第981話 ボーナスイベント開始!


 18時で晩飯の為にログアウトになるサヤとヨッシさんだけど、演出があるかもしれないという事でそれを確認する為に少しだけ残っていく事になった。まぁ確認し終えたらすぐにログアウトになるけどね。


「おーい、ここに集まって来てる奴、聞いてくれ! ここにいるのは同じ灰の群集だから、協力していこうぜ」

「おう、それは賛成だ!」

「私も賛成ー!」

「Lv帯が分からんから無理はするなよ!」

「お、グリーズ・リベルテが来てるじゃん。テスト勉強、お疲れさん!」

「他にもチラホラとしばらくいなかった奴もいるなー」

「協力するのはいいが、まずはどういう敵が出るのかを把握しないとな」

「ここは獲物察知の出番だろ。フィールドボスの有無も確認したいし、Lv5以上の獲物察知を誰か持ってないか?」

「コケの人のロブスターなら持ってるだろ! コケの人、どうだ?」


 ちょ、他にも持ってそうな種族の人はいるのにそこで俺にくるの!? いや、出来るけどさ。うん、流石に注目を集めてるし、スルーって訳にもいかないか。


「えーと、あるにはあるけど、俺で良いのか?」

「おう、問題ねぇぜ!」

「もし成熟体が出てきたらどうするんだ? 俺らは倒せないぞ?」

「そこはどうとでもなる! てか、そんな事になれば喜んで倒しにやってくる方が圧倒的に多い!」

「今ここに向かってきてる頼れる成熟体の人もいるし、時間稼ぎならどうにでもなるさ!」

「という事で、コケの人、頼んだよー! もし成熟体が出てきたら、グリーズ・リベルテは『忘れ者の岩場』から逃げ出してくださいなー!」

「エリアが切り替われば、追ってはこないからな」

「……厄介な役を押し付けてるだけのような?」

「成熟体から安定して逃げられる可能性が高い人に任せるしかないだろ」


 ちょ、そこ、聞こえてるからら! 厄介なのを押し付けようって魂胆なのか!? ……まぁ気持ちは分からなくはないけどさー。どうもこの場にはまだ成熟体の人は来てないみたいだけど……これから来るっぽい頼れる成熟体って誰だろ?

 既に成熟体に進化したという情報がある人は、どの人も頼れるから、逆に誰かが分からない。あ、でもここが穴場ならベスタが来そうな気はするね。それはともかく、もうそれほど時間はないから引き受けるなら早めに決めないと困るか。


「……って事らしいけど、みんなどうする?」

「別にいいんじゃねぇか? ここならランダムリスポーンしたところでたかが知れてるしな」

「厄介な役目を任せられるというのは、信頼されてる証拠でもあるのです!」

「まぁ私達としてはありがたいし、いいんじゃないかな?」

「逃げた先で、私とサヤは離脱だね」

「あー、どういう戦闘になるか分からない中でログアウトするよりは安全だし、都合はいいのか」


 アルも言ってるけど、このままここでログアウトするよりは崖上に移動してしまった方が安全だもんな。……俺がログアウトする時も、場所は崖の上にしようっと。


「それで決定なのさー!」

「ほいよっと。ついでに俺らが戦う時に、一緒のPTで動ける人も探すかー」

「あー、そりゃやっといた方がいいかもな」


 それじゃその辺は返事をして、いつでも動けるように待機をしておこうか。さて、ここでどうなるかが今日のLv上げでの分かれ目だ!


「それじゃ俺がやるけど、俺らのPTは2人ほど晩飯でログアウトなんだけど、3人になって状態で一緒にやってくれるとこって、いる?」

「そういう事ならば、我らが行動を共にしようではないか! なぁ、疾風の!」

「おうともよ、迅雷の!」

「あー、風雷コンビが行ったか。まぁグリーズ・リベルテならそこまで乱されはしないだろ」

「だよねー! 風雷コンビと動いた実績もあるしさ!」

「そういや青の群集の総力戦で、一緒に戦ってたんだっけか。それなら問題ないな」


 風雷コンビがいたの!? それならこの役目は風雷コンビでも良いような気もするけど……そもそもどこにいるんだ? 声や話し方は間違いなく風雷コンビだけど、ライオンもヒョウも姿が見当たらない。あー、これは2ndを作ってる感じか?

 それならこの場にいる人達の名前を確認していこうっと。多分すぐ近くにいるはずだし……えーと、クマの人は違う。イノシシの人も違う。カメの人も違う。桜の人も違う。樫の人も違う。あ、見つけた!


「って、えぇ?」


 ちょっと待って、風雷コンビがここにいるのは別に問題はない。……どっちも2ndなのも問題になる事ではない。迅雷さんと疾風さんが共に翼のある西洋系の龍なのも、まぁ特に気にするほどの事ではないはず。だけど……どっちも雷属性なのはなんで!?


