第1025話 取っておくべきスキル
成熟体からの新スキルにばかり意識が行ってたけど、通常スキルを極めた場合の驚異的な可能性については把握出来た。現状でそこまで辿り着ける人は決して多くはないだろうけど、弥生さんがその少数の中に含まれるのが怖すぎる。
ふぅ、とりあえず俺も魔法をLv最大まで上げるので悩んでしまったけど、今すぐ決断しなくてもいいや。弥生さんに関しても、条件を満たせそうだからといって実行するとも限らないしね。そもそも同じ情報があるかさえ未知数だから、警戒はすべきではあるけど、警戒のし過ぎも良くない。
「とりあえず気を取り直して……他には何か情報はあった?」
「今見た範囲で危険そうなのはそれくらいだな」
「流石にそんなに時間が無かったから、全部は確認出来てないけどね」
「あー、まぁそこは仕方ないな」
大急ぎでの情報収集だったんだし、その間に2つも重要な情報を拾い上げてくれたのには感謝しないとね。今回は必要だからまとめ機能に頼ったけど、本当なら自分達で調べていきたいとこだしなー。
「それじゃ、サヤ、ヨッシさん、新スキルの取得方法に――」
「あ、それは実際に実行する時でも良いかな? 種類によって手順が違うから、その時の状況に合わせた方がいいと思うんだけど」
「私もそう思うのです!」
「確かに俺が知ってる範囲でもそれは思うぞ。ただ、『魔力制御Ⅱ』と『魔力視』の2つは今すぐにでも取っておくべきだな」
「あぁ、それは俺も同感だな」
えっと、『魔力制御Ⅱ』はどの成熟体からの新しいスキルでも前提スキルになるって話だったし、『魔力視』は刻印系スキルを見分けるのに必要なんだっけ。うん、それは確かにすぐに取っておくべきか。
「よし、それじゃ『魔力制御Ⅱ』と『魔力視』を取ったら移動開始だな!」
「「「「おー!」」」」
「中々準備に時間がかかったもんだな」
「そこは勘弁してくれー。色々と予定外ではあったんだし」
「別に責めてる訳じゃないから気にすんな」
「それならいいけどさ」
まぁこれ以上待たせるのもあれだから、サクッとやるべき事をやっていこう。どっちも進化ポイントでしか取れないって話だった気がするし、サクッと進化ポイントで取っていこう。一覧から探して……一応取る前に説明を見ておくか。
『魔力制御Ⅱ』
精神生命体の本来持っている魔力を更に引き出し、制御の精度を向上させる。
ふむふむ、まぁ今までよりも精神生命体の持つ魔力の扱い方を良くする為のスキルなんだな。それにしても必要な進化ポイントが、増強進化ポイント100、融合進化ポイント100、生存進化ポイント100って消費量が凄まじい!
俺は足りるから良いけど、人によっては足りないって事態にもなりそう。まぁサクッと取得してしまおう。
<増強進化ポイント100、融合進化ポイント100、生存進化ポイント100を消費して、スキル『魔力制御Ⅱ』を取得しました>
よし、これで取得は完了。次は『魔力視』の取得だな。えーと、一覧のどこにあるかなー? あ、見つけた。こっちもスキルの説明を表示!
『魔力視』
周囲の魔力を可視化して、その性質を見極める事が出来る。
うーん、説明が簡単過ぎてこれだけだと刻印系スキルの種類を見分けられるスキルだとは分からないね。でも、見分けられるスキルという情報があるから信じるのみ! てか、こっちも増強進化ポイント50、融合進化ポイント50、生存進化ポイント50だから消費量が多いな! いや、『魔力制御Ⅱ』よりはマシだけどさ。
<増強進化ポイント50、融合進化ポイント50、生存進化ポイント50を消費して、スキル『魔力視』を取得しました>
さて、これで2つ共取得は完了。この『魔力視』って持ってるだけで効果が出るスキルか。うん、それはありがたいかも。
それにしても本当に刻印系スキルを見極めるだけのスキルか? なんか説明文を見た限りだと、魔力が関わるものなら他にも分かりそうな……?
「羅刹って『魔力視』は持ってるよな?」
「あぁ、持ってるぞ」
「……なるほど」
だったら、ちょっといきなりで悪いけど試させてもらおうっと。ただの推測だけど、ひょっとするとこの『魔力視』は俺にとって不利な可能性もある。
<行動値6と魔力値18消費して『水魔法Lv6:アクアインパクト』を発動します> 行動値 90/107 : 魔力値 242/274
無発声での思考操作で、羅刹のティラノの後頭部へ目掛けて不意打ち気味にアクアインパクトを叩きつける! って、あれ? 普通に当たった?
