第601話 ケイ対ベスタ 上
模擬戦の開始までのカウントダウンが終わり、ベスタとの対戦が始まった。対戦エリアは森林深部の夜になったから、まずはその対応をしていこう。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 73/73 → 72/72(上限値使用:1)
<行動値上限を2使用して『暗視』を発動します> 行動値 72/72 → 70/70(上限値使用:3)
よし、思考操作で発動して万全な視界は確保は出来た。ベスタの闇纏いや闇の操作に対応する為にはどうしても暗視を使っておかないと危険過ぎるというのもあるから――
「下準備で待つと思うなよ? 『強爪撃』!」
「ちょ!?」
やばい、ベスタも多少は準備に時間をかけるかと思ったけど、この攻めの早さは何もせずに突っ込んできたか! くっ、これは緊急回避!
<行動値を1消費して『体当たりLv1』を発動します> 行動値 69/70(上限値使用:3)
「ちっ、避けたか。『自己強化』『増殖』『発火』『双爪撃』!」
「おわ!?」
くっ、咄嗟にロブスターの体当たりで緊急回避をしたものの、そこから体勢を立て直す隙に自己強化を使用されてしまった。……しかも、脚の表面のコケを増殖させた上に発火で火を着けてそのまま追撃って、いきなり攻め込み過ぎ!?
<行動値4と魔力値12消費して『水魔法Lv4:アクアボム』を発動します> 行動値 67/70(上限値使用:3): 魔力値 194/206
ふー、ベスタの追撃に合わせつつ自分自身を吹き飛ばすようにして、水を爆発させて距離を取る。……よし、良い感じに木陰に吹き飛ばされた。
てか、まだ大技は使われてないけど、危ねー! まだベスタも俺も準備は万全という訳じゃないのに、一瞬たりとも気が抜けないじゃん!?
「……隠れたか。『暗視』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』」
えーと、木陰に吹き飛ばされてそこに隠れたは良いけど、その間に着々と用意していってるね。くっ、開幕から一気に攻め立てて余裕を無くさせてから、体勢を立て直す間に準備を整えていく作戦か。
いきなり手の上で転がされている気もするけど、俺もこの間に準備を整えていこう。ベスタ相手に何度も物理攻撃を当てられる気もしないし、ここは自己強化で……いや、一度ベスタの連撃に嵌められると自己強化で全体的に強化をしてても一気に削られそうだな……。
攻撃を食らってもダメージ量を減らしてという方向よりは、そもそも攻撃を受けない方向で考えていこう。そもそもLv差が結構あるから、1撃のダメージ量はかなり厳しいはず。
<行動値上限を3使用と9魔力値消費して『魔力集中Lv3』を発動します> 行動値 67/70 → 67/67(上限値使用:6): 魔力値 186/206 :効果時間 14分
よし、攻撃の強化の為じゃなくて押し負けない為の強化として魔力集中でいこう。……さて、ベスタが攻めに転じるまではそれほど時間はないぞ。……どうする?
「『闇纏い』『群体化』!」
えぇい、行動値を気にし過ぎたらまともな有効打は与えられないし、ここは無茶でも大技を仕掛けるか! なんとなくカステラさんが早いうちから昇華魔法をぶっ放してHPを削りにいった理由がわかったよ。一対一だと出し惜しむ方が危険だ、これ!
幸いな事に暗視のお陰で闇纏いをしていてもベスタの位置は把握出来ている。……周囲のコケは多少群体化されてしまったっぽいけど、コケ渡りにだけは注意しないと。……どうも何かあるっぽいし警戒は必須か。そうなると、これだな。
<行動値を4消費して『群体化Lv4』を発動します> 行動値 63/67(上限値使用:6)
ふむふむ、ベスタが群体化したコケの位置は大体把握。地味に無発声の思考操作で4ヶ所くらいに分散して群体化してるね。……よし、あえてベスタの群体化したコケの1ヶ所の横のコケを群体化しておくか。よし、次!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 62/67(上限値使用:6): 魔力値 183/206
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 60/67(上限値使用:6): 魔力値 180/206
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
今回は昇華魔法になったら困るので、水は少し離れた所に少量生成して、土は目の前に多めに生成していく。急げ、急げー! こんな生成、ベスタにはすぐバレる!
