第983話 タイドプールにいる敵
今回の群集クエストを進める為っぽいこの緊急予告から始まった経験値が大幅に増えているボーナス緊急クエスト! 1時間しかぶっ通しでは戦闘は出来ないそうだから、この1時間は無駄にしない!
敵の姿はチラホラと見えてるけど、発見報酬は出てない……って、そういや識別をしてた人達が残滓ばっかだって言ってたっけ。敵の数は多いけど1体辺りはそれほど強くなくて、進化ポイントが貰えない感じみたいだね。
まぁ今は経験値が重要だからそこは問題ないし、時間を無駄にしない為にも戦闘開始だ!
「アル、魔法産の海水でタイドプールを封鎖!」
「おうよ。とりあえずこっちでやってみるぞ。『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
おっと、俺は海流の操作を使う方向で考えてたけど、アルはそうでもなかったっぽい。大量の海水を生成してから、流れを作る事なく俺らの使うタイドプールの周囲をぐるっと囲んでくれた。
タイドプールによって多少の大きさの差はあるけるけど、俺らの確保した場所は全体的に見たら狭めか。アルのクジラの大きさより2回りくらいの広さだね。
「タイドプール自体は極端に広くないからこんなもんだろ。それじゃ任せたぜ、風雷コンビ!」
「任せておけ! やるぞ、疾風の! 『エレクトロクリエイト』!」
「おうともよ、迅雷の! 『エレクトロクリエイト』!」
風雷コンビの2ndである2体の龍がタイドプールの上を飛びながら、それぞれに電気の塊を生成して、それが重なっていき……強烈な雷鳴を轟かせながら雷が落ちていく。……これ、ライオンとヒョウの時より昇華魔法のサンダーボルトの威力が上じゃね?
あー、でも流石にこれだけじゃ倒し切れない……いや、結構瀕死に近いな。Lv帯は高めの割に弱くない? 妙に数も多いけど、これって何体いるんだよ! 魚をメインに大きさのバラつきはあるけど、20……いや、軽く30くらいは超えてるか?
「倒し切れておらぬでないか。なぁ、疾風の」
「まぁこれで終わりってのも味気ねぇぜ。なぁ、迅雷の」
「風雷コンビは魔力値の回復を優先で! アル、その辺は任せた!」
「おうよ! もういらねぇだろうから、海水は一旦解除しとくぞ」
「ほいよっと!」
さて、風雷コンビの魔力値の回復についてはアルに任せて、俺らは俺らで海面に浮いてる色んな敵を倒していきますか! 割とすぐに倒し切れそうだけどさー。
「ケイ殿、どのような分担で撃破していくので?」
「あー、適当にでも良いけど……まずは数を減らすか。ハーレさん、拡散投擲で!」
「おぉ、広範囲攻撃であるな!」
「了解なのさー! 『魔力集中』『拡散投擲』!」
ハーレさんが思いっきり振りかぶり、銀光を放ち始めた砂を投げていく。おー、砂がタイドプールの海面に広がってどんどん浮かんでる魚のHPが減っている。これなら結構な数は倒せそう……というか、既に大量に死んで経験値が入ってきてるね。
「おぉ、ケイさん、経験値が大量なのです!?」
「ボーナスだからか、残滓でもかなりの経験値だな!」
今は経験値の結晶で倍にはなってるけど、それを差し引いても相当な経験値が手に入っている。これならこの1時間の間にLv29に到達出来そうだ。
「刹那さん、俺らもやるぞ! こっちで合わせるから好きに暴れてくれ!」
「承知! 【我が身を分かち、二対の刃よ、乱れ斬れ! 円閃剣舞・二重之太刀】!」
えーと、2体に分かれたタチウオがヒトデに持たれるような形になって、その状態でヒトデがくの字のブーメランみたいに回転しながらタチウオを振り回しながら飛んでいった? うん、相変わらずのオリジナルの技名や詠唱っぽいので具体的に何をやってるか分からん!
とりあえず分かる範囲では、タチウオで連撃系のスキルを、ヒトデで回転する為のスキルを……場合によっては並列制御Lv2以上で使ってそう。まぁ銀光は発生してないから、応用スキルではなさそうだよね。
さて、刹那さんが次々と倒してるから、俺も大人しく見てるだけはなしだな。邪魔にならなさそうな手段としては……よし、これでいくか。
あ、ちょっと待てよ? こういう真似は出来るんだろうか? うん、思いついたからにはダメ元で試してみよう。どういう判定になるのかが地味に気になるしね。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 85/85 → 84/84(上限値使用:1)
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値10と魔力値90消費して『半自動制御Lv1:登録枠1』は並列発動の待機になります> 行動値 74/84(上限値使用:1): 魔力値 140/230 使用時間 90秒
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値14と魔力値21消費して『土魔法Lv7:アースエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 60/84(上限値使用:1): 魔力値 119/230
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
さて、土の付与魔法自体はちゃんと発動したけど、この場合ってどうなるんだろうね? 半自動制御の登録枠1にはアースバレットを15回分登録してるけど、全部に効果が乗ればありがたい。確か魔法砲撃の時の射出魔法の強化効果は対応する操作系スキルの同時可能数分だけ弾数追加のはず。
その効果がどう出るかを見る為にもロブスターの右のハサミを起点に指定して、アースバレットの連射を開始! 無駄が出ないようにアースバレットの発動ごとに確認を……って、しっかり6連射になってるよ!?
