第719話 ハーレとレナの対決……? 中
「なぁ、琥珀さん」
「……なんでしょうか、紅焔さん?」
「蹴りの参考にする為の人選を盛大に間違ってないか?」
「……見た限りではそうでしょうね」
「こらー! 紅焔さんも琥珀さんも、それは失礼じゃない!?」
いやいや、レナさん。多分、レナさん以外はみんな同じ気持ちでいると思うよ? 俺も参考にするには無茶振りだと思うよ、今の一連の蹴りはさ。
「あの動きなら普通に出来るのではないか? なぁ、疾風の」
「俺らに蹴りはないけど、まぁあのくらいなら出来るな。なぁ、迅雷の」
「ほら、風雷コンビはそう言ってるよー!? ……なんだかその2人が言うと、わたしとしても駄目だった気がしてきたねー」
「「何を失礼な!?」」
「いやー、その2人基準は駄目だよねー。うん、これはわたしが反省しなきゃだね」
あー、なんと言うか思いっきりレナさんが失礼な判断をしている気もするんだけど、凄く納得してしまった。……風雷コンビってレナさんとダイクさんのコンビでも抑えられないくらいのプレイヤースキルがあるし、参考にしてはいけないプレイヤーの代表格だよなー。
さてと、妙な形で模擬戦は中断状態になってしまっている。……とりあえずレナさんの戦闘はプレイヤースキルの水準が高過ぎて参考にはならないのは間違いない。プレイヤースキルの高い風雷コンビから見たらそうでもなかったようだけど、それでレナさんが反省したくらいだしね。
「えっと、レナさん。これからどうしますか? 普通に模擬戦を続けます?」
「あ、琥珀さん。んー、ちょっと予定が狂ったけど、とりあえずわたしのは直接の参考にはならなくてもこういう事も出来るって思ってくれれば良いとして、ハーレの投擲で色々やってみる?」
「やるのは良いけど、レナさんに当てられる気がしないのです!」
「うん、まぁ当たる気もないからねー。投げる前に潰しに行くし……あ、ハーレがわたしにどうやって当てにいくのかの講義にしよっか」
「全然駄目な気もするけど、それは望むところさー!」
「うん、それじゃそういう方向で! それなら行動値は全快させてから、ハーレがわたしに当てたら勝ちね?」
「了解なのさー! 絶対に当てるのです!」
「という事になったけど、琥珀さん、それでいい?」
「えーと、私は構いませんが皆さんはどうですか?」
琥珀さんが俺らやギャラリーに向かって確認してきたので、ここは頷いておく。他の人達も問題はないようで頷いている。
「ラック、応援ありがとー! 頑張るのさー!」
「あれー!? わたしへの応援はないの!? こらー! ダイク、あとで覚悟してもらうからねー!?」
うーん? ラックさんもダイクさんも俺らのいる桜花さんの樹洞にはいないけど……って、これは他の中継場所からも外部の音声が届いてるのか!? ……今まで全部聞こえない設定にしてたから地味に知らなかった。そりゃよく考えたら、不動種の誰とかそういう指定はないんだから、そうなるよなー。
模擬戦の外部音声って今回みたいに特別な用途がない限りは、基本的に遮断してた方が良さそうだね。中継している場所の全てから音声が届くなら、複数の実況が入り交じるっていうカオスな事になりそう……。
「レナさん、こちらは皆さんの了承は取れましたよ」
「うん、それじゃハーレの行動値が全快したら再開ねー!」
「えぇ、了解しました」
とりあえずこれで少しの間、模擬戦の中断は確定か。。それにしても、模擬戦としても、講義としても、実況としてもグダグダになっちゃったな……。まぁ参考に出来ないレナさんという人選ミスが大きな原因なんだろうけど、多分今回の企画側にレナさんがいたからこうなったんだろうね。
能力の高い人がそのまま他の人へ教えるのが上手かといえば、全くそうではないという実例だな。……ふと思ったけどベスタはこの辺の教え方ってどうなんだろ? うーん、ベスタはこういうのは意外と苦手そうな気はする。
逆に蒼弦さんやラックさんとかの大人数がいる共同体のまとめ役をしている人とかは教えるのが上手そうな気はするね。まぁ実際のところは分からないけどさ。
そしてしばらく待機をした後に、レナさんとハーレさんの行動値が共に全快して再開するという事になった。ハーレさんの自己強化やレナさんの魔力集中の効果はまだ切れてないので、そのまま継続して使用のようである。
「それでは模擬戦を再開しましょうか。レナさん、ハーレさん、宜しいですか?」
「わたしはいつでもいいよー」
「同じくです!」
「それでは……模擬戦、再開!」
その琥珀さんの宣言から、模擬戦が再開となった。さて、ハーレさんがレナさん相手に一撃を入れれるかどうかが見物だし、俺は俺で解説を続けていきますか。
「『略:傘展開』『略:ウィンドボール』『アースクリエイト』『散弾投擲』!」
「おっと、上からだねー! 『アースクリエイト』『土の操作』! ほい、ほい、ほいっと!」
「『連投擲』『散弾投擲』!」
「ふふん、まだまだ甘いー!」
うっわ、ハーレさんがすごい勢いで色々投げまくってるけど、レナさんは余裕ありまくりで回避してるよ。これはやっぱり今のハーレさんではかなり厳しいか。
「ハーレさんがクラゲに風の弾を撃ち込んで上昇しつつ散弾投擲を放っていますが、レナさんがそれを軽々と躱していますね。これはどう見ますか、ケイさん?」
「まぁシンプルに近距離と遠距離で相性が悪いな。距離をちゃんと取れれば遠距離が有利なはずだけど、レナさん相手ではその距離の優位性もないしさ。……レナさんもリスだから危機察知も持ってるだろうしね」
「あー、そういやどっちもリスだもんな。ただでさえ簡単に迎撃出来るレナさんが事前に察知出来たら、遠距離の優位性は潰れるか」
もう少しハーレさんのクラゲが育って色々出来るようになってたら違うんだろうけど、今の投擲メインのみのハーレさんは相当戦いにくいだろうな。並の相手なら危機察知があっても全く当てられない事はないだろうけど、レナさんが相手だというのが厳し過ぎる。
「うー!? それならこれでどうだー! 『並列制御』『略:ウィンドプリズン』『狙撃』!」
「これはありっちゃありだけど、ちょっと属性の相性が悪いよー? 風はこうすれば!」
「あぅ!? そんなのありなのー!?」
「レナさんを風の拘束魔法で胴体を風で拘束して頭部を狙って連続投擲をしたハーレさんですが、レナさんが軽くジャンプをした事で自らの魔法が投擲を阻んでしまいましたね。……風の拘束魔法は上下へは割と動けますからね」
「だなー。今のは拘束は破壊される前提で、拡散投擲辺りを使った方が良かっただろうね。ハーレさん、拘束魔法と投擲を組み合わせるの自体は良いけど、手動操作が出来なきゃさっきみたいな事になるから、今みたいなのは並列制御Lv2が手に入ってからにしとけ」
「了解なのさー!」
「おーい!? ケイさんが解説というか、アドバイスを始めたけど良いのか!?」
あ、ついアドバイスを言っちゃったけど、流石に今のは解説役として不公平になってまずかった!? ……いや、どうも見てて力量差があり過ぎなのと、相性が最悪なのが気になるんだよな。
「あはは、それいいねー! ハーレさえ良ければ、ケイさんのアドバイスありで戦うのでも良いよー? まぁわたしにも内容は聞こえてるから、そう簡単に当てられると思ってもらっても困るけどねー!」
「うー!? レナさんが余裕あり過ぎなのさー!?」
「まさかの公認!?」
いやいや、流石に今のは解説役として不的確な発言で怒られても仕方なかったような気もするんだけど、レナさんがそこに乗っかってくるとは思わなかったんだけど……。
あ、でも投擲の使い方って俺自身が応用方法を考えた事はあんまり無かったし、その辺を狙ってる……? いや、レナさんの場合はただ面白そうという理由もありえそうだ。
「えぇと、レナさんから許可が出ましたけど、ハーレさん、ケイさん、どうします?」
「……俺は良いけど、ハーレさん次第だな」
「1人では当てられる気がしないので、ケイさんの突飛な発想にお任せします!」
「そこは普通に期待するとかって言えないか!?」
「私的にも1人でやりたい気持ちもあるから複雑なのさー!」
「あー、そういう……」
ふむ、そう言われてしまうとちょっと納得してしまうところではあるな。それに言い方こそあれだけど、俺ならレナさんに一撃を当てる為の突破口を見つけると信頼されているようなものでもある。……そういう事なら、やるだけやってみるか。
「よし、ハーレさん、やるぞ!」
「了解です!」
「……えー、ここで少しルール変更のお知らせです。解説役のケイさんのアドバイスを受けるハーレさんと、それに対応していくレナさんという形式へと変更になりました。その為、解説役は私が実況と共に引き受けますのでご了承下さい」
「……俺はゲストのままか?」
「いえ、紅焔さんも分析していただいて解説してもらえると助かります」
「お、そういう事ならそうすっか」
なんだか変な方向に行ってるけど、まぁ投擲を避ける人に対する対応方法の発案という形にはなるから、講座としてはありといえばありか。……実況としては既に滅茶苦茶だし、それでも問題はないよな。
「おい、解説をやり切るんじゃなかったのかよ!」
「そうだ、そうだ!」
「結局、解説は出来ねぇってんじゃねぇか!」
「偉そうなこと言っといてそれかよ!」
あー、ここであの4人組が口を挟んで来るのかよ……。っていうか、こいつら何を見てたんだ? 今のレナさん、小石を操作して飛び移って回避してるだけで、解説も何もないんだけど……。
「へぇ、面白い事を言うね? 中断する前のレナさんの動きと、その時の解説と、今の状況を見てそういう事を言えるんだね?」
「はぁ!? すっこんでろよ、そこのタカ!」
「おい、ソラ!?」
「紅焔、悪いけど黙っててくれるかい? 流石に身勝手過ぎて、僕も苛立っていてね。君たち、わざわざ騒ぎを起こして、雰囲気を悪くして、何がしたいんだい? ……『空気を読め』という言葉を使うのは嫌いなんだけど、色々と楽しそうな事を台無しにしようというのはどういう了見なのさ?」
「うるせぇよ! 自分で言った事を守れないやつが――」
「あー、お前らはいい加減黙ってもらおうか。おい、ここにいる連中でケイさんの解説が不充分だったと思うやつはいるか」
「……桜花さん?」
「ソラさん、ここは俺に任せとけ。こういうトラブルは苦手だろ」
「……分かったよ」
うぉっ!? 苛立ちを隠す気が欠片もない怖い声音になった桜花さんが、他のギャラリーのみんなにそんな風に訪ねていた。……それに対して不充分だという意見を言う人は出てこない。というか、ソラさんはこういうトラブルは苦手なのに声を上げてくれたんだな……。
「我が思うに、あれ以上のものは正直無理なのではないか? どう思う、疾風の?」
「俺もそう思うぜ、迅雷の。あれで不充分だって言うなら、解説出来るのは本人くらいになるんじゃねぇか?」
「俺も風雷コンビの意見に賛成だ」
「レナさんの最後にジャンプしてたとこなんて、ジャンプしてたのなんか気付きもしなかったからな」
「因縁つけたいだけなら、てめぇらは失せろ!」
「これから面白そうなとこなのに邪魔してんじゃねぇよ!」
おぉ、なんかみんながまた殺気立ってきてるけど、これって大丈夫か? 今回の一件は俺自身が当事者だから、この状況ってかなり居心地悪いんだけど……。
「「「「うぐっ……」」」」
あ、4人組が完全に黙ったな。完全に桜花さんの樹洞の中にいる人達のほぼ全てを敵に回した感じになってるけど、これってどうするんだろ?
「あ、桜花さん、聞こえるー?」
「おう、聞こえてるぞ、レナさん」
「それじゃ1つお願いしていい?」
「……内容によるな」
「いい加減、わたしとしても鬱陶しいから後でその4人の名前を教えてくれる? あと、桜花さんの判断で追い出してくれていいよー」
「あぁ、分かった。……だそうだ。良かったな、お前ら、レナさんが敵に回ったぞ。それと邪魔だから今すぐここから出ていけ。そんでもって俺のとこは出禁だ」
あーあ、レナさんを敵に回した上に桜花さんからの出禁が言い渡されたか……。まぁ、そうなるよなー。これこそまさしく、口は災いの元だね。
「はっ、てめぇらが止めてたんだろうが! んなもん、こっちから願い下げだ! 行くぞ!」
そこから4人組は悪態をつきながら、桜花さんの樹洞から出ていった。誰かがこの4人組は赤の群集からの移籍だと言ってたけど、こういう奴らが赤の群集で暴れてたんだな。こんなのが暴れまくってた赤の群集って大変だったんだろうね……。
「……さて、気を取り直して再開しましょう」
「それもそうだな。ケイさんとハーレさんがレナさんに一撃を当てられるか、それともレナさんが回避し切るかの見どころだ! さっきの連中の事は忘れて、楽しんでくぞ!」
「「「「「「おー!」」」」」」
「さて、お手並み拝見といこうではないか。なぁ、疾風の」
「こりゃ見物だしな。なぁ、迅雷の」
あはは、こりゃこれからやる事を楽しみにしてくれているみんなの期待に応えられるようにやっていくしかないか。さて、俺とハーレさんの全力を持ってレナに一撃を入れていこうじゃないか。
「おし、やるぞ、ハーレさん!」
「了解なのさー!」
「全部潰してあげるから、いつでもおいでー!」
そりゃ挑み甲斐があるってもんだな! ま、現実的にどうするかが問題ではあるんだけど、ハーレさんの手札のみでやらなきゃいけないからね。さて、どうやってレナさんを出し抜いていくかが問題だな。
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