「そこか! 『群体同化』『コケ渡り』!」
「気付くの早いって!?」
「……これは昇華魔法じゃないな? 『爪刃乱舞』!」
くっ、気付かれたか!? いやでも、一番近くにあったコケ渡りに使えそうなコケの位置を把握しておいて良かった。これなら思考操作ならなんとか間に合う!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『水流の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 41/67(上限値使用:6)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を38消費して『岩の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 3/67(上限値使用:6)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
行動値を思いっきり使い過ぎた気もするけど、それは気にしても仕方ない! 即座に操作した水流をコケ渡りで出てきたベスタにぶつけるように操作しつつ、岩でロブスターの全身を覆っていく。……よし、完成!
あー、少し掠ってはいたみたいだけど、ベスタに殆どダメージは与えられてないか。流石にすぐに攻撃を中断して回避に移ってたもんな。……今のでちょっと遠くまで流してしまいたかったけど、そう単純にはいかないようである。
「ふっ、そう来たか」
「まぁね。ベスタと近接でやり合うつもりはないもんでな!」
「だろうな! 『飛翔疾走』『連閃』!」
「おっと!」
移動操作制御ではない岩の操作で飛行鎧を形成して飛びながら水流をベスタに向けてぶつけていくけども、ベスタは空を駆けながら鋭い爪の連撃で生成した水流を斬り裂いていく……。くっ、追加生成をしなけりゃすぐにでも水流が無くなってしまいそうだ。
……このまま単純に水流をぶつけるのはなしだな。まぁ元々これくらいでどうにか出来るとも思ってはいない!
「これならどうだ!」
「……ほう、面白いじゃねぇか。受けて立ってやる。『重硬爪斬』!」
上空へと水流を動かしていきドーナツ状の水流へと変化させ、その中へと岩の鎧を纏ったロブスターごと飛び込んでいく。さて、水流でロブスターを流して、その流れに合わせて岩の操作でも更に加速させていく。
あー、でも思いっきりベスタが待ち構えてチャージを開始しているなー。しかも銀光の強弱が発生してるって事は、Lv2での発動っぽい……。Lv3ほど強弱の変化具合は早くはないから、Lv2のはず。これは真っ向から斬り伏せるつもりだな。ま、そうでなくちゃね!
お互いに大技の準備をしていくけど、操作自体はそれほど威力は高くないんだよね。まぁその分、こうやって加速させる事で威力の底上げもしやすいってのが操作系スキルに特徴ではあるんだけど。
おっと、そうしている内にベスタのチャージも完了していた。……さて、この手は読まれてたら正直ここで終わりなんだけど、やるしかないな。
「行くぞ、ベスタ!」
「来い、ケイ!」
ベスタの方に水流の向きを変えて、多量の水を叩きつけていく。ちっ、流石にそこでチャージを使ってはくれずに回避していくか。それじゃ予定通りに加速したロブスター……というより、岩をベスタへと突撃させていこう。……狙うべきタイミングは一瞬だ。
「これでも食らえ!」
「はっ! その程度で……ちっ、そっちが狙いか!」
水流と共に突撃していく俺に向かってベスタがチャージを終えた爪の斬撃で水流を縦に両断したけども、これは想定内。……少し岩が削れたけど、そっちは追加生成でどうにかなる範囲。
そして俺自身は急激に岩の操作の速度を上げて、ロブスターを岩の外……ついでに言えば水流の外へと弾き出した。……つまりベスタの攻撃は俺自身には一切当たっていない!
よし、畳み掛けるのはここからだ! 水流はもう追加生成は無理でもう水量自体はほぼ残っていないけど、岩の追加生成はまだ可能だ。岩を板状にして、上から水流で岩ごとベスタを押し潰す!
「……ちっ、こう来たか。『群体同化』『コケ渡り』!」
「あ、逃げるのはズルいぞ!?」
と言ったものの、その回避方法は想定済み。さっきまでベスタはチャージに専念していたし、コケ渡りで出てくる候補位置は大体分かっているから、そこさえ見極めれば……。
よし、想定範囲内の位置に出てきた! ……でも群体化しているコケとは関係ないコケからか。あれ、コケ渡りの対象って群体化したコケじゃない……? いや、それは今はいい!
「『爪刃双閃舞』!」
「……なんてな?」
「……何?」
即座に水流の操作と岩の操作は破棄。元々あれも避けられるのは想定済みだ! 本命はここからだっての!
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 3/67 → 3/61(上限値使用:12)
とりあえず即座に思考操作で今度は移動操作制御で移動鎧を展開して飛んでいく。これをしてないとこれからやる事は自分自身を巻き込むからね。……光の操作は放っておけば指定時間を過ぎて無効になるから放置で!
それにしても空を駆けての追撃が来ないという事は、あのスキルの効果はそう長くないな。こりゃ好都合だ!
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 3/61 → 3/60(上限値使用:13)
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 2/60(上限値使用:13): 魔力値 177/206
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 0/60(上限値使用:13): 魔力値 174/206
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
行動値0とかぎりぎりにも程があるけど、ぎりぎりで足りてくれた! これで倒しきれるとは思ってないから発動した後は逃げるしかないんだけど、それなりのダメージになってほしい。出来ればHPの半分は削りたい! って事で魔法砲撃にした昇華魔法の発動だ!
<『昇華魔法:デブリスフロウ』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/206
「これが本命か!? ちっ、さっきのタイミングで連撃はしくじったか」
ただ単純に普通に発動しただけではあっさりと効果範囲から逃げられてしまうので、魔法砲撃にしてベスタを飲み込むように土石流をハサミの先から発生させていく。少し驚いた様子のベスタは発動中の爪刃双閃舞でデブリスフロウの迎撃を行っていた。連撃系のスキルって発動が終わるまで他のスキルは使えないから、今はそうするしかないんだろう。
ふっふっふ、それでも自己強化では強化具合が足りないようで相殺し切れずにベスタに少しずつではあるけどダメージは入っていくね。魔法砲撃で狙いはバレバレだとしても、それが今は逆に逃げる方向を制限できている。
「予想以上で嬉しいぜ、ケイ」
「……げっ、連撃が終わった!?」
「まぁ並の奴なら今ので終わりだろうが、俺はそう甘くないぜ?」
「……ですよねー?」
あ、これはやばいやつだ。今のでもっと削る予定だったのに、連撃が終わったベスタは回避に集中して、HPは精々2割くらいしか減っていない……。うん、これはあれだね。行動値も魔力値も底を尽きてるから、戦略的撤退だ! ちょうどいい具合に昇華魔法の効果も切れたしね!
「撤退ー!」
「はいそうですかと逃がす訳がないだろう! 『増殖』!」
「ですよねー!?」
そりゃごもっともだけど、逃げて回復させなきゃどうしようもないんだから逃げるしかないって! ……それにベスタも応用スキルを複数、盛大に使っていたから行動値に余裕はなさそうな気はするけどどうだろね?
それにしてもやっぱりベスタは強いなー。結構色々仕込みまくって盛大に攻撃しまくったのに、あれで2割しか削れないってキツイなぁ……。それに多分まだベスタは本気じゃないよね。
うん、やっぱり勝てる気がしない。……でももう1撃くらいは有効打を入れてやる!
「さて、覚悟はいいな?」
「いや、良くない! って事で、戦略的撤退!」
「逃がすか! 『群体同化』『コケ渡り』!」
「おわっ!?」
くっ、デブリスフロウの効果が切れて、無事な近くのコケにコケ渡りをして来たか! ……行動値もないし、これは仕方ないか。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 0/60 → 0/58(上限値使用:15)
緊急避難として、水のカーペットを防御代わりに展開。すぐに破壊されるのは分かっているけど、今はこの手段くらいしかない。流石に逃亡用の飛行鎧を防御に使う訳にもいかないしね。
<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 0/58 → 0/60(上限値使用:13)
「ちっ、使い捨てで防御をするか」
コケ渡りをしてから俺に飛びかかってきたベスタの攻撃を凌いだら、ベスタは追撃を中断していた。……流石にベスタも行動値を使い過ぎたのかもね。
「……当たるとも思えんが……。『並列制御』『ウィンドボール』『ウィンドボール』」
「まだ追撃あったー!?」
ただ近接での追撃をやめただけで、追撃そのものを止めた訳じゃなかったんだな。……まぁベスタは物理型だから、魔法については大したことはなかったね。回避自体は簡単だった。
そんなやり取りを経て、とりあえずベスタから戦略的撤退は成功して今は森林深部にあった岩の影に隠れている。……それにしてもベスタにダメージを与えるはホントに難しいな。うーん、一番効果があるのは昇華魔法なんだろうけど、当てるのが難し過ぎる……。
付与魔法を使って、魔法の底上げをして衝撃魔法を叩き込むか……? でも動きを封じないとまず当たらないよな。……並列制御Lv2があれば手段もあるけど、無いものねだりをしても仕方ないか。さて、ここからどうしたもんだろう。
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