第803話 効率を上げる為に


 さて、この擬態しているタコの攻略作戦は立て終えた。ここからはそれを実行に移すまで!


「それじゃいくかな! 『略:ウィンドプリズン』!」

「サヤ、ありがと! タコはそこだね! 『アイスクリエイト』『氷の操作』!」


<ケイが未成体・暴走種を発見しました>

<未成体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・暴走種を発見しました>

<未成体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>


 うお!? この擬態してたタコ、まだ誰にも倒されてない黒の暴走種か! って事は、冗談抜きで経験値が期待出来るぞ!

 それに作戦通り、ヨッシさんがタコを氷の中に見事に閉じ込めている。……でも、タコの触手に無色のオーラを放ち始めたから魔力集中を使って、既に風の拘束魔法を破壊してきたか。

 このままだとすぐに氷の方も内部から破壊してきそうだな。ちっ、流石にちょっと他の個体とは違いそうなだけはあるか。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 35/71(上限値使用:8): 魔力値 185/218

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します>  行動値 16/71(上限値使用:8)


 よし、ヨッシさんの拘束している氷塊のすぐ近く……そして、アルの突撃の進行ルートの部分に岩の槍の生成は完了! 丁度いいタイミングでアルのチャージも完了したようだ。


「ヨッシさん!」

「了解! 穴は……この向きでこう! えっ!?」

「わっ!? タコが穴から出てこようとしてるのさー!?」


 あっという間に風の拘束魔法を壊して、軟体生物であるタコは閉じ込めている氷の穴からでも脱出を狙ってきた! ヨッシさんもタコの動きに合わせて少し穴を小さくしたけど……それでも出てこようとしている。ちっ、逃してたまるか!


「アル!」

「おうよ!」


 タコを逃さないという意思はアルも同じようで、生成した岩の槍の石突の部分をアルのクジラの頭がもの凄い勢いで押し出していく。そんでもって、その初速を利用して最大限まで岩の操作で加速!

 くそっ、少しだけタコの方の動きが早くて、タコ足を何本か消し飛ばしたけどHPは2割くらい残っている。……今ので倒し切りたかったけど、仕方ないか。


「サヤ、フォローするのさー! 『連投擲』!」

「ハーレ、ナイスかな! 逃さない! 『連閃』!」


 そこから逃げようとしていくタコを牽制するように連続で投擲をするハーレさんと、満身創痍ながらも回避行動に移ろうとしたタコを一気に斬り刻んでいくサヤの姿があった。サヤはヨッシさんが氷で拘束した時点で一気に竜で泳いで距離を詰めていたのがよかったな。

 そしてHPが全て無くなったタコはポリゴンとなって砕け散っていく。おし、ちょっと誤算はあったけど大勝利! このタコ、HPは少なめだったな。


<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>


 おー、このタコは予想通りに通常よりも経験値がかなり多く入ってきた。ふむふむ、これはスキルを鍛えるのに固執せずに出し惜しみ無しでやって正解だったみたいだね。


「おし、Lv上がったぜ!」

「アルさんのLvが上がったのさー!」

「アル、おめでとさん!」

「おう、あんがとよ!」


 とりあえず今日のLv上げはみんながLv1ずつ上げるのを目標にしているから、5人中1人が達成だね。

 俺も今日のLv上げを開始してからそれなりに経験値は溜まってきているので、決勝トーナメントが始まる連絡を受ける頃までにはLvは上がりそうではある。……まぁ間に合うかぎりぎりって感じもするけど。


「みんなはLvは上がりそうか? 俺は敵にもよるけど、なんとか上がりそうではある」

「私も間に合いそうな気はするのです!」

「昨日の『烏合の衆の足掻き』でかなり経験値は溜まってたから、私も上がりそうかな? まぁトーナメント戦の進行具合にもよるけど……」

「それはそだね。私も順調に行けばLvは上がりそうだけど、決勝トーナメントの開始が早ければ微妙なとこかも?」

「ま、決勝トーナメントの開始のタイミング次第だな」

「そりゃそうか」


 ブロック分けをして森林エリア、森林深部エリア、草原エリア、荒野エリアでそれぞれに行われているトーナメント戦がいつ終わるのかは不明だしね。

 全部のブロックが終わらなければ決勝トーナメントの開始にはならないし、そこまでに確実に全員のLvが上がるかは運次第ではあるもんなー。


 今が9時半くらいだから、多分1時間くらいはLv上げに集中出来るはず。今のタコの経験値は多かったし、他のも適正Lvということもあって経験値は中々良い感じだ。

 まぁ適正Lvのフィールドボスとかに比べると経験値は少なくはなるだろうけど、通常の敵が相手なら数で補う部分だからね。トーナメント戦の影響だとは思うけど、このエリアにいるプレイヤーも多くはないみたいだし、絶好のチャンス!


「とりあえず、この調子で移動しながら見つけた敵を倒していくか」

「それはいいんだが、ケイ、敵の識別はどうする?」

「あー、どうすっかな……?」


 フィールドボスなら識別せずに戦うのは危険だけど、今日は基本的に通常の敵ばかり予定だもんな。臨機応変に対応すればいいとこでもあるけど、基本方針くらいは決めておくべきか。


「基本的に普通の敵だし、毎回してたら時間ロスもあるから今回は省略で良いんじゃないかな?」

「そだね。何か様子が変だった時だけで良いんじゃない?」

「というか、今まで具体的に決めてなかったし、臨機応変で良いのさー!」

「……ま、そりゃそうだ。んじゃ、変な様子があれば手が空いてる人が識別するって感じでやってくか! 目標は決勝トーナメントの開催までにみんながそれぞれにLv1アップ!」

「「「「おー!」」」」


 目標や識別に関する方針を改めて決めたところで、再びアルのクジラの背に乗って移動再開である。まぁ思いっきりさっきのタコを倒すのに行動値を使ったから、アルは移動速度は控えめにだね。

 さっきのタコでみんなが少なからず消耗はしたから、優先度は回復が上だなー。ま、さっきのタコみたいに美味しい敵は早々出てこないだろうから、通常攻撃を交えながら交代しながら倒していけばいい。


 うーん、でもこういう時は行動値の回復を早めたい。次に敵を見つけたら養分吸収で行動値の回復速度を早めて……。


「……そういや、これは試そうと思ってそのまま試してなかったっけ」

「ケイ、レモンを取り出してどうしたのかな?」

「んー、養分吸収の実験。前にスイカを食べた時に試したけど、他の食べ物でどうなるか試してないままだったしさ」

「あ、そういえばケイさんに色々渡したね。あれってまだだったんだ?」

「まー、色々あったからなー」


 本当は昨日の夕方にやるつもりだったはずなんだけど、俺と紅焔さんの模擬戦と、ハーレさんとレナさんの模擬戦をして、そのまま一緒に行動になってすっかり忘れていたからね。

 あれはあれで色々やって楽しかったけど、試すつもりでいた事をすっかり忘れてしまっていた。ま、今は確実に回復を早めた方が良い状況だから実験を兼ねてやってしまおう!


「ケイ、確かHP回復のスイカでは行動値の回復の速度が少し上がってるんだったよな」

「おう、そうだぞ」

「それで蜜柑じゃなくてレモンを持ってるって事は、魔力値の回復アイテムだとどうなるか変化を見る気か?」

「アル、大正解だ!」

「……それ以外の理由も思いつかないけどな」

「ま、そりゃそうだ」


 ぶっちゃけ、食べて回復する系統のアイテムの区分がHPと魔力値の2つしかないんだから、そういう風になるよなー。

 あ、氷結草とかそういう系統の素材アイテムはどうなるんだろ? ふむ、そっちも後で試してみますかね。まぁ先にレモンでどうなるかの確認だな。


 えーと、ロブスターのハサミを覆っていた増殖のコケはちょっと前に効果切れで無くなっているから、どうしようか。別に攻撃に使う訳じゃないから、飛行鎧の岩の表面に増殖しているコケを使っても大丈夫だよな?

 というか、普通の増殖で増やしたコケはロブスターの表面だと長持ちはしても永続はしないけど、移動操作制御に組み込んだ増殖で増えたコケはずっと残ってるんだな。この違いは移動操作制御の効果なんだろうね。


 という事で、飛行鎧のコケがある部分の岩の形を変えて目の前に持ってくる。ついでに養分吸収をする為にコケの核もそこに移動させて……あ、駄目だ。ロブスターから離れる形になるから、岩の方に核の移動が出来ないや。……これは仕様上、仕方ないか。


「サヤ、悪いんだけどロブスターの背中のコケの上にこのレモンを置いてくれない?」

「それは良いけど、コケのある岩を目の前に持っていったのになんでかな?」

「同調での制約で、そっちにコケの核が動かせないんだよ。増殖でどうにかしても良いけど、行動値の節約だ」

「そういう事なら了解かな」

「おし、サヤ、サンキュー!」

「どういたしましてかな」


 ふー、サヤが俺が持っていたレモンを受け取って、俺のロブスターに接している部分のコケの上に置いてくれた。そういや斬撃の特性を追加してからかなりハサミの切れ味が良くなってるから、レモンを持つのも力加減が地味に難しいね。……これ、いったんに改善要望を出しとこうかな。


「……ケイさんの場合はその方が良いかもね。その手の話題って確か、他でも聞いたよ?」

「あ、そういえばこの間ボヤいてたカニの人がいたかな」

「ラックからも灰のサファリ同盟で話題に出てたって聞いたのです!」

「俺もそういや、ハサミで切れ過ぎる問題は聞いたな。まぁハサミの上に乗せたり、真っ二つに切り離しさえしなけりゃそれほど問題はないとも言ってたが……」

「あー、そうなんだ。……もう要望は出てそうだけど、俺も言っとこ」


 うん、思いっきり声に出てたっぽいけど、もうそのまま会話の流れになってるからそのまま流してしまえ! それにしても俺と同じような状態の人も複数いるんだね。まぁアルが言ってるように、力加減とかハサミの上に乗せるとかの工夫で何とかなる範囲だもんなー。


「ま、その辺の報告はケイがしてくれ。要望を出すなら、該当している人の方が良いだろうからな」

「だなー。さて、それじゃとりあえず話を戻して試してみますか」

「わくわく!」

「これでどう回復するかで、色々と変わってくるかな?」

「そだね、魔力値の回復アイテムがコケの養分吸収でどうなるのかで試す範囲も変わってきそうだしさ」


 レモンに対して養分吸収をする際に、養分吸収のスキルの性能である行動値の回復速度の上昇と、アイテムとしてのレモン自体の効果と、どっちが優先されるのかという内容だからね。

 ここでスキル効果が優先されるなら、おそらくアイテムに対して使えば一律で行動値の回復速度の上昇だと考えて良いはず。さて、それを確認する為にも試してみますか!


<行動値を2消費して『養分吸収Lv2』を発動します>  行動値 20/71(上限値使用:8)


 少し行動値は回復してたけど、回復状態はまだまだか。その辺を補う為の養分吸収の使用だけど……どうだ? うーん、とりあえず魔力値は回復していない。行動値の回復は……少し待たないと分からないか。


「ケイさん、どう?」

「魔力値の回復はしないみたいだな。これ、少し様子を見る必要はあるけど、多分行動値の回復速度が上がってる」

「あ、それなら良さそうだね」

「スイカと比べるとどうなのかな?」

「あー、どうなんだろうな? どっちもプレイヤー産の割合回復アイテムだしな」

「とりあえずしばらく様子を見てみるのさー!」

「ま、それしかねぇな。ケイ、体感でしか分からないだろうから、分かった時点で言えよ。周囲の警戒は俺らでやっとくから」

「ほいよっと」


 という事で、効果がハッキリと分かるまでは行動値の回復の様子をずっと見ている事になった。ま、行動値の回復速度を上げる手段を持っているのは俺だけなんだから、そういう判断にもなるか。

 というか、次に敵が出てきたら今度は養分吸収を敵に使っとこ。今は近接で戦うんだし、普段よりもその重要も実行のしやすさも段違いだしね。



 それからしばらくの間、自分の行動値の回復の様子を見守っていく。……ふむ、これはスイカを養分吸収した時と同じくらいの行動値の回復速度か?

 うーん、明確な指標がないからハッキリとは断言出来ないけど、通常時に比べると少し早く回復しているような気はする。プレイヤー産の果物は一律で気持ち程度の回復速度の上昇ってとこか。


「みんな、結果報告! とりあえずちょっと回復ははやくなってるっぽいけど、前のスイカと同じくらいっぽい」

「あー、そんなとこか。……俺のレモンでそれなら割には合わないな」

「だなー。でも、もっとスキルLvが上がれば違うかもしれないから、今日はこれから連撃とセットで強化してみるよ」

「あ、確かにケイの今日の近接メインでなら普段よりも使いやすそうかな!」

「……そりゃそうか。普段はケイは遠距離が多いから気にしてなかったが、近接だと猛威を発揮する可能性もあるんだな」

「ケイさんが殴って吸収するのです!」

「……あはは、まぁ有効的ではありそうだよね」


 敵に対する養分吸収の効果はHPを減らすと共に、自分の行動値の回復速度を上げる事だからね。殴ると同時にやるなら並列制御を使う必要もあるけど、敵に対して使った場合は明確に行動値の回復量が上がるから、有効なコンボになるはず!


「あ、丁度いい所にアンコウがいるかな?」

「おっしゃ、実験台と経験値を確保ー!」

「「「「おー!」」」」


 さーて、養分吸収と近接での打撃のコンボを試しつつ、スキルの熟練度稼ぎとLv上げの為の経験値も稼いで行くぞー!

 てか、気付けばさっきまでよりも少し暗くなってきているね。……夜目があってこの暗さなら、結構な深さまで来たのかもしれないな。アンコウが出てきてるくらいだしさ。

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