ははっ、どうも属性が同じなら全部に付与魔法の効果が乗るっぽいな! って事は、本来は45連射だったのが90連射になる訳だ。1撃ごとの威力はそう高くないけど、この数はありだな!
「こりゃ良いや! どんどんくたばれ!」
「おぉ!? なんだかケイさんの弾数が凄いのさー!?」
「付与魔法はそのようにも使えるのであるか!?」
「……また妙な事をやってんな、ケイ。だけどまぁ、これでこそ戻ってきたって感じがするか」
「疾風の、あれは面白そうではないか?」
「迅雷の、その気持ちは分かるけど半自動制御は単独進化では使えないぞ?」
「そういえばそうだな。ならば、疾風の、一発芸・大ウケで代用するのはどうだ?」
「それはありだな、迅雷の」
ちょっと待って、風雷コンビはレモンを食べながら何をとんでもない事をサラッと言ってんの!? いや、ありと言えばありなのか? でも、そんな事が出来たらデメリットよりもメリットの方が――
「……一発芸には魔法が登録出来んではないか、疾風の」
「……みたいだな、迅雷の」
どうやらぶっ壊れ性能にはならないっぽい。そういや一発芸を手に入れた頃って魔法は使えなかった幼生体の頃だし、根本的に魔法を登録出来る仕様にはなってないのか。
半自動制御だとしっかり魔力値を消費した上で、再使用時間も設定されてるもんな。1撃ごとの威力は大した事はないけど、これだけの数を相手にするには十分な効果!
「あ、全弾撃ち尽くしたかー。でも、かなり数は減らしたぞ!」
「残りは私が仕留めるのです! 『連速投擲』!」
残ってるのはさっきのハーレさんの拡散投擲の影響を受けなかった、海面に浮いてきてなかった種族みたいだね。イソギンチャクとかウミウシとかヤドカリとか、そういう系統。
そういうのを目掛けてハーレさんが次々と石を投げつけ、着実に仕留めていった。うん、これでこのタイドプールにいた敵の掃討は終わった……って、もう終わった!?
「ちょ、終わるの早くない!? 敵の補充は!?」
「……これで終わりだとも思えんが、その辺はどうなんだろうな?」
「そこは気になる部分であるな! ケイ殿、ここの敵はどのように出現したのかわかるのであるか?」
「それなら18時になった瞬間、一気に波が押し寄せてきて敵を置いていった感じだけど……」
一定期間でも待てば同じように敵が補充されるとか? 多分それが可能性としては高いとは思うけど、それがどういうタイミングで発生するかが分からないな。どっちにしても他のPTはまだ戦ってるし、俺らはちょっと早く倒し過ぎた気がする。
「……ふむ、またそれが発生する可能性はありそうではあるな! しからば、この時間を使って海の中の様子を見てくるのである! しばし、御免を!」
「刹那さん、頼んだ!」
そう言いながら刹那さんはタチウオを1体に戻してから白波の立っている海の中へと飛び込んでいった。刹那さん的にも同じ見解っぽいね。
そういやあの白波の中、どんな風になってるんだろ? うーん、海の中での戦闘に慣れてる訳じゃないし、迂闊な事をするのはやめとこ。
「……とりあえず待機っぽい?」
「流石に電気の昇華魔法をここでぶっ放すのはやり過ぎたみたいだな」
「効果が抜群過ぎたのさー!」
「我らの活躍があってこそだな、疾風の!」
「2ndは魔法型にしているからな、迅雷の!」
「あー、威力が高いと思ったけど、やっぱりそういう事か」
「「そういう事だ!」」
風雷コンビの2ndの龍は、魔法型だから魔力値の最大値が多い訳だ。だからこそ、昇華魔法の威力が上がる。……同じ雷属性とはいえ、運用方法が変わってきそうだね、これ。
飛行種族の龍であり、コンビとしての連携は超一流。場合によってはライオンと龍、もしくはヒョウと龍という組み合わせでも動く事は出来そうだし、その組み合わせでもちゃんと連携出来そうなのがこの風雷コンビだよな。……喧嘩さえ発生しなければかなりの戦力だよね。
さて、しばらくはする事がなさそうだし、リュウグウノツカイと戦ってるベスタを……って、思いっきり頭を踏みつけて押さえ込んでる!? あのベスタなら、同格になった成熟体相手ならこんなもんか。
「お、ケイさんとハーレさんは復帰してたか!」
「これはまた楽しそうな状態だね」
「紅焔さんとソラさんだー!」
「2人とも、久しぶり!」
紅焔さんに関しては森林深部で炎の槍を生み出す炎魔法とやらの実演をしてるのを少し見たけどね。それにしてもデカくなったもんだね、紅焔さんの龍。
そしてソラさんは……フェニックスっぽくなってる! ただ、グラナータ灼熱洞にいたフェニックスとはなんか違う。なんだか燃え盛ってる体表の炎が常に揺れているっぽい? これは風属性と火属性の2属性になってるみたいだね。
「ソラさん、成熟体に進化したのか? 昨日会った時は進化してなかったし、まだ進化させないのかと思ってたが……」
「あぁ、それかい。昨日アルマースさんと会った後に偶然ではあったけど、PTのみんなで動いてた時に徘徊してた成熟体の木を見つけてね。これは逃すのは勿体ないって事で、みんなで進化したんだよね。……ゆっくりと話したいけど、それはまた今度でも良いかい? まだ僕は成熟体から使えるスキルを何も持っていなくてね」
「あ、そうなのか。それじゃ邪魔したら悪いな」
まだその辺の条件が未確定だという話だし、ソラさんは進化はしたもののスキルは得れていないんだな。そういう事ならライルさん、カステラさん、辛子さんの3人も成熟体になってるっぽいね。
あ、ベスタがリュウグウノツカイの尾びれを咥えて引っ張ってながら近くにやってきた。……タイドプールは見事に避けてるのは、流石ベスタだね。リュウグウノツカイは盛大に暴れてるけど。
「なんだ、紅焔とソラだけか? 他の連中はどうした?」
「何人かは向かってきてる最中だぜ、リーダー! 揃って動くと目立つから、少しタイミングをズラして移動中だ!」
「……なるほどな。他の場所で成熟体は出現しているか?」
「とりあえず今のところ、干潟で1体の成熟体が出てきたのは確認しているね」
「そっちは巨大なヒラメだとよ! パッと見では分からない、擬態持ちだと」
「……そういうパターンもあるのか。まぁいい、空中戦が可能な2人が来てくれたのはありがたいからな。紅焔、ソラ、しばらく足止めに付き合ってもらうぞ」
「そのつもりで俺らが先行してきたからな!」
「その役目は任せておくれ」
「あぁ、頼りにさせておうか」
あー、なるほど。このリュウグウノツカイが海中をメインとして戦うのは分かってたから、海中に逃さないための空中戦力か。紅焔さんもソラさんも火属性なのが少し不安要素ではあるけど、選り好み出来るほどの成熟体の人が多くないのかも?
「紅焔、頭側は任せていいかい?」
「おう、任せとけ! ソラは尻尾の方だな」
そうして、紅焔さんとソラさんの2人がかりで巨大なリュウグウノツカイが空中へと持ち上げられていく。既にHPは半分を切ってるけど、色々と試す為に生かされるんだろうなー。
あ、そうしてる間に刹那さんが海面から顔を出してるね。刹那さんの声しか聞こえなくて内容が把握し切れなかったからスルーしてたけど、何か分かったのかな? まぁ後から説明があると思ってたからスルーしたんだけど。
「皆に報告である! 海岸付近の海底に大量の魚がいるものの、海のプレイヤーでは大して経験値がない残滓が多い事が判明したのであるよ!」
「え、マジで? それって……どういう事?」
「サラシの中の魚は経験値は美味いらしいのであるが、海底の敵については陸のプレイヤー向きの補充用なのではないかという推測なのである! その辺りの海水だけ、海水の操作を受け付けぬとの事!」
えーと、それって海の中に海のプレイヤーには全く旨みのない魚の群れが集まってるって事だよな。海エリアの人にとって邪魔なだけで一切得がなさそうだけど、どういう風になってるんだ?
「そこでなのであるが、何か食べるものをばら撒いて欲しいのである! 何やら磯場から落ちてきた小さな貝などの一般生物を狙って、その残滓の敵がどんどん集まってきているようなのであるよ! その残滓の敵を狙ってサラシの中の魚も増えているのである!」
「ちょ、マジか!」
「なるほど、そういう事か。自分達の戦っているタイドプールの敵を撃破したPTは場所の確保要員は残しつつ、撒き餌になるものを探して海に放り込め! それがこちら側の敵の補充の鍵になってるかもしれん!」
ははっ、こういう時にしっかりと指示を出してくれるベスタがいるのはありがたい。そしてどうやら陸側の方からでもやるべき事はあったみたいで、陸のプレイヤーと海のプレイヤーで協力するようになってるっぽいな。
さて、それじゃ協力しながらこの緊急クエストでのボーナス経験値を稼いでいきますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます