第723話 海エリアの情報収集


 ダイクさんの生成した水のカーペットに乗り、ひとまず移動を開始だね。……このメンバーで無茶な高速移動を試すとしても、まずは情報収集をしてからか。


「それで、ハイルング高原経由するか、泥濘の地を経由するか、どっちにするー?」


 ん? ハイルング高原から行くルートしか知らなかったけど、他にもここからネス湖に行くるがあるのか。あ、そういや泥濘の地ってまだ俺らが行ってない森林深部の東側の整備クエストのエリアだな。へぇ、あっち側からでも行けるんだ。


「レナさん、泥濘の地の方は俺ら……というかグリーズ・リベルテのメンバーでまだ行ってないから、今回は行かない方向でお願い出来る?」

「まだ妨害のボスすら倒してないのさー!」

「およ? それはちょっと意外だったけど、ケイさん達はまだ行った事ないエリアは共同体の全員で行くんだったもんね。ダイク、そういう事だからハイルング高原の方に移動をお願いー」

「おうよっと!」

「悪いね、俺らの都合で決めてもらってさ」

「そういうのは気にしなくていいんだよー! ね、みんな」


 そのレナさんの言葉に紅焔さんやソラさんも頷いてくれている。このメンバーで揃って活動というのも珍しいけど、まぁこういう対応をしてくれるとありがたいもんだね。


「さて、それじゃ移動は任せて、情報共有板に戻るか」

「質問をしてこないってざわついているから、ケイさん急いでー! 一応、説明はしたけど!」

「おわっ!? マジでか!?」

「あらら、タイミングが悪かったみたいだねー? わたしもそっちに行くから、移動はダイクに任せるよー!」

「おうよ! あ、紅焔さんとソラさんはどうすんだ?」

「全員が情報収集しなくても良いだろうし、俺らは敵の相手をしてくぜ!」

「まぁ僕らからしたら、移動ルート的に雑魚ばかりだろうけどね」


 確かに今のメンバーで経験値が二分割になってるのは俺とハーレさんだけで、他のみんなは俺とハーレさんよりLvが高いもんなー。一番高いのがレナさんのLv26で、他の3人はLv24なんだよね。

 俺とハーレさんのLvが21だから思った程の差はないけど、この辺はLvが高めの敵の数が多い訳ではないからなんだろう。まだLv30に到達したって話も聞かないしね。


 さて、移動と道中の敵はダイクさん達に任せるとして、中途半端になってしまっている情報共有板へと戻っていこう。


 コケ2   : すまん、ちょっと他の用件で見てなかった!

 オオカミ  : それはリスの人から聞いたから問題はない。聞きたいのは海エリアで逃亡しているイカのボスの話と、その逃げているエリアでLv上げをしたいが混雑は大丈夫かという話だな?


 コケ2   : あ、そこまでもう説明してたんだ。

 リス    : そうなのです!

 クジラ   : ちょっと様子を見に来たら、コケ2の人が海エリアに来る予定をしてるの!?


 ヒトデ   : これは早速拙者の出番であるな!

 オオカミ  : なんだ? コケ2の人、忍者ヒトデと知り合いだったのか?

 ヒトデ   : 昨日、硬化の適応進化の際にミスをした時に助けてもらったのである!

 草花    : あ、そうなんだ?


 えーと、このヒトデの人は間違いなく昨日遭遇した、勝手な作った詠唱をしつつ思考操作でスキルを発動するっていう無駄に難易度の高い事をやってた変なヒトデの人だな。

 てか、今まで情報共有板で見た事はない気はするけど、今の様子だと普通に出入りしてる人みたいだね。まぁ俺らも常駐してる訳じゃないし、見てない時にも色んな人が情報交換をしてるだろうから、こういう事もあるんだろう。

 他にも直接遭遇してないだけで、情報共有板には色んな人がいるんだろうなー。時間帯が違えば、それでもまたメンバーが変わるだろうしさ。……高確率でベスタがいるのが凄いけど。


 リス2   : 実際のとこ、あのイカって今はどういう状態ー? さっきまで実況とか模擬戦をしてたから、最新情報は得てないんだよねー。相変わらず逃げまくってる?


 オオカミ  : あぁ、俺もさっきログインしてきたばかりだから正確には把握してないが、どうやらそうらしいな。海エリアでその辺に詳しいやつはいるか?


 クジラ   : それなら俺がいるよー! いやー、あれは厳しいね。完全に逃げるのに特化しちゃって、動きを封じきれないや。

 ヒトデ   : あれは海エリアのプレイヤーのみでは無理だと拙者は判断するのである! かといって、陸のプレイヤーの誰の助けでも良いというわけでもないのだ!


 コケ2   : と言うと……?


 同じ海エリアのプレイヤーと敵では、基本的に移動に関する条件が同じだから逃亡に特化されると捕まえにくいとかいう感じかな? まぁ逃亡に特化したフィールドボスとなれば逃げるのも速いだろうし、海エリアのプレイヤーだと決め手に欠けるのかもしれないね。


 オオカミ  : そういえば追いつけはするが、そこから攻撃に転換が難しいとは言っていたな。……俺も昨日はそこには行ったが、海を逃げ回るイカの捕捉は難しいのは確かか。……あぁ、誰でも良いわけじゃないというのはそういう事か。


 コケ2   : え、どういう事?

 リス2   : あ、なるほどねー。これはわたしとかオオカミの人は不適格な役目だねー。

 オオカミ  : あぁ、そういう事になる。逆にコケ2の人は適役ではあるな。

 リス2   : うんうん、確かにそうなるねー。


 えー、ちょっと話が見えないんだけど、どういう事? ベスタやレナさんほどの実力者では不適格だけど、俺は適役? それに加えて海エリアのプレイヤーだけでは決め手が欠けて、陸のプレイヤーは誰でも良いわけじゃない……。それらの条件から俺に合う条件って……あ、そういう事か。


 コケ2   : 俺に……というよりは、操作系スキルが得意かつ、物質的な拘束が可能なプレイヤーに捕獲を任せるのが良いって事か!


 ヒトデ   : そういう事であるな! 海エリアのプレイヤー達が指定の位置に追い込んで、そこを捕獲するのである!


 クジラ   : あ、それならいけるかも!? 海のプレイヤーでも岩の操作とかを使える人はいるけど、多くはないもんね!


 ほほう、海エリアのプレイヤーと陸のプレイヤーによる共同作戦って事か。これは興味深い話だね。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ハイルング高原』に移動しました>


 あ、そうしている間にハイルング高原へとエリアが切り替わったみたいだ。まぁ今は情報共有板の方を最優先にしていこうっと。ヒトデの人……というか刹那さんの作戦の話もあるしね。


 カツオ   : おい、作戦を考えとこ悪いが、その件で悪い情報だ!

 オオカミ  : カツオの人、何があった?

 カツオ   : あのイカが、ちょうどさっき進化しやがった! 演出的に変異進化だ!

 ヘビ    : え、進化すんの!?

 草花    : そういえば育ち過ぎてた土属性のドラゴンも進化してたって話だったよね? ……もしかして、フィールドボスって変に時間をかけると進化しちゃう……?


 オオカミ  : ……そうかもしれんな。……ちっ、今になって何故気付く。

 コケ2   : え、どうしたんだ、オオカミの人?

 オオカミ  : 少し考え違えをしていたのに気付いただけだ。……この前の土属性のドラゴンが、適応進化であるはずがない。もう少し早くに思い当たっていれば、今のイカの進化も想定出来ていたはずだと思うとな……。


 え、あのベスタと一緒に倒したドラゴンが適応進化ではない……? でも実際に特性が変わっていたんだから、そこは進化が発生したのは間違いない……って、あー!? ベスタが言ってる意味が分かった!


 イノシシ  : あー、そうか。適応進化は特定の死亡条件が繰り返されて発生するんだから、一度も倒されてないフィールドボスに適応進化が発生する訳がないんだ!


 ヘビ    : そういやそうだった!? え、なんでそんな初歩的な見落としをしてたんだ?

 オオカミ  : ……討伐自体は問題なく済んだから、それ以上考えていなかった。ちっ、しょうもない見落としをしてしまったか。


 くっそ、これについては俺自身も見落としていたやつじゃん! そうだよ、一度も倒されていない敵に適応進化が発生するわけないよな。

 そこから考えられる内容としては、敵に発生する進化は変異進化という事になる。それこそ今カツオの人が報告をしてきてくれたように……。


 カツオ   : あー、何となく後悔してるっぽいのは分かるんだが、とりあえず話を戻していいか?

 オオカミ  : あぁ、脱線させて済まないな。それで具体的にどう進化した?

 カツオ   : ……逃げるだけじゃなく、特性に反撃が増えて、カウンターを仕掛けてくるようになった。


 クジラ   : え、ただでさえ攻撃が当てにくいのにカウンターをしてくるの!?

 リス2   : あらら、そりゃ厄介な特性が増えたねー。

 ヘビ    : どうすんの、そのイカ。

 リス    : こうなったら、みんなで討伐するのさー!

 イノシシ  : それしかなさそうだが、具体的にどうすんだ? さっき忍者ヒトデが言ってたのをやるか?


 オオカミ  : ……そうだな。海中でも捕縛に使える操作系スキル……最低でもその属性の昇華持ちが必須か。その辺りを何人か集めて捕縛班を用意し、海エリアのプレイヤーで追い込み、捕縛に成功してから総攻撃で倒すか。


 リス2   : うーん、作戦自体は賛成だけどそれって連結PT内で収まる? カウンターをしてくるようになったならその対応も必要だし、追い込むにしてもエリアが広いからもっと大人数が必要な気もするけど?


 草花    : この際、それは仕方ないんじゃない? フィールドボスが状況に合わせて変異進化をするのなら、早めに対処しないともっと厄介になるかもしれないしさ。


 コケ2   : 確かにそうだよなー。


 連結PTの人数内に収まらないとなると十全に報酬が得られない人も出てくるという訳だけど、放置しているとそれはそれで更なる変異進化が発生する可能性も出てきた。……まぁ可能性で言うなら、誰かが先に成熟体に進化してからぶっ倒すって手段もあるにはあるんだろうけどさ。


 クジラ2  : あははー、まさかこんな状態になるとはね。迂闊な進化をやっちゃったもんだね!

 クジラ   : そうなるよねー!

 オオカミ  : ……あまり笑い事でもないんだがな。まぁ済んでしまった事を言っても仕方ないか。

 リス2   : それもそだねー。んー、それじゃ報酬無しの可能性もあるという条件付きで、討伐隊でも組んで討伐する?


 リス    : はい! 賛成です!


 おーい、ハーレさん!? 普通に賛成してるけど、俺らの目的って海エリアに遊びに行きつつ、Lv上げもしていこうって話だったんですけど!? いやまぁ、聞いている限りではLv上げに良さそうな『カイヨウ渓谷』がこの状態じゃまともにLv上げにはならなさそうだけどさ。


 オオカミ  : とりあえずそれで人が集まるようであれば、今日の夜にでも実行してみるか。……コケ2の人、無理強いをするつもりはないから、相談してからどうするかは決めてくれ。


 コケ2   : 俺だけでは決めれないから、そうさせてもらうよ。な、勝手に賛成したリスの人!

 リス    : あぅ、怒られた!?

 リス2   : まー、勝手に返事をしたらそうだよねー。

 クジラ   : 確かにそうだよね!

 カツオ   : おいこら、お前がそれを言うのか!?

 マグロ   : カツオの人に同意。

 クジラ2  : うんうん、私も同意だねー。

 クジラ   : みんなして、酷い!?


 この辺はシアンさん達だとは思うけど、相変わらずって感じだね。それにしても夜の予定はみんなが揃ってから改めて決めて行く必要がありそうだ。

 まぁベスタは無理強いはしないとは言ってくれてるし、そもそも灰の群集ではこういうのに参加の強制は無しだもんな。……Lv上げだけなら別の場所を探すという手もあるけど、報酬が無くてもみんなとお祭り騒ぎの討伐というのもありかもねー。


 カンガルー : オオカミの人、荒野エリアの方でも募集はしてみるけど、時間帯はどうする?

 木     : 森林エリアでも募集はしとくぜー!

 クジラ2  : 海エリアはお任せあれ!

 シマウマ  : 草原エリアも任せておいてください。

 オオカミ  : あー、くれぐれも無理強いだけはするなよ。……時間については夜の9時以降、参加のタイミングは自由という事にしておくか。


 リス2   : あ、明確にどこかで集まってから集団行動にはしないんだねー?

 オオカミ  : 別にそれでも良いんだが、場所が海エリアだからな。それぞれに対応が必要だろうし、報酬も確約は出来んから緩く設定はしておく。それで構わないか?


 リス2   : 問題ないよー!

 カンガルー : おう、大丈夫だぜ。

 ヘビ    : よし、該当のエリアに……って、エリアはどこだっけ?

 クジラ   : 海エリアから北東方向に2エリア先の『カイヨウ渓谷』だよ。

 ヘビ    : おし、了解!

 ヒトデ   : コケ2の人よ、もし参加するのであれば拙者に連絡をしていただきたい! 昨日のお礼をさせていただく!


 コケ2   : ほいよっと。相談の結果で行く事になったら、ヒトデの人、よろしくな!

 ヒトデ   : 了解した!

 リス    : それじゃそろそろ戻るねー!

 コケ2   : 同じくっと!


 そんな風に簡単に挨拶をしてから情報共有板から離脱である。ふー、情報収集というよりは、例のイカの討伐作戦の立案になった感じだったね。

 さてと、俺としては折角の機会だから参加してもいいと思ってるし、ハーレさんも賛成はしていたけど、他のみんながどう言うか次第だね。もし参加するとしたら、ヒトデの人……刹那さんが案内をしてくれる事になりそうだから、そこはありがたいかな。まぁ変な感じの人だけど悪い人じゃないと思うしね。


 とりあえずイカの討伐作戦に参加するかどうかの決定は今すぐには出来ないから、夜に全員集合してからどうするか決めようっと。今はその為にもネス湖までの移動が最優先だけどね。

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