第586話 群体塊の使い方
さて、みんなも待っているみたいだし早速レベルの上がった発光を試してみるべし!
「それじゃ発光Lv5に発動し直すぞー」
「おうよ」
「どのくらいの明るさになるかな?」
「今でも直接見るとちょっと眩しいから、結構眩しくなりそうだよね」
この発光の明るさによっては運用方法も変わってくるから、どの程度の明るさに変わるかは重要だ。……夜の日に光合成を使えるくらいまでの明るさがありそうなら、光合成も鍛えたいとこだしね。
<『発光Lv4』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 9/68 → 9/72(上限値使用:1)
<行動値上限を5使用して『発光Lv5』を発動します> 行動値 9/72 → 9/67(上限値使用:6)
さて、これで再発動完了……って、眩し!? ちょっとこれは明るくなりすぎ!? 見えない訳じゃないけど、かなり鬱陶しいぞ!?
「……思った以上に眩しかったかな」
「あ、サヤ!? 竜で目隠しはズルくない?」
「あー、ケイ、悪い。思った以上に眩しいから発動を止めるか何かで遮ってくれ……」
「……ほいよっと」
俺自身もかなり眩しいので、それが良いだろうね。これはコケを塊にしている事で光量が増えている気もする。……とりあえず解除しようっと。
<『発光Lv5』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 9/67 → 9/72(上限値使用:1)
これで眩しいのは何とかなった。さて、ちょっと眩しすぎるという欠点はあったけどもこれなら今まで以上に光の操作の光源として使えるかもね。光合成の光源に使えるかどうかは太陽光と判別をつける為に、暗い場所か夜の日に試した方がいいかも……?
とりあえず行動値を全快させてから、遠隔同調を使って氷越しの郡体内移動が可能かどうかと群体塊の状態でのスリップ運用を試してみたいね。
「これ、場合によっては目潰しに使える?」
「……使えはするだろうけど、閃光ほどの効果はないと思うぞ? 中途半端といえば中途半端な明るさだしな」
「あー、なるほど……」
うーん、少し目を逸したくなるくらいの明るさはあるけども、盛大に動きが鈍るほどでもないか。やっぱり目潰しとして使うよりは光の操作用の光源として使うのが無難か。
これでとりあえず発光は試したし、群体塊の性質も少しは分かった。奇襲方法の考案や迎撃方法はハーレさんも含めて全員いる時に考えるとして……。
「ケイ、ちょっと良いかな?」
「ん? サヤ、どした?」
「そのハサミにコケの塊が引っ付いてる時って、攻撃したらどうなるのかな?」
「……そういやどうなるんだろ?」
さっき森の方のコケをサヤが斬り刻んだ時はバラバラにはなったけど、今のロブスターから離れられない状況ではどうなる……? まさか引き千切られて同調が解除なんて状態に……いや、可能性として否定出来ないのが怖い!?
でも、通常の状態では同じ群集だとそれは試せない気もするから……あ、それこそ模擬戦機能を使えば良いのか。
「サヤ、どっかで合間を見て模擬戦で実験を手伝ってくれない?」
「それは良いけど、どうするのかな?」
「このコケの塊をロブスターから引き剥がせるかの実験。もしそれが可能なら、これを迂闊に使うのが危険かもしれないし……」
「……それで模擬戦機能での実験かな? 今は大丈夫なの?」
「あー、多分今は大丈夫だとは思うけど、試すだけ試してもらっとこうか」
「うん、分かったかな。とりあえず引っ張ってみるね」
「おう、よろしく」
流石にダメージの発生しない状態で同調の解除で弱体化は発生しないとは思うけど、万が一の為に試しておくべきだ。そしてサヤが俺のロブスターのハサミにあるコケの塊を掴んで引っ張り始めていく。
「サヤ、どうだ?」
「……これは柔らかくて持ちにくいかな。よいしょ!」
「引っ張るのは無意味そうだね?」
「それならこれでどうかな! 『自己強化』!」
「……自己強化でも無理みたいだな。ケイ、どんな感じだ?」
「あー、うん。ハサミからコケが離れそうな感じはしないな」
サヤがクマでコケの塊を掴んではいるものの、コケの塊自体が柔らかいようで上手く力が入らずに引っ張ってもほぼ意味はない様子である。ふむふむ、この感じなら引き千切られる可能性は低そうだな。……とはいえ、手段は掴んで引っ張るだけではないもんね。
「サヤ、斬ってみるのはどう?」
「やってはみるけど、それだとコケが残りそうな気はするかな……?」
「近接に強いサヤでそれが無理なら俺としては安心出来るとこだけど……」
「あはは、そう言ってもらえるのは嬉しいかな? それじゃとりあえずやってみるね。『強爪撃』!」
そう言いながら、サヤが鋭い爪で俺のコケとロブスターの接している部分を斬り裂いていく。あっ、これは完全に核がある部分が分離した……?
<群体の核を他の群体へと強制移動します>
あ、いや、そう思った瞬間に少しだけロブスターの表面に残っていたコケへと核が強制的に移動になったね。ふぅ、ロブスターの表面にコケの群体が僅かでも残っていればセーフか。
「あ、斬り落とされたけど、ケイさんは大丈夫そうだね」
「だな。あー、斬り落とされた側のコケの塊は地面に落ちたら普通のコケみたいに散らばってくのか」
「ふー、ちょっと焦りはしたけど試してみて正解か。……これ、弱点で追撃されたらやばいな」
「……そうだろうな。ケイのロブスターの表面のコケ、殆ど残ってないだろ」
「うん、そうなる。……ロブスターに触れてるコケに戻れなきゃ、多分同調が解除だろうな」
「……ケイ、迂闊に群体塊は使わない方がいいんじゃないかな?」
確かにさっきのサヤの斬撃に火属性になってたり、付与魔法で火の攻勢付与でもされていたりして、なお且つダメージの通る環境だったならコケが殺られていたのは間違いない。火属性攻撃に限らず腐食毒や溶解毒にも要注意だな。……海水についてはロブスターとの同調共有で適応しているから問題はない。
うーん、群体塊は遠隔同調と同時に使用する時以外は使わない方が安全か……? これだと弱点を狙いやすくするという大きな欠点が……。
「……いや、準備次第か? ちょっと待ってて、試したい事がある」
「またケイさんが何か思いついた感じだね?」
「うん、2種類ほど対策をね。サヤ、下準備をするから、それが終わったらさっきと同じようにしてもらっていい? 出来れば連撃で」
「あ、うん。それは良いけど、大丈夫かな?」
「ま、駄目だったら駄目だった時!」
さてと、まずはさっき地面に散らばったコケの回収だな。……地味に群体化したままではあるから、相手の攻撃を利用してコケを周囲にばら撒くという手段もありかもね。下手に増殖して使うよりは狙いがバレにくそうではあるし、不意を付く手段に使えそうだ。
とりあえずハサミのあるコケが地面の群体のコケに触れさせていけば、元の塊のコケへと戻っていく。さて、下準備はここからだな。ちょっとコケの塊がハサミだと位置が悪いので、一旦転がってロブスターの背中へと移動させてっと。
<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します> 行動値 12/72(上限値使用:1)
さっきサヤに斬り刻まれている間に少し行動値は回復していたね。まぁそれはいいとして、とりあえず増殖開始!
ふむふむ、ちょっとコケの塊が大きくはなったものの途中からはそれ以上大きくはならずに、ロブスターの背中へとコケが増殖していった。よし、これなら完全に切り離す事は難しいはず! それからコケの塊はまた転がしてハサミの位置へと移動。まぁハサミの位置である意味はあまりないんだけどね。
「なるほど、切り離されても大丈夫なように予備のコケって訳か」
「そういう事だから、これで下準備は完了っと。サヤ、また斬撃をよろしく!」
「うん、分かったかな! 『強爪撃』!」
「……ケイさん、何を狙ってるんだろ?」
そしてサヤはさっきと同じようにコケの塊とロブスターとの接点部分を狙ってきてくれた。……うん、さっきと同じようにコケの塊は斬り落とされたけども、ここまでは狙い通り!
<群体の核を他の群体へと強制移動します>
よし、ちゃんと核が無事なロブスターに背中の群体へと転移が完了した。あー、この強制転移ってどのコケにするかは選べないのが欠点だな。ま、予想通りの変化は起きているからいいや。
「えっ!?」
爪を振り抜いたサヤの目の前で、強制転移したコケの核を起点に新たに群体塊が作られていく。まぁその代わりにロブスターの表面の他のコケが無くなって、コケのない剥き出し状態になってるけどね。
よし、とりあえずこれは成功だな。でも、核の強制転移の位置が選べないのが痛いな。これが選べたらカウンター狙いがやりやすいんだけど……。
「へぇ、面白いじゃねぇか。ケイ、それってカウンターが狙えるんじゃないか?」
「ちょっと難ありな要素はあるけどそうなるな」
「え、ケイさん、何か問題あったの?」
「うん、まぁね。これ、群体塊の再生成の場所が選べないんだよな」
「あ、それは確かにちょっと困るね」
場所を選べないから安定性という面がどうしても欠けるのがデメリットではある。でも決して使い道がないという訳でもない。即座の判断は必要にはなるけど、それが出来ればむしろ読みにくいカウンターになる筈だ。
「でも、手札の多いケイなら場所によってカウンターの種類を選べるんじゃないかな?」
「お、サヤは相変わらずいい勘してるね。正しくその通り! 切り離されて地面に散らばったコケでスリップを使ったり、再生成された群体塊をロブスターの動きに合わせてぶつけてバランスを崩させたり、使える時なら即座に遠隔同調を使って切り離されたコケの方から魔法砲撃で狙い撃つって手段もあるな」
「……相変わらず考える事がえげつねぇな。だが、有効なのは間違いないか」
「うん、さっきのタイミングでどこからどんな種類の攻撃が来るのか分からないのはかなり嫌かな……?」
「あはは、ケイさんってよくそれだけ色々と思いつくよね」
「ま、思いついた事をそのままやってるだけだけどな」
意識して考える時もあるけど、基本的には特に意識してやってる訳じゃないけどね。時々それで妙な失敗もする事もあるし。……そういう時ほどなんか変な条件の称号を手に入れる事もあるけどさ。
「あ、そうそう。サヤの打撃と、ヨッシさんの刺突でも試しておきたいんだけど、いい?」
「それも大事だよね。うん、了解」
「私は次は打撃で良いのかな」
「うん、そういう事で2人ともよろしく!」
このコケの塊はサヤに引き千切るのを頼んで掴んでもらった時に、かなり柔らかいのは分かってるんだよね。予想としては打撃は威力の減衰とか、刺突の無効とかじゃないかと思っている。
さて、それを試すのも重要だけど、まずはコケの塊をハサミに移動させてから散らばったコケの回収をしよう。……ふむ、塊の大きさが最大になっている状態で群体のコケに触れさせるとロブスターの背中に普通のコケとして戻っていくみたいだな。なんというか、群体塊って思ってた以上に面白い仕様なんだよね。
「今回は私が先に刺突でいくよ」
「ほいよ。ヨッシさん、よろしく」
「うん、任せて。『略:棘大杭』!」
「おわっ!? あー、防御効果はまるでなしか」
「どうもそうみたいだね」
ヨッシさんのウニから射出された大きな棘の杭はあっさりとコケの塊を貫通し、ロブスターのハサミで受け止める形になった。ふむふむ、刺突にはまるで効果なしだと直接ロブスターを狙えるという事だね。同じ群集のヨッシさんからの攻撃だからダメージはないけど、これは要注意な内容だろう。
「それじゃ次はサヤ、頼んだ!」
「うん、分かったかな! えっと、自己強化を発動中だけどそのままでもいいかな?」
「あー、まぁダメージはないし大丈夫だろ」
「ケイがそれで良いならそれでいいけど……」
俺も自己強化を使ってもいいんだけど、その場合ってロブスターを強化するだけだからな。コケの塊でのダメージ軽減効果があるかどうかを試すなら余計なものはない方がいいはず。……まぁ勢いが殺せずに吹っ飛んだとしても、それはその時だ。ダメージはないしね!
「それじゃ行くかな! 『連強衝打』!」
「サヤ、ちょっと待った!? なんで応用スキル!?」
「打撃の単発スキルはあまり持ってないからかな」
「いや、薙ぎ払いとかでいいじゃん!?」
「……あっ」
「ど忘れかー!?」
そんなど忘れをしていたサヤの連続打撃の応用スキルが、徐々に銀光を強めつつコケの塊へと叩き込まれていく。くっ、どんどん強くなっていく打撃でハサミが千切れるかと思うような状況になってきた……。
「ケイ、これってコケの塊が結構威力を吸収してないかな?」
「そう……だと……は、思う……けど!?」
サヤの言う通り、自己強化も無しに応用スキルを受けている割には衝撃は少ないの間違いなさそうだ。……でも限度もあるよね!? くっ、サヤの連撃を受け止めるのはキツいなぁ!
<行動値を3消費して『スリップLv3』を発動します> 行動値 11/72(上限値使用:1)
このまま連撃を正面から受けるじゃ吹き飛ばされるだけなので、ここはこの手段を使うまで!
「わっ、スリップかな!? でも少し違うね?」
「コケの塊に沈み込んでから、力の流れを滑らせながら受け流してる感じだな。これって意外とありか?」
「そうみたいだけど、そういう事なら破るまでかな!」
「えっ!? ちょー!?」
そしてサヤは俺が使ったスリップで前のめりにバランスを崩したものの、そこからコケの塊ではなくハサミそのものを狙って連撃の最後を打ち込んできた。
あー、上空へと吹き飛んでいくね。これって同じ群集だから大丈夫だけど、そうでなければハサミが引き千切れただろうなー。
「あー、ケイさんが吹き飛ばされたね」
「予定になかった事をしてたしな。ま、気持ちは分からなくもないが……。おらよっと。『アクアクリエイト』『水の操作』!」
「……おー、アル、サンキュー」
サヤによって上空へと吹き飛ばされた俺だけども、アルが水のカーペットを手動生成して受け止めてくれた。ふー、とりあえずこれで無事に生還だな。まぁそのまま落ちてても死なないけどさ。
さてと、これで大体の群体塊の検証は終わりだね。使い方次第ではあるけども、割とデメリットもある感じなので基本的には普段使いはなしだな。ただし、状況によってはかなり便利そうではある。
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