第560話 ひとまずの撮影が終わって


 なんだか成り行きでジェイさんと斬雨さんがスクショの撮影の第2部に参加しそうな流れになったけども、まぁいいか。そして、そのままジェイさんと斬雨さんがみんなが集まっている桜花さんの元へとやってきた。


「お、いつぞやの青の群集のタチウオの人とコケの人ではないか。なぁ、疾風の」

「みたいだな、迅雷の」

「そういう貴方達は競争クエストの総力戦で戦った方々ですね。……色々と噂は聞いていますよ」

「だな。この辺でよく追いかけ回されているが、ほぼ捕まらない風雷コンビだっけか」

「……青の群集にまで伝わってんのかよ」


 なんだかベスタが疲れたように項垂れているけども、風雷コンビの名前は青の群集にまで伝わってたのか……。もしかしたら俺がほぼ見る事のない『群集内交流板』の方とかで話題になってたりするんだろうか……? 俺らは固定PTになってるから、募集がメインのあそこは見てないんだよな。


「おーい、すまんが俺はそろそろ森林深部に戻りたいから、撮ったスクショの投影をさっさとしたいんだが?」

「あ、桜花さんはそうだよねー! はい、みんなとりあえず集合ー!」

「あー、そういやそうなるのか」

「おや、そこにいるのは桜花さんでしたか。お久しぶりですね。どうです、灰の群集は?」

「存分に楽しんでるぜ、ジェイさん!」

「それは何よりです。……今は急いでいるようなので、また後の機会にしましょうか」

「だな! 今は俺は森林深部で不動種をやってるからよ!」

「って、森林深部に行った桜花が草原にいるんだ?」

「……斬雨、それはどう考えてもスクショを撮る為でしょう」

「あ、そりゃそうか!」


 そういや桜花さんは元々は青の群集の森林にいて灰の群集に移籍してきた人だから、青の群集のジェイさんや斬雨さんと知り合いでもおかしくはないんだな。

 てか、聞いている感じだと普通に交流はあったっぽいね。まぁ桜花さんも青の群集の居心地が悪くて抜けて来たという訳でもないし、所属が変わったからといって険悪になる訳でもないか。


「……それで、ベスタさん。そのスクショの投影とやらは私達が見ていっても構わないのですか?」

「最優秀賞以外は群集ごとに部門が分かれてるから問題ねぇよ。ま、その代わりと言っちゃなんだが、ちょっと情報交換をしようじゃねぇか」

「……群集クエスト、特に光っている方の『進化記憶の結晶』についてですね?」

「ま、そういう事だ」

「……ジェイ、どういう事だ?」

「斬雨には説明したと思いますが!? 元に戻す必要のあるあれについてはどこかで他の群集と情報交換をすべきと言いましたよね!?」

「あー、そういやそんな事も言ってたな!」

「ジェイさん、斬雨さん、悪いんだけどその辺は後にしてくれね? 俺、一旦この桜を森林深部に戻しに行かないと、場所の選定し直しになるんだよ」

「あぁ、なるほど。そういう事なら失礼しました」

「流石にそれは邪魔しちゃまずいか」

「分かってくれたなら何よりだ。そんじゃ投影していくぞ! 『樹洞外投影』!」


 そうしていつの間にやらスクショ班が桜花さんに撮ったスクショを渡していたようで、すぐにスクショの投影が始まっていく。さーて、最後の大掛かりなスクショはどんな風になったかな?


 まずはレナさんがアルの背後の位置から撮ったやつだね。今回はアルのクジラに大きく動きがあったので連写になっているみたいだ。

 ふむ、激しい放電をしている雷雲の中から飛び出てくるアルが大きく写っているけども、雷雲から出てきたばかりの時は桜花さんが写っていないし、電気の瘴気魔法もあまり写っていない。迫力はあるけど、ちょっとテーマとはズレてしまっている感じだね。これはこれで悪くはないどころか、良いけども。

 そして降りてきて桜花さんの元へと突撃していくのについては……正直な感想としては微妙。突撃の角度が変わったせいか、位置関係がかなり悪い。桜花さんの桜の木がスクショの端におまけで写っているような感じである。


「あはは、こりゃ後半のわたしのはボツだねー!」

「あー、なんかアドリブを入れたせいで位置関係が狂ったんだな。……なんかすまん」

「良いって、アルマースさん! 逆に序盤の方は良い感じに撮れたしさー!」

「そう言ってくれると助かるぜ」


「……これは、かなり大掛かりな事をしてますね。誰の発案ですか?」

「『渡りリス』のわたしです! まぁ色々あって予定より大規模にはなったけどねー!」

「……私が名付けておいてなんですが、気に入っているのですね、レナさん」

「うん、そうだよー!」


 なんというか、俺らはジェイさんから裏では『灰の暴走種』とか呼ばれてるらしいのに、レナさんは気に入ったあだ名があるのは正直羨ましいよな。

 

「それじゃ次行くぞー!」


 そして次に投影されたのはクラゲの人が桜花さんの後ろから撮ったやつか。おー、こっちも連写だけど雷雲からクジラが降りてくる光景が凄いな。それにこっちの角度からなら、電気の瘴気魔法の黒い落雷もしっかりと写っていて迫力抜群だ。その分、桜花さんの方が弱々しく見えているけどもこれはこれであり!

 後半の方に行くにつれて瘴気を纏ったアルの突撃の迫力も増してるし、桜花さんもしっかり写っているね。この方向からのスクショの中ではこれが一番良いんじゃないんだろうか?


「お、こりゃ良い感じだな。へぇ、こんな風に写ってたのか」

「アルさん、悪役だね」

「あはは、確かにこのアルのクジラは共闘イベントのボスみたいなイメージかな?」

「お、サヤ、確かにそれっぽいよな!」

「アルさんは悪役なのさー!」

「……心境としては微妙だが俺としてもこのスクショの内容だと同意しか出来ん」


 このスクショのアルは悪役っぽいという印象はみんなも同意見のようである。まぁ、元々瘴気属性を利用している以上はそういう風にはなるよな。


「んじゃ最後の行くぞー!」


 そして最後はハーレさんが撮ったやつだな。うーん、斜め上から撮ってはいるけどもアルが動いていたからか、何とも微妙だな。それにこれ、ちょいちょいブレてるけど途中で移動したっぽい?


「あちゃー、これは位置とアルマースさんが大きく動いたのが裏目に出ちゃったかー!」

「あぅ……。思った以上にブレちゃいました……」

「ハーレ、そういう事もあるって! わたしだって撮り損ねる事はあるし、気にしない、気にしない!」

「レナさんの言う通りかな!」

「そうそう、誰だって失敗はあるんだし、気にしなくて大丈夫だよ、ハーレ」

「ま、もっと盛大にミスする奴もいるからな」

「……なんでこっちを見ながら言った、アル!?」

「……うん! アルさんの言う通りだね!」

「ハーレさんはハーレさんで、なんで俺を見て納得すんの!?」


 確かにちょいちょいミスはするから否定は出来ないけども、納得する理由にされるのはちょっと心外なんだけど!? 


「まぁ、良いじゃありませんか、ケイさん。悪ふざけを言い合える仲というのも貴重なものですよ?」

「……琥珀さん」


 琥珀さんがフォローを……ってこれはフォローになってるのか? いや、でも言いたい事そのものは理解出来るね。アルもハーレさんも信頼してくれているからこそ、ああいう軽口を言えるという側面はあるだろうしさ。……さっきのって下手すればトラブルにもなるから、気軽に誰にでも言える内容ではないもんな。


「さて、それじゃ投影は終わったから、俺は森林深部に戻るぜ。琥珀さんはどうする?」

「私も代わりに植えている桜の回収が必要なので、この辺りで失礼しますね」

「ほいよっと。桜花さん、琥珀さん、今日はありがとな!」

「俺こそ楽しかったから、誘ってくれてあんがとよ!」

「そうですね。私も楽しかったですよ」

「そっか、それなら良かった」


 なんだかんだで予定よりも大規模にはなったけども、かなり良い感じのスクショが複数撮れたみたいだもんな。それに桜花さんも不動種で移動する事は多くないだろうし、そういう面でも良かったのかもね。


「さーて、それじゃこれで第1弾のスクショの撮影は完全に終了だよー! 第2弾についてはこれから参加者と、持ってるスキルや参加する人の種族で決めていくからねー! あ、ジェイさんと斬雨さんはどうするー?」

「……そうですね。参加させてもらえるのなら、参加させてもらいたいですが……」

「その前に情報交換ってとこだよな、ジェイ」

「えぇ、そうなりますね」

「あ、それもそだねー! とりあえず人数的には大丈夫そうだから、先に情報交換をしてくださいなー! その間に私達は内容を決めていこー!」


 とりあえずこれにて俺らの予定していたスクショの撮影は完全に終了である。まぁ他にもまだやりたいという人も結構いるので、そこら辺の仕切りについてはレナさんに任せれば問題ないだろう。


「んじゃ、ケイさん達、またな! 『纏属進化・纏樹』『根脚移動』!」

「またどこかでお会いしましょうね」

「おう、桜花さん、琥珀さん、またな!」


 そうしてみんなでそれぞれに挨拶を交わしてから、桜花さんは一時的に纏樹で移動を可能にして群集拠点種……草原エリアはユカリだったっけ? とにかくユカリの方へと歩いていった。琥珀さんについてはキャラを切り替える必要がある為、ログアウトしていったね。


「さて、我らもそろそろ行こうではないか。疾風の」

「それもそうだな。迅雷の」

「風雷コンビももう行くのか?」

「我らが参加予定だったものは終わったからな」

「それにさっきのメンバーは控える方が良いだろうよ」

「あー、レナさんもそう言ってたし、そうなるか」


 風雷コンビにしても既に目的は終えたという事で、ここまでで切り上げという事のようである。まぁ初めはレナさん相手に半ば強引に参加してきたみたいだけど、こうやって終わってみればかなり手伝ってもらったもんだよな。


「では、さらばだ!」

「またどこかで会おうぜ!」

「おう、風雷コンビ、またな!」


 そして風雷コンビとも別れを告げ、そうしている間にもさっき参加していた人達の何人かは軽く声をかけてきて解散していった。全員が全員、この後の第2弾を見ていく訳じゃないんだな。ま、時間の都合もあるって事で優先的に先に俺らと一緒にやった人達だし、その辺は仕方ないね。


「さて、大体の用事は済んだようだな」

「そうなるな。で、ベスタ? これから青の群集と情報交換って事で良いのか?」

「あぁ、その認識で構わない」

「私達としても願ったりですね。では、情報交換を始めましょうか」

「そりゃいいんだが、少し離れた方が良くねぇか? 邪魔だろ、俺ら」

「……それもそうですね。では、少し移動しましょうか」

「そうだな。行くぞ、グリーズ・リベルテ」

「ほいよっと」

「……別にいいんだが、普通に俺らは情報交換組なんだな」

「ハーレとケイが発見してるから、適任ではあるとは思うかな?」

「あ、そういえばそうだったね」

「レナさんとダイクさんもだけどねー!」

「ま、あの2人はあっちを纏めてるから、俺らでやっとこうぜ」


 という事で、青の群集との群集クエスト……特に光る『進化記憶の結晶』についての情報交換の開始である。本当ならレナさんとダイクさんも発見関係者ではあるからこっちに来ても良いんだろうけど、あっちはあっちでまとめ役が必要だろうしね。別に全員が必要という訳でもないし、これでいいのさ。


「シレッと言ってますが、少なくとも灰の群集での発見の1件はケイさん達なのですね」

「ま、ただの偶然だったけどな」

「俺らだって見つけてはいるぜ!」

「おー!? ジェイさんと斬雨さんも見つけたんだねー!?」

「……私達も偶然ではありますけどね」


 ほうほう、ジェイさんと斬雨さんは青の群集での発見者ではあるんだな。黒い真珠みたいな方か、光る小石みたいな方かは分からないにしても、発見しているという事は少なくとも片方の特徴は確実に把握しているんだろう。

 そこで気になってくるのはウィルさん達から聞いた無所属での増援クエストについてだけど、青の群集ではその辺の情報はあるんだろうか? ……これについては要注意な情報だね。


「今回のは偶然や運の要素が強い。……俺はまだ1つも見つけられていないしな」

「え、ベスタが1つも見つけてないのは意外だ!?」

「……だから運や偶然の要素が強いと言っているだろう。ケイ、俺は決して万能って訳じゃないんだからな?」

「……すまん。そりゃそうだよな」


 今までの出来事からベスタは何でも出来るというイメージがあったけども、言われてみると絶対に何でも思った通りの成功になるはずもないか。……うん、これは俺が反省しておかないとね。


「まぁ、俺の事は良い。……この辺でいいか」

「えぇ、構わないでしょう」


 そうして話しながらレナさん達から離れた位置にあったそれ程大きくもないけど一般生物の木の周辺へと移動完了である。ここなら邪魔にもならないだろう。


「さて、それでは情報の交換を始めようか」

「そうしましょうか」


 今はベスタがいるので基本的な話は任せるとして、青の群集との情報交換の開始である。さて、仕様の確認がメインになるだろうけど、どういう仕様になってるかが重要だね。

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