第1008話 干潟に向かって
<『ネス湖』から『リヴィエール』に移動しました>
ネス湖の滝から少し北側に進んでいけば、すぐにエリア切り替えになった。てか、今回はカタカナだけのエリア名なんだな。そういうパターンもあるのか。
それにしてもここの川は結構川幅が広めで、それなりに水深もありそうだ。それに川の水面にも夜空の天の川が映り込んで、ここも神秘的な雰囲気になってるね。
「ところで、リヴィエールってどんな意味?」
「分かりません!」
「……あはは、同じく?」
「ごめん、私もちょっと分からないかな」
「分かる人が居ないのは仕方ないかー」
アルがいれば多分知ってそうな気がするんだけど、まぁここに分からない人しかいないのならどうしようもない。ゲーム内からじゃ調べようと思っても公式サイト以外の外部サイトには繋がらないしね。まぁまとめに語源とか載せてる可能性もあるけど、そこまでする必要もないだろ。
さてエリア名は今は良いとして、とりあえず川下りだなー。普通にこのまま星空のカーペットで飛んで移動でもいいけど、折角だからこの移動中も活用はしたい。俺とヨッシさんはもう進化先は確定でも良いけど、サヤとハーレさんは2ndが一歩手前なのは間違いないしね。
「みんな、ちょっと移動方法を変えるぞー!」
「それはいいけど、どう変えるのかな?」
「そこは見てのお楽しみって事で!」
川があるんだし、移動自体は別に川に流されてというのでも構わない。となれば、やるべき事はこれだな!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 84/85(上限値使用:2): 魔力値 231/234
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 65/85(上限値使用:2)
川幅ギリギリまで広げると流石に邪魔というか広過ぎるし、そもそも届くか怪しいけど、みんなが多少暴れても大丈夫なくらいには広さを確保! 放っておけば勝手に沈んでしまうから、沈まないようにだけは調整しつつ、川の流れに任せて移動していこう。
俺の見えない形で特訓になると色々と対応が困るから、俺がいる位置は最後尾でみんなが前がいいだろうね。えーと、星空のカーペットは……解除してもいいけど、今日は気分的にこのまま出しておきますか。
「おー! 川の上に足場が出来たのです!? えいや!」
「これなら多少魔法を撃ち合っても大丈夫だろ。ただ、あんまり生成した岩に当たり過ぎたら操作時間が無駄に削れて解除が早くなるから要注意で!」
「ふっふっふ、そういう事ならサヤ、風の操作と電気の操作で勝負なのです!」
「望むところかな、ハーレ!」
「でも、どういう形式でやるの? お互いに当てる感じ?」
サヤとハーレさんは岩の上に降りていったけど、その辺のルールはまだ考えてなかった。うーん、それなりの広さにしたとはいえお互いに当て合うとなると微妙な広さだし、キャラの方の回避を入れるのは無しか。そうなると……。
「ヨッシさん、悪いんだけど氷で的を1つ作ってくれない? それでサヤとハーレさんは同時操作数に制限はなしで、ヨッシさんの氷の的に先に当てた方が勝ちでどうだ?」
「あ、うん、良いよ。どうせならこれも発動して、妨害役にするね。『同族統率』『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
「おっ、統率個体のハチ3体の妨害ありか。そりゃいいな」
「地味に難易度が上がったかな!?」
「ふっふっふ、この勝負は私に有利なのさー! 『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」
「苦手だからって、これでも結構上達はしたし、負けないかな! 『略:エレクトロクリエイト』『略:電気の操作』!」
さて、これで全員の準備は完了。この3人の中ではヨッシさんの操作が一番上手いから、苦手なサヤとの勝負とはいえ、ハーレさんも当てられないって可能性はあるんだよね。まぁ簡単に当てられたら対戦形式での特訓にはならないし、これで良いはず。
今回はヨッシさんは飛ばずに星空のカーペットの上に降りてやるっぽい。ま、キャラを操作する必要はない状況だし、サヤとハーレさんを同時に相手にするならそっちの方が集中は出来そうだ。
「それじゃケイさん、開始の合図をお願い」
「ほいよっと。それじゃ対戦開始!」
「この勝負、勝つのです!」
「それは私の台詞かな!」
「私は2人とも勝たせる気はないけどね?」
そんな風に、3人での対戦式の的当てが始まった。おー、ハーレさんは風の球を3つに分割してリスで投げるようなイメージで操作して、サヤは電気の球を1つだけに限定して操作している。
それに対して、ヨッシさんは氷の的での回避は最小限にして、その周囲を3体の統率個体のハチが飛び回って妨害してるね。
「あっ、変な位置に行ったかな!?」
「サヤ、今は川下りで移動中だから、その移動分も考えなきゃ駄目だよ?」
「止まってる訳じゃないから、その辺の微調整も必要なのさー! えいや! あぅ、統率個体のハチに阻まれたのです……」
「今は統率個体は自動反撃にしてるからね。ダメージが与えられないから、上手く掻い潜らないと的には当てられないよ?」
「むぅ……倒せないのが厄介なのさー!」
「確かにそれは……そうかな! ハーレの見様見真似で、これならどう!? あ、防がれたかな!?」
「あはは、サヤは投げるイメージでやると狙いが正確になるね。でも、まだまだだよ!」
おー、みんな色々と考えながらやってますなー。サヤが操作系スキルを苦手としてるのは操作のイメージはしっかり掴めてないからだけど、そのイメージを投げる形で補うというのはありだな。
とはいえ、それなら魔法弾にしてしまった方が効率が良さそうなのが微妙なとこかー。ま、それでもイメージの掴み方の特訓としてはいけるはず。
さて、俺はこの特訓中には特にする事もないから周囲を眺めながら川下りだねー。おー、川の東側にはオオカミの群れが走って……って、灰の群集というか、オオカミ組じゃん!
