第791話 打撃スキルの鍛え方
さてと、ハーレさんはまだ黙々とスクショを撮ってるし、サヤ達も軽くではあるけど特訓中である。そんなに長時間ここに留まる訳じゃないけど、ちょうど良いタイミングだから必要なものを調達していこう。
えーと、1人で連撃の強化をする手段には天然産の石が必要だな。別にハーレさんの投擲用の石を貰ってもいいんだけど……まぁ今声をかけると邪魔だろうし、その辺で適当に拾っても問題ないか。
海中だからロブスターで跳ねるように移動してアルのクジラの背から降りていき、海底にある石を物色していこう。どれどれ、いい感じのはあるかな?
「ケイさん、それって何やってるの?」
「ちょっと探し物。お、あれが良さそう」
「探し物って……石?」
「ま、そんなとこ」
少し大きめのゴツゴツした石があったし、これにしようっと。あんまり表面がキレイなものより、こんな感じの方が特訓には良さそうな気がするしね。……難易度は上がりそうだけど。
「ヨッシ、交代かな」
「あ、うん」
「撮り終わったのさー!」
「お、ハーレさん、終わりで良いのか?」
「アルさん、とりあえずは満足したのさー! あんまり時間をかけ過ぎるのもあれだからいいのです!」
「なるほどな。って事だけど、ケイはどうすんだ?」
「このタイミングは中途半端ー!? え、どうしよう?」
そこまで時間はかからないとは思っていたけど、まさか特訓に使う為の石を見つけただけで終了!? え、流石にアルの上に乗ってる最中ではこれからしようとしてた事は出来ないぞ。……少なくとも今はまだ多分無理。
「そういえばケイさんは何をやるんですか!?」
「あー、これってちょっと試しにやってみてもいいやつ?」
「微妙に気になってたから、それでも大丈夫かな」
「サヤに同意だな」
「私も同じく同意だね」
「もちろん私もなのさー!」
おぉう、どうも俺の特訓方法にみんなが興味を示してるっぽい。……流石に長々とやる訳にはいかないけど、1回お試しくらいは普通にやらせてもらえそう? というよりは、やらないと先に進めなさそうと言うべきか。
「あー、それならちょっとだけやらせてもらっていい?」
「おう、いいぞ」
「わくわく!」
「何をどういう風にやるのかな?」
「ケイさんは今日は打撃の連撃の強化だよね。どうやるんだろ?」
さて、みんなの同意も得られた事だし、連撃の特訓をやってみますかね! どこまで思っている通りに出来るかは分からないけど、こればっかりはやってみるしかない。
それじゃまずは……ふむ、こうやってみるか。さっき拾ったゴツゴツした石を右側のハサミの上に乗せて……。
<行動値を5消費して『殴打Lv5』を発動します> 行動値 74/79
今まで殴るスキルを使う時は基本的に振り下ろすように使っていたけど、仕様としては下から上に向かって殴り上げるという動作も出来ない訳じゃない。って事で、ハサミの上に乗せた石を真上に放り投げるように殴打を発動!
「わっ!? え、なんで上に投げるのかな?」
「それは見てれば分かる!」
さて、放り投げた石は……流石に丁度真上には飛んでいないか。それにゴツゴツしている石だから、周囲の海水の影響を……あんまり受けてないな。そんなに影響を受けるほど軽い石でもなかったか。
えーと、この感じなら落下地点は……少し右前の辺りか。よし、その位置に合わせてロブスターの跳ねる移動をしていく。うん、海底に落果する前に落下予測地点まで移動完了。……誤差はほぼないし、それじゃ次!
<行動値を4消費して『連殴打Lv4』を発動します> 行動値 70/79
まずは左側のハサミで落下してきている石を、さっきの殴打と同じ感覚で下から打ち上げるように殴りつけて……よし、上手い感じに打ち上がった! 今回はほぼ真上で位置の誤差はないから、移動は必要ない。
連撃の1撃ずつの間には多少の時間の猶予はあるから、その時間で打ち上げて落ちてくる石の位置を捉えて……そこ!
よし、今度は少し逸れたけど、あらぬ方向にぶっ飛んでいく可能性も考えてたから許容範囲だ。またロブスターで跳ねて、少し位置調整をして……。
「あー、なるほど、そういう感じで鍛えるのか」
「これって結構難しいんじゃ?」
「多分、かなり難しいとは思うかな」
「サヤ、そうなのー!?」
「ケイは簡単そうにやってるけど、落ちてくる位置の見極めと、正確に真上に打ち上げるのが難しいんじゃないかな?」
「おー、確かにそれはそうなのです!」
俺としてもその辺の難易度は把握しているからこそ、ロブスターの跳ねる移動が出来て、海水の抵抗で打ち上がり過ぎたり、海水の抵抗で落下速度……は重くて特に海流の流れが強くない場所ではそれほど変わらないか。まぁ、空中よりは抵抗があるから気持ち違うはず。って事でもう1発!
「「「「あっ」」」」
「あー!?」
くっ、思いっきり今のは打点がズレて盛大に変な方向に吹っ飛んでいった。あー、初めの方が上手く出来てたから、少し集中力が甘くなったか。
でもまぁ、これなら特訓に使えそうな手段だね。丁度いい感じの石だったから、今のは持って帰りたい!
とりあえずまだ残っている連撃を無駄打ちしつつ、あらぬ方向に飛んでいった石の位置確認! えーと、俺から見て左側へと吹っ飛んで行ったから……お、発見! どうやら海藻に直撃して絡まってるっぽい。
「ケイ、まぁどんまい」
「……あはは、やっぱり難しいみたいかな?」
「そうみたいなのさー! でも、投擲で同じようにやってみたい気分なのです!」
「あ、そっか。ハーレも同じような感じで特訓は出来そうだね」
「あーそれもそうか」
確かにハーレさんが初めに上空へ石を投げて、そこからその石が落ちてこないように投擲をしていくという特訓方法もありだな。俺と違って落ちてくるのを待たないという違いがあるくらいか。
「さて、とりあえずケイがやろうとしてた特訓方法は分かったし、そろそろ移動を再開していくか」
「あ、ちょっとだけ待ってくれ。あの石、良い感じだから回収しとく」
「ん? その時々に近くにある石を使うんじゃ駄目なのか?」
「いや、別にそれでも良いんだけど、何となくあの石が気に入っただけ」
「あー、そういうもんか」
「そういうもんだな」
という事で、あんまり待たせても仕方ないのでさっさと回収してしまおうっと。直接取りに行くのでも良いけど、ここは横着をして土の操作で回収しよう。
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 67/79
普通の石だから、これで操作をしてしまえば回収は楽勝だよね。……よし、支配下に置いて、手元まで持ってきて、操作を解除して、インベントリへと放り込めば完了っと。あー、分類上は投擲の弾なんだね。
「……ところで、さっきのって投擲にはならないの?」
ん? 何気ないヨッシさんの疑問だけど、今のは普通に投げるのとは違うはず。でも、やってた事は投石機とかに近い……いや、近いのは最初の1発目だけか。その後の連撃で打ち上げるのはただ石を殴り飛ばしてただけだから違うだろう。
「まぁ投擲の取得にはならなかったし、条件的には無理なんだろうな」
「……取得にならなかったならそうだよね」
最近はあんまり意識してなかったけど、最低ランクのスキルの一部は普通にそれに該当する動作をすればスキルの取得にはなるんだよな。
サヤが投擲を取得した時はこの手段で取得していたりもしたけど、判定としてはさっき俺がやった方法じゃ駄目なんだろう。あ、もしかしたらスキルを使わずにやったならいけたのかも? ……まぁロブスターで投擲を使う事もないだろうから別にいいや。
さて、それじゃアルのクジラの背の上まで戻ってっと。いやー、海の中だとロブスターの跳ねて泳ぐのが使いやすいのはいいね。まぁ背中から突っ込んで行く形になるから、コケへの視点変更がかなり役立つんだよなー。
「アル、移動再開をよろしく!」
「おう。それじゃここからは海面の方を進んで行くぞ」
「「「「おー!」」」」
「んじゃ行くぜ! 『略:自己強化』『略:高速遊泳』!」
アルが少し海藻に絡まりつつも、海面へと向けて急浮上していく。どうしても海藻の量が多いから、クジラの巨体では引き千切る部分が出てくるのは仕方ないね。
そうして海面まで辿り着けば、眩い日光が降り注いでくる。おー、昨日は夜だった上に曇りだったから何も見えなかったけど、今日は昼の日で快晴だから気持ちが良いなー!
空にはカモメが大量に飛んでるけど、パッと見た感じでは一般生物みたいだから問題はないか。いやー、これぞ大海原って感じだね。
「あー!?」
「ん? どした、ハーレさん?」
「西の方を見てー! 遠いけど陸地が見えるのさー!?」
「あ、マジだ」
「あれは普段の俺らがいる陸地か」
「でも陸地があるのが分かる程度かな?」
「流石にちょっと遠いみたいだね」
地下で繋がっている常闇の洞窟を海エリアに向けて進んだ時は東に向かって進んでたし、方角的にここから西に見える陸地はアルの言うように俺らがいつもいる場所だよな。
あんまり意識はしてなかったけど、ここから遠いとはいえ陸地が見えるって事は、西に向かって移動していけばそのうち海岸に辿り着くんだろうね。
「なぁ、みんな、ちょっと提案があるんだけど良い?」
「どうしたのかな、ケイ?」
「いやさ、何となくの思いつきなんだけど、そのうちで良いから海岸沿いまで行ってみない?」
「お、そりゃいいな」
「それならスイカが欲しいのさー! 砂浜でスイカ割りをやるのです!」
「……そういうのもありだね。それならテストが終わった後に打ち上げって感じにしない? ほら、ハーレも後からの楽しみがあれば、少しは勉強のやる気は出るよね?」
「うー!? ヨッシは私の事をよく理解してるのさー!」
「そりゃ長い付き合いだしね」
「よし、それじゃテスト明けに海岸……多分どっかに砂浜があるだろうし、そこを探してスイカ割りとかで遊ぶって事で決定!」
「「「おー!」」」
「ま、海岸で安全な砂浜があるかは俺の方でチェックしておくか」
「その辺はアルに任せた!」
「おうよっと」
テスト期間の時はアル以外はまともにログインは出来ないから、アルにその辺のチェックをしてもらえるのはありがたい。テスト明けだと7月に入っているし、夏気分で砂浜で遊ぶのもありだよね。
それにただの思いつきではあったけど、ハーレさんのやる気を出すには有効な手段だったみたいだしな。
「はっ!? 危機察知に反応あり、上から攻撃です!」
「あ、カモメか! って、群がってる!?」
「ケイ、獲物察知をお願いかな! 多分、これって群れの特性だよ!」
「あー、確かにそうかもな!」
ちょっと大量の一般生物のカモメが突っ込んできてるけど、緑のカーソルは見えても黒いカーソルが見当たらないんだよな。よく見ればいるんだろうけど、ここは獲物察知を使う方が手っ取り早い。
「サヤ、複合魔法でいくよ! 『エレクトロウォール』!」
「わかったかな! 『略:エレクトロウォール』!」
とりあえずサヤとヨッシさんでエレクトロウォールからの複合魔法で……命名ルール的にはエレクトロプロテクションかな? 攻撃的な防壁になってるようで、展開された電気の壁に触れたカモメが次々と落ちて、あっという間にポリゴンになって消えていく。まぁ一般生物だもんな。
てか、海面は海面でカモメがこんな風に襲ってくるのかよ! そういや昨日、刹那さんが海面は海鳥が襲ってくるって言ってたような覚えもあるような……? うん、間違いなくそれだ! とりあえず獲物察知だ、獲物察知!
<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します> 行動値 62/79
さて、昨日は必要な時にはLv5にはならず、必要がなくなった後にLv5になった獲物察知を使っていこう。初期エリアに隣接しているこのエリアじゃフィールドボスは出現しないだろうから全く意味はないけど、気分的にね!
それはともかくとして、大量に出てきた海中から伸びてきている緑の矢印と黒い矢印は無視。次々と電気の壁に突っ込んで落ちていくカモメに向かって大量に緑の矢印も無視。
カモメの群れに向かっている黒い矢印は……よし、見つけた! こいつ、一般生物のカモメに隠れてやがった!
「ハーレさん、目印に付与魔法を使うから、それに目掛けて新技を使っちまえ!」
「了解です! 『魔力集中』『魔法弾』『並列制御』『略:ウィンドボム』『狙撃』!」
「おっ、新技か!」
「取れたんだね、ハーレ」
「ハーレの新技のお披露目かな!」
さて、ハーレさんはいつもの巣の中で既にウィンドボムを投げる体勢になってるから、サクッと目印を用意しないとね。てか、地味にウィンドボムが通常時よりも小さくない? まぁその確認は後にして、俺も新技といきますか。
<行動値7と魔力値21消費して『土魔法Lv7:アースエンチャント』を発動します> 行動値 55/79 : 魔力値 197/218
付与する対象は獲物察知で見つけたカモメである。……よし、付与魔法がかかって、カモメの周りに土の球が漂い始め、茶色っぽくもなった。これで土属性も付与されたし、目印にもなる!
「ケイ、土の付与魔法が使えるようになってたのか?」
「今日の夕方にな。ハーレさん、やっちまえ!」
「了解なのさー!」
そうしてハーレさんが手に持った風の弾が土属性が付与されたカモメに直撃し、爆発して暴風を撒き散らしていく。
ほほう、小さくなってる風の弾が群れのカモメを掻い潜るように隙間を抜けていたか。この狙い方は魔法砲撃だと途中で他のカモメに当たりそうだ。なるほど、魔法弾と狙撃の組み合わせはこういう形になるんだね。
そして多分残滓か黒の瘴気強化種のカモメに当たったと同時に、付与された効果の回数を示す土の球が1個消滅し、カモメ自身のHPも全て無くなっていった。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
とりあえず1撃であっさり仕留めたけども、思った以上にカモメが脆かったような……? あー、でもこのエリアには極わずかしか未成体は出ないんだし、Lvが低かったのかもね。
それと地味に土属性を付与した事で風属性のウィンドボムの効果が高かったのもあるだろうし、ハーレさんの新技である魔法を投げるスキル自体の効果もあるんだろう。ま、とりあえず呆気なさ過ぎて効果の実感が薄めだけど、ハーレさんの新技は使えそうではあるね。
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