「「ケイ!?」」
「ケイさん、いきなり何をやってるのさー!?」
「……ケイさん?」
「あれ? 魔法の発動位置が分かったりするようになったりしないのか? あっさり避けられると思ったのに……って、羅刹、すまん!?」
「良い読みしてんじゃねぇか、ケイさん。俺もそのつもりでいたんだが……味方だとこうなるのか」
「……へ?」
ん? 羅刹も避けるつもりでいたって事は、俺の予想してた内容自体は合ってる? あれ、もしかしてダメージを与えられるかどうかで表示が変わるとかそういうパターン!?
「あー、魔法を使う敵が出てきた時に実物を見ながら説明しようかと思ってたが、その必要性はなさそうだな」
「……そうしてくれると助かる」
みんなの少し呆れた感じのするなんとも言えない微妙な視線が、絶妙に痛い! 怒ってる感じでも責めてる感じでもないのが、なんか逆に居心地が悪い!?
「というか、アルマースさんならこの辺は知ってるんじゃねぇのか?」
「……それほど成熟体からのスキルの詳細は確認してないんだよ。知ってるのは『魔力視』で刻印系スキルの判別が出来る事くらいだ」
「ふむ、群集にこの情報がないとも思えんし、あえて見てなかっただけか」
「そういう事になるな」
「それで結局、何がどうなってたのですか!?」
「ケイさんは発動位置が分かるようになるって言ってたけど……」
「でも、そんな風には見えなかったかな?」
ふむ、みんなにも魔法を発動した位置は分からなかったみたい? これは味方のは見えなくて、敵のが見えるって感じかもしれないね。よく考えたら味方のまで見えたら、敵の攻撃の予兆なのかどうかが分からなくもなるか。
「それについては味方だからっぽいな。無所属だと関係なかったから俺は初めて知ったとこだが……ともかく『魔力視』を持っていれば敵が魔法を発動しようとすると、発動位置に属性の色のモヤが見えるようになる。まぁだからといって、種類までは分からんがな」
「……あぁ、今まとめの方でも確認した。魔法の遠距離からの優位性が少し薄れているらしい」
「あー、そんな気はしたけど、やっぱりかー」
視界の中でならどこからでも魔法を発動出来るのは優位性だったけど、それを事前に察知出来るようになるとキツイなー。これまで敵が魔法を使ってくる場合は比較的分かりやすいようには発動してきてたけど、成熟体からはそれも無くなるってことか。
「でもまぁ、それならそれでやり方もあるか!」
「ケイ、例えばどんなやり方かな?」
「今思いついたのでも、並列制御で同時には対処出来ない方向からの同時発動とか、シンプルに連発とか、魔法をフェイントとして使うとかだなー。それか元々分かりやすい魔法砲撃なら影響も受けにくいだろ。そもそも分かってても避けられなければ良いだけだしな」
「ケイ、魔法の種類は多少限定はされるが操作系スキルで操作するって手もあるぞ」
「あ、それは確かにありだな!」
なんだ、さっきは事前察知されるので優位性が無くなるどころか不利になると思ったけど、普通に対策方法はあるじゃん。これで攻めきれない相手なら、そもそも事前察知関係なく対処出来る人だから、根本的に関係ないや。
「……あんまり『魔力視』は対人戦では役に立たないんじゃないかな?」
「すぐにこれだけ対策案が出てくると、そう思うのです!」
「……あはは、そうかも?」
「確かに、扱いが上手い相手だと関係もないか……。それにしても魔法でのフェイントか。そりゃありだな」
『魔力視』で少し不安にはなったけど、どうやら杞憂で済みそうだ。てか、何か羅刹がフェイントで思いついたみたいだけど、まぁ今回は味方だから警戒の必要はないのがありがたい。
とりあえず魔法の運用方法を少し変える……いや、増やしてみるのを考えた方が良いかもね。魔法砲撃と通常発動を混ぜて混乱させるのも……そこに遠隔同調を加えて、意識を分散させるのもありか。あ、Lv8の魔法の全方位攻撃って、その辺に利点があるのかも? 自分が中心になって発動するなら、事前察知は意味が薄く――
「ケイ、考え込んでないでそろそろ移動するぞ。続きは移動中にしろ」
「あ、それもそうだな」
「それと、羅刹にはこれだ」
「ん? あぁ、PT申請か」
<羅刹様がPTに加入しました>
いかん、いかん。これからの魔法の運用方法を考えてたら、ついそのまま考え込んでしまっていた。とりあえず羅刹も今回のPTメンバー入りになったし、新しい運用方法は実際に戦いながら使えそうだと思ったものを使っていきますか。
「って事で、みんなも手早く乗ってくれ。『空中浮遊』『根の操作』!」
「おぉ!? 木の根で登るための道が出来たのです!?」
「アル、根の操作の精度が上がったか?」
