第888話 同時に襲いくる敵
さてと、マグマから出てきた敵は歩く松の木、歩く大根、カエル、リス、イノシシの5種類だな。……一度に出てくる数が俺らの人数と同じなのが偶然かどうかが気にはなるけど、そこは回数を重ねないと判明しないか。
とりあえず全部の敵が赤くて火属性なのはほぼ確実だと思って良いはず。……氷属性を付与したてマグマに放り込んだら盛大にダメージが入ったりしないかな? いや、ヨッシさんの氷魔法ではまだ付与魔法が使えないからこれは無用な仮定か。
「サヤ、ちょっとアルと作戦会議をするからその間の時間稼ぎは任せた! ハーレさんとヨッシさんはサヤのフォローを頼む! アル、クジラは木の方に引き上げてくれ!」
「おうよ!」
「任せてかな! 『並列制御』『爪刃双閃舞』『略:突撃』!」
「了解です! ヨッシ、ポイズンインパクトを下さいなー! 『魔法弾』!」
「とりあえずどの毒が効くか、試してみないとね。麻痺毒と腐食毒の複合毒で『ポイズンインパクト』!」
「いっくよー! 『連投擲』!」
よし、アルのクジラに群がっていた敵のど真ん中に、サヤが竜に乗って突撃をしながら銀光を瞬かせながら斬り込んでいく。いつの間にかサヤの竜は通常サイズになってるけど、まぁ今はそれでも問題ないか。
それにしてもサヤは見事なほど的確に1撃ずつ別の敵に斬り込んでいくね。ただ、5対1ではそれにも限界がある。そこを補うようにヨッシさんとハーレさんの魔法弾による連携で、サヤの攻撃が間に合わない敵を撃ち込んでいく。
お、麻痺毒は効いてる様子はないけど、松の木と大根には腐食毒は有効っぽい。
「ケイ、あっちは任せて作戦を話せ」
「ほいよっと」
流石に3人で殲滅し切るのは……正直、出来そうな雰囲気ではあるけど負担は大きいからね。特に5体全ての攻撃を引きつけるサヤへの負担があり過ぎだ。
とりあえず時間稼ぎ自体には問題はなさそうだし、手早く作戦を伝えてしまおう。もう作戦自体は考えた。やった事がない手段にはなるけど、多分理屈としては出来るはず。
「元々計画してた通りに昇華魔法で一気に数を減らす。だけど、それだけだと同時に5体は仕留め切れるか分からないから他の手も並行して使う」
「そりゃ良いが、他の手を並行してってどうする気だ?」
「俺は岩の操作、アルは水流の操作だ。昇華魔法の発動と並列制御を使って同時み発動する」
「……先に操作用の生成をしといて、それを操作すると同時に昇華魔法も発動か。よし、理屈は分かった。狙いは……確実にウォーターフォールの範囲内に叩き込む為だな?」
「お、当たり! んじゃ、そういう事で!」
「おう、それなら早速始めるぞ! 『アクアクリエイト』!」
折角の昇華魔法も5体同時に当てるとなると厳しいものがある。だからこそ俺が岩の操作、アルが水流の操作を使って、ウォーターフォールの範囲外にいる敵を範囲内へとぶっ飛ばす!
俺も水流の操作にしようかと思ったけど、水がこの環境でどう影響があるのかも気になるし、あの松の木には水流よりも岩をぶつける方が良い気がするんだよね。
という事で土の生成をやっていこう。これで気をつけないといけないのは、ここで昇華魔法にしてしまわない事だ。アルの生成した水の位置からは離しておいて……。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 77/78(上限値使用:3): 魔力値 219/222
後で追加生成で岩にすれば良いから小さめの石は生成完了! そういや岩の操作って追加生成があるから魔法産の小石は普通に操作対象なんだよな。
あー、そんな事を今考えてる場合じゃない。操作しないとそう長くは保たないから、次の手順を急げー!
「アル、やるぞ! サヤ、発動する直前に退避!」
「分かったかな!」
「いくぜ! 『並列制御』『水流の操作』『アクアクリエイト』!」
よし、アルにタイミングを合わせて俺も発動していこう。あー、流石にサヤにかけてた守勢付与は使い切っちゃったみたいだな。
でも、良い感じに纏まった位置に誘導してくれてるし、そこを狙おうか。アルが生成した水も位置的にもそのつもりみたいだしな。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 58/78(上限値使用:3)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 56/78(上限値使用:3): 魔力値 216/222
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
もの凄く今考える事じゃないんだけど、発火を発動してる意味って皆無だよね? いや、本当に今考える事じゃないけども。
<『昇華魔法:ウォーターフォール』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/222
よし、上手く昇華魔法と岩の操作の並列制御に成功っと。キャラは自力じゃ他の場所に移動出来そうにないけど、岩の操作はちゃんと動かせられる!
これは1人じゃ並列制御Lv2がないと出来ないけど、2人での発動だからこそ出来る事だ!
「今かな! 『略:突撃』!」
「あ、大根が追ってきてるのさー!?」
「カエルも跳ねたよ!」
お、サヤは退避にも竜に乗っての突撃を使ってるんだね。ふむふむ、普通に操作するよりも瞬発力があるみたいだから、敵までの距離を詰めたり、逆に距離を一気に取りたい場合にかなり有効っぽい。
さーて、サヤの竜を使った移動方法への感心はこれくらいにしておいて、ウォーターフォールの範囲外に逃れた敵を放り込んでいこう。その為のアルの水流の操作だし、俺の岩の操作だ。
「アル、大根の方は任せた!」
「おう、任せとけ! ケイはカエルを逃すんじゃねぇぞ!」
「分かってる!」
とりあえず松の木と大根とイノシシはウォーターフォールの範囲内で、ちゃんと押し潰されてHPが減っている。……いや、松の木は抜け出そうとしてるからそうでもない?
そっちの松の木の対処も必要そうだけど、今は大根とカエルの対処が先だ。てか、カエルのジャンプ力は凄いし、大根は走るのが速いな!?
「おらよ!」
「カエルもぶっ飛べ! てか、松の木は出てくんな!」
「ケイ、アル、ナイスかな!」
おっし、サヤを追っていた大根はアルの水流に呑まれてから、勢いをつけて水流から放り出され発動中のウォーターフォールに呑まれた。
俺の方も生成した岩をカエルにぶつけて、同様に吹き飛ばしていく。よし、ちゃんとカエルもウォーターフォールに呑み込まれたてくれたよ。ふー、ちゃんと事前に準備しておいて正解だったなー。
それはそうとして、松の木は他のと一緒に大人しく押し潰されてくれて欲しいもんだね。根本的に木は他よりも耐久性が高いし、巨体でもあるもんな。多分その辺が原因なんだろうね。
あー、俺の岩の操作で叩き込んで戻すか。……いっそ岩の形状を変えて、松の木の根を叩き斬るのもあり?
「ヨッシ、松の木を押し戻すのです! 『魔法弾』!」
「そだね。それじゃここは溶解毒を2重にした複合毒の『ポイズンボム』!」
「いっくよー! 『狙撃』!」
「2人ともナイスかな!」
「よし、ハーレさん、ヨッシさん、ナイス!」
「これでひとまずウォーターフォールの効果が切れるまで待機か」
松の木が普通にウォーターフォールの範囲外へと出てこようとしてきたのは少し焦ったけど、ハーレさんとヨッシさんの2人で対応してくれたね。
ふむ、やっぱり植物系には腐食毒や溶解毒は有効っぽい。てか、継続的にダメージが入ってるから毒って洗い流されたりはしない……いや、ウォーターフォールのダメージが入り続けてるから地味にどっちのダメージか分からないな、これ。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
お、討伐称号が出たって事はどれか1体は倒せたっぽい。えーと、今死んだのはカエルだな。……ふむ、マグマの適応用アイテムは落ちなかったか。
それにしてもやっぱり経験値はかなり美味い。色々とエリア的な制限が多い分だけ、その状態で倒し切れば相応のものは手に入るみたいだな。
「今のカエル、死ぬの早かったね」
「真っ先にに逃げたのに、1番乗りなのさー!」
「さっき連撃の最後で一気に削ってたからかな?」
「それもあるだろうが、ケイも岩の操作で1撃入れたからな」
「あー、そこまでHPは見てなかったけど、結構減ってたんだな」
ふむふむ、1番最後にウォーターフォールの中に呑まれたカエルが1番最初に死んだのは、シンプルにHPが最も減ってたからか。
まぁ松の木以外も同じくらいには減っていってるし、松の木はそれ以上にガンガン減ってるから毒の継続ダメージは入ってるっぽいな。うん、時間が経って差が出てきたら分かってきた。
そして、ただの雑魚敵では昇華魔法に対応する手段はなさそうだ。2人分の全魔力値を消費した昇華魔法を雑魚敵に突破されても困るけどさ。
あの強過ぎる成熟体の攻撃妨害に通用する威力がある攻撃を打ち破れる雑魚敵とか、そんなのもはや雑魚敵ではない。そんな雑魚敵、いてたまるか!
「そろそろ効果時間切れだな」
「だなー。……全滅とまではいかなかったか」
徐々にウォーターフォールの勢いが収まってきたけど、全滅は無理っぽい。でもまぁそれでも8割以上は削れているから、成果としては上々……いや、思ってたほどは削れてないのか?
うーん、物理型ではなく魔法型ばっかだったとか? もしくは敵の数に応じてダメージが分散する? いや、それでも弱点属性ではあるはずなんだけど、2人で発動した威力にしては少し物足りない結果だよなー。
それと、ウォーターフォールがなんだかいつもより水飛沫が激しい気はしてたけど、エリア的な熱が強過ぎて蒸発して水蒸気になってたとか?
焼け石に水って言葉もあるくらいだし、このエリアの変な特徴を考えたらそれもありそうな気がする。
「これだけ削れたら充分かな!」
「残りは私達で仕留めるのです!」
「そだね。大根は死にそうだし、1人1体ずつ?」
「それじゃ私はイノシシをやるかな!」
「私はリス対決といくのさー!」
「なら私は松の木だね」
「だそうだぞ、アル」
「それなら残りは任せるか」
そうやって話している間に歩く大根はHPが尽きていき、ポリゴンとなって砕け散っていった。よし、討伐報酬が出なかったって事は残滓だったんだろうけど、かなりの経験値は入ってきた!
通常は経験値が少ない残滓でも結構な量の経験値がもらえるなら、このエリアの経験値そのものが多めに設定されていると考えて間違いなさそうだね。
これなら経験値が良い狩場として挙げられていた理由も分かる。エリア的には面倒だとしても、その面倒さを差し引いてもお釣りはくるぞ!
「あっ、『特性の実:マグマ適応』が落ちたかな!」
「あー!? サヤ、いいなー!?」
「ハーレ、残り3体からも落ちるかもよ?」
「そうだった……って、マグマに向かって逃げてるのさー!?」
「ちょ、そんなのあり!? アル、リスとイノシシは任せた! 俺は松の木を抑える!」
「分かってる! これ、結果的に水流の操作や岩の操作を用意してて大正解じゃねぇか!」
ウォーターフォールの効果が切れた瞬間に、松の木もリスもイノシシも一気に逃げに転じてマグマに向かって行くとは思わないって!
くっ、オオカミもワニもそんな余裕は与えなかったから、この行動パターンは見てなかっただけか。いやでも、アルが言うように本当に用意してて正解だったよ。ここまで弱らせて逃す訳ないだろ、松の木! よし、根を岩で固めて地面に転ばせた!
「ヨッシさん、トドメは任せた!」
「了解! 2重の溶解毒の『ポイズンインパクト』!」
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
おし、ヨッシさんのポイズンインパクトが松の木に見事に決まって、HPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。こっちも経験値は非常に美味い!
「こっちもやるぜ! サヤ、ハーレさん!」
「了解なのさー! 『連速投擲』!」
「分かったかな! 『連閃』!」
あ、サヤもハーレさんも応用スキルを発動して、次々と攻撃を当てて行くけど……これはオーバーキルっぽいね。うん、まぁそういう事もあるさ。
連撃の最後まで行く前にリスとイノシシのHPが全てなくなってポリゴンとなって砕け散っていった。……なんというか物理攻撃の方が効きが良かったし、魔法型の敵だったのかもなー。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
「あー!? 連撃の最後まで保たなかったのさー!?」
「……あはは、完全にオーバーキルだったかな?」
「2人ともどんまい!」
てか、同時にリスとイノシシを倒したけど、どっちかが瘴気強化種で、もう片方が残滓だったっぽい? どっちがどっちだったんだろう?
雑魚敵……それも5体同時も相手にするのであれば、全部の識別なんかしてられないしなー。可能性としては、このエリア内でLvが高い残滓と、Lvが低い瘴気強化種だったのかもね。もしくは残滓だった方が防御系の特性を持っていたってとこか。
さて、とりあえず5体同時の戦闘は終了っと。それなりに傾向は見えてきたし、ここまでの情報を整理して、効率が良さそうな戦い方を考えていきますか。
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