第29章 テスト期間が過ぎて

第965話 いない間の出来事


 テスト明けの昼飯は簡単にカップラーメンで済ませ、晴香も俺もそれぞれの自室に行き、久しぶりのゲームの開始である。


 そしてやってきました、10日ちょっと見てなかったログイン場面。おぉ、普通にいったんがいるには当然だけど、胴体部分のお知らせを見るのはなんか久々な気分!

 えーと、『緊急予告! 今日から数日間の夜、何処かで何かが起こる! 探せ! それらは力の糧が豊富となる!』って、これは普通に公式サイトにあったやつじゃん! あ、そもそも公式サイトのお知らせをこっちで簡略化して伝えてるんだから、同じで当然だよ。

 あー、普通にスクショのコンテストの発表のお知らせもスクロールして出てきた。どっちも今日の重要なお知らせか。まぁこの辺は確認済みだからいいや。


「おっす、いったん! なんか久しぶり!」

「10日ちょっとぶりのログインだね〜。また来てくれてありがとう〜!」

「リアルの都合も片付いたし、今日から普通に再開だ! ところで、スクショの承諾とかはある?」

「特にはないね〜。逆に承諾申請をしていたスクショが、全て許可で返ってきてるよ〜」

「あー、あれか!」


 一応いったんから詳細表示を手渡されたけど、まぁ見るまでもなく内容は分かる。なんか思わぬ形で団体部門の事前審査を突破した、望海砂漠でのみんなとの集合の記念スクショ……で、トラブルがあったやつだな。

 うん、ルストさんも含めてみんなが許可を出して、その上で受け取ってくれている。まぁ受け取れるように申請を出してたんだから当然だけども。


「さてと、それじゃコケでログインを頼む!」

「それはちょっと待ってね〜。ログインボーナスがあるからさ〜」

「あ、そういやそうだった」


 ぶっちゃけ大したログインボーナスって訳でもないし、しばらくログインしてなかったからすっかり忘れてた。テスト期間中は受け取らなかったけど、貰えるならちゃんと貰っとかないとな。


「はい、どうぞ〜」

「いったん、サンキュー! それじゃ改めてログインをよろしく!」

「コケでログインだね〜。いってらっしゃい〜」

「ほいよ!」


 こうしていったんに見送られながらログインするのもなんか久しぶりな感覚! まぁ、1ヶ月くらい毎日プレイして、10日ちょっと離れてたんだから割合としては大きいもんな。

 さーて、掲示板で軽く情報は得たけども、テスト期間の間にどう変わっているのかを確認だ! 直接話を聞ける人がログインしてればいいんだけど、あくまで平日の昼間だから期待薄の可能性が高いけど……。



 ◇ ◇ ◇



 そうして、ゲームの中へやってきた。あー、そういやコンテストに応募する為にエンのとこでリスポーンしてたから、ログイン場所は森林深部か!

 数えてなかったからどっちか分からなくなってたけど、今日は昼間の日なんだな。天気も快晴。流石に群集拠点種の場所でも、時間帯的にあんまり混雑してないか。まぁ平日の昼間だもんなー。


「あ、ケイさん発見なのさー!」

「お、ハーレさんもログインしたか」


 すぐ近くにハーレさんはいたね。それじゃまずはログインボーナスをもらって、サヤとヨッシさんとも合流してから――


<群集クエスト《群集拠点種の更なる強化・灰の群集》が実施中となっています>

<群集拠点種へ、取得した経験値の一部の譲渡が可能になりました>

<Lv上限に達している時点で取得した経験値が『群集拠点種』へと自動譲渡されるようになりました>

<群集拠点種1体が成熟体に進化に至れば、新規開放のエリアへの転移が可能になります>

<転移先は5ヶ所あり、群集拠点種により転移先が異なります。計画的に群集拠点種の進化を目指しましょう>


<追憶の実に群集クエスト《群集拠点種の更なる強化・灰の群集》の開始演出が追加されました>


 おぉ、群集クエストのアナウンスが出た!? ふむふむ、やっぱり群集拠点種の進化をやっていく感じの内容だな。

 しかもそれぞれの群集拠点種で、5ヶ所の新規解放のエリアへと進出が出来るのか。……これ、ほぼ確実に競争クエストは転移先の場所の争奪戦だよなー!? しかも、これだと相手の群集が固定じゃない可能性もありそうだぞ。


「あ、ケイ! ハーレもこっちかな!」

「おー! ヨッシとサヤはもうログインしてたのさー!」

「おっす、サヤ、ヨッシさん」

「1週間ぶりだね、ケイさん」

「スクショの投票をした時以来だから、そうなるかー」


 スクショの投票は先週の木曜日だもんな。その結果も今日の17時には出るし、それも楽しみだね。何か1つでも入賞して、報酬が欲しいところ。出来れば優秀賞でスキル強化の種も欲しい!


「お、そろそろ来るかと思ってたが、全員揃ってるな」

「アル!? え、なんでこの時間帯に!?」

「アルさんがいるのさー!? え、なんでー!?」


 なんでアルがこのタイミングでここに転移してきた!? え、平日の……今は14時前くらいだけど、なんでいるんだ!?


「おー、驚いてんな!」

「……わざわざ私達に合わせて有給でも取ったのかな?」

「考えられるとしたらそれくらいだよね」

「ま、正解といえば正解だが、ハズレといえばハズレってとこか」


 ん? 有給を取ったってのは分かるけど、正解でもあるしハズレでもあるってどういう事だ? あー、このタイミングでアルがいるとは思わなかった!

 でも、あんまりサヤとしては複雑そうな声音だね。俺らに合わせて有給を使ったというのが、引っかかってるっぽい?


「アル、それってどういう事かな?」

「ちょっとリアルの個人的な用事で、平日に空き時間が必要だったんだよ。でも、丸々1日までは必要なくてな? だったら、ケイ達が戻ってくる今日の午前中に用事を済ませて、昼からは普通に遊ぶ事にしてな」

「あ、そういう事かな」

「俺は俺の都合で動いたってだけだ。無茶して合わせてる訳じゃねぇから、心配すんな」

「サヤ、それなら問題ないよね?」

「うん、アルにもそうする都合があって、無理に私達に合わせたんじゃないなら問題ないかな」

「……なんだか、ケイにしろ、サヤにしろ、俺は妙に心配や遠慮されそうになるな。ま、別に悪い事でもないんだが……」


 あー、うん。俺もアルを除け者にしないようにとか配慮しようとはしてたっけ。アルにその辺を読まれて、釘は刺されたりもしたけどさ。まぁ、とりあえず今はそれはいいや!


「ともかく、俺らは戻ったぞ、アル!」

「おう! 待ってたぜ、みんな!」

「思ったより早い時間で全員集合なのさー!」

「予想外だったけど、良かったかな!」

「うん、それは確かだね」


 いつもの夜の時間まではアルとは合流出来ないと思ってたけど、予想外の展開でこの時間から全員合流になるとはね。これは色んな意味で嬉しい!

 単純に早い段階で勢揃いになった事もだけど、アルなら俺らがテスト期間でログインしてない時の状況も知ってるだろうしね。アルのリアルの用事とやらが何かは分からないけど、今日でなくても良かった感じだし、そこは合わせてくれたんだろうな。


「さて、色々聞きたい事は多いだろうが、まずはどうする? Lv上げでもしながら説明するか?」

「あー、そうしてもらえるとありがたいかも? サヤ達はどう?」

「Lv上げをしながら、色々聞いていくので賛成かな」

「同じくなのさー!」

「私も賛成。アルさん、Lv上げに良い場所ってあるの?」

「あ、そこも気になるとこだな」


 掲示板を見た限りでは、もう未成体の上限Lvの30までは上げるのは難しくないはず。どこか今の俺らにとっての適正Lvの狩場があるんだろう。


「あー、それに関しちゃ面白みはないが、グラナータ灼熱洞や砂時計の洞や、ネス湖の底……今は『湖底森』って名前になってるエリアが適正Lvの幅が広がってLv30までいけるぜ。グラナータ灼熱洞だったら奥に行けば、出てくる敵のLvがPTの平均Lvに調整されて出てくるようになってる感じだな」

「おー!? そうなんだ!」

「……なるほど。ちなみに他に同じような群生地があるエリアって発見された?」

「発見はされてるが、Lv的には範囲外だ。そこより優先度の高い情報は多いし、そっちの方が聞きたいだろ?」

「だろうなー」


 アルの見た目が全然変わってないから、まだ成熟体への進化はしていないっぽい。まぁその理由は掲示板を見て大体察しはついてるけどさ。


「さて、問題はどこに行くかだが、どこが良い? 俺はどこでも構わんぞ」

「んー、色々と話を聞きたいし、エリアの特徴が把握出来てる場所が良いよね」

「それならグラナータ灼熱洞かな?」

「それが良さそうなのさー!」

「よし、それならそうするか!」

「おうよ! グラナータ灼熱洞だな」


 ネス湖の底の『湖底森』というのも気にはなるけど、今は全く未知のエリアよりは、知っているエリアでLv上げをしながら情報が聞きたい。ここは一番把握出来ているグラナータ灼熱洞一択で!

 アルは確実に強くなってるだろうし、色々と余裕はあるはずだしね。フェニックスについても、多分既に成熟体に進化した人達に狙われてそうだから、そこら辺は心配ないだろう。


「それなら前よりは混雑具合は緩和されてるから、転移じゃなくて普通に進んでいくか」

「え、なんでまた? 転移の実で行けば良いんじゃ?」

「ちょっとした変化は、他のエリアでもあちこちにあるんだよ。Lv上げに関しては特にな」

「え、そうなのかな?」

「アルさん、移動中にその様子が見れるって事?」

「ま、そうなる。今は時間が時間だから、見れるかどうかはちょっと微妙だがな」

「どんな事になってるのかが気になるのさー!?」


 ふむふむ、なんだかんだでアルが色々と考えてくれた上での提案らしい。それなら時間もあるし、グラナータ灼熱洞まで転移せずに進めばいいか。


「よし、それじゃそれで決定! みんな、アルに乗れー!」

「「「おー!」」」

「さて、それじゃ出発するぜ! 『略:自己強化』『略:高速遊泳』『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『根の操作』!」

「おわっ!? あ、木の根で固定か!?」

「あ、こういう固定もありなのかな!?」


 アルの木の根が俺とサヤに巻き付いて固定したっぽい。そして、生成した水で風除けを用意して……水流に乗ってないのに、かなり速くなってない!?

 あー、でも水流ありの時ほどではないのか。でも、水流なしでこの速度はかなり良い感じかも? へぇ、こういう手もありか。


「ケイとサヤはこれで良いだろ。ハーレさんとヨッシさんは巣の中なら大丈夫だよな?」

「問題ないのです!」

「うん、大丈夫!」

「アル、高速遊泳のLvっていくつになった?」

「Lv7になって、かなり速度は上がってるぜ」

「おぉ、まさかのLv7か! そりゃ速くなるよな!」

「まぁな。あぁ、そうだ。支配進化の準備はすっかり済んでるぜ」

「お、流石!」


 ま、むしろ済んでいないと言われる方がびっくりではあるけどね。この感じだと、やっぱりアルは成熟体へはわざと進化させてないような……。


「あ、PTを組むのを忘れてた!」

「そういやそうだな。ケイ、頼んだぜ」

「ほいよっと」


 という事で、みんなにPT申請だー! これはやっとかないと、一緒に戦闘しても味方として判定されず、まともに経験値が入らなくなるからね。


<ケイ様の率いるPTが結成されました>

<サヤ様がPTに加入しました>

<ハーレ様がPTに加入しました>

<ヨッシ様がPTに加入しました>


 これでPTの結成は完了。さて、とりあえず何から聞いていったもんかな? 色々と聞きたい事はあるんだけど、どこから聞いていけば良いのかが悩む。

 とりあえず掲示板で軽く見た成熟体への進化の罠について、アルの見解を聞いてみる? まぁPTを組んだ状態でアルが未成体Lv30なのは確定したし、掲示板で見た通りの理由な気もするけど……。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>


 おっと、そんな事を考えてるうちにエリアの切り替えになったよ。なるほど、これは相当移動が速くなってるね。水流の操作を使ってないから、行動値の消費も抑えられるはず。

 おっ、まだちょっと距離はあるけど、ミズキの森林の湖が見えてきた。パッと見た感じでは、湖畔で薪割りや色んなものの加工をしてる様子は大して変わってないっぽい。


「ミズキの森林の様子は特に変わらないかな?」

「まぁここはな。だが、競争クエストには備えてはいるぜ」

「あ、そこも聞きたいんだ! 群集クエストで群集拠点種が進化したら新エリアへの転移が可能になるってあったけど、競争クエストってそれだけっぽいのか?」

「いや、それだけじゃないとは思うぜ。開始演出は……あぁ、タイミング的にまだ見れてないのか」

「……開始演出は見てきた方が良いのかな?」

「少し待ってるから、見てくるか? 俺が説明するよりはその方が分かりやすいと思うが……」


 ふむ、どうもこのアルの言い方的に開始演出の中に、新エリアでの争奪戦以外の要素がありそうだね? アルに説明してもらってもいいけど、アルが見てきた方が早いというならその方が良い気もする。


「みんな、どうする?」

「これは見てきた方が良い気がするね」

「私も同感かな」

「見に行きたいのです!」

「やっぱ、そうだよなー。アル、いきなり待たせて悪いけど、ちょっと見てくるわ!」

「それくらい気にすんな! ササッと行ってこい!」


 そうして止まってくれたアルから下りて、一旦ログアウトをして、今回の群集クエストの開始演出を見に行く事になった。追憶の実って、これまで殆ど見てないけどこういう役目のアイテムなんだろうね。


 さーて、俺らがいない間に始まっていた新たな群集クエストの開始の演出を見てこよう! それが終わったら、封熱の霊峰まで移動しながらアルに色々聞いていこうっと。とりあえず一旦ログアウト!


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