先頭を走っている白いオオカミは蒼弦さんっぽい。そしてその後ろを走っているのは色んな体色のオオカミ達だなー。頭が2つのオオカミや、尻尾が2本あるオオカミとかも混ざってる。あ、俺らに気付くことなく走り去っていったけど、まぁ川の下流を目指してたみたいだし、目的地は一緒っぽいね。
「あ、操作時間が切れたかな!?」
「ふっふっふ、それなら私の勝ちなのさー!」
「ケイさん、ハーレがそう言ってるけど、操作時間切れの場合の勝敗はどうなるの?」
「あー、そういやそこも決めてなかったっけ」
ふむ、サヤとハーレさんの場合だと明確に操作精度に差があるからなー。操作に無駄が多いサヤの方が圧倒的に不利な状態だし、その辺はみんなも把握してる部分だから考慮しておくべきか。
「ハーレさんには悪いけど、サヤへのハンデって事で操作時間切れの場合は引き分けで! 勝ちになるにはヨッシさんの氷の的に当てた場合のみ!」
「あぅ……引き分けになったのです。でも、それくらいならハンデとして充分なのさー!」
「……苦手な操作に関しては、ハンデが設定されるのは仕方ないかな」
うーん、どうもサヤはハンデが設定されたのが不満そうではあるけど、不得意だという自覚はあるからその辺は飲み込んだみたいだね。苦手なものはちゃんと苦手だと認める事も大事だな。
「それじゃ2戦目もやっていくのです! 『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』!」
「今度こそ当てるかな! 『略:エレクトロクリエイト』『略:電気の操作』!」
「私はまだまだ操作時間に余裕はあるからそのままいくね」
「干潟に辿り着くまでに、1発は当てるのさー!」
「そのつもりでやっていくかな!」
「それなら私は1回も当てられないように頑張らないとね!」
「3人とも、頑張れよー!」
なんだかんだで対戦形式だと白熱して特訓の効率は上がるよね。単純にスキルLvを上げるだけなら黙々と発動と解除を繰り返せばいいけど、実戦で使う上でのプレイヤースキルも鍛えるのはやっぱりこういうのが1番だよなー。
さーて、とりあえずはこの調子で川下りをしていきますか! この周辺の敵のLv帯は全然把握してないんだけど、まぁ未成体の高Lv帯は地下にある特殊なエリアに集中してるから気にしなくても大丈夫だろ。
◇ ◇ ◇
そんな感じで俺は川下りに専念、サヤとヨッシさんとハーレさんは特訓をメインにしつつ移動である。結局サヤとハーレさんは、ヨッシさんの用意した的には当てられなかったね。
途中で何度か行動値の回復の休憩や岩の操作の再発動を挟みながら、それなりの距離を移動してきたけど、明確な地形の変化が現れてきた。まぁ干潟に向かっているんだから、当然と言えば当然の変化だな。
「ここら辺まで来たら川の水が減ってきたな」
「そろそろ河口というか、干潟に到着なのさー!」
「一旦特訓は切り上げかな?」
「うん、その方が良いかもね」
「だなー。とりあえず水……星空のカーペットに移ってくれ。岩の操作は解除する」
「はーい!」
「分かったかな!」
「了解!」
という事で、みんなは発動したままの星空のカーペットの上に移動してきて、必要がなくなった岩の操作は解除っと。……それにしても干潟というだけあって、足場は悪いっぽいね。この辺は砂地みたいだけど、もっと先に進めば完全に泥だな。
まぁその左右にゴツゴツした岩がゴロゴロと転がってはいるけど、しっかりした地面もあるからその辺りは大丈夫な足場っぽい。てか、そっちの方にそれなりに人が集まってきてるし、狙いは緊急クエストにスタートダッシュで参加する事かな?
