第1069話 これからの予定
アルとやった検証の為の模擬戦は終わったので、みんなの待っている桜花さんの所へと戻ってきた。まぁエンと桜花さんは結構近いからあっという間に到着だね。まぁそれはいいんだけど……。
「全部の属性を3キャラで分けて取るって節操なさすぎじゃねぇか、風音さん?」
「……そういう紅焔さんこそ……火属性に拘る割に……バランス型。……中途半端じゃない?」
「俺はドラゴン自体にも拘りがあるんだよ! 魔法だけに絞れるか!」
「……拘りがあるのは……こっちも同じ! ……だから3キャラで……分散させようとしてる! ……火属性とドラゴン……それぞれに分ける手もある!」
「そこはワンセットじゃないと駄目なところだろ!?」
うん、移動中にPT会話でそんな片鱗は聞こえてはいたけども、樹洞の中に入ったら更にヒートアップしている。なんというか赤い龍と黒い龍で争ってるのは、パッと見た感じでは迫力はあるんだけど……内容はただのお互いの拘りの部分だなー。
いや、拘りがあるのは別に良いんだけど、なんでそこで喧嘩になってるんだ? というか、この組み合わせで喧嘩が発生するとは思ってなかった。
「あー、どうすんだ、これ?」
「……さぁ?」
アルが聞いてきたけど、俺にどうしろと? 頭を冷やさせる為にウォーターフォールでもぶっ放す? てか、ここなら止められそうなレナさんや桜花さんが……って、その2人がなんかコソコソ話をしてるー!? あ、いつの間にレナさんは連結PTからも抜けてるし!?
「あ、ケイさん、アルさん、おかえりー!」
「2人とも、お疲れ様かな!」
「普通に言ってきてるけど、紅焔さんと風音さんは放置してていいのか!?」
「「……あはは?」」
サヤもハーレさんも揃って顔を逸らしてるんだけど、一体何があった!? え、なんかダイクさんは疲れ果てたように突っ伏してるし、冗談抜きで今はどういう状態!? ソラさん達も止めようとする気配もないし、他の人達もスルー? なんで!?
「ヨッシさん、何があったんだ?」
「えっと、なんて言ったらいいんだろ? 桜花さんが風音さん相手だと止めるに止められなくて、それなら後々の為にいっそ大々的に対立させちゃおうってレナさんが言い出して、止めようとしたダイクさんが吹っ飛ばされた感じ?」
「ちょっと待って、カオス過ぎるんだけど!?」
「レナさんはさっき言ってたトーナメント戦をするのに、大々的に人を集める目印にする気か?」
「うん、そうみたい」
「あー、なるほど……」
紅焔さんなら灰の群集内でかなり知られてる方だし、同じ龍同士での対決が見れるかもって事で興味を惹かせるつもりか。さっきまでの検証内容も合わせて、魔法Lv10を狙える人を集めようともしてそう。
レナさんが桜花さんと内緒話をしてるのは、風音さんを早めに灰の群集に馴染ませようって意図もありそうだよな。少なくとも、さっきの解説役に風音さんを交えてやったのにはそういう狙いはある気がする。
「はーい、紅焔さん、風音さん、そろそろストーップ!」
「止めるな、レナさん!」
「……さっきは止めなかったのに……どういうつもり?」
「んー? これから微調整はするけど、一応根回しが済んだからだねー。昼の13時半から、灰のサファリ同盟の初期エリアの各支部で『目指せ、魔法Lv10への到達!』のトーナメントをやっていくよー! 参加条件は魔法Lv7以上を持っていて、その上でLv10にする意思がある人のみ! それでなんだけど、紅焔さんと風音さんはどうするー?」
「……迷う余地……ない! ……絶対に……参加!」
「ははっ、俺もやるぜ、レナさん! そこで白黒つけようじゃねぇか、風音さん!」
「……紅焔さんには……負けない! ……ぶっ潰す!」
「そりゃこっちの台詞だ! バランス型のドラゴンの真髄、見せてやる!」
うっわ、もしここに演出があったらバチバチと火花が散ってるような光景だな。それにしてもレナさん、桜花さんとコソコソと話してた間にそんな根回しまでしてたのか。
「……そういえば……桜花は……中継するの?」
「おう、する事になったぞ。俺は灰のサファリ同盟の森林深部の本部が主催のトーナメント戦を中継するからな」
「……なら……そこに絶対……参加する! ……紅焔さん……逃げたら許さない!」
「逃げねぇよ! 風音さんこそ、俺と当たる前に負けんなよ? そうじゃないと意味ないからなー」
「……それはこっちの台詞!」
「はーい、2人ともそれ以上はトーナメント戦でねー!」
おー、睨み合ってる紅焔さんと風音さんの間に強引に割り込んでるよ、レナさん。2人とも不満そうではあるけど、お互いに今は引いたみたいだな。てか、見事にレナさんの狙いに誘導されてますなー。
「おっしゃ、今のうちにジャングルに行ってLv上げするぞ!」
「あ、紅焔。僕は遠慮しておくよ」
「あー、ソラはそうなるのか……。それならスキルの特訓に切り替えるか?」
「いやいや、これは僕の我儘だからね。僕は僕で自由にやっておくから、みんなは気にしないで行っていいよ。その方が僕も気が楽だしさ」
「紅焔、今回はそうしましょう? ソラと一緒にジャングルに行く為にも、ジャングルを勝ち取る為に動く方がいいですよ」
「ライルの言う通りだぞ、紅焔。ソラさん自身が、対人戦の時はそういう動きになるのは承知の上だろ」
「僕としてはソラも一緒にきて欲しいけど、まぁ無理強いは出来ないよね」
「ごめんね、カステラ。でも、どうにも僕は対人戦はね……」
「……それもそうだな。おし、それじゃソラ用に刻印石を取ってくるとするか!」
「お、そりゃいいな!」
「だろ、辛子!」
「あはは、それじゃ僕はそれを期待しながら、色々とやっておくよ。だから、みんなは全力でね!」
「おう! それじゃ行くぞ、みんな!」
そんな風にソラさんだけが残って、紅焔さん達は樹洞の中から出て行った。うん、いい感じの雰囲気で出て行ったんだけど、俺らとの連結PTがそのままなのはツッコむべきところ? あ、でもあっちのPTのリーダーはダイクさんだったっけ。
「おわっ!? 連結PTの解除を忘れてた! ダイクさん、連結PTの解除とPTの解散を頼む!」
「……あ、そういえばそうだっけ。ほいっと」
<ダイク様のPTとの連結を解除しました>
ふむふむ、これで連結PTは解除になったね。てか、ダイクさんは地面というか樹洞の床部分に突っ伏したままだけど、大丈夫なんだろうか? まぁ異常があれば強制ログアウトになるだろうから、そうなってない以上は大丈夫なんだろうけど……。
「ダイク、いい加減シャキッとする!」
「ぐふっ! レナさん、そう思うならもっと扱いの改善を要求したいんだけど……?」
「んー、それはもっとしっかりしてからだねー!」
「……レナさんが設定してるハードルの高さがわからん!」
なんというか、ここの2人の関係性は相変わらずよく分からないもんですな。まぁリアルでの知り合いなのは確定だけどね。ダイクさん自身は、口では嫌がるような事を言ってたり、逃げてたりもするけど、本気で嫌がってる訳でもなさそうだしなー。
まぁその辺はいいとして、魔法Lv10狙いという限定でのトーナメント戦なら俺も地味に参戦出来るのか。昼からなら赤の群集と青の群集が競争クエストをしている最中の可能性は高いだろうし、『アブソープ・アース』狙いで参戦するのも――
「あ、そうそう、ケイさんはトーナメントには参加禁止ね!」
「名指しで俺だけ参加禁止!? え、なんで!?」
「なんでもなにも、ケイさんは圧倒的に有利だよね? それこそ、既に『アブソープ・アクア』が使えるし、それ以外にもLv10までの魔法もある訳だしさ」
「うっ、確かにそうだけど……」
「本当は無条件にしたいんだけど、高Lvの魔法を持ってる人を増やしたいって意図もあるから、ここは我慢してくれない?」
「……そういう事なら仕方ないか」
はぁ、地味に参戦したかったけど、今回は流石に仕方ないかー。水魔法を主力にしてる人が俺と当たったら、それこそ悲惨な勝負にしかならないもんな。うーん、残念……。
「レナさん、私が参加するのはありなの?」
「えっと、参加時点でスキル強化の種で魔法をLv10まで上げられる人は参戦不可にする気だけど、ヨッシさんはその辺はどう?」
「今持ってるのは2個だし、1番Lvが高いのは毒魔法Lv7だから大丈夫?」
「うん、それなら大丈夫だよー。というか、もう1個あれば毒魔法Lv10なんだ? 基本属性じゃない属性がどうなるか、気になるところだねー!」
「あはは、それは私も気になってるとこだよ」
あ、そうか! ヨッシさんはそうなるのか! 確かに例外属性になる毒属性の魔法を極めた先に何があるのか、非常に気になる! アルも既に魔法をLv10まで上げられるだけのスキル強化の種はあるし、樹木魔法や海水魔法がどうなるのかも気になるよな。
「……ケイ、悪いが俺はその選択肢は選ばんぞ?」
「……また声に出てた?」
「思いっきりな」
またか! またなのか! 俺のこの独り言になる癖、本気でなんとかならない!? これでも結構気を付けてるつもりなんだけど、ちょっと油断したらすぐこれだよ!
「ケイ、ドンマイかな!」
「ケイさん、癖はそう簡単には抜けないから、仕方ないのさー!」
「……ですよねー。まぁそれはいいや。それでアルは、スキル強化の種はどうする気なんだ?」
「風音さんがやろうとしてた纏属進化で得る一時的な属性で応用複合スキルの取得を試してみたくてな。その為にクジラの連撃の応用スキルをLv3に上げるのに使う。折角の支配進化だし、その強みが発揮出来るだろ?」
「あー、なるほど!」
確かに支配進化になってる今のアルなら、一時的な属性でも応用複合スキルが使えれば物理ダメージも魔法ダメージも強力なものになる!
「およ? アルマースさんはその方向でやってみるの?」
「アルマースさん、悪いが今は融通出来るほど成熟体用の進化の軌跡はねぇぜ?」
「あぁ、桜花さん、それは分かってる。使い捨てじゃない進化の輝石の方でやってみるつもりだし……可能な機会があれば、水の結晶はケイに作ってもらおうかと思ってな」
「って、俺がやるんかい!」
いや、確かにウォーターフォールを使う敵が出てきたら可能かもしれないけどさ! 単独発動のデブロスフロウとかスチームエクスプロージョンとかだと、生成出来るかまだ分からないんだけど!? いや、大真面目にその辺ってどうなんだ?
「ケイ、検証ついでだから気にすんな」
「……まぁ確かに実際に試すしかないとこだけどさー。てか、アルって何か使い捨てじゃない方の進化の輝石って持ってたっけ?」
「いや、何も持ってねぇぞ。だが、それは情報ポイントで交換してくれば済む話だ」
「あ、そりゃそうだ」
今はどの属性の進化の輝石でも情報ポイントと交換が可能なんだから、そこは大した問題じゃないか。どちらかというと、進化の輝石は消耗品ではない代わりに1日1回しか使えない方が欠点なのかも?
「って、アル、ちょっと待った! それって、自動的にこの後はジャングルに向かう事にならない!?」
「まぁ、そうなるな。って事で、俺の希望としてはジャングル行きだ」
「えっと、それはこれからの私達の目的の話で良いのかな?」
「あー、うん、その解釈で合ってるぞー。戻ってきてからみんなで話し合うつもりだったんだけど……」
「あはは、まぁさっきの状態じゃ無理だよね」
「それなら改めて、その辺を相談していくのです! とりあえず予定としてはお昼ご飯までですか!?」
「まぁそうなるか? どこに行くとしても、急げば10時半には動き始められそうだしな」
いつも休日は12時で一旦切り上げてるし、1時間半ほどあれば多少は何か出来るはず。まぁ何をするかはこれから相談するとこだけど。
「そういう話なら、わたし達は部外者だから離れとくねー!」
「ちょ、レナさん!? 普通に歩けるから、根を引っ張って引き摺らないでー!?」
うん、これは割といつもの光景だし、気にしなくていいか。風音さんは桜花さんと話してるし、他の人達もそれぞれにこれからの計画を立ててるみたいだし、俺らも本格的に次の予定を決めていこう!
「アルはジャングルへ行くのが希望って事だけど、サヤ達は希望はある?」
「はい! 私もジャングルに行きたいです! 刻印石が欲しいのさー!」
「確かに刻印石は欲しいかな? でも、海エリアでの再戦の競争クエストにも参加したいかも?」
「うーん、それも楽しそうではあるよね。対象エリアのナギの海原では、1回目の競争クエストの時は参戦してないし……」
「はっ!? 確かにそれはそうなのです!? でも、刻印石……」
「微妙に悩ましいとこだなぁ……」
うーん、俺もジャングルで刻印石を狙いたいという気持ちはあるし、海エリアでの再戦の競争クエストに参加もしたい。でも、両方は流石に厳しいんだよな。
昼からはまだ確定とは言えないけど、ヨッシさんがトーナメント戦に参加……あれ? 結局ヨッシさんは参加するのか、しないのか、どっちだ?
「ヨッシさん、ちょい質問。さっきトーナメント戦の話をしてたけど、参戦はどうするんだ?」
「うーん、実はどうするか悩み中。みんなが参加出来るなら迷わないんだけど、私だけだとね? どうするか、もう少し考えさせてもらってもいい?」
「あー、そういう理由なら了解っと」
まぁ必ずしもトーナメントを勝ち抜けるとは限らないし、ヨッシさんだけの参戦になると気が引けるだろうから悩む気持ちは分かる。特に競争クエストの開催中の今は、いつどういう動きがあるか分からないもんな。
「ふー、そうなると午後からの予定は変に埋めてない方がいいか。流石にまだジャングルでは調査が終わってないだろうし、Lv上げや刻印石の調達を狙いに行くのでどう?」
「私はそれでも良いかな!」
「うん、私もそれで良いよ」
「俺は元々の希望通りだから、問題ねぇぜ」
「アルさんと同じくなのさー!」
「よし、それじゃこれからジャングルに向かって出発って事で決定!」
「「「「おー!」」」」
さてと、何とかこれからの目的は決まったから、ジャングルへと移動していかないとね。出来れば行方不明になってるキツネのマサキや、あのエリアの勝利条件や、安全圏からの無限ループを突破する手段を見つけたいところだな。
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