第20章 強い相手との戦い

第597話 夜の部、開始!


 晩飯を食べ終えたので、再びログインをしていこう。今日は母さんの計らいで食器の片付けはしなくていいという事になったので、晴香と同じタイミングでログインだな。

 さて、晴香が何をしたいのかというのが楽しみではあるし、ベスタとの対戦の時間も考えないとね。晩飯が出来るまでは少し待つ必要があったものの食べるの自体はそんなに時間はかからなかったので、現在時刻は7時を少し過ぎた頃である。



 という事で、またいったんのいるログイン場面へとやってきた。それほど時間が経ってる訳でもないし何か変化があるとも思えないけど、一応いったんの胴体部分を……って内容が変わってるじゃん。

 えーと『既に報告のあった複数の不具合と仕様の改修が終了しました。詳しくは公式サイトかいったんまでお願いします』となっているね。ふむ、問題のあった部分は解消したって訳か。


「いったん、これって今はランダムマッチングが使えるようになってたり、任意での模擬戦の終了が可能になったって認識でいい?」

「うん、それで問題ないよ〜。それとアイテム使用不可の設定ならアイテムは完全に使用不可になったからね〜」

「そういやそっちもあったっけ」


 ふむふむ、まぁ模擬戦でアイテムの使用を無制限にしたら回復出来て面倒ではあるもんなー。……まぁ一対一だからそう簡単に回復アイテムを使える訳でもないから元々あまり意味が……あ、ちょっと違うな。

 よく考えたらこれって回復アイテムの事もあるんだろうけど、これって纏属進化の可否でもあるのか。まぁ纏属進化を使うと大きく戦況も変わるだろうし、その辺の縛りなのかもね。


「他にはなんかある?」

「あ、少しだけ仕様が追加されてるね〜。模擬戦をする時に見ればすぐに分かるようにはなってるけど、説明しとこうか〜?」

「あー、見てすぐ分かるのか。……それなら別にいいや」


 聞いておいても良いんだろうけど、そこは実際に見ながら触れていきたいしね。流石に不具合の修正なら聞く必要もあるけど、そうでないなら手探りでも問題ないだろう。


「それじゃコケでログインをよろしく!」

「はいはい〜。楽しんでいってね〜」

「おうよ!」


 そうしていったんに見送られながら、ログインしていった。さてとサヤとヨッシさんからは返事が来てたとハーレさんが言っていたので、ログアウトした場所で待っていてくれるはず。……あの場所が誰かに取られてなければだけど。



 ◇ ◇ ◇



 さて、ミズキの森林へと戻ってきたけど、みんなはどこだろなー? っていうか、地味に薄暗い……って事はまたアルが上にいるのか!?


<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>

<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>

<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>


 空を見上げてみれば、何かに太陽光が遮られた状態が見えて成熟体の発見報酬が出たー!? あれ、すぐに通り過ぎていったみたいで何がいたのかが分からない。……ちょっと赤い色は見えてて、巨大な飛行する何かの成熟体ってくらいか。……飛んで確認してみる?


「わ!?」

「お、ハーレさんか」

「ケイさん、さっきのあれはなんですか!? すぐに通り過ぎて何かわからなかった!」

「俺もよく見えてなかったから知らん!」


 ハーレさんもログインしたばっかで何がなんだか分からないんだろうけど、それは俺も同じだからなー。っていうか、アル達はどこだ……?


「ケイ、ハーレ、こっちかな!」

「お、そっちか」


 どうやらアルが小型化した状態のクジラで低空飛行をしつつ、サヤとヨッシさんは樹洞の中に退避していたようである。あー、今の位置はさっきの何かを避けるような位置っぽいね?


「ちっ、もう戻ってきやがったか。2人とも急げ!」

「あ、危ない! 『並列制御』『アイスウォール』『アイスウォール』!」


 おわっ!? 俺とハーレさんの方に流れ弾っぽい火の弾が飛んできた!? ヨッシさんが慌てずに複合魔法のアイスプロテクションで防御してくれたけど、一瞬で消滅したな……。流石は成熟体の攻撃は凄まじい威力だ。

 ……っていうか、今のどこから攻撃が飛んできた? 方向的には湖がある方向だけど……って、え!? 木がなぎ倒されてる!?


「これって誰か戦ってるのか!?」

「誤って成熟体に攻撃を当てた成長体のプレイヤーを庇ってベスタが戦闘中だ!」

「マジで!? え、庇う必要あったのか!?」

「どうも『モンスターズ・サバイバル』の野外炊事場のすぐ近くだったみたいでね。そっちに被害が出ないように引き離したって感じらしいかな? それで直線的に逃げたらすぐに補足されるから、あちこち蛇行しながら逃げてるみたいで……」

「あー、なるほど……。それでそこの木がなぎ倒されているんだな」


 ベスタが成長体の人を庇ったっていうのは、どちらかというと湖の側の竈を破壊されないようにする為か。……流石のベスタも蛇行して逃げているということは、かなり攻撃的な徘徊する成熟体の相手は簡単とは言えないんだな。

 そしてベスタが庇ったというまだ成長体の人って事は、不慣れな魔法に誤射でもしたのかもしれないね。……っていうか、なんか盛大に木がなぎ倒されるような音が近付いて来てるんだけど、これってもしかして……?


「あ、ベスタ……って、うわ!?」

「わっ!? でっかいドラゴンだー!?」

「ケイとハーレか。ちっ、今すぐアルマースの所に退避しろ! 『強爪撃』!」


 その場に現れたのはベスタとその背中にしがみついている青いトカゲの人と、木をなぎ倒す巨大なドラゴン……今回のは赤い竜みたいだけど、かなりデカいな。もしかして敵も大型化を……ってヤバい!? こっちを睨んで……正確にはベスタをだけど、魔法を吐き出す時の兆候が出てる!? 

 くっ、防御を……いや、ベスタが少し向きを変えて誘導したから俺らは一気に逃げた方が早いか!


<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 73/73 → 67/67(上限値使用:6)


 速度が欲しいので思考操作で飛行鎧を発動! 光の操作はその辺の光を適当に指定して、竜に当たらないようにだけは気をつけないと……。よし、ロブスターの全身を岩で覆って飛行準備は完了!


「ハーレさん、乗れ!」

「了解です!」


 即座に俺のロブスターの上に乗ったハーレさんと共にアルの横まで飛んでいく。それと同時に大量の火が瞬発的に竜の口から吐き出されていた。……これってもしかしてLv6の魔法……火魔法のLv6ならファイアインパクトか?


「ケイ達はそれで良い! お前は振り落とされるなよ! 『飛翔疾走』!」

「はいぃ! すみません、すみません、すみません!」

「謝る必要はないから大人しくしがみついておけ! このままもう少し引き離したら、俺もお前も死ぬからな! 成熟体相手まだ勝てる奴はいねぇ!」

「は、はい! 本当にすみません……!」


 おー、青いトカゲの人が謝りながらもベスタの背中にしがみついて、ベスタは空中へと駆け出す事でファイアインパクトを躱していた。

 でも思いっきり森に火が着いたから、後で消火しておかないといけないな。……なるほど、ログインした時には上空にいて、今は木をなぎ払いながら突っ込んでくる巨大な竜が相手だから、アルは小回りがしやすいようにクジラを小型化にしていたのか。


「ケイ! 俺はミズキの森林の端までこの竜を誘導したら死んでエンの元へ戻る!」

「ほいよ! その後で例の勝負についての打ち合わせだな!」

「あぁ、そうだ!」


 そう言いながら流石に余裕がないのかどんどんと駆けて離れていくベスタと、それを追いかけ森をどんどん破壊していく巨大な竜の姿があった。……今の状況だとそれだけの伝言を伝えるだけで精一杯か。


 しばらくすれば、燃え盛る森となぎ倒された木々という惨状を残し、ベスタと竜の姿は見えなくなった。てか、確実に10メートルは超えてたけども、どんだけでかいんだよ、あの竜……。


「……アル、とりあえず消火しよう」

「それもそうだな。『アクアクリエイト』『水の操作』!」


 色々と話したい事もあるにはあるんだけど、流石に燃えている最中の森を放置する訳にもいかないからね。魔法産の火だから燃え尽きたとしても復活は早いだろうけど、燃え尽きない方が回復が早いのは間違いないから、現状で消火は最優先である。


<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 66/67(上限値使用:6): 魔力値 203/206

<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します>  行動値 63/67(上限値使用:6)


 かなり大きめの水球を生成して、それを操作してアルがやってる方向とは違う方向の火を消していく。なぎ倒された木は仕方ないとしても、必要以上に燃え広がる事は避けれそうだな。……よし、消火完了。


「ふー、ログイン早々焦ったねー!」

「だなー。アル、具体的にどんな事があったんだ?」

「あー、初めは3人で空中戦で特訓をしてたとこに、あの竜が飛んできてな。初めはあんなにデカくなかったから、普通に地上で大人しくやり過ごしていたんだが……」

「……急に大型化したかと思ったら、急降下して森に突っ込んでいったかな」

「はい!? え、そんな挙動あんの!? てか、やっぱり大型化するのか!?」

「なんでそうなったのー!?」

「……あはは、誰かが識別かスクショを撮ったみたいでね? そのまま湖の方へ突っ込んで、特訓中の魔法が着弾してさっきの状態になったらしいね」

「……マジか」


 やっぱり急にやってくる徘徊するタイプの成熟体はスクショや識別には容赦がなさ過ぎるな……。そしてさっきの青いトカゲの人に非は殆ど無さそうだね。ふむ、だからベスタはああやって助けていた訳か。


「それでベスタが方向を変えて逃げ回りながら、情報を上げててな? 巨大過ぎる上に森の木々もお構いなしに突っ込んでくるし、上空から攻撃してくるから、上空と地面のどっちにも回避が可能な位置で凌げって情報共有板に書き込みがあったんだよ」

「えー、あの状況でそんな事までしてたのか……」

「あ、それは流石にさっきの青いトカゲの人が代わりに書き込んでたかな」

「うん、そうだったね。アルさんが成熟体の竜の目撃情報を上げようとしてたタイミングで気付いてね。そこでハーレとケイさんがログインしてきたんだよ」

「……すげぇタイミングでログインしたもんだな、俺ら」

「ケイさんと同感です!」


 これまでにもログイン早々で何かに巻き込まれる事は何度かあったけども、ログアウトした場所が悪かったのが原因だったり、巻き込まれてもダメージはないとかいう状況だったんだよな。でも今回のは対処を間違えていれば即座に死亡だったね……。


「……ベスタがこの場にいて色々と助かったってとこか」

「まぁそうなるだろう。……だけど、ベスタ自身も言ってたが、確実に死ぬだろうな」

「……だよなー」


 あの竜の執拗な追いかけ方にしても、俺らが成熟体を相手に称号目的で挑んだ時も、あの手の成熟体に触れる事はそのまま死を意味している。……現状じゃ完全に逃げ切る事すら不可能だろう。


「こう言うのもなんだけど、済んだことは仕方ないんじゃないかな?」

「ま、そうだね。ベスタさんはあの状態でもケイさんとの勝負の時間の打ち合わせの話をしてたんだから、そっちに集中しない?」

「……そりゃそうだ」


 あの時点でもうベスタは死ぬのを大前提として動いていたもんな。今更あの竜について俺らに出来る事はないし、気にするのはやめておこうか。……あの成長体の青いトカゲの人については多分ベスタがフォローするだろうしね。


「それじゃ気を取り直して、ミズキのとこからエンのとこまで転移していくか。それとも転移を使わずに行く?」

「あー、どっちが早いんだろうな?」

「あんまり変わらない気はするかな?」

「確かに今の移動速度ならそうだよね。ここ、比較的森林深部に近いしさ」


 うーん、どっちにしても目的地は同じなんだけど移動手段はどっちが良いものか……。あ、今は色んなとこで中継をしてるだろうし、それを眺めつつ移動するというのもありか?


「はい! ちょっと提案というか話があります!」

「ハーレ、どんな内容かな?」

「あ、ハーレさんがやりたい事についてか?」

「ケイさん、大正解なのさー!」


 やっぱりその内容で正解だったか。まぁみんなが揃っている時に話すとは言ってたし、移動中にその話をしていくのは決して悪い判断ではないだろう。っていうか、普通に内容が気になるし。


「そういう事なら転移は使わずに移動するのでいいか?」

「俺はそれでいいぞ」

「私も賛成かな」

「私も賛成。ハーレが何を希望するかが気にはなるしね」

「ふっふっふ、多分みんなもやりごたえはある内容だとは思うよー!」

「ほほう? 俺らにやりごたえのある内容か」

「そりゃ気になる内容だな」


 ふむふむ、これは思っている以上に大掛かりな事を希望していそうな予感がしてきたぞ。俺らもやりごたえがありそうな内容か。あ、もしかしてあれか……? ふむ、もしそうだとするなら確かにやりごたえはあるかもね。


「とりあえず移動しながら話して行くのさー!」

「ほいよっと。んじゃ、アルに移動は任せた!」

「アル、お願いかな」

「アルさん、お願いね」

「おう、任せとけ!」


 さてと、ハーレさんの希望については俺の予想が当たっているかどうかもだけど、ベスタとも対戦の時間の調整はしないとね。まずは移動しながらハーレさんの希望を聞くとこからだな。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る