第506話 目的地に到着


 ひとまず、灰の群集のまとめへの報告は完了っと。ハイルング高原の移動は、今回はダイクさんに任せられるから移動が楽でいい。上空を飛んでいるけど、時々近くに飛んでくる残滓はハーレさんが仕留めてるみたいだしね。

 それじゃ、まとめに書いてる途中に思った事をみんなに……って何か既に話しているのか。まとめへの書き込みに集中してて内容が全然聞き取れて無かったけど、何の話をしてたんだろ?


「あ、うん。その可能性は考えてたし、今ならポイントで取得出来るようにはなってるよ」

「へー、やっぱり氷塊の操作って氷の昇華になるのがポイント取得の解放条件なんだ? それじゃあ、ヨッシさんは氷塊の操作はポイントで取るの?」

「ううん、今すぐに取る気はないよ。でも、どこかに天然の氷塊があれば称号取得で取りたいとこだね」

「そっか、そっか。んー、天然の氷塊かー。氷結草の群生地の夜に閉ざされる氷の壁はギミックみたいで操作不可って話だしねー。あたしもそれにはまだ心当たりがないなー?」

「レナさんが知らないなら、現時点では無理みたいだね。まぁまずは氷雪の操作も鍛えたいから、焦らずにやっていくよ」

「うんうん、それで良いと思うよー!」


 あ、どうやら可能性だけは考えていた氷塊の操作は実際にあるみたいだね。まぁ聞いてる限りではポイント取得ならすぐにでもどうにかなるけど、称号取得を狙うには対象となる氷塊がまだ存在してないようである。あのレナさんに心当たりがないんじゃ仕方ないか。


「ねぇ、そういえばさっき言ってた『飛翔疾走』ってどんなスキルなのかな?」

「あ、それはわたしも気になるね? ダイク、説明よろしくー」

「あー、別に良いけど取得条件は知らないぞ? ただ地上と同じように空中を駆けられるってスキル。ペガサスとかその辺の翼が必須なスキルじゃないかって話だったけど、ライさんを見た感じだとそうでもないみたいだな」

「ほうほう。是非とも欲しいスキルだねー」

「ま、レナさんならそうだろうな」


 考え事をしている間に、聞きそびれていたライさんの使っていたっぽい空中を駆けるスキルの話へと移っているね。……ふむ、スキル仕様にもよるんだろうけど、確かに小石を足場にするよりは使い勝手は良さそうではある。

 でもまぁ、俺らの中にはあの移動方法に向いているメンバーはいないか。あれは四本足の動物系に向いてそうだ。そういう意味ではサヤに向いてそうでもあるけど、サヤの竜って大型化を取得した事で、更に乗り物的になってるから不要だよな。

 って、俺も話しておきたい事があるんだから、いつまでも聞いてても仕方ない。会話に混ざっていこう。


「おーい、書き込み終わったぞー」

「ケイさん、おかえりー!」

「おうよ、ハーレさん。ところで報告を上げてる時に思った事があるんだけど、ちょっと良い?」

「おう、問題ないぜ!」

「それじゃ遠慮なく。『奇襲強化Ⅰ』って入手方法が2種類あるんだよな?」

「あー、そういやそうなるな。……ケイさんが確認したいのは、スキルの統合は出来るのかってとこか?」

「お、ダイクさん、話が早い! ま、そういう事だな」

「はい! それなら私が狙ってやってみます!」

「わたしも元々狙ってたし、やろうかなー!」

「お、そうこなくっちゃな」


 やっぱり言うとは思っていたけども、レナさんとハーレさんが検証してくれる形にはなりそうだね。これでもし『奇襲強化Ⅱ』にでもなれば、ハーレさんの長距離奇襲の威力アップが期待が出来る!


 思った以上にサクッと終わったけども、これで確認しておきたい情報の確認は出来た。後はフィールドボスを誕生させて、ボス戦だな! その為にも早くネス湖の手前の平原まで急がないと。まぁ既にエリア切り替え地点に近付いてきてるけどね。


「そういえば、平原に入ったらすぐにフィールドボスを誕生させるか?」

「うーん、近場にいる人の様子次第かなー? とりあえず人がいなければ拓けた場所で、人がいればあの虫の林の中でって事で!」

「あー、灯りがあると襲ってくるあそこか」

「ケイさん、それは夜だけだぜ。昼間はあそこは基本的に安全だ」

「そういや夜の灯りで活性化って言ってたような気も……?」


 ふむふむ、夜の日に灯りを用意すれば活性化するけども、昼の日は安全と……。これはどこかで役に立つかもしれないから覚えておこう。……なんとなく忘れる結果になりそうな気もするけども。


「さて、そうしてる内にエリア切り替えに到着だ!」

「それじゃ、みんな行くよー!」

「「「「おー!」」」」

「……それじゃ行きまーす……」


 あ、ダイクさんは号令をかけたかったっぽいけど、レナさんに取られてしょんぼりしてる。まぁその気持ちは分からなくもないぜ、ダイクさん!


<『ハイルング高原』から『名も無き平原』に移動しました>


 さて、数日ぶりに再びやってきました、ネス湖の隣の平原エリア! まだここの命名クエストは終わってないみたいで、まだ名無しか。命名クエストの発生条件はどうもフィールドボスの討伐数みたいだから、もしかしたらこれからやるフィールド戦で命名クエストが発生するかもね。


 そしてエリアの切り替えは前回来た時とは少し位置がズレていた。えーと、前よりも北寄りに入ってきたから、ここから南に見える林がさっき言ってた虫の林だね。

 現在地は特にこれといって何もない拓けた草原という感じ。少し先の方には小さな湖が見える。あー、前は集団行動中だったからあまり寄り道は出来なかったけど、ザックさん達が捕獲してきたデンキウナギがいる湖だったっけな。


「あ、そういやレナさん。灰のサファリ同盟でデンキウナギの追加がどうとか言ってなかったっけ?」

「そうなのか、ダイクさん?」

「そういや言ってたねー。折角ここまで来てるし、後で捕獲して帰ろっか」

「今捕まえてるデンキウナギだけじゃ駄目なのかな?」

「どうも一般生物ではあるから、少し間を置かないと何度もは放電は無理なんだってよ。で、数を増やして対応だとさ」

「そういう事もあるんだ!?」

「放電出来るとはいえ、やっぱり一般生物だから弱くはあるんだね」


 ふむふむ、ヨッシさんの言うように一般生物は進化していないから弱いんだよな。まぁ電気の操作を手に入れやすくする為には重要なものだし、ここは手伝っておきますか。


「よし、その捕獲は俺とハーレさんも手伝うぞ。6時で制限があるのは、サヤとヨッシさんの2人だしな」

「ケイさんに賛成さー!」

「お、2人ともありがとね」

「今回は時間の都合あるから私とヨッシは仕方ないかな」

「その辺はどうしても都合があるもんね」


 食事の時間がズレているから、その辺の時間の不都合が出てくる場合はどうしても発生するもんな。1人暮らしでどうとでも調整が効くなら良いんだろうけど、俺らはそうじゃないからその辺は仕方ない。まぁそもそも文句を言うような事でもないけどね。

 とにかく今はレナさんとダイクさんの希望によるフィールドボス戦と、ヨッシさんと俺とで昇華魔法の組み合わせ確認が先だな。さて、どんな感じの昇華魔法になるかなー?


「おし、とりあえず俺の水のカーペットは切るぜ」

「ほいよっと」

「さてと、それじゃ目的の事の準備を始めていこっか」

「「「「おー!」」」」


 ダイクさんの水のカーペットを解除して、みんなが臨戦態勢に移行中である。あ、そういえばフィールドボスを誕生させた時には属性強化のスキルが手に入るってのもあったな。平原だと何属性が手に入るんだろう? そしてあわよくば、命名クエストに参加したいとこである。まぁこればっかりはーー


<規定数のフィールドボスの討伐を達成しました>

<命名クエスト『命名せよ:名も無き平原』を開始します>

<本クエストは現在該当エリアに滞在中のプレイヤーが対象になります>

<以下の選択肢より、30分以内に好きなものを選んでください。一番多かった選択肢が新しいエリア名となります>


【命名候補】

 1:グロス平原

 2:ノンブルー平原

 3:ザッタ平原

 4:ミックス平原


 おいー!? ちょうど命名クエストの事は考えてたし、今からフィールドボス戦をしようとしてたけど、このタイミングで命名クエストが出てくるんかい! えー、もう1戦分だけ待ってよ……。


「……なんか出鼻を挫かれた気分だな……」

「あはは、確かにもう少し早ければわたし達が出せたのにねー?」

「ちょ、レナさん!? ちょっと悔しかったのは分かるけど、ハチとザリガニを地面に叩きつけないで!? せっかく持ってきたのが死ぬから!?」

「あ、ダイク、ごめん。ついね? あ、ハーレさんとサヤさん、これらを持ってもらっていいー? 流石に種族的にケイさんとヨッシさんに頼むのもあれだからね」

「了解です!」

「分かったかな」


 どうやら同系統の種族という事で、レナさん的にも配慮はしてくれているようである。まぁ、別に気にはしないけども、ここは配慮をありがたく受け取っておこう。

 そしてハチはハーレさんが、ザリガニはサヤがそれぞれ預かっていった。あ、そういやレナさんは自前の瘴気石を使うつもりだったから、取り出して食べさせるには自分で持ってたら邪魔なのか。

 

「さてと周囲のチェックもしなきゃだけど……先に命名クエストを選んでいこっか?」

「あー、それもそうだな。……でも、言葉の意味が分からん。ザッタ平原とミックス平原がネタ選択肢なのはなんとなく予想はつくけど……」

「ザッタ平原って、色んなものがあるって意味での雑多かな?」

「ミックスがあるからそんな気がします!」

「グロスとノンブルーってどんな意味なんだろ……?」


 ヨッシさんのその問いに、みんなで互いを見ていくけども答えを出してくれる人はいなかった……。くっ、こういう時にアルがいれば少しは分かったかもしれないのに、肝心な時になんでいないんだ、アル! ……まぁ社会人だしこの時間帯は仕方ないか。


「意味がわからないなら、名前の語感で決めよう! 俺は、グロス平原で!」

「私はあえてザッタ平原にします!」

「あ、今回はハーレはネタに行くのかな。それじゃ私もそうしようかな?」

「それじゃ私もザッタ平原にしようっと」

「おー、ネス湖に続くネタエリア名もいいかもね! それじゃわたしも!」

「……なるほど、こうやってネタ選択肢への票が入るんだな。……俺はノンブルー平原にしとくか。青ではないって事で」

「あー、そういう考え方もありか。……多分、ダイクさんのその意味は絶対に違うと思うけど」

「ま、俺自身もそう思ってるがな! 意味が分からん以上は、それで構わねぇさ」

「……それもそうだな」


 これからログアウトして意味を調べてから、戻ってきて選ぶという手段もあるけどそこまでする気もないしなー。それにあと10分くらいで6時だし、もう時間の猶予もあまりない。


「とにかくこれで命名クエストの選択は終わりだな。レナさん、フィールドボスの討伐をやっていこう」

「そだねー。あ、ケイさん、念の為に獲物察知で周囲の群集の様子を探ってくれない? 擬態は漏れるけど、そこら辺はわたしやハーレさんやサヤさんで見つけるからさ」

「あー、そういやそういう使い方も出来るか。任せとけ」


 獲物察知では敵判定となるのが色分けされた矢印で表示されるからね。擬態持ち相手には無意味だけど、そこら辺はレナさんとサヤとハーレさんがフォローしてくれるのであれば問題はないな。……よし、行動値も魔力値も全快してるし、移動操作制御も再発動可能に戻っているね。


<行動値を3消費して『獲物察知Lv3』を発動します>  行動値 67/70


 これで周囲の様子をグルッと確認。……ふむ、そこそこ離れたところに赤い矢印が6つあるからPTっぽい。青い矢印については特になし。黒い矢印もいくつかあるけど、これは今はスルーで良いか。


「少し離れた場所に赤の群集の1PTっぽいのがいる。青の群集は居ないみたいだ」

「もしかしてその赤の群集のPTの人がフィールドボスを倒したのかな?」

「あー、確かにそうかもな」


 タイミングを考えるならその可能性は充分ある。まぁ赤の群集は既にフィールドボスの誕生手順を判明させたみたいなので、気にするだけ無意味かな。ふむ、こうなってくると青の群集のフィールドボスに関する情報が気になってくるね。

 まぁ夜には赤の群集の森林深部と青の群集の森林が隣接している場所に遊びに行くつもりだから、その時にちょっと探ってみよう。まぁスパイみたいにコソコソはせずに、正々堂々とね! 単純に灰の群集と隣接してないエリアの様子も気になるし。


「さてとそれじゃ本番いくよー! あ、ちなみにハチもザリガニもどっちも物理だけど、どっちメインの進化がいい?」

「ハチがメインだと自由に飛ばれて面倒そうだから、ザリガニで!」

「俺もケイさんの意見に一票!」

「私もです!」

「私もかな」

「私もみんなと同じで」

「はい、満場一致でザリガニをメインに決定ー! それじゃザリガニに+6の瘴気石を、ハチに+5の瘴気石だね」


 満場一致でザリガニをメインにしたフィールドボスの誕生に決定した。そして2つの強化度合いの違う瘴気石を地面に置いていく。1つはザリガニを持つサヤの前に、もう1つはハチを持つハーレさんの前にである。


「それじゃ、サヤさん、ハーレさん、お願いね」

「はーい!」

「うん、分かったかな」


 そうしてサヤとハーレさんに捕まっていた2体のLv20の成長体が瘴気石を食べていき、ハチとザリガニが互いに引き寄せられていった。そして瘴気の膜に覆われて、フィールドボスへの進化が始まっていく。

 この組み合わせなら、Lv12のザリガニメインの合成進化のフィールドボスになるはず。その際に組み合わせさえ良ければ最適化の為の変異進化を挟むけど、流石に今回の組み合わせではないだろうな。

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