第982話 今回のメンバー
サヤとヨッシさんは敵の出現の様子だけ見て、晩飯を食べにログアウトをしていった。2人は俺とハーレさんが晩飯で離脱中に戦っておく事にもなったので、今のうちに思う存分戦っておこう! という事で、エリア移動!
<『ソヨカゼ草原』から『忘れ者の岩場』に移動しました>
すぐに戻ってきたぞ、忘れ者の岩場! あ、そういえば獲物察知は……どうやらエリアを移動した際に効果が切れてたっぽい。地味にこの仕様は知らなかったけど、またリュウグウノツカイから狙われるようになってただろうからこれで助かった。
さて、戻ってきたけど戦闘の様子は……あれ? 戦闘をしてる気配がない? え、もしかしてLvが期待外れで、みんな戦うのはやめちゃった感じ!?
「『識別』!」
「ここで成熟体とかマジかよ! 『識別』!」
「どんどん識別していけ! 『識別』!」
「おうよ! 『識別』!」
「こっちは未成体Lv28だ! 残滓だがな」
「残滓の未成体Lv27だったぞ!」
「俺のは未成体Lv29! こいつも残滓!」
「未成体で一番高いLv帯だが、どれも残滓か。進化ポイントは稼がせてくれないんだな」
「そうみたいだが、これだけ数がいれば十分だろ!」
「そりゃそうだ!」
「あー、こりゃ適正Lvじゃないから撤退ー!」
「どっか未成体Lv15で丁度いいとこを探そうっと」
「これならPT単位でいくつかのタイドプールに分散した方がいい! 連結PTだと経験値が分散し過ぎて効率が下がりそうだ!」
「行動値の回復で、1ヶ所につき2PTってとこか! 連結PTを組むのは上限Lvに達してるメンバーだけのPTの方が良さそうだな」
「各自、そういうつもりで動け! それぞれ1時間がタイムリミットって事を忘れるなよ!」
あ、違った。みんなで雑魚敵のLv帯の把握をしてたのか。へぇ、Lv27〜29ってかなり良い感じのLv帯の敵じゃないか。適正Lvではなくて撤退していく人たちもいるけど、俺らにとっては適正だ。こりゃ本格的に経験値が期待出来るぞ。
「ふっふっふ、これは期待出来そうなのです!」
「……ここのどこかにLv30の未成体でもいねぇか?」
「アル、それって成熟体のフィールドボスの誕生の検証?」
「まぁな。つっても、未成体はLv11からしかフィールドボスにならなかったし、残滓ばっかだと期待薄か……」
「あー、そういやそうだっけ」
「おーい、グリーズ・リベルテと風雷コンビ、ここのタイドプールが空いてる! 情報を聞きつけて他の奴が来るまでには確保してくれ! Lv上げ目的なら、連結PTにする必要はない!」
「ほいよっと!」
手慣れた様子で各自の目的に合わせて、複数のタイドプールを使い分けて行くみたいだね。穴場だというこの場所に来ている人達だから、この辺の手際はかなり良いみたいである。
「それじゃみんな、移動するぞ!」
「……あれ? ベスタさんは!?」
「え? あ、ベスタがいない!?」
ベスタもだけど、リュウグウノツカイの姿も見えないぞ。少し離れた間にどっちも居なくなるとか何があった!? って、海中からリュウグウノツカイにベスタが弾き飛ばされてる!? え、海中にいたの!?
「ちっ、海中では分が悪いか。まだここまではする気はなかったが、少し弱ってもらうぞ! 『移動操作制御』『白の刻印:剛力』『重爪刃・連舞』!」
おぉ!? ベスタが小石を足場にして、白光と銀光の混ざり合った爪での連撃でリュウグウノツカイを斬り刻みながら空中へと吹っ飛ばしていってる!? 流石、ベスタ。白の刻印ももう既につかえるようになってるんだ。
「……相変わらず、ベスタって凄いな」
「それはベスタの旦那だから、当然だ。なぁ、疾風の!」
「ベスタの旦那って理由以外は必要ねぇな。なぁ、迅雷の!」
「それで納得が出来るのがベスタさんなのです!」
うん、確かにその通り。それだけで本当にあっさりと納得出来てしまうのがベスタだもんな。流石は灰の群集のリーダーなだけはある。
「少し前までベスタは刻印系スキルを持ってなかったと思うが、手に入れたのか」
「あ、そうなんだ?」
「あれは刻印石の入手に運要素が絡むからな」
「……そういや確定で落ちるんじゃないんだっけ」
流石にベスタがどれだけ強かったとしても、運だけはその強さでどうにか出来るものじゃないしね。影響があるとしても試行回数を増やす事くらいなもんか。
それにしても前より艶が出ているベスタのオオカミの体毛だけど、そこに白光と銀光が重なるとものすごく見た目が映えるね。コケの部分も、コケなのかどうかもよく分からない雰囲気になってる。
「とりあえず、しばらく海に沈んでおけ!」
あ、海の上空を駆け回ってリュウグウノツカイと戦っていたベスタが岩場に降りてきた。……リュウグウノツカイはベスタの眩い白光と銀光の混ざった爪の一撃を受けて海の中に落ちて盛大に水飛沫を上げてるけど、襲ってくるのとかは大丈夫だよな?
「ケイ、獲物察知を使ったな? ここの傾向はどうだ?」
「それなら雑魚敵がタイドプールの中も白波の中にも大量だったぞ。フィールドボスの反応は無し!」
「そうか。よし、識別をして手が空いた奴は、この場で成熟体が現れた事を成熟体の奴らに伝えていけ! 何人か来るまでは俺が時間稼ぎをしておく! 他の群集には気取られるなよ?」
「了解だ、リーダー!」
お、これはどうやらこの成熟体のリュウグウノツカイで成熟体の討伐称号を取れるようにするっぽいね。……まだ色々とスキルの取得条件が不確定みたいだから、その辺の条件を絞る検証を兼ねてるのかもなー。
まぁその辺は俺らにはまだ関係ないし、俺らは俺らでLv上げに専念していきますか! さっき言ってたけど、しっかりとタイドプールの1ヶ所は空けててくれたみたいだし、これはありがたいね!
「どうやら、ここは当たりのようであるな!」
「……ん? あ、刹那さん!?」
「海の方から登場なのさー!」
「刹那か。今ここに来たばかりか?」
「然り! おぉ、リーダーであるか! 先程、空から落ちてきて海底に叩きつけられたリュウグウノツカイはリーダーがやったのであるか?」
「あぁ、そうだ。しばらくすればまた襲ってくるだろうが、少しの時間稼ぎにはなるだろう。海エリアの成熟体の連中にも成熟体がここに出現したと通達を出しておいてくれ。今回は成熟体が何体出てくるか全く分からんからな」
「承ったのである!」
まさかの白波の中から刹那さんの登場である。なんか見た目がタチウオの頭にヒトデがくっついてるみたいになってるー! これは支配進化で成熟体になってるのか? いや、それ以外には見た目に変化はないから共生進化でまだ未成体?
「やや!? そこにいるのはケイ殿達ではないか! 復帰していたのであるな!」
「今日からなー! あー、悪いんだけど、アルと風雷コンビで場所の確保をお願い出来る?」
「おう、それくらいは任せとけ。つっても、あんまり長話にはすんなよ?」
「分かってるって。海側の情報を確認しとくだけ」
「そういう事であれば行くぞ、疾風の!」
「おうよ、迅雷の!」
「風雷コンビ、ケイとハーレさんが来るまでは倒すなよ!」
「分かっておるわ!」
「おうともよ!」
今回臨時メンバーになった……風雷コンビは完全に同じ雷属性の龍になってしまってるから、名前を見ないとどっちがどっちか分からん。冗談抜きでこれって結構厄介じゃない? って、今はそこは関係ない部分だから気にしなくて良い!
とりあえず複数出来ているタイドプールの空いてる場所の確保は任せておいて大丈夫なはず。出来るだけ早くそっちに行かないといけないけどね。
「刹那さん、簡単で良いから海エリアの方の状況を教えてもらえないか?」
「それは伝えておいた方が良いであるな! 拙者達は分散してあちこちの海岸へと偵察をしている最中である! ここはサラシの中に大量の敵が発生しているし、当たりという判断で良いであるな!」
「海エリアから見てもここは当たりか! って事は、海の中はそっちに任せていい感じ?」
「むしろ、そこは任せてもらわないと拙者達が倒す相手がいなくなって困るのであるよ! して、ここの敵は雑魚敵が多数と見受けたが、その判断は正しいのであるか?」
「ケイさんが獲物察知で確認したから、数が大量なのは間違いないのさー!」
「だた、海の中の敵のLvは確認出来てないから、それはそっちで頼む! ちなみにタイドプールの方はLv27〜29ってとこ」
「それは群集拠点種の強化には最適なLvであるな! こちら側も同等と見て……むむ? しばし失礼を! 【我が身に宿る力を解放せよ! 我が身を分かつは今ここに! そして彼のものを斬り刻め! 烈空閃・二重之太刀】!」
おぉ、出た。無駄に難易度が高いオリジナル詠唱をしつつの思考操作での刹那さんのスキル発動。ただ、今はヒトデがタチウオ2体を両方振り回しているのが前とは違うとこか。
「くっ、まだ未成体の拙者だけではこの数は捌き切れないのである! 増援が来るまで、しばし同行を!」
「お、それならいいぞ。アル、少しの間だけど刹那さんがPTにいても問題ないよな?」「あー、それは別に問題ねぇぞ! てか、かなり数が多いからむしろ歓迎だ!」
「おぉ、助かるのである!」
「それじゃ、ほいっと!」
<刹那様がPTに加入しました>
よし、これで6人PTになったね。てか、刹那さんはどっちも未成体のLv30で上限なんだな。普段では中々見られない組み合わせになった気がするぞ、これ。
「それでは連絡をしてくるので、しばし待たれよ! 【我が身を重力の楔より解き放て!】」
「了解なのさー!」
「ほいよっと」
多分刹那さんは普通に空中浮遊を使っただけなんだろうけど、この辺は相変わらず大袈裟だよなー。まぁそれが刹那さんらしさだけど……って、リュウグウノツカイが海上に顔を出してきた!?
「ちっ、もう出てきたか。あれの相手は俺に任せておけ。ここに来ている連中はともかく数を倒せ! Lvが上限に達していない奴は上限を、既に達している奴は群集拠点種へ提供する経験値を稼いでいけ!」
そのベスタの言葉に対して、ここに集まってきているみんなが盛大に次々と言葉を返していっている。ははっ、やっぱりベスタがいると特に気合が入る気がするね!
さて、それじゃ俺らは俺らでLv上げの為に暴れていきますか! まずはどんな敵がいるかの確認だな。って事で、アルと風雷コンビがいる場所まで移動!
「ハーレさん、『経験値の結晶』を使うぞ!」
「はーい!」
<『経験値の結晶』を使用しました> 1時間、経験値100%上昇
よし、これで晩飯で離脱するまでは経験値は2倍になった。少しだけタイミング都合で無駄になるかもしれないけど、数分くらいなら19時を過ぎても大丈夫か? うん、今までの経験則として5分〜10分くらいまでは許容範囲だね。
「アル、風雷コンビ、敵としてはどんなもん?」
「雑魚敵が大量だ。一気に仕留める手段もあるが、どうする?」
「……風雷コンビの電気の昇華魔法か。風雷コンビ、2ndでそれは出来る?」
「あぁ、問題ない。なぁ、疾風の!」
「必要ならいつでもぶっ放すぜ? なぁ、迅雷の!」
パッと見た限りでは、タイドプールの中を泳いでいる魚はチラホラ見えるし、ウニやヒトデの姿も見える。イソギンチャクや貝やヤドカリ辺りもいるかも? ただ、移動出来るだけの深さがないだけで、海水は他のタイドプールにも繋がってるからそこが問題か。
うーん、何か手段は……あ、この方法があるか。よし、これでいこう。
「アル、俺らの割り当てのタイドプール……正確には他の海水と繋がる部分を魔法産の海水で分断してくれ。その上で風雷コンビの電気の昇華魔法で一気に全滅する!」
「なるほど、魔法産の海水で電気の流れる範囲を制限しようって訳か。……昇華魔法の威力に耐えられるかが問題だが、やるだけやってみよう」
「なに、電気では魔法産の海水を破壊する事はないから心配はいらんぞ。なぁ、疾風の」
「範囲を絞ってくれるなら、遠慮なくぶっ放せるってもんよ! なぁ、迅雷の」
「おぉ、それは朗報なのです!」
「そりゃありがたい情報だ!」
よし、それならアルの生成した魔法産の海水が消滅して、他のタイドプールに影響が出る心配はしなくて良いな。大量の経験値が欲しいとこだし、ここは一切の出し惜しみは無しだ!
「風雷コンビとアルでさっき言った内容で先制攻撃、それで討ち漏らしたのは俺とハーレさんで対応する! その間にアルは風雷コンビにレモンを渡して魔力値の回復優先!」
「おうよ!」
「「了解だ!」」
「はーい!」
「ケイ殿、拙者も本格的にこっちに参戦する事になったのであるよ! ソウ殿から磯場の陸地側の情報が知りたいとの事で、任されたのである!」
「お、マジか! それじゃ俺とハーレさんと一緒に討ち漏らしの対処を頼む!」
「分かったのである!」
よし、これで戦闘の手順は良いはず。あ、でもこれだと場合によっては行動値の回復が間に合わない? そういや風雷コンビの龍って完全な魔法型か? うーん、そうだとしてもこの2人なら……。
「風雷コンビ、ちょっと質問! 物理攻撃はいけるか?」
「魔法型ではあるが、出来なくはないな。なぁ、疾風の」
「雑魚敵相手なら、倒し切るまでとは行かなくても翻弄は出来るぜ。なぁ迅雷の」
「よし、それで十分! 俺とハーレさんと刹那さんが行動値の回復が必要になった時は、それで対処を頼んだ!」
「「了解だ!」」
よし、なんだかんだで問題を起こしてなくて味方として動いてくれる時は頼りになるね! これなら敵の数次第にはなるけど、なんとか行動値の回復時間を確保しつつ戦えるはず。
「ケイ、俺は他に何をしてればいい?」
「アルは遊撃で頼む! 最初の敵の出現みたいに敵の補充があるかもしれないから、それに備えてくれ!」
「……なるほど、突発的な何かが起きたら俺が対処だな。それなら任せておけ!」
「それじゃ、作戦開始!」
「頑張るのさー!」
「さて、経験値を稼いで群集クエストを進めていこうじゃねぇか!」
「拙者も頑張るのであるよ!」
「「おうよ!」」
あはは、いつものメンバーとは違って掛け声の後はバラバラだなー。ま、そりゃそうなるか。さて、それじゃ全力で経験値を稼いでいこうじゃないか!
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