第638話 成長体を探して
フィールドボスを誕生させる為にはまずは成長体の確保が必須である。という事で捕獲についての作戦会議だな。
「それじゃ、まずは上風の丘でフィールドボスの元になる成長体の確保についてだな」
「……先に用意出来てたら良かったんすけど、急だったもんですみませんっす!」
「そこについては考えはあるから、心配すんな。サヤ、威嚇と獲物察知のコンボをやるぞ」
「あ、前にやったあれかな!」
ふっふっふ、成長体を探し出すのは何回かやった事だし、それなりに効率的な手段は確立している! まぁそれでも狙い通りになるかは運次第というのもあるにはあるけどね。
「え、どういう事っすか? 威嚇って追っ払ってどうするんっすか?」
「だからこそ獲物察知を使うんだよ。成長体と未成体の違いを考えてみ?」
「えーと、成長体と未成体の違いと威嚇……? あっ! 移動速度の違いだ!」
「そういう事か! 逃げるのが遅いのが必然的に成長体の可能性が高いんだ!」
「おー! そんな手段があったんっすね!?」
ふむふむ、ちょっとのヒントですぐに気付いたか。この3人、戦闘に自信がないという話だったけどそこまで筋は悪くないんじゃないか? まぁ人のプレイスタイルには口は出さないけどね。
まぁ獲物察知だけでもLvが上がって進化階位の区別は出来るようになってるけど、威嚇は邪魔な敵からの奇襲防止と、わざと逃げるように誘導して直接みんなが視認しやすくするのも目的だな。
「ま、それでも今回の件は運任せにはなるけどな。雷属性持ちの成長体が見つかるかどうかは運次第だから……」
「それは承知の上っす! 依頼の募集もダメ元でしたっすから!」
「駄目だったとしてもスイカはお渡しするので、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「ほいよっと。ま、運良く見つけられるように頑張りますか!」
「「「おー!」」」
これで上風の丘に入ってからの行動方針は決定だ。スキルを使って探すのと、瘴気石を持っているのがグレースケールの3人の方なので、別行動は無しで! 戦闘に自信がなくて護衛を頼んできているんだから、別行動にしても意味ないからね。
そうしている内にミズキの森林の西端まで到着! パッと見た感じでは上風の丘も雷雨にはなってるけど、エリアが切り替わっても見た通りの天気かな?
<『ミズキの森林』から『上風の丘』に移動しました>
どうやらエリアが切り替わったからといって明確に天気が変わるという事はないようだ。ちゃんと大雨の中で雷鳴が轟きまくってるし、空を覆う黒い雷雲の中で放電している様子も見て取れる。あー、昨日はここからでも見えていた岩山が全然見えないな。……夜って事もあるんだろうけど、雷雲で隠れているか。
でも昨日ほど強風はない感じっぽい……? 雷雨の中で風まで強いと動きにくいから、その辺はゲーム的な調整が入ってるってとこか。
「こりゃまた、昨日とは随分違う有様だな」
「そうみたいかな。あ、あそこでフィールドボス戦をしてる人達がいるね」
「おー! ホントだー!? あ、雷が落ちました!」
「えっと、岩……にしては規模が小さかったから土の操作の方? 詳細はともかく土の操作で敵を雷雲の近くまで持ち上げてる感じだったね。敵は……あれはツバメにしては羽が多かったような……?」
「ツバメ2体の合成種だったのかもな」
「うん、確かにそんな感じだったかな」
割と近くでフィールドボスっぽい鳥を相手にしていたPTがいたから少し観察したけど、ああいう風にやればいいのか。天然のものは雷を使えば良いし、俺は土の操作も岩の操作があるし、ヨッシさんには氷の操作がある。
雷雲に近付ける為に操作で捕獲する必要はありそうだけど、天候さえ悪いままなら割と簡単そうではあるね。ま、天候が良くなる前に急ぎますか!
「それじゃ探索を始めるから、サヤ、合図したら威嚇をよろしく!」
「分かったかな!」
「ヨッシさんは見つけた場合に捕獲を頼んだ。ハーレさんは他の威嚇で逃げない邪魔な敵が出てきたら対応を頼む」
「了解です!」
「了解!」
さて、とりあえず俺らの割り振りはこれで良いとして、レインさんとフェルスさんとミドリさんについては……まぁ護衛の依頼主だし、ここは俺らで担当すればいいか。
「あっ、忘れてた。フェルスさん、PTの連結をしとかないと」
「あ、そういやそうっすね!?」
<フェルス様のPTと連結しました>
完全にPTの連結を忘れてしまっていたけど、とりあえずこれで問題なしっと。PTを組んだ状態だとLvが見えるから……カエルのフェルスさんが未成体のLv10、ハリネズミのレインさんが未成体のLv8、スイカのミドリさんは未成体のLv9だね。
全員1stでどうやら単独進化みたいだね。このLvだと3人ではボス戦は厳しいだろうし、上風の丘でフィールドボス戦でのスクショを撮る為の護衛を頼む訳だな。まぁフィールドボスは最低がLv11からだから、適正ではないという事もないけどね。
「それで俺らはどうしたらいいっすか!?」
「あー、戦闘や索敵は護衛依頼の俺達の担当だからのんびりしてていいぞ。あ、でも捕獲した成長体の拘束は任せるかもしれないけど、それはいいか?」
「もちろんっす!」
「流石にそれくらいはしないとな。ミドリ、草花魔法で任せるぞー」
「それについてはお任せあれ!」
「それじゃそういう感じで、成長体を探して行くぞー!」
「「「おー!」」」
「「「おー!」」」
俺らのいつもの号令から少し間を空けて、フェルスさん達も同じように気合を入れていた。さて、まずは索敵からやっていこうじゃないか!
「あ、ケイさん、その前に少し良い?」
「ん? どした、ヨッシさん?」
「この飛行は良いんだけど、低空飛行にしておいた方が良くない? あんまり高い場所を飛ぶとそのまま雷が落ちて来そうだし……」
「あー、それもそうだな」
ふむ、ヨッシさんの意見も一理あるか。まぁ地表ぎりぎりを飛んだとしても見通しは良いし、もしその際にダメージが発生して強制解除になったとしても地面に近ければ問題も起きにくいか。……ただ、地面に接触だけは気を付けないとなー。
「……ヨッシさん、ダメ元で聞くけど、地面と俺の岩の間に氷の板とか生成出来ない?」
「……多分出来るとは思うけど、また変な事を思いつくね、ケイさん。一応、捕獲用の行動値と魔力値に余裕を持たせた範囲でになるけど、それでいい?」
「おう、それで問題なし!」
地面は雨で濡れているし、基本的に芝生みたいな感じに草花は生えているからね。俺の岩と地面との間に氷を用意する事で滑って移動が出来るはず!
「それじゃいくよ。『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
「よし、良い感じ! それに俺の岩を乗せてっと……」
「おー! また新たな移動手段が出来たのです!」
「あはは、よく思いつくものかな」
とりあえずヨッシさんによって板状に生成された氷の上に俺の岩の板を乗せて、準備完了。ふっふっふ、地味に操作系スキルの応用範囲は広いから、発想次第で色んな事が出来るってもんだね!
「それじゃ俺が獲物察知を使って、その後にサヤが威嚇を使ったら、敵の動きを見ながら方向の指示を出していくからな。ヨッシさん、氷の操作の動きを合わせてくれ」
「うん、了解」
ちょっと移動方法の変更はあったものの今度こそ出発の準備が完了したので、敵の位置を把握していこうじゃないか。
<行動値を4消費して『獲物察知Lv4』を発動します> 行動値 61/65(上限値使用:11)
さて、これでどうだ? えーと、赤い矢印が北の方にいくつか伸びてるけどこれは無視でいい。黒い矢印は所々にある木々のいくつかに向かっているのと、雷雲の中にも伸びているね。……ふむ、雷雲の中にも敵はいるのか。でも今のところは成長体っぽい黒くて細い矢印は見当たらない。
お、黒くて細い矢印を発見! ……ん? それと全く同じ方向に青い矢印が4本……。あ、その矢印の先を見てみたら思いっきり青の群集の人が捕獲しようとしてるから、これは無理か。
そんな風に範囲内の様子を確認していくけども、成長体らしき獲物は発見出来ないまま効果時間が過ぎてしまった。……一発で見つかるほど甘くはないか。
「ケイ、どうかな?」
「残念ながら、この場所からの有効範囲では外れだった」
「ま、そういう事もあるよね!」
「それなら移動だね。どの方向に行く?」
「あー、とりあえず西に進むんで良いと思うぞ。それとサヤにちょっと提案」
「何かな、ケイ?」
「どうも雷雲の中にも敵がいるっぽいんだけど、サヤの竜で雷雲へ突撃っていける? ダメージを受ける可能性もあるんだけど……」
「え、雷雲の中にもいるのかな!? あ、でも雷属性の敵はそこにいそうだよね。……自己強化でクマに雷属性の付与した上でなら大丈夫かな?」
「あ、それなら私に回復の支援をさせて下さい! スイカを提供しますので!」
「ミドリさん、ありがとうかな。それなら、もし雷雲の中に成長体の反応があったら私が捕獲してくるかな!」
「よし、それならその方向性で決まりだな」
俺らのメンバーの中では雷属性を持っているサヤの竜が、雷雲の中に突入するのが一番安全だろうからね。……俺の岩の操作で防御をするという手段もあるにはあるけど、完全に周囲を覆うと見えなくなるから却下で。
そして少し西へと移動してきた。ふむふむ、この氷で滑らせる方法は地面の起伏で揺れは発生するものの、割と安定はして移動が出来ていた。極端に起伏がなければ、この方法はありといえばありだね。
まぁ問題があるとすれば、上空が厄介だという状況でない限り、俺らのPTにはあまり出番がなさそうだという所か。どう考えてもアルの空飛ぶクジラの方が便利である。
「そろそろもう1回、獲物察知をいくぞ!」
そう俺が宣言すると、みんなは頷いて警戒態勢へと移行していく。天気が回復するまでの時間との勝負ではあるから、素早くやっていく必要があるもんな。んじゃ、2回目の獲物察知で行きますか!
<行動値を4消費して『獲物察知Lv4』を発動します> 行動値 61/65(上限値使用:11)
お、今度は黒い矢印が結構な量があった。そして、近くの木々の方と雷雲の中にも成長体らしき細めの黒い矢印がある……。ちっ、雷雲の中の方は近くに未成体の反応も3体ほどあるな。
2体の成長体の確保は絶対に必要だけど、雷属性のフィールドボスにする為には雷属性の成長体が必要だ。……ここで優先するべきは雷雲の中にいる奴だな。
「サヤ、雷雲の中に未成体が3体と成長体が1体! 俺が守勢付与をかけるから、サヤは未成体は威嚇で追い払いつつ、成長体の確保を最優先! 威嚇が効果がない相手なら守勢付与の自動防御に任せて、未成体からは逃げに徹してくれ」
「分かったかな! 『自己強化』『略:エレクトロクリエイト』『操作属性付与』『上限発動指示:登録1』!」
サヤが竜を大型化させ、雷雲の中に突っ込んで行くためにクマにも雷属性を付与していく。属性として持っている竜はともかく、クマの方は多少の軽減にはなっても全くの無効という訳にはいかないだろうね。
あー、そういやこの場合って有利属性になる土属性にした方が良いのか……? うーん、まぁ即死って事はないだろうし、今回はもう付与しちゃったし雷属性でいいか。
「ヨッシさんとハーレさんは、未成体が追いかけてきた場合は俺と一緒に撃破に回る!」
「了解!」
「了解です! 準備だけはしておくのさー! 『魔力集中』!」
「ミドリさんはサヤが成長体を捕まえてきたら受け取ってくれ。フェルスさんとレインさんは、悪いけど周囲の警戒を頼む。もし何かあったら言ってくれ」
「はい、分かりました!」
「了解っす!」
「分かりました!」
よし、これで指示出しは終わり! さて、サヤには正確な位置を伝える必要があるから、ここは魔法砲撃を使っていくか。いや、その前に守勢付与をかけるのが先だな。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 61/65 → 61/64(上限値使用:12)
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 54/64(上限値使用:12): 魔力値 191/212
これで魔法砲撃準備と、サヤのクマの方に守勢付与の水球が3つほど周囲を漂い出した。正直、雷雲の中に突っ込むのに役に立つかは不明だけど、無いよりはマシなはず。
「サヤ、威嚇の発動と同時に魔法砲撃で目印の水球を撃つから、それを目印にしてくれ!」
「分かったかな! 『威嚇』!」
そう指示を出してすぐに大型化した竜に跨がったのを確認したので、少しだけ邪魔にならないように雨避けの水のドームに穴を空け、そこから飛び出したサヤが雷雲の方へと迫っていく。
よし、威嚇の効果で成長体は一目散に逃げて、未成体の3体中の2体も逃げ始めている。これなら思ったほど邪魔にはならなさそうだ。
<行動値2と魔力値6消費して『水魔法Lv2:アクアボール』を発動します> 行動値 52/64(上限値使用:12): 魔力値 185/212
大急ぎで右のハサミを魔法砲撃の起点にして、すぐに成長体が逃げていく方向に撃ち出していく。途中に雷雲もあるし、仮に成長体に直撃しても即死になるようなダメージには……って、あー!? 雷雲に触れた瞬間に放電して水球が消滅した!? くっ、これは土の弾にすべきだったか……。
「サヤ、すまん! 土の弾で――」
「ううん、大体の方向は分かったから必要ないかな!」
「あ、そっか」
ふぅ、ちょっと使う属性を間違ったけども、今のでサヤには大体の方向が伝わったようである。そして、サヤは雷雲の中へと飛び込んでいった。……うわー、無茶苦茶放電してる!?
「見つけたかな! 『略:尾巻き』!」
「サヤ、どうなったー!?」
「ちゃんと捕まえたよ! 今からそっちに戻るけど、未成体の電気を纏ったカラスが襲ってきてるから要注意かな!」
「サヤ、ナイス! ヨッシさん、ハーレさん、カラスの迎撃準備!」
「はーい! 『アースクリエイト』『操作属性付与』『並列制御』『爆散投擲・土』『連速投擲・土』!」
「え、ハーレ、それはやり過ぎじゃない?」
「まだもう1匹捕まえなきゃいけないから、短期決戦で行くのさー!」
「ま、そりゃそうだな」
「……それもそっか。それじゃ私はハーレの攻撃を確実に成功させよっか」
ハーレさんが自分で言ってはいるけど、速攻で決めるつもりで爆散投擲を……銀光の強弱的にLv2で発動しているっぽいね。しかも連速投擲も待機状態に入っている。まぁリスの両手で投げる事は可能だから、こういう手段もありか。
さてと、ここは邪魔な敵を確実に素早く仕留めて1体目の成長体を確保しよう。その後にももう1体、捕まえに行かなきゃいけないしな!
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