第544話 合間の休憩
とりあえずお茶……味はお茶じゃないけども作り方はお茶だから、お茶という事で間違いはないはず。とにかくお茶を飲みながらゆったりと休憩中である。水で薄めてアイテムとしての効果は少しも発揮してないけど、普通にサイダーだな。
なんでちゃんと炭酸になっているのかが逆に疑問ではあるけど、まぁゲームだしそこは気にしても仕方ないか。
「これって振ったら炭酸が抜けていったりするのか?」
「あ、ケイさん。一応炭酸は抜けるけど、その前に蓋をしないと割と大惨事だよ?」
「……既に試した人はいるんだな」
「でも確かめたくなる気持ちも少し分かるかな」
「まぁ、そうだよな」
俺も気になった事ではあるし、アルもサヤも同じように気になってはいたみたいだね。おそらく試作の段階で関わってた人がその場で試したとかそんなとこだろうか?
「まぁ試飲の時にそれをやったのはハーレだったんだけどね?」
「やったのはハーレさんかい!」
「……なんとなく納得ではあるな」
「……あはは、やっぱりハーレらしいかな?」
まさかの……というほど意外ではないけども、試したのはハーレさんだったらしい。竹の器に蓋とかないけど、木の板ででも蓋にして振ったとかそんなとこか。そしてまぁどうなるかは自明の理って事だろう。
「……今頃、ハーレはアルバイトを頑張ってるんだろうね」
「まー、そうなるな」
「ケイは様子を見に行ったりはしたのかな?」
「いや、行ってないぞ。母さんが晩飯の食材の買い出しを兼ねて行ってるくらいだな」
「あー、そういやスーパーって話だっけか」
「昨日のお詫び分のアイスについては母さんに頼んだしな」
「おいおい、ケイ。流石にそれは自分で買ってこいよ」
「……正直なところを言うなら、わざわざアイス1個のために混雑してるとこに行くのと、下手すれば近所の人に捕まるのがちょっと……。この前、1時間くらい捕まったんだよ……」
「あ、確かにハーレやケイさんの家の近所ってそういう人が多かったっけ。私もハーレと遊んでる時に色々と声をかけられた事もあったね」
あ、そっか。ヨッシさんも今は引っ越したとはいえ、ハーレさんとよく一緒にいたんだからその辺は知ってるよな。というか、よく2人でいるとこを目撃されてて、それが今年からなくなってハーレさんの元気がなくなってたのを心配してたのが理由の1つでスーパーで近所のおばちゃんに捕まった訳だしね。
「……私もお盆辺りならお祖母ちゃんの家に行けそうだし、ちょっとその時が楽しみだね」
「お、ヨッシさん、お盆にはこっちに戻ってくるのか」
「あはは、お父さんの仕事の都合次第ではあるからまだ確定ではないけどね。サヤも一緒にって思ったけど……」
「私の方はお盆は親戚が集まってくるから、流石に無理かな……。行けるなら行きたいんだけど……」
「あー、まぁその辺の親戚付き合いってあるもんな」
「ま、その辺は仕方ねぇだろうよ」
俺の家は……まぁ親戚付き合いが全くない訳ではないけども、父方も母方も祖父母はどちらも亡くなってるからね。親戚自体はいるけども、全国にあちこち散らばっているのでお盆でどこかに集まるという事も特にない。お盆とかは割と近くにある墓参りに行くくらいだな。
「そういやアルってお盆は? ちょっと気が早い気もするけど、話の流れ的に」
「あー、俺か? 実家に帰省でもいいんだが、割と近いしどうするかはまだ未定だな」
「そうなんだ」
ふむ、アルは1人暮らしだという話だけども、それほど実家から離れている訳じゃないんだな。ま、まだしばらく先の話だから、その辺は間近になった時に気にすればいいか。
そんな風に雑談をしながら休憩をしているうちに、行動値も魔力値も全快になった。まぁもうしばらく休憩はしておきたいから、まったりとしてようかな。
「あ、そうだ。ケイ、後で火の操作でさっきの杭を避けるのやってみてくれないかな?」