「感覚的に少し良くなった気はするが……進化してステータスが上がったからか?」
「あー、そうかも?」
スキルの操作精度には器用のステータスが影響してるはずだし、俺の操作も使ってみたら結構精度が上がってるのかもしれない。ふむ、今の俺ならあのひまわりの種からの油絞りも岩の操作Lv4でも安定して可能かも? いや、やってみないと分からないか。
まぁその辺はいいとして、とにかくアルが根の操作で作ってくれた道の上を歩いていこう。いやー、飛んだりよじ登らなくても、これでアルのクジラの上に乗れるね! てか、今まででも出来た気がする内容だけど……そこはまぁいいか。
「アルさんは支配進化になったから、簡略指示じゃなくなったんだね」
「おう、この方が使いやすいしな。てか、それはヨッシさんも同じだろ」
「あはは、まぁね」
アルもヨッシさんも支配進化になったからこその変化だね。そこから更に同調になったら登録が必要にはなるけど、俺の時と違って強制進化で低Lvから引き上げてないし支配進化のままもあり? 流石にこれはまだ気が早い話か。
「それにしても、アルさんのクジラの背中の上は随分と変わったね」
「根とクジラの間の空間が、なんだか居心地良いのです!」
「この新しい木の根、見た目よりも遥かにしっかりしてるかな?」
「おっ、挟むのにも丁度いい太さの根もあるなー」
「……乗り慣れねぇから、違和感がすげぇな」
「羅刹はそうだろうな。おし、とりあえずミズキから森林深部まで転移して、そこから森林エリアまで転移していくぞ」
「「「「おー!」」」」
「さて、久々の群集拠点種での転移か」
という事で、移動開始! 俺らにとってはいつもの移動手段でしかないけど、群集を出ていった羅刹にとっては久々になるんだな。てか、傭兵だったら普通に群集拠点種から転移は使えるんだね。いや、使えなきゃ困るか。
<『ミズキの森林』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
さて、羅刹も含めて無事に森林深部へと転移してこれた。エンの近くには……転移しにやってきてる人は結構いるみたいだけど、混雑自体はしてないっぽい。模擬戦のダイジェスト映像は……流石に今日は全然映ってないか。まぁ公開設定で模擬戦をする人は、今回の競争クエストへの参加を逃す訳がないか。
「あ、そうだ。ケイさん、ハーレ、羅刹さん、『夜目』は発動してる?」
「いや、今は天の川で明るいから使ってないけど……」
「はっ!? ミヤ・マサの森林が雷雨だったなら、森林エリアも天気が悪い可能性がありそうなのさー!」
「そういやそうなるのか!」
「……あそこ、今は雷雨なのか。ジャングルでの視界は良くしておいた方が良いだろうし、『夜目』を使っておいた方がいいかもな」
「うん、そう思ってね?」
「ヨッシさん、サンキュー!」
ジャングルに行ってから発動でも良いんだろうけど、何が起こるか未知数だから今のうちから準備しておいてもいいよな。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 95/107 → 95/106(上限値使用:1)
よし、これで夜目発動は完了! 折角の天の川だけど、競争クエストの対象エリアでいつどういう戦闘になるか分からない強行偵察をするんだから、視界は万全に確保しておいた方がいい。
「おっしゃ、競争クエストにいくぜ!」
「……いやいや、ケイン。先に成熟体への進化だろ」
「何を言ってんだ、プロメテウス! 新エリアに行けるようになったら、行ってみるもんだろ! たとえ死んだとしても!」
「あー、新エリアに行きたいのは分かった。だが、あとLv1で上限なんだから、死にに行くのはその後だ。それなら止めん」
「くっ……仕方ないのか!」
あー、うん。あんまり関わり合いたくない1人の声が聞こえてきた。流石に前の事もあるから変に関わってはこないとは思うけど、ここは気付かれないうちにさっさと移動してしまおう。
「みんな、さっさと森林エリアに移動しよう」
「……あはは、その方が良さそうかな?」
「そうみたいだな」
「あぁ、あれがちょっと前に騒ぎを起こしてたってやつか。ま、避けたい気持ちは分かるな」
どうやら無所属の方にまでケインとの件は伝わっていたようである。まぁ大々的に伝わるように中継をしたやつだから、そりゃ無所属にも伝わるよなー! ともかく今はケインに気付かれないように、さっさと森林エリアまで移動して、ジャングルに行って競争クエストを受注しよう!
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