第736話 次の目的地へ


 想定外のアロワナの襲撃により、無いよりはあった方が良いような気はする運任せで微妙な気もするスキルが手に入った。フィールドボスの討伐報酬の称号が手に入らなかったのは……って、よく考えたら初めて来た時に首長竜を倒してるから既に取得済みじゃん!?

 あー、そうなると損したのはキツネをアロワナに横取りされて、その分だけ減った経験値と討伐報酬の進化ポイントだけか? どうも戻ってくるのが確定なのは初回だけみたいだけど、フィールドボスの誕生に使った瘴気石は戻ってきたしさ。……ま、損はなしって事にしておこう。その方が気楽だしね。


「さてと、なんか妙な幕引きのボス戦になったけど、これからどうする?」

「……微妙に複雑な気持ちではあるけど、まぁ目的自体は達成したし海エリアに向かうんでいいんじゃねぇか?」

「私もアルさんに賛成さー!」

「複雑なのは同感だけど、そこに拘っても時間の無駄かな?」

「私もみんなに賛成だね。……複雑なのも同意だけど」


 どうやら変な形でフィールドボス戦が終わってしまった事には複雑な気持ちはあるようである。まぁせっかく地の利を活かして圧倒的優勢で戦ってたのが、アロワナに横取りされて不完全燃焼で終わっちゃったもんな。俺もみんなと同じように複雑な気持ちではあるよ……。

 でも、サヤが言っているように拘っても時間の無駄なのも間違いないからね。経験値が勿体なかったとはいえ、使用した瘴気石は初回のお陰で戻ってきたんだし、他の機会で使えば良いだろう。それに全く成果が無かった訳じゃないしね。


「それじゃ気分を切り替えて、海エリアに出発って事で決定!」

「「「「おー!」」」」


 さてと目的は予定通りに海エリアへ行く事になったから、案内役として忍者口調のヒトデの刹那さんに連絡をして案内を頼もうっと。それから海エリアに転移して、イカの逃亡しているエリアへ移動だね。まだ9時にはなってないから、討伐作戦開始時までにカイヨウ渓谷に辿り着ければ良いんだけど……。


「よし、俺は刹那さんに案内を頼んでくるから、アルは湖面まで移動を頼んだ!」

「いやいや、ケイ、待て。わざわざそれをする必要はないだろ?」

「え? あ、ここからそのまま海エリアへの帰還の実を使えば良いだけか!」

「そういう事だ。サヤ、海水への適応は大丈夫だよな?」

「あ、うん。『特性の種:海水適応』を2時間毎に再使用しなきゃいけないけど、それで対応出来るから問題はないかな」

「あー、そういやサヤの竜は海水への適応はなくなってたっけ」


 サヤのタツノオトシゴから雷属性の竜へと進化する際に、基本的な生存圏が変わって海水へと適応が消滅したんだよな。でも、対応の為のアイテムは持ってる訳だし特に問題もないな。

 サヤの持ってる『特性の種:海水適応』は再使用時間がある訳でも、使えば消滅する訳でもなかったはずだし、再使用のタイミングにさえ気をつければ大丈夫だろう。


「はい! 今から行くって連絡してから、転移していけばいいと思います!」

「ま、それが無難か。んじゃとりあえず、刹那さんに連絡するからその間は待っててくれー」

「任せるぞ、ケイ」

「ほいよっと。あ、そうだ。アルとハーレさんで今のうちにさっきの称号とスキルの報告をしといてくれない?」

「あー、それもそうだな。それじゃそれは俺らでやっとくわ」

「アルさん、情報共有板へレッツゴーなのさー!」


 よし、これで時間のロスも少なめに報告をしつつ、刹那さんへの連絡も出来る。アルもハーレさんもそれなりにさっきの称号の取得条件は推測はしてるだろうし、まだ未確認の情報だったらすぐに試す人も……あ、でもこれからイカの討伐作戦もあるし、タイミング的に微妙か?

 ま、それについては他の検証勢の人の判断に任せようっと。いくら考えても既に称号を取得済みの俺らじゃ再現は無理だし、称号そのものにスキル取得があるやつは空白の称号で未取得にも出来なかったはずだしね。


「それなら私とサヤは周囲の警戒だね。サヤは行動値に余裕がないだろうから、基本的には私に任せて」

「うん、分かったかな。でも、状況に合わせて私も戦うからね」

「それは了解。……サヤ、実は少し不完全燃焼?」

「……あはは、バレたかな?」

「まぁ、私もだけどね。それじゃそこにいるナマズを仕留めていこうかな! 『アイスニードル』!」

「この位なら行動値が無くてもいけるかな!」


 そうしてサヤとヨッシさんは近くにいたナマズへと攻撃を仕掛けていた。まぁサヤなら通常の敵相手であれば行動値が尽きてても通常攻撃でどうにか出来そうだし、ヨッシさんも一緒にいるんだから大丈夫だね。ただ灯りはあった方が良いだろうから、サヤとヨッシさんの方に光を優先的に向けておこう。

 さて、よそ見ばっかりしてないで俺は俺でササッと刹那さんへと連絡をしないとね。まずはフレンドリストを開いて、刹那さんを選択してフレンドコールっと。お、すぐに出てくれた。


「おっす、刹那さん」

「ケイ殿、連絡を待っていたのである! ただ、たった今報告中の未知のスキルと称号は何事か!?」

「あ、今見てる最中だった?」

「然り! まだ報告の途中ではあるが、成熟体が未成体のフィールドボスを仕留めるとは稀有な事もあるもの!」

「……刹那さん、なんか妙にテンション高い?」

「未知の新情報に、これから行う大規模作戦、それに恩人への案内役を前に高揚せずしていつやれと!」

「あーうん、気持ちは分かったから、少し抑えてくれな? ちょっと流石にそのハイテンションには合わせきれない……」

「それは失礼であるな……。では、いつものように参ろう」


 うん、やっぱり悪い人ではないんだろうけど、刹那さんは独特なテンションだよね。まぁそれでも言えばちゃんと話は通じるから、一緒に行動しても大丈夫だろう。

 ホントに面倒なのは夕方にいた4人組みたいな連中だしね。……あれと比べるのは、いくらなんでも刹那さんに失礼か。ごめんなさいと心の中で謝っとこ。


「えーと、それでこれから……というか、報告が終わったらかな? そのタイミングで海エリアへの帰還の実を使ってそっちに行くつもりなんだけど、刹那さんの都合はどう?」

「拙者はいつでも問題はないのである。元々そのつもりで待機をしていたので、ヨシミの前で待っておく!」

「……なるほどね。それじゃ報告が終わり次第そっちに向かうよ」

「それでは拙者、グリーズ・リベルテの皆々様のご来訪をお待ちしております故!」

「……今日はよろしくな!」


 うん、もの凄く大袈裟な言い方をしている気もするけど、これでこそ刹那さんという気もするからこれで良いんだろう。……ネタに振り切ってる人の名前や行動にツッコミを入れるのは無粋ではあるしね。

 とりあえず刹那さんへのフレンドコールは終了っと。これで海エリアでの案内役をしてくれる刹那さんと合流は出来そうだし、後は……経験値が入ってきたって事はサヤとヨッシさんの戦闘は終わったみたいだね。後は報告をしているアルとハーレさんか。


「報告終了なのさー!」

「ケイの方も連絡は済んだっぽいな?」

「おう、バッチリだ! ヨシミのとこで待ってるって言ってたから、海エリアの群集拠点種だな」

「お、そこで待ってんのか。あ、そういや刹那さんの1stって何なんだ?」

「……え?」

「いやいや、何でそこで『え?』なんだよ? 刹那さんのヒトデは2ndで、海エリアメインで1stの方が育ってるみたいな事を言ってたじゃねぇか」

「あー、そういえばそうだったような……?」


 ヤバい、完全に刹那さんのヒトデが2ndだったって事を忘れてた! 1stが海エリアのキャラなのはアルが言うようにほぼ確実なんだろうし、そっちで来る可能性の方が高いよね!?

 うーん、刹那さんの1stの種族が分からないけど、改めてフレンドコールをして確認しておく……? 別に確認はしなくても、刹那さんから見たら俺らの事は分かるから合流は不可能ではないとは思うけど、それはそれでどうなんだ……?


「ねぇねぇ、アルさん!」

「ん? ハーレさん、なんだ?」

「もしかしてなんだけど、さっきのタチウオの人が刹那さんな気がするのです!」

「あー、言われてみればあの口調は確かに……。ケイ、フレンドコールの最中に見てるとかなんとか言ってなかったか?」

「……うん、刹那さんは情報共有板は見てたっぽい。てか、それっぽい人の書き込みがあったのか?」

「あったのさー! フレンドコール中だから別人かとも思ったけど、刹那さんなら同一人物の可能性はありそうなのです!」

「あー、それは確かにそうかも……」


 刹那さんは誤操作が発生する事もある思考操作をしながら、平然とオリジナルの詠唱をしながら戦ってたりもしてたんだしね。情報共有板に書き込みつつ、俺とフレンドコールで話していたという可能性は否定出来ないか。


「ちなみにどんな書き込みだったのかな?」

「えっとね、口調は変だったけど、進化階位が格上の敵に倒させるのが再現しやすいんじゃないかって真面目な考察をしてたよー!」

「内容は大真面目だったな。ちなみに、その再現の手順を考える上で溶岩があるエリアの情報があったぞ」

「え、マジで!?」


 あの掲示板で見たフェニックスのスクショの撮影者って、もしかして灰の群集だったのか? ……あれ、いや待てよ? 今頭にふと何かが浮かんできたけど……そういえば夕方にレナさんから俺と紅焔さんとの対戦での分析を聞いた時に何か関連しそうなものがあったような?

 あ、紅焔さんが『火属性強化Ⅰ』を持ってるって言ってたやつー!? 海底火山があるっていう情報はあったから軽くスルーしてたけど、もしかして紅焔さんやレナさんはその溶岩の場所を知ってるのか!


「アル、それの情報の出処って誰か分かるか!?」

「それなら多分紅焔さんとレナさんの2経路っぽいぞ。……てか、ケイはなんで慌ててるんだ?」

「……いや、もっと早くに気付けた可能性に気付いて、ちょっと凹んでるだけ……」


 やっぱり灰の群集での情報の出処はレナさんと紅焔さんだったのか……。その2人からの情報ならほぼ間違いなく確定情報だな。でもまぁ『火属性強化Ⅰ』は俺らの中では急いで取る必要はないものではあるよね。


「それで結局、溶岩はどこにあるのかな?」

「あれだ、ちょっと前に岩山エリアに行っただろ? あそこに隠し洞窟があって、その奥の地下に進むと溶岩エリアだとよ。……環境適応無しじゃ、あっという間に死ぬらしいぜ」

「あー、あそこなのか」

「そこにさっきのアロワナみたいな感じで、成熟体のフェニックスが居座ってるらしいのさー!」

「なるほど……って、そこでフィールドボスの誕生って出来るのか?」

「その溶岩エリア、常闇の洞窟みたいに広い場所と通路のみって構造になってるらしい。フェニックスがいるのはその中の広い場所の1ヶ所だけって話だな」

「あー、そういう感じか」


 それなら確かにフィールドボスを誕生させるのも、成熟体のフェニックスが居座っているという状況も成り立つのか。それに俺らがさっきやった未成体のフィールドボスを成熟体が仕留めるという状況も作れそうではあるね。ふむふむ、興味深い内容だな。


「えーと、みんな、そんなに呑気に会話してて良いの? 刹那さんを待たせてるんだよね?」

「あ、そういやそうだった!?」

「わー!? 話し込んでたよー!?」

「……あはは、これは急がないと駄目かな」

「だろうな。ケイ、これ以上の話は後回しでいいな?」

「これ以上無意味に待たせる訳にもいかないから、それで問題なし! 行くぞ、海エリア!」

「「「「おー!」」」」


 刹那さんに関して全く無関係の話という訳じゃなかったけども、少なからず脱線してしまったのは間違いない。まぁ興味深い内容でもあったんだけどさ。


 それはともかく確定事項ではないけど、とりあえず刹那さんの1stがタチウオの可能性があるって事は分かった。……これで違っていて俺らから見つけられなければ、素直に確認不足だったと刹那さんに謝ってフレンドコールをして合流しようっと。

 ぶっちゃけこれから逃げてるフィールドボスのイカの討伐作戦が予定されているから、混雑している可能性も結構高いんだよな。……すぐに合流出来れば良いんだけどねー。


 まぁその辺はいくら考えても今はどうしようもないので、サクッと海エリアへの帰還の実を使って移動開始だな!


<『ネス湖』から『始まりの海原・灰の群集エリア5』に移動しました>


 さて、久しぶりにやってきました、海エリア! 相変わらず巨大なコンブの群集拠点種のヨシミだねー。えーと、とりあえず周囲を見てみれば……予想通り、人が多い!? てか、刹那さんの前にみんなはどこだ!?


「ケイ、こっちだ!」

「お、アル! 他のみんなは?」

「ハーレさんとヨッシさんは見当たらないな。ただ、サヤならあそこだ」

「あ、空気のあるとこに転移になったんだ」

「……あはは、先に海水への適応をしてなかったからみたいかな? とりあえず適応してからそっちに行くね」

「アルさん、見つけたのさー! ヨッシ、あっちだよー!」

「あ、ホントだ。ハーレ、ナイス! みんな、今からアルさんのとこに行くね」

「ほいよっと!」


 ふー、混雑していた事でみんなの姿を見失ってしまったものの、何とか合流の目処は立った。それに飛行鎧を発動したまま来ちゃったけど、海中を自由に泳ぐのにもこれは便利だな。とりあえず海エリアにいる間は飛行鎧は展開したままにしておこうっと。

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