「なんだ、その反応は? なぁ、疾風の」

「どうもよく見る光景だよな? なぁ、迅雷の」

「なんで2ndの2人とも雷属性なのー?」

「「好き以外に理由はいらん!」」

「……欠片の迷いもない断言だなー」

「ま、ツッコみたくなる気持ちは分かるが、その辺は個人の自由だろ」

「そりゃそうだけどさー」


 わざわざ別のキャラで、全く同じ属性の種族を作るかー? うーん、その辺の事を風雷コンビに求める事そのものが間違ってる気がしてきた。

 まぁ風雷コンビの2ndが別に支障はないし、海水があるここなら有利に立ち回れるから戦力としてはありなのか。


「風雷コンビの2ndは、Lvはどれくらいなのかな?」

「今は未成体のLv25だな。なぁ、疾風の!」

「1stは既に成熟体に進化させたが、ここでこちらも成熟体への進化に進めたいとこだ! なぁ、迅雷の!」

「あ、かなり上がってるのかな!」


 俺らの方がLvは上ではあるけども、風雷コンビは1stはどっちも単独で育成してたんだし、このくらいに育ってても特に不思議ではないか。

 ……さっきは思いっきりツッコんだけど、雷属性の龍が2体って地味に凶悪じゃね? しかも連携をしたらベスタ以外に止められる人がいないくらいの風雷コンビがだもんな。属性は同じだとしても種族が違えば、大きく意味は変わってくるのかもしれないね。


「それじゃ風雷コンビ、後で頼んだ!」

「私とサヤと交代でお願いね」

「風雷コンビ、任せたかな!」

「任せておけ! なぁ、疾風の!」

「おうともよ! なぁ迅雷の!」

「今、連結PTにすると面倒だから後でいいか? これからの連結PTが必要になった場合の調整が面倒だしな」

「「それで問題無い!」」


 今は6人PTに対して俺ら5人と風雷コンビの2人だから数が中途半端だから、PTメンバーの入れ替えはサヤとヨッシさんがログアウトしてからでいい。


「そろそろ18時だ! 気合を入れろよ、野郎ども!」

「「「「「おう!」」」」」


 殆ど面識がない人の方が多いけども、気合は十分みたいだね。……なんだかんだで俺らって結構目立ってるから、知らない人からも知られてるよね。まぁ別に悪いとも思わないけど。


「……あと少しか」


 もう間も無く18時になるけど……おっ、18時になると同時に大きな波が押し寄せてきた!? この感じは大当たりっぽい! もしかして、これがタイドプールの中に放り込まれる敵か!


「みんな、獲物察知を使うぞ! 風雷コンビ、成熟体が出てきた時に備えておいてくれ!」

「「了解だ!」」

「アル、もし成熟体が出てきたら崖の上まで即座に逃げるからな! みんなもそのつもりで!」

「おう! そこは任せとけ!」

「了解なのさー!」

「了解!」

「分かったかな!」


 成熟体からはエリアが切り替われば成熟体からは逃げ切れるはず。成熟体だけでなく、フィールドボスが関わってくる可能性もあるから、獲物察知はLv5で発動だ!


<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します>  行動値 80/85


 えーと、灰の群集の人達が沢山いるのは分かってた事だけど……フィールドボスを示す黒い王冠は無し。でもタイドプールの中にも、白波の中にも黒い矢印が埋め尽くすほどの量が表示された!

 って、ヤバい!? 今まで見た事がないくらい太い黒い矢印が海の中を指し示してる!? これ、成熟体じゃね!?


「成熟体らしき反応を海中に確認! タイドプールの中にも敵が大量にいるから、全員気をつけてくれ! フィールドボスの反応はない!」

「成熟体と普通の雑魚敵の組み合わせか!」

「こりゃ連結PTまでは必要ねぇな! お互いに邪魔にならないように、PT単位で1つのタイドプールで戦っていくぞ!」

「その方が良さそうだね!」

「グリーズ・リベルテは早く逃げろ! それとタイドプールの1ヶ所は空けとけよ!」

「ははっ、余ってるから問題ねぇよ! それよりも成熟体だ!」

「なんで成熟体の人は誰もいないかなー? でも、そろそろリーダーが来るはず!」


 リーダーって事は、ここに向かって来ている頼りになる人ってベスタか! ははっ、最大級に頼りになるよなー!

 それにしてもほんとに全然成熟体の人がいないね。うーん、ここは穴場って話だし、他の候補地に行ってるのか? あ、もしくは風雷コンビみたいに2ndや3rdのLv上げを優先してる人も多いのかもな。……ほぼ確実に争奪戦になりそうだしさ。


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


「わっー!? デカいのが出てきたのです!?」

「これはリュウグウノツカイか!?」

「そうっぽいけど、アル、大急ぎでエリア切り替え!」

「おう、分かってる!」


 ん? 一度『忘れ者の岩場』からアルに乗って大急ぎで逃げようとしたら、すれ違うようにして黒いオオカミが通り過ぎていった。来たか、ベスタ!


「ふん、戻ってきたら早々に大物を引き当ててきたか。ここは俺に任せて、エリア切り替えで標的から外れてこい。『魔力集中』『飛翔疾走』『爪刃乱舞』!」

「ベスタ、頼んだ!」


 うっわ、ここで崖の上から飛び降りてきて、リュウグウノツカイへと連撃を叩き込むベスタがすげぇ……。でも、通常スキルでの攻撃なんだな。


<緊急クエスト『敵の大増殖』が各地で発生しました>

<対象エリアで出現する敵を討伐した際、経験値が大幅に増加します>

<対象エリアによって適正の進化階位やLvが異なりますのでご注意下さい>

<経験値増加の効果が得られるのは最大で連続1時間までとなり、その時間を過ぎれば大幅に経験値が減少します。再度効果を得る為には1時間は非戦闘状態が必要となります>


 あ、緊急予告の内容が出てきたっぽい。へぇ、緊急クエストで内容は大増殖で、やっぱり経験値増加か。連続で1時間までの制限ありで、解除されるのは1時間戦闘しなかったらなんだね。この辺は独占禁止の為だな。

 そして複数エリアが用意されていて、それぞれで敵の強さが違うみたいだなー。うん、俺らは当たりを引いたかも? まぁ人によって当たりは違うだろうけどさ。


<『忘れ者の岩場』から『ソヨカゼ草原』に移動しました>


 ふー、とりあえずアルに乗って崖上まで退避完了。これであの成熟体のリュウグウノツカイから狙われる事はなくなった。それにしてもリュウグウノツカイって、こういう言い方はどうかと思うけど巨大なタチウオっぽいよね。

 まぁ大きさが大きさだし、神秘さもあるから単純に比較したらダメな気もするけどさ。


「それじゃ私とサヤはログアウトするね。私達はケイさん達が晩ご飯を食べてる間に戦うから、思いっきり戦ってていいよ」

「私達も『経験値の結晶』を使うから、ケイとハーレも使っててかな!」

「そういう事なら遠慮なく使わせてもらうか!」

「目指せ、Lv29なのさー!」

「……流石にそれは厳しくねぇか?」

「いやいや、アル。今回ばっかりは分からないぞ? なんたって、経験値のボーナス戦闘だしな!」

「あー、そうか。それは確かにな」


 ぶっちゃけ戦ってみないと経験値の量は分からないけど、普段より多いのは間違いないだろ。後は俺らが戦うタイドプールの雑魚敵のLv次第ってとこだけど、成熟体が出てきてるんだし、期待は出来るはず!


「それじゃ2時間後くらいにかな!」

「傾向の調査もよろしくね」

「ほいよっと!」


<サヤ様がPTから脱退しました>

<ヨッシ様がPTから脱退しました>


 風雷コンビがPTに入れるように2人ともPTは脱退してからログアウトをしていってくれた。ログアウトが慌ただしくなるのは時間的に仕方ないか。さーて、ここからは全力で敵をぶっ倒して経験値を稼ぐぞ!

 えーと、俺が今のPTリーダーだから、一緒に崖上まで来てくれた風雷コンビにPT申請を出しておこう。それから崖下まで戻って戦闘開始だ!


<迅雷様がPTに加入しました>

<疾風様がPTに加入しました>


「「今回は、よろしく頼む!」」

「こっちこそ、よろしくな!」

「ここで雷属性が2人ってのはラッキーか」

「タイドプールに電気を流して、一網打尽にするのです!」

「よし、ハーレさんのその案を採用!」

「おう、任せておけ! なぁ、疾風の」

「俺らも早くLvを上げたいからな! なぁ、迅雷の」

「それじゃ戦いに行くぞ! アル、出発!」

「おうよ!」

「大量の経験値を手に入れるのさー!」


 まぁその前にまず雑魚敵のLv帯の確認からしていかないといけないけどねー。……成熟体がいるのに、周囲の雑魚敵が未成体Lv20以下とかだったらどうしてくれようか! うん、そうなったとしても何も出来ないけどさ。


 ともかく、これからすぐに忘れ者の岩場に戻ってその辺の確認だ! ここで期待外れのLvも帯だと他の場所への移動も考えないといけないし、『経験値の結晶』を使用するのは敵のLv帯が分かって、戦える場所を確保してから!

 とりあえず成熟体のリュウグウノツカイはベスタが相手をしてるから、そこの心配はいらないのが安心ではあるね。おし、とにかく戻るぞー!

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