「……ん? なんで竹が川の中に積まれてるんだ? なんか周りに岩も積まれてるし」
「あ、あれはウナギを獲る仕掛けだね」
「ウナギなの!?」
「ハーレのテンションが急激に上がったかな!?」
「……なるほど。実際に獲れてるのか、試しにやってみてるだけなのか、どっちかが気になるところだよなー」
「まぁそうなるよね。でも、誰かが仕掛けたんだろうし、勝手に確認するのも……」
「流石にそれはマナー違反だろうしな……」
リアルみたいに漁業権とかはないから勝手に獲っても咎めるルールはないけども、その辺を好き勝手にやれば荒れる原因になる。明らかに誰かの手によるものを横取りするような真似は流石に駄目だろう。
「ほう? そういう配慮は助かるな」
「まぁその辺は当然……って、誰!?」
なんか近くから声が聞こえてきたけど、どこにいるのかが分からないんだけど!? え、今の声はどこから聞こえた!?
「あ、ヒラメの人がいるのさー!?」
「砂浜に紛れてるかな!?」
「擬態持ちの人!? あ、灰のサファリ同盟の人だね」
「あ、マジだ」
擬態というよりは砂の中に埋もれて隠れてた感じな気もするけど、砂の中に紛れたヒラメって分かりにくいな!? 海は海で、こういう風に景色に溶け込む種族はいるよなー。
「おう、そうだぜ、『グリーズ・リベルテ』! 俺は灰のサファリ同盟・海原支部所属のマイルだ、よろしくな! いやー、交代でウナギの罠の監視はしてるんだが、そういう配慮は助かるもんだ!」
「あ、監視はしてたのか。てか、俺らは普通に知られてた!?」
「そりゃ有名なんだから当然だろうよ!」
うーん、俺らは今まで散々目立つ事はしてきてるからなー。灰のサファリ同盟とは森林深部の人との交流が1番多いけど、横の繋がりも広いんだから把握されてても不思議じゃないか。
「ま、ぶっちゃけ監視はあんまり要らないんだけどなー」
「え、そうなの?」
「おう、そうだぞ! えーと、ちょいちょい生産系を手伝ってくれてるのがヨッシさんだったっけか。罠に使っってる竹には所有権があるから、同意しない限りは中身には手出し出来ねぇんだよ。ま、放置して2日間経てば放棄扱いになるけどな」
「あ、そういう風になってるんだね」
「移動はさせられるから、やるとしたら嫌がらせ目的だけってとこだぜ!」
へぇ、その辺は全然知らなかった。アイテムの受け渡しって今まで普通にやってたけど、同意が無ければ所有権は移動しないんだな。移動が可能なのは……攻撃用の罠とか、妨害用の何かを撤去を可能にする為とかなんだろうね。
「マイルさんに質問です!」
「おう、どうした? えーと、スクショコンテストで夜の虹を撮ってたハーレさんだっけか」
「おー、知られていたのさー!? それで一般生物のウナギは獲れてますか!?」
「大量にとはいかねぇが獲れてるぜ! どうもウナギは罠で獲る方が、討伐よりアイテム化は確実みたいでな。だけど調理は調味料が足りなくて、白焼きを塩で食べる程度だぞ?」
「白焼きなら出来るのかな!?」
「それはそれで美味しそうなのです! ヨッシ!」
「うん、言いたい事は分かったからね。サヤも食いついたのは少し予想外だったけど……マイルさん、一般生物のウナギをトレードってしてもらえる?」
「良いぜと言いたいとこだが、残念ながら今は在庫切れだ。……そうだな、そこの罠を見てみるから、そこで獲れてたら持ってて良いぜ?」
「え、良いの?」
「おう、こっちにも色々事情があるから良いぜ!」
「おぉ、やったのです!」
お、なんだか話の流れ的にウナギを捕獲する罠を開けていくのを見る事になりそうだ。サヤとハーレさんの昇華がまだだけど、まぁ少しくらいはこういう楽しみ方も良いかもね。
特訓や戦闘だけが楽しみ方じゃないんだし、まだ17時になったとこだから時間的に少しくらいなら大丈夫なはず。別にスキルを使いながら見物してたって良いしさ。
「ただし、罠を開けるのは手伝ってもらおうか! それが条件だ!」
「それくらいなら問題ないのさー!」
「うん、それは問題ないかな!」
「ハチでウナギが上手く捌ければ良いけど……まだ、練習は出来てないんだよね」
「……練習? まぁ俺らはそれでいいぞ、マイルさん!」
「おし、それじゃそれで決定だな!」
という事で、干潟を目前にした川の河口付近でウナギの捕獲用の罠を開けていく事になった。てか、ヨッシさんの言ってた練習って……VR空間で料理系のものを扱えるようになるヤツの件?
そういや料理系だと推測しただけで、具体的な内容はまだ聞いてないままか。ふむ、この辺はいつものメンバーだけになった時に改めて確認してみようっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます