第826話 フィールドボスの連戦開始!
さて、俺の新たな進化先について説明をしつつ、上風の丘に向けて移動中である。今は極端に加速はしてないけど、このペースならそう時間はかからないな。
ん? なんか翡翠さんが俺らの方をジッと見てきている気がするけど、何か問題でもあったかな?
「翡翠さん、どした?」
「……さっきの会話がちょっと気になった。……みんな、次の進化に向けて自力だけで本格的に動いてる?」
「まぁ、進化は試行錯誤したいとこだから、出来るだけまとめは見ないつもりだな」
「……そうなんだ。……私はまとめの情報頼り」
「あー、そこはそれでも良いと思うぞ。人それぞれだって!」
「……うん、それは確かにそうだね。……でもアルマースさんがいないのにLv上げを急いでいるみたいに見えるけど、それは?」
おっと、そこを聞いてくるか。まぁ俺らの事を少なからず知っている翡翠さんとしては気になる部分かもね。
うーん、俺としては別に理由を説明してもいいんだけけど……あ、サヤ達の方を見たら頷いているから、言っても良さそうだ。
「俺ら、来週の月曜からしばらくログイン出来ないから、今のうちにLv上げやスキルの強化を頑張ってるんだよ」
「私達4人はしばらくアルさんとは別行動になるからね」
「……もしかして、みんなテスト期間?」
「翡翠さん、大正解なのさー!」
「……やっぱりそうなんだ。……私とザックも同じだよ」
「え、翡翠さんとザックさんも学生なのかな?」
「……うん、学生。……でもザックはそんなの関係ないって普通にやる気みたい」
「あー、ザックさんは確かにそういうタイプっぽいよなー」
なんというか、一定数はいるよね、テスト期間とか関係なく普通に遊んでる人。まぁ赤点を取って後悔している人を見る事も割とあるし、俺自身も赤点は無くても良くない点数を取った経験はあるけどさ。
「ふっふっふ、ケイさん、俺が赤点を取ると思ってんな?」
「……あ、PT会話で聞こえてたか」
「俺を甘く見てもらっちゃ困るな! テスト勉強なぞしなくても、平均点を下回った事は皆無だぜ!」
「それは羨ましいのです!?」
「……すごく不公平な気がする。……ザックの学校って偏差値は低いの?」
「ちょ!? 翡翠、それは地味に酷くねぇ!?」
「……流石に今のは言い方が悪かったから謝る」
「おう、それなら許すぜ!」
なんかザックさんの自信満々っぷりが気になるから、今度のテスト期間はしっかりと勉強していつもより良い点を狙ってみようっと。
それにしても普段は気にしてなかったけど、俺らと同じで学生の人もチラホラいるんだな。まぁVR機器は決して安くもないけど、一般家庭で普通に買える値段ではあるからね。
一昔前のフルダイブのVR機器が発展するまではプレイ時間に制限がなく、人間性を捨ててゲームばっかりやってる人か、大金を注ぎ込む人のどちらかが一強だった時代もあったらしいんだよな。
まぁどっちもフルダイブのVR機器の発展と同時に法的に規制がかかったって経緯らしいから、今はそんな無茶なプレイ出来ないもんね。
「……そうか、そんな時期か」
「肉食獣さん、モンスターズ・サバイバルにも学生はいるのか?」
「あぁ、いるぞ。そういう紅焔の方はどうなんだ?」
「んー、いるっちゃいるぞ。ま、その辺は仕方ないだろ」
「まぁリアルが優先なのは間違いないからな。それに、前時代のフルダイブでないMMORPGみたいに休まずにやり過ぎて死人が出ても困る」
「ははっ、そりゃ違いねぇな」
話でしか聞いた事はないけど、ゲームのやり過ぎで死人が出るのは確かに嫌だよな。ぶっちゃけログインの上限時間が決まっているのは面倒くさいと思う事も多いけど、こういう話を聞くと仕方ない側面もあるんだろうね。
あ、そんな雑談をしている間にエリア切り替えになる崖が見えてきた。ここの崖を超えてしまえば上風の丘に到着だな!
「カリン、そっちは任せるぜ!」
「分かっているよ、紅焔! 『アースクリエイト』『岩の操作』! みんな、行くよ!」
そのシカのカリンさんが生成した崖上まで続く岩の坂を、カリンさんとダチョウの人とトリケラトプスの人が駆け上っていく。
サメの人は空中を泳いでいるし、飛んでいるソラさんと紅焔さん、その紅焔さんの背中に乗ってるザックさんは岩の坂は関係なく登っていった。まぁ飛べるんだからそうなるか。
「エレイン、頼むぞ」
「えぇ、分かってます」
そして肉食獣さんのPTは松の木であるエレインさんの樹洞の中に入ったままで、そのまま高度を上げて崖の上まで移動していった。
なんというか、PTによって移動手段にも個性があるもんだな。カリンさんのとこは俺らと同じように岩に乗って飛んでも良さそうな気もするけど、あえて地面を走ってたって感じだしね。
あのトリケラトプスの人が走っていた様子は力強さがあったもんなー。まぁ流石にダチョウの人の方が早かったけど、決して遅くは無かったし、スキルを使えばトリケラトプスの人の突撃とかは厄介そうな気がする。
さて、他の人達の移動の様子を見てても仕方ないし、俺らも崖上まで飛んでいこう。この崖の上まで行って、そのすぐ側にある木々を抜ければ上風の丘だからね。
<『ミズキの森林』から『上風の丘』に移動しました>
よし、上風の丘に到着! えーと、ここまで来たけど混雑具合はどんなもんだ? 流石にフィールドボスの連戦をしようって状況だから混雑してたらあれなんだけど……ふむ、人がいない訳ではないけど疎らで空いている方だな。
「おし、これならフィールドボスの連戦をやっても問題なさそうだな」
「そうみたいだな。ただ、エリアの切り替え付近は流石に邪魔だから、もう少し先に進んだ方が良いだろう」
「あー、そりゃ肉食獣さんの言う通りだな。……変に障害物がない方が良さそうだし、少し先の傾斜の少ないとこにしよう!」
「決まりだな! 行くぞ、紅焔さん!」
「おうよ、ザックさん!」
「紅焔、先走らないでくれないかい!?」
「あはは、紅焔に先走り癖があるのは相変わらずだね」
「……ザックも困ったもの」
そんな風に先に飛んでいった紅焔さんとザックさんをみんなで追いかけていく。ははっ、やっぱり紅焔さんとザックさんはこういう所が地味に似てるよな。さて、置いていかれても困るから俺も少し岩を加速していこうっと。
そういや急激な加速も減速もしてないから思ってる以上に操作時間は残ってるな。これなら戦闘が始まってすぐに攻撃に使えそうだね。
「そういえばソラさんが掴んでるツバメと、紅焔さんが掴んでるトカゲとタケノコのどっちを使うのかな?」
「あー、そういや決めてなかったっけ」
これだけのメンバーがいるのなら、どっちからでも残った方の捕獲はしておけるし、倒す順番自体はどっちからでも問題はないか。……どちらかといえば、それぞれの識別情報が欲しいとこだな。
「肉食獣さん、ザックさん、それぞれの識別情報って分かるか?」
「あー、それは言っといた方がいいか。ツバメの方は風属性持ちの多分バランス型だ。だが、黒の暴走種をフィールドボスに進化させた場合は意図しない形で特性が増える可能性がある」
「……なるほど」
ツバメに関しては実際に進化させてみないと方向性が定まらないって感じか。まぁ合成進化で混ぜ合わせる訳じゃないから、そういう方向性になっているんだろう。
「ザックさん、そっちは?」
「トカゲは属性なしで特性は『爪撃』と『突撃』で、タケノコの属性は『草』と『樹』で特性は『刺突』『打撃』『分体生成』だぜ!」
「……混ざったらどうなるか、予想がつかないね?」
「なんとなくだけど、ツバメが先の方が良いと思います!」
「え、なんでだ?」
「動きが素早そうな気がするからです!」
「あー、なるほど」
確かにツバメなら移動が早そうだから、捕まえるのに手間取る可能性はある。全員の余力が充分な1戦目はその方がいいか。
そしてみんなもハーレさんの言葉に同意だったようで、頷いている人が多い。いや、肉食獣さん達はまだ樹洞から出てきてないから分からないけどさ。
おっと、そうしている間に紅焔さんが着陸していっている。ふむ、他の戦闘中のプレイヤーからはかなり離れているし、このエリアにしては平坦な場所だから良い感じだね。
「おらよっと! 移動、ご苦労だった、エレイン」
「いえいえ、どういたしまして。さて、私は根を下ろして後方支援に移りますね。『根下ろし』!」
「あぁ、頼む」
お、松の木のエレインさんは岩の操作を解除して、地面へと根を下ろしている。そっか、アルとかルストさんは移動しまくってる移動種の木でそっちの印象が強いけど、今のエレインさんみたいに根を下ろして後方支援をしながら戦う事もあるよね。
というか、どちらかというとそっちの方が割合としては多いような気がする。アルだってクジラと共生進化になる前はこういう戦い方をしてた事はあるもんな。
「おし、この辺でいいか。で、さっきの反応だと先にツバメを先にするのか?」
「肉食獣さん達はさっき反応なかったけどその辺はどう?」
「ん? あぁ、樹洞の中にいたから反応が伝わってなかったのか。俺らもツバメを先にするので賛成だ」
「ほいよっと」
それなら声が聞こえてても良かった気もするけど……あー、でも俺らの方も無言で意思疎通してた感じになってたし、樹洞の中でも似たようなものだったのかもね。
「そういう事なら俺はそんなに強くねぇし、トカゲとタケノコは預かっとくぜ? 紅焔さんは参戦した方が良いだろ?」
「お、そりゃ助かるぜ、ザックさん!」
「おう、任せとけ! んじゃ預かるぜ。『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
「おし、預けたからな!」
ふむふむ、ここでザックさんはトカゲとタケノコを預かっておく事にしたのか。……流石に今回は自爆特攻には向いてない状況だから、そういう判断なのかもね。
「……私は、ザックのフォローをしてくるね」
「いや、それは俺らモンスターズ・サバイバルの方で請負おう。空中戦力は正直なところ、微妙ではあるからな」
「あー、それは確かに……」
アリゲーターガーの人は飛べそうだけど、ライオンの肉食獣さんや、松の木のエレインさん、イノシシの人、キノコの生えたロブスターの人、キツネの人だもんな。
多分飛ぶ手段は持ってる人も多いだろうけど、ツバメ相手なら飛行種族である竜の紅焔さん、タカのソラさん、ハチのヨッシさんと翡翠さん辺りが直接対峙した方が良いはず。そもそもここは風が強いエリアでもあるしね。
そこから俺やサヤやハーレさん、飛んでるサメの人、飛んでるアリゲーターガーの人でフォローをして、他の人達は待機してもらっておくのが良いか。行動値や魔力値の回復も必要になるから、一気に全員で攻め込まない方が得策だろう。
「それじゃ基本的にツバメと直接対峙するのは種族として飛べる人をメインにして、俺のPTと紅焔さんのPTで戦闘をしていく感じで! 俺はカリンさん達と肉食獣さん達の手札は全然知らないから、細かい指示は各自に任せる!」
「まぁ、そこら辺は妥当な判断だね」
「だな。何かやる時はこっちから声をかけるし、必要な手段があったら指示してくれ。細かい調整はこっちでやるからな」
「任せたぞ、カリンさん、肉食獣さん! 紅焔さんとソラさんと翡翠さんは俺からの指揮でいいよな?」
「おう、問題ないぜ!」
「それは何も問題ないね」
「……分かった!」
よし、俺としては初対面の人の手札が分からなくて細かい指揮までは出来ないけど、そこは詳しく知っている人に任せる形でやればいい。後はサヤ達に方針を伝えとかないとね。
「さて、俺らの方だけど、ヨッシさんは紅焔さん、ソラさん、翡翠さんと一緒に飛ぶツバメの動きを封じる役目をやってくれ」
「ケイさん、ハーレも言ってたツバメの動きの速さを警戒してる?」
「まぁ飛行種族だから、空中戦って事で警戒はしてる。どういう特性が出てくるかも分からないなら尚更な」
「確かにそれはそうだね。うん、そこは何とか頑張ってみるよ」
「……私も一緒に頑張る!」
「よろしくな、ヨッシさん、翡翠さん。それでサヤとハーレさんは一緒にどの距離からでも対応出来るようにしといてくれ。基本的には動きを封じるか、鈍らせた段階でダメージ狙いって感じで」
「分かったかな。それなら竜の小型化解除して……うん、これで良いかな」
「サヤの竜が普段のサイズに戻ったのさー! 私はサヤに乗って、投擲で狙えばいいですか!?」
「ま、そんなとこだな」
「了解です!」
えーと、ザックさんは既に松の木のエレインさんの影に隠れるようにしてるから、特に指示を出さなくてもいいな。
これからフィールドボスになるツバメとの一戦の間に、トカゲとタケノコを捕獲し続ける役割の人も必要だからね。その役目はザックさんに一任して、その護衛役は肉食獣さん達に任せよう。
「それじゃ、フィールドボスの連戦、1戦目をやってくぞ! ソラさん、ハーレさん、頼む!」
「うん、分かったよ。……こんなものかい?」
「問題なしなのさー! 『狙撃』!」
ソラさんがツバメを脚で掴んだまま地面へと下りていき、地面に押し付けられた形になった。そしてそのツバメの目の前へとカインさんから貰った+20の瘴気石をハーレさんが投げていく。
「わっ、ツバメが暴れ出したね」
「ソラさん、離れてくれていいぞ!」
「そうさせてもらうよ!」
目の前に瘴気石がある状態になった事で、ツバメが暴れ出していく。まぁこれは進化の前兆だし、ソラさんはツバを掴むのを止めて飛び上がっていった。
そしてソラさんから解放されたツバメは+20の瘴気石を食べていき、瘴気の膜に包まれて進化が始まっていく。……今回のツバメは黒の暴走種だから、混ざっていく様子はないんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます