽいね。
個数制限無しの方は……お、成熟体用の各属性の進化の軌跡の結晶があるじゃん! あー、でも1個で情報ポイント100も必要なのか。使い捨てでこれだと、まだまだ気軽に手に入れられる段階でもないなー。
「あぅ、個数限定は1個も残ってないのです!?」
「あはは、まぁ残ってる訳もないよね」
「勝った後、すぐに確認すべきだったかな?」
まだ個数限定の方は見てないけど、まぁなんとなくそんな予感はしてた。マサキは場所が変わって、成熟体へと進化しても、その辺の争奪戦の場所になるのは変わらなさそうだね。
「……『瘴気の凝晶』と『浄化の輝晶』がある。……取っておくべき?」
「ん? それは常設で……って、それぞれ情報ポイント500になってる!?」
「お、マジだな。これ、群集拠点種じゃ情報ポイント2000じゃなかったか?」
「……かなりお得? ……これならなんとか足りる」
「どこで使うか分からないし、取っておくべきかな!」
「……それなら……取っておく」
ここで『瘴気の凝晶』と『浄化の輝晶』の交換レートが良くなったのは、やっぱり用途があるからか? これ、群集拠点種の方での交換レートも変更になってたり――
「……どっちも……交換出来た。……トーナメント戦の待ち時間で……エンで見てた時は……情報ポイントが足りなかった」
「あー、占有エリアになったからこその特典か!」
「……占有エリア、いいね」
むしろこの場合は足りてなくて良かったかもしれない。群集拠点種の方の交換レートが変わってないのなら、両方揃えようとしたら情報ポイント4000も必要だしなー。
えーと、他には……特にこれといってめぼしいものはないか。目玉商品は、既に誰かが交換した後だろうしね。
「さてと、それじゃここは混雑してるし、確認も済んだから少し移動するか!」
「「「「おー!」」」」
「……うん!」
広い占有エリアを手に入れたんだし、これからどうするかを話し合うのを混雑してる場所でする必要もない。という事で、移動開始!
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