第883話 襲いかかるのは


 溶岩の洞窟に突入して早々に、ヘビの人から飛んでいるとフェニックスが襲ってくると警告された。てか、ハーレさんが視認してるし、既にヤバい状況ー!?

 でも、なんとかサヤとハーレさんは地面に飛び降りて、ヨッシさんは低空飛行、アルもクジラを地面ギリギリまで下げていった。俺もなんとか地面に着地! これでどうだ!?


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


「うおっ! フェニックスが突っ込んできた!?」

「ちっ、間に合わなかったか!?」


 くっ、既にハーレさんから見えている状況から地面に降りたのでは遅過ぎたか!? もう目の前まで炎を纏った巨大な火の鳥が飛んできてるし、到着早々に成熟体との戦闘かよ!

 てか、『烏合の衆の足掻き』は既に持ってるし、空白の称号はもう持ってないから、ここでフェニックスと戦う理由が皆無過ぎる!?


「みんな、とりあえずエリア切り替えになれば成熟体からは逃げ切れる! いきなり過ぎるけど戻って――」

「ケイさん、ストップなのさー!」

「ハーレさん!?」


 ちょ、なんで今止める!? ここで判断を誤れば、Lv上げを始めたばっかで全滅の可能性も……ん? あれ、フェニックスが通り過ぎていった?


「……大丈夫だったっぽいね?」

「ハーレ、もしかして今のは危機察知に反応が無かったのかな?」

「サヤ、正解なのさー!」

「あ、やっぱりかな」

「……止めたのはそういう訳かー。あー、焦った」

「……入って早々に慌てたな」

「おっし、無事だったな! さーて、俺としてもフェニックスは丁度探してたから助かったぜ! そんじゃなー!」

「ヘビの人、警告助かった!」

「なに、気にすんなー!」


 そうしてヘビの人もフェニックスが飛び去って行った方向に向かって進んでいった。ふむ、ヘビの人はフェニックスを探していたっぽいね。

 でもあの警告が出来たなら自分で飛べばすぐに見つけられそうな気もするけど……あー、1人でいるっぽいし、スキル構成によってはそれはできない場合もあるのか。そもそも目的にもよるよな。


「あっという間にいなくなったかな?」

「フェニックスもヘビの人もなー。てか、今のヘビの人って、情報共有板にいた人か?」

「……可能性はありそうだが、情報共有板は名前が分からんからな。あのヘビの人とは言い切れないだろうよ」

「あー、それもそうか」


 この辺が半匿名の情報共有板の特徴ではあるよなー。……てか、慌ただしかったし、今のヘビの人自体があっという間に立ち去ってしまったから名前をちゃんと見れてなかった。

 灰色のカーソルだったのは確認出来たから、灰の群集である事だけは間違いないんだけどね。ま、今の段階でここのエリアを普通に探索出来るならLvは高い方だろうし、その内どこかでまた会う事もあるか。


「さて、気を取り直して探索開始といきますか!」

「だな。ただ、飛んでいけないのは予定外だな……」

「……少し思ったんだけど、今のフェニックスって海エリアの海面と同じような扱いなんじゃない? ほら、決まったとこ以外は難易度が高いとか、そういう感じで」

「あ、それはあり得そうかな」

「……そうなると、問題はどの程度の高さまでなら大丈夫かってとこか」

「だなー。アルの木くらいまでは大丈夫な気はするけど……試してみないとなんとも言えないか」


 んー、多分ヨッシさんの推測通り、この溶岩の洞窟では大々的な飛行はフェニックスによって制限されているという可能性は十分ある。……空を飛ぶ種族だと地形としてのマグマの回避が楽勝過ぎるというのもありそうだしね。

 でも、完全に飛行を封じられたら移動自体が困難になる人も出てくるだろうから、フェニックスの標的にされない範囲の境目はどこかに設定されているはず。


「アルさんの木を超えないくらいまでで良ければ、私が試してみるよ」

「ヨッシさん、危ないけどいいのか?」

「うん、もちろん。1番私が影響ありそうだしね。ハーレ、危機察知はお願いね」

「そこはお任せなのさー!」

「よし、それじゃその方向性で試してみるか。ただし、危機察知に反応があったら即座に封熱の霊峰に逃げる感じで行くぞ。逃げるのはアルが最優先で、復活が1番楽な俺が殿をやる」

「……ま、それが無難だな。Lv上げの最中にミスってもヤバいから、確認はしておいた方がいいか」

「うん、確かにそれはそうかな。ケイ、私は目視で周囲を警戒しておくね」

「おう、任せた!」

「私も目視の警戒はするけど、全方位は無理なのでサヤと分担するのです! サヤ、さっきフェニックスが飛んでいった方をお願いします!」

「任せてかな!」


 万が一のときにフェニックスが1番やってくる可能性が高い方向はサヤが担当して、それ以外の方向をハーレさんが担当って感じになった。

 さっきのヘビの人がフェニックスを狙ってた理由が分からないから邪魔になる可能性もあるけど、この辺は確認しておかないと俺ら自身が危ないしな。……もし邪魔になったらごめんなさい。


 さてと、多分さっきの感じだと危機察知よりも目視での確認の方が早そうだし、こっちの方が重要だな。……危機察知に反応がある時は、もう逃げの一択しかない状況になってる訳だしね。

 今からやるのは念の為の確認って意味合いの方が強いけど、気休め程度でも万が一の生存確率は上げておきたいし、水の守勢付与でも……って、あれ?


「アル、発火草の群生地で俺が付与した水の守勢付与って、いつの間に消えたんだ?」

「……ん? そういや、いつの間にか消えてるな。……消費した覚えはないが、状況が状況だったから、いつどうなったか覚えてねぇぞ?」

「……いつの間にか攻撃されてた?」

「いや、それならハーレさんの危機察知で気付くだろ」

「アルさん、それは油断なのです! 危機察知が反応しない場合もあるのさー!」

「直接狙ってない流れ弾とかなら、その可能性はあるかな?」

「……でも、あの状況で流れ弾ってあったの?」

「それは不明なのさー!」


 うーむ、相手がとんでもなく悪質なスライムだったから、流れ弾に見せかけて俺らに攻撃を仕掛けていたという可能性は否定出来ないのが、なんとも複雑な気分……。


「……シンプルに効果時間は永続じゃない可能性はどうかな?」

「あー、そういやそれは地味に試してないような……?」

「……言われてみればそうだな」


 ふむふむ、そもそも今まで守勢付与をする時は被弾の可能性が高い状況だったから、使い切るのを前提に考えていた。

 効果時間の表示が出ないからと言って、永続的な付与であると断定するのは早いか。効果時間切れで付与が消える事があるなら、それは無駄撃ちという事になるしね。


「……よし、使い切る可能性の方が高い気もするけど、その辺も検証って事で全員に守勢付与をしとこう!」

「あー、それは良いかもしれんな」

「……ケイさん、魔力値を一気に消費しても大丈夫なの?」

「はっ!? もし殿をする事になった時に支障が出るのです!?」

「うーん、まぁ何とかなるだろ」

「その時は私がフォローに入るかな!」

「その時が無いのが1番いいけど、その場合はよろしく、サヤ!」

「うん、任せてかな!」


 サヤならフェニックス相手でも近接で凌ぐ事は出来るだろう。その間に昇華魔法以外の手段……それこそ、今日検証したまだ出来損ないではあるけど、ウォーターカッターもどきで攻撃って手段もある。

 あー、でも行動値の消費も多いから、水流の操作のみでやるパターンかな。……もしくは死ぬのを前提に時間稼ぎをするなら暴発って手もあるか。


 ま、1番は使わなくて済む状態になるのが良いんだけど、入って早々にフェニックスが襲いに来たんだから警戒はしておくべきだ。

 冗談抜きであの時、ヘビの人がいなけりゃ危なかった訳だしね。いや、ほんと、ヘビの人の警告には感謝だなー。あー、ちゃんと名前を見ておくべきだった。


「ま、いいや。とりあえず守勢付与をかけてくぞー!」


 という事で、発動開始! 俺自身には付与出来ないから、とりあえずメインの種族の方で4人分! 共生進化の両方にかけるのは、流石にちょっと消費が多過ぎる。


<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 71/78(上限値使用:3): 魔力値 201/222


 初めにアルの木に水の守勢付与をかけて……よし、水球が3つ周囲を漂いだしたね。さて、次々とかけていきますか!


<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 64/78(上限値使用:3): 魔力値 180/222

<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 57/78(上限値使用:3): 魔力値 159/222

<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 50/78(上限値使用:3): 魔力値 138/222


 よし、これでサヤのクマ、ヨッシさんのハチ、ハーレさんのリスに守勢付与はかけ終えて、それぞれに3つの水球が漂いだした。

 ふむふむ、4人に付与魔法を使って全快から半分は切らない程度までは消耗すると……。やっぱり付与魔法は効果が強力なだけあって、消耗が激しいか。

 守勢付与は自動防御が3発分だもんなー。これに水の操作Lv7で同時操作数が3から4に増えたら、自動防御も4発分になるしね。……水の操作Lv7、早く到達したいな。


「とりあえずメインの種族だけなー。ぶっちゃけ、両方にかけたら行動値も魔力値もほぼなくなるし……」

「ま、安全策としては充分だろ」

「それじゃ準備完了という事で、ヨッシ、お願いなのさー!」

「了解! ゆっくり飛び上がっていくね」


 そうして地面に降りてこそいなかったけど、地面に近い部分を飛んでいたヨッシさんが少しずつ飛ぶ高度を上げていく。

 流石にアルの木を超えたら危ないだろうけど、そこまでは大丈夫だと予想はしてる。……そうじゃないとアルのクジラの上にある木の判定がどうなってんだって話だしね。


「……とりあえず、アルさんの木の根元までは大丈夫みたい?」

「目視でフェニックスは見えないし、危機察知にも反応はなしです!」

「私の方もフェニックスは見えないかな」

「まだ大丈夫そうだな」

「……まぁここで反応があっても困るけど」

「……確かにな」


 今のアルの木の根元って、要するに通常サイズのクジラの背の上だしね。ここでアウト判定が出たら、洞窟は縦にも横にも広さがあるのに、飛べる幅が狭くなり過ぎる。


 さて、重要になってくるのはここからだ。……フェニックスに襲われる危険性が出てくる基準の高さを見極めないと。

 まぁまとめを見たら既にこの辺の情報はありそうだけど、自分達で安全ラインは感覚的に掴んでおきたい。……ちょっとしたミスで全滅しかねないのなら、尚更に。


「ハーレの巣の辺りまで来たけど、どう?」

「こっちは大丈夫そうかな?」

「私の方も問題なしです!」

「……とりあえずアルの木がある範囲では大丈夫そうか。どうする、危険なラインを確認しとくか?」

「……安全面を考えるならやっとくべきだな。そもそも俺自身が高度を上げて良いものかが怪しい」


 ふむ、そういやアルの移動の事が抜けてたな。アルがこのまま飛んで移動するのであれば、ほぼ地面に降りている現状からどれだけ高度を上げれるかという問題もあったよ。

 まぁアルの場合はクジラを小型化して、木を牽引する方法もあるから移動自体は問題はない。ただ、クジラの背の上に木がある状態は危険過ぎる可能性があるか。


「そっか、私はここまで飛べれば充分だけど、アルさんの場合は不明なんだね。……うん、それなら危険な高度はちゃんと把握しておこうよ」

「そだな。よし、全員最大限に警戒! 危険ラインを明確に把握するぞ」

「おうよ!」

「ハーレ、見落としは絶対になしかな!」

「分かっているのです! 危機察知に反応する前に見極めるのさー!」

「……それじゃ、行くよ!」


 そこからヨッシさんがアルの木の枝葉を越えて部分まで徐々に高度を上げていく。……とりあえずアルの木の範囲はセーフっぽい。

 みんなが警戒している中で、更にヨッシさんが高度を上げていく。アルの木の天辺よりも少し高い位置になってきて――


「ヨッシ、ストップかな! ううん、一気に下がって!」

「っ!? サヤ、フェニックスが見えたの!?」

「うん、一気にこっちに加速してきてるかな!」

「って、地味に今の俺はギリギリの位置か!?」

「そういう事っぽいな! ハーレさん、危機察知は!?」

「今は反応なしなのです!」


 となると、サヤの警告を受けてからすぐにヨッシさんが高度を下げたからフェニックスの標的からは外れたか? いや、まだ油断は出来ないな。


「フェニックスがもう間近まで来るかな!」

「今も危機察知に反応はなしです!」

「攻撃対象にはなってないっぽいけど、いつでも動き出せるように警戒! アルは逆に動くな!」

「思った以上にギリギリのラインにいたっぽいし、そうなるよな!?」

「……何事もなく通り過ぎて!」


 万が一に備えてはいるけども、ここで戦闘にならないのが1番いい。さっきと同じであれば、フェニックスからの標的から外れればそのまま通り過ぎて行くはず。


 それにしてもアルの木の高さを少し越えた時点でアウトだったとか、試さなければかなり危なかったような気がする。

 いや、その辺を考えるのは何事もなくフェニックスが通り過ぎてからだ。今はまだ警戒を緩めたらいけないタイミングだしね!

 

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