「別に良いけど、俺の火の操作ってLv3だから参考になるのか?」
「あ、Lv3になってるんだったっけ。……出来ればLv2での動きを参考にしたいから、Lv2で発動は無理かな?」
「まぁ、それは出来ないわけじゃないから良いぞ」
「ありがとうかな!」
「いえいえ、どういたしましてっと」
まだやってないのにお礼を言われるのは早いような気もするけど、サヤが参考にしたいというのであれば別に問題はないか。それじゃそうと決まれば、試しに1発やってみますかね。
火の操作はLv3に上げる時以外では殆ど使ってないから、Lv2の発動でうまくいくかな? 操作系スキル……特に応用スキルではなく通常スキルの方は基本的な扱い方は変わらないから大丈夫だとは思うけど。
「さてと、火の操作をやってみますか」
「え、早速良いのかな?」
「ま、ちょっとは休憩になったしなー。このくらいなら大丈夫。……流石にアルとの特訓の再開はもうちょい休憩したいけど」
「おー、ケイ、奇遇だな。それは俺もだぜ」
「ケイさんもアルさんも結構大暴れしてたと思ったけど、やり過ぎだったんじゃ……?」
「「否定しきれないな!」」
「あ、2人とも自覚はあったんだ」
おっと、思いっきりアルと声が被ったね。まぁ、実際のところ序盤で勝ち負けが交互になってたのもあってムキになっていたのは否定できないから、少しやり過ぎてた感はある。どうやらアルもそうみたいだしね。
「まぁそれは良いとして、やってくぞ!」
「うん、分かったかな!」
「ヨッシさん、目印の杭をよろしく」
「あ、そっか。さっきと同じにするならそうだよね。『上限発動指示:登録1』『棘杭』『棘杭』『棘杭』『棘杭』!」
「サンキュー!」
時間の経過で消滅していたヨッシさんの棘杭を再び用意していってくれた。休憩中にハチの大型化が解除になっていたけども、再使用までの5分も既に経っていたので問題なかったようである。
これで目印の棘の杭の準備も完了したし、サヤの見本の為のLv2の火の操作をやっていこうじゃないか。
<行動値1と魔力値4消費して『火魔法Lv1:ファイアクリエイト』を発動します> 行動値 69/70(上限値使用:2): 魔力値 200/204
<行動値を5消費して『火の操作Lv2』を発動します> 行動値 64/70(上限値使用:2)
ん? 魔法の魔力値の消費量って操作の方の行動値×魔法のLvだよな? なんで数値に食い違いが……って、わざと操作のLvを下げてるせいか。一瞬混乱したけど、操作のLv3で行動値の消費は4に減るんだからこれで合ってたよ。
「よし、それじゃいくぞ」
「じっくり見てるかな!」
サヤは竜をクッションのようにして乗りながら、見逃さないように集中している。まぁ寛ぎ状態ではあるけども、しっかり見てるなら問題もないか。
さてと生成した火の玉を支配下に起き、操作の感覚を確かめておく。うーん、やっぱりLv2だと制御が甘いから前後左右にユラユラと動いて、動きは安定しないか。ま、でもこの程度なら慣れもあるから大丈夫な範囲だな。
「流石に最高速度だと操作が狂いそうだから控えめに……よし!」
動きが安定しないというのはあるけども、ある程度のブレる方向性はある。動かしたい方向にブレた瞬間に、左右のブレ幅も考慮して一気に動かして1つ目と2つ目の杭の間を通り抜けるように動かしていく。
よし、とりあえずは成功っと。でも、これは連続してやるのはブレ幅があるから、杭に当たらないようにするのは難しいか。……全く不可能って訳ではないけど、1度も全くミスをせずにするのは厳しいな。
「とりあえず、最後までやってくぞ」
そうやって同じ感覚で火の玉を操作していく。……これ、夜の日にやってるから遠目から見たら不気味かもなー。とりあえずこの要領でこの杭と杭の間を通して当たらないように避けながら、操作をしていくまで!
「おー、Lv2の操作でよくそこまで狙い通りに動かせるな」
「……これって制御が甘くて動きがブレてるのを利用してない?」
「え、そんな事って出来るのかな!?」
「ヨッシさん、正解! そんでもって、これでクリア!」
ちょっと怪しかった時もあったけど、無事に成功! ふー、実用範囲になるLv3よりも下のLv2でやると集中力を使うから地味にしんどいな。無駄に時間もかかったし……。うーん、あえて縛りありでやったから達成感はあるにはあるけど、少し不完全燃焼だね。
「流石、ケイかな! そっか、ヨッシも言ってたけど変に動きに逆らわないのと、動きのイメージをするのが大事なんだね」
「そういう事。ただ、火の場合はイメージしにくいんだよな。あえて言うなら、他のゲームの火の魔法とかをイメージすればいいってとこか」
「ま、現実じゃ火の玉とか飛ぶ事はねぇしな」
「……あはは、確かにね。サヤはホラーは苦手だし、そっちは向いてなさそう」
「もうヨッシってば!?」
「あはは、ごめんごめん」
そういやサヤは地味にホラーが苦手とか言ってたっけ。てか、他のゲームとは言ったけど、このゲームの普通にファイアボールも充分参考にはなるか。あ、でもあれは手動操作にしなきゃ直進しかしないから今回の避ける方法には不向きだな。
……となると、別方向からアプローチしてみるのもありか。サヤの魔法は竜で発動だし、こっちの方がイメージ的には最適かもしれない。ふむ、普段は感覚でやってる事だけど、こうやってどうすれば使いやすいかというのを考えるのも新鮮ではあるね。……まぁこれが本当に効果的かはやってみてもらうしかないけども。
「サヤ、火の操作のLvが3になるまでは別の方向からやってみるってのはどうだ? イメージとしては竜のブレス。現実にあるもので言えば火炎放射器ってとこ」
「……それでも練習にはなるのかな?」
「ま、どっちかって言うとLv上げが主目的にはなるけど、火の広がる幅とかで操作の練習にはなると思うぞ」
「……確かに火の操作ならその方が良いかも? ケイさん、その場合だと的はどんな感じが良い?」
「そうだな……。2ヶ所の目印の間にブレスに幅を合わせる感じでどうだ? その先に少し離れた的も用意しておいて、届くかどうか微妙な距離にしとくとか」
「あ、それ良いね。うん、その方向性でやってみよう。サヤ、それで良い?」
「うん、その辺は私じゃ決められないから任せるかな」
「ケイ、なんだかんだで特訓方法もしっかり考えてんじゃねぇか」
「……これでも色々考えてみたんだよ」
「ケイ、わざわざありがとうかな。ヨッシもありがとね」
「ま、気にしなくていいさ」
「そうそう、一緒に頑張っていこうね」
確実に上手くいくとは断言出来ないけど、これでサヤの火の操作を鍛える方向性が決まってきた。電気の操作もそれなりに上達してきているし、ちょっと違うイメージをしてみた2つの操作に慣れて苦手意識が薄れてくれば全体的に操作系スキルについては上達するはず。
火の玉の操作については火の操作がLv3になって精度が上がってからやってみるのでも問題はないだろうしね。それはそうとして……。
「ところで、さっきのはちょっと不完全燃焼だったから、Lv3でもやっていい?」
「不完全燃焼だったんかい!」
「参考までに見てみたいかな!」
「あはは、確かにね」
「よし、んじゃそういう事で!」
不完全燃焼だった分だけ、火の玉を操作していこうじゃないか! ふっふっふ、Lv3からは明確に操作の精度が上がるから、さっきみたいなブレを利用しないと安定して動かせないということはないもんな!
さてと、会話をしてる間に行動値も魔力値も全快しているので、早速やっていこう!
<行動値1と魔力値4消費して『火魔法Lv1:ファイアクリエイト』を発動します> 行動値 69/70(上限値使用:2): 魔力値 200/204
<行動値を4消費して『火の操作Lv3』を発動します> 行動値 65/70(上限値使用:2)
えーと、火の操作Lv3なら同時に操作出来るのは2個だから、火の玉は2個生成しておこう。片方は右から左に向けて杭の間を通し、もう片方は逆に左から右向いて杭の間を通していく。
これのコツは1つ1つを別々動かすのを意識するのではなく、2つの玉を交差させるというイメージでやっていくのがいい。1セットとして扱う感じだな。
よし、無事に全部の杭をくぐり抜けて大成功! 速度もさっきよりも速いから、やっぱりLv3からの安定度は違うね。
「……あはは、参考にとは言ったけど、これは簡単には真似出来そうにはないかな?」
「まだまだ不慣れなサヤには厳しいだろうね。……ケイさん、今すぐにってわけじゃないけど私もそれをやってみたいからコツを教えてもらってもいい?」
「おう、いいぞ。アルはどうする?」
「あー、俺はそれくらいなら出来るから別にいい。コツってあれだろ。前にケイが言ってた、1つ1つを意識するんじゃなくて必要な時以外は意識を分散させずにまとめて操作するってやつだろ?」
「お、アル大正解!」
「あ、これもそうなんだ? そっか、それじゃサヤがもう少し慣れたら私もやってみようっと」
「ヨッシ、自分の特訓をしてくれてもいいよ?」
「適当にウニのスキルを発動しながらやるから、それは大丈夫だよ」
「そっか。それなら良いかな」
「それじゃそろそろ再開しよっか」
「うん、分かったかな!」
そうしてサヤとヨッシさんのスキルの熟練度稼ぎは再開となっていく。さて、サヤがどこまで操作系スキルを扱えるようになるかが今から楽